無双ゲーの無双される側に転生したので、ネームド達を避けつつ生きていき…たかったなぁ?   作:ムクロウ

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やぁ、新年の始めを餅つきや
親友との酒盛りで満喫したムクロウだ!
ゲームは楽しい、執筆も楽しい。
両方したいってのが人間の咎です。

そろそろ投稿ペース上げてこうかと考えております。


雑魚キャラ脱却祝いはボスとのエンカウントでした

 

巨首樹海蒼龍(アズラリィギガルヒュドラ)

 

蓬莱山において実質的なボスを務める魔物

通称・木偶龍

 

頭を除いた全長は約2400m、

高さ100mの超巨体

 

特徴的な多数の首は本枝と分枝に分かれる。

 

分枝はいくらでも生やせる上に、

火球を放つことが出来る直径2mほどの(アギト)

 

それに比べて本枝は直径5mという太さに加え、

唯一扇状に息吹(ブレス)を放てる。

ただし本枝は一本しか生えていない。

 

意識は胴体が統制しており、

本枝と分枝はあくまで端末に過ぎない。

 

分類としては龍種になるが、

体の大部分は樹木で構成されており、

心臓すら木製なのは生き物というより

植物なのではないだろうか?

実際に植物類もある。

…まぁコイツ卵生だけどさ

 

シオンは蓬莱山のボスとは言いづらい為、

それ以外の最強となるとやはりコイツだろう。

 

かなり厄介な延焼の状態異常付与と

純粋に火力が高く、手数の多い蒼炎(ナパーム)

 

体が樹海そのものの癖に炎を扱い、

炎耐性も高い初見殺し性能

 

ダメージカット率が高く、

接近時枝や葉での迎撃可能な樹皮

 

巨体を利用した広範囲高威力の物理攻撃

 

非常に高い再生力と無尽蔵のスタミナ

 

並べてみても強いことしか書いてない

 

こんなもんがランダムエンカすることが

蓬莱山で最も危険な要素…って訳ではないが

蓬莱山をエンドコンテンツたらしめる要素の

一つには数えれるだろう。

 

ちなみに最も危険な要素は無限湧きだ。

対策をしていない状態で10分過ごせば

レベル90以上の魔物の軍勢にすり潰される。

フル強化した完全装備主人公でも

対策なしで攻略は不可能なクソゲーである。

 

話を戻そう。

上記の通りスペックが頭のおかしい木偶龍だが

俺にとってはこれらはさらに上位互換と

戦った経験がある為別に気にしていない。

流石の木偶龍も空を埋め尽くす攻撃はしないし

問題は…

 

 

………………

 

 

弾く 切る 躱す

 

青葉と棘の弾丸を打ち払い

巨龍の顎を両断し

焼き尽くす蒼炎が身を掠める

 

「キリがねぇなっ!とっ!」

 

伸びてきた根っこを切り飛ばしつつぼやく

別に捌けない訳じゃない。

なんなら積極的に攻撃してるくらいだ。

だけど効果がない。何故なら

 

「デカ過ぎるんだよテメェ!」

 

俺の攻撃規模ではコイツの再生速度に負ける。

地形レベルの敵を破壊する攻撃方法が無い、

それ故に千日手に近い形になっている。

…いや、俺が不利だと言えるだろう。

問題はスタミナだ。

アイツ(魔物)のスタミナは無限大だが、生憎俺は半端者(半人半魔)

魔を喰らえ(鬼角解放)にも制限時間があるし、

スタミナだって無限にあるわけじゃない。

 

「「「GyuRaaaaaAAA!!!」」」

 

「うるせぇ!」

 

「「「Gyau!?」」」

 

突っ込んでくる分枝を

一瞬だけ過剰燃焼(オーバースロットル)を使い殴り飛ばす

このパワー、流石鬼

ただこれは緊急事態以外では封印だな。

スタミナ消費が想像以上に多い。

 

「さて、どうするか、なっ!」

 

次々と喰らいついてくる分枝を乗り越え、

その上を駆ける。

 

そのまま本枝の根元に狙いを定める。

 

納t

 

「…ッ!ダメか!」

 

胴体部に隠れていた蔦が飛び出す

即座にバックステップして切り払いつつ、

分枝の追撃を躱す。

 

俺が決めきれない一番の理由がこれだ。

攻撃の密度と手数で凌がれて

"鳴神"を放つ隙がありゃしない。

しかも…

 

「「「GoGaa!!!」」」

 

「当たるかよ!」

 

トリガー

 

吐き出された蒼炎(ナパーム)を黒銃で狙撃しつつ、

いくつもの凍てつく弾丸を木偶龍に叩き込む。

しかし

 

「「「Gyaruru!!!」」」

 

その程度の傷は気にも留めない上に、

即座に再生してしまう。

つまり銃撃は有効打になりはしない。

 

「どう"鳴神"をぶち込むかなんだがな…!」

 

突っ込んでくる分枝の一つに刃を突き立て、

切り裂きながら首を走る。

 

「「「GyaRuaaAAA!!!」」」

 

暴れ回り振り落とそうとするのに合わせ

首をズタズタにしながら飛び降り、

着地しつつ追撃を躱す。

 

俺の戦闘は"鳴神"をどう放つかを

中心として組み立てて行かなければならない。

その方法を確立するためには試行回数が必要で、

木偶龍ならいくらでも試せる。

 

「テメェは練習台だ!

 もっと手本を見せてくれよバレリーナ!

 無様な踊りは見飽きたぜ!」

 

地面から根が飛び出すのを跳んで躱しつつ、

本命の全方向からの蒼炎(ナパーム)氷球(シェルター)で防ぎ、

噛み砕こうとする分枝の上顎を切り飛ばして脱出。

 

「邪魔だっ!」

 

そのまま下顎を蹴って加速し、

炎球と蔦の迎撃を片手で狙い撃ちつつ突破

もう片方の手で納刀を…

 

「…チィッ!」

 

する前に横合いから強引に突っ込んできた

分枝に掬い上げるように刀を合わせ、

その勢いで下に潜り込む。

 

「これもダメか…!」

 

「「「GyaooOOO!!!」」」

 

俺の目の前から別の分枝が迫るが、

それを頭上を過ぎていく分枝に刀を突き刺し、

それに引っ張られる形で離脱する。

 

突き刺した首から枝が突き刺そうとするのを

首ごと切り裂きながら脱出して躱しつつ、

落下中に黒銃を連射し枝を撃ち落とす。

 

やはりネックとなるのは納刀時の隙だ。

その時間は片手が攻撃に回せない上に

刀という攻守ともに主となる要素が封じられ、

攻撃を捌ききれなくなってしまう。

 

「実戦で使えなきゃ意味ねぇんだがなぁ…」

 

考えを巡らせながら着地し、

過ぎる葉を横目に距離を詰め…

 

「ッ!氷盾(シールド)ッ!」

 

防御を固めながら全力で飛び退いた瞬間、

空中に浮かんだ葉全てが爆ぜる。

 

「クソッ…!」

 

直撃こそ避け、盾で軽減したものの

爆風を受けて吹き飛び、地面を転がる。

 

「「「GyuRuooOOO!!!」」」

 

「ッ氷柱(ピック)!」

 

その隙を見逃さず一斉に突っ込んでくる分枝群を

即座に地面から氷柱を生やし、

自身を弾き飛ばすことで躱す。

 

「「「Gaa!!!」」」

 

「グゥッ⁉︎」

 

無理な体勢で躱した為追撃の蒼炎(ナパーム)に直撃し、

火達磨になる。

 

「…ッ、冷気(チル)凍結(フリーズ)過剰燃焼(オーバースロットル)!」

 

冷気で延焼を相殺して消火し、

消しきれない部分は凍りつかせて隔離し、

刀で切り離して過剰燃焼(オーバースロットル)で無理矢理再生する。

体から吹き出す魔炎に蒸気が混ざる。

 

「ハッ…!ハッ…!っぶねぇ!」

 

しかしマズイことになった。

過剰燃焼(オーバースロットル)を解けば体力が尽き、

しばらく動けなくなる。

だが発動し続ける為のエネルギーが少ないから

このまま時間が経てばぶっ倒れることになる。

つまり俺はこの打開策も無い状況で

時間制限以内に"鳴神"を放たなきゃならない。

普通に考えれば逃げるのが最善手。だが…

 

「今更尻尾巻いて逃げるなんざ、

 流石に出来るわけねぇだろ!」

 

余剰の魔力である魔炎を冷気に変換し、

過剰燃焼(オーバースロットル)の熱気を仲裁する。

 

こちとらシオンに見込まれてんだ!

俺のプライドなんざその辺に捨ててるが

平気な顔して他人の顔に泥塗れるほど

人でなしに堕ちちゃいねぇよ!

結局やり方を確立できなきゃ、

この先生き残れねぇしなぁ!

それによぉ…

 

「楽しくなってきたところだろうがぁ!

 なぁ木偶龍ぅ!」

 

地面を蹴り砕き龍へ突っ込む。

枝や火球など迎撃が放たれるが

 

「当たんねぇなぁ!」

 

過剰燃焼(オーバースロットル)の速度変化に追いつかず、

間隙をぶち抜く。

 

「「「GyuRuu!?」」」

 

即座に目の前に葉を展開し、

爆撃地帯を作り出す木偶龍。

だがなぁ!

 

「切り刻んでやるよ…!」

 

自身に届きうる全ての葉を

爆ぜる前に切り刻む。

 

「テメェの葉は形を失えば爆ぜねぇもんなぁ!?」

 

さらに行動を起こそうとするが

 

「遅ぇ!」

 

蔦と枝を早撃ちで撃ち落とす

 

納刀

 

「"鳴か…」

 

視界が青く染まる

 

「グボァッ!?」

 

突如体が爆炎に包まれ、吹き飛ぶ。

体が蒼炎(ナパーム)で焼け焦げ、激痛と灼熱に包まれる。

 

何が起きた!?

息吹(ブレス)で狙えるような間合いじゃねぇぞ!?

 

空中で体勢を整えて着地しつつ

木偶龍の方を見れば

 

「なっ!?」

 

俺が斬ろうとした本枝の根本あたりが吹き飛び、

焼け焦げたような跡が残っている。

 

蒼炎(ナパーム)の暴発を利用した自爆だと!?

 テメェ自身にとっても

 洒落にならんダメージだろうが!?」

 

再生こそ始まっているものの、

かなりの大穴の為未だ煙が上がっている。

 

「「「Gurr…rr…」」」

 

苦しげながらも、確かな殺意が籠った眼光。

 

「コイツ…ッ!」

 

根性見せつけてくれるじゃねぇか!

 

冷気(チル)凍結(フリーズ)!」

 

蒼炎(ナパーム)に対処し、再び木偶龍と向き合う。

 

さぁて、状況がさらに悪化した

おそらくだが、"鳴神"の予備動作を学習されたな。

俺が近づいた後に必ず納刀を行うことを見越して

納刀のタイミングに合わせて自爆しやがった。

もし仮に次納刀出来る隙があっても、

自爆で無理矢理妨害されちまう。

 

冷や汗が頬を伝う

 

今の再生で過剰燃焼(オーバースロットル)維持は限界寸前

魔を喰らえ(鬼角解放)もタイムリミットが近い。

後勝負は仕掛けられて一回ってとこだろう。

つまり次で決めなきゃ負け確だ。

 

「さてどうする…!」

 

飛ばしてくる枝や

地面から突き出す根を躱しながら思考する。

攻撃の勢いはあまり無い、

向こうも再生で手一杯ってとこか。

 

記憶をひっくり返す。

夜霜丸の能力は使えない。

制御出来てない事もあって

使っても俺がさらに不利になるだけだ。

 

黒銃ももう使えない。

さっきの爆発でお釈迦になっちまった。

魔法の産物がここまで持っただけ有情だ。

 

そもそも俺は今までどうやって"鳴神"を放った?

鍛錬中は論外、アレはただ確かめただけだ。

奇襲中も使っていたが、元々納刀された状態だ。

木偶龍まで到達する過程で

障害の排除に必ず刀がいるのでこれもダメ。

 

横合いから飛んできた火球を避ける

 

「「「GyaRaaAAA!!!」」」

 

もうそこまで回復しやがったか!

 

何か無いのか!?

あの野郎に"鳴神"をぶち込む何か!

だが後俺が"鳴神"を放ったことなんて一度しか…

 

「…ってそうだ!

 あるじゃねぇか解決手段!」

 

簡単な話だった!

()()()()()()()()()()()

ただ始まりを(なぞ)るだけでいい!

それだけの話だったのか!

 

「そうと決まれば…」

 

新たに飛んできた火球を飛び越え、

殺意の眼差しに笑みを返す。

 

「反撃といこうか!」

 

壊れた黒銃を投げ捨てる。

再び地面を蹴り、景色を置き去りにする。

 

「「「GyaRuooOOO!!!」」」

 

今度は俺の速度に対応した攻撃が四方から迫る。

 

「シィッ!」

 

それらを切り落としながら走り抜け、

一気に跳躍する。

 

「「「GyaRuaaAAA!!!」」」

 

それを待っていたとばかりに火球が吐き出され

 

「それを待ってたんだよ!」

 

足で捉え、本枝の顔面に()()()()

 

着弾

 

「「「GyuRooOOO!?」」」

 

見事鼻先にぶち当たり、爆発を引き起こす。

視界が塞がれて尚扇状に息吹(ブレス)を吐くが

 

「足場係ご苦労ってなぁ!」

 

炎を()()()()駆け上がる。

 

「「「GyaooOOO!!!」」」

 

即座に分枝が顎をもって噛み砕こうとする

それを跳んで躱し、別の顎の追撃を

 

「無駄だぁ!」

 

空中を蹴り飛ばして懐へ飛び込む

 

実体無きものに触れる。

テメェにゃ神通力は見せて無かったよなぁ!

お陰で右半身は火の車だが関係ねぇ!

 

「□□!」

 

魔法を詠唱し、目前へと至る。

 

「「「GyaRuooOOO!!!」」」

 

抉り抜くような枝の群れを

右手の刀で切り飛ばし続け狙いを定める。

 

感じる

撃ってこいという木偶龍の意思を

納刀を確認した瞬間、

今度こそ息の根を止めてやるという挑発を!

 

あぁ、撃ってやるさ!

 

最後の枝を切り落とす

 

ただし…!

 

()()を高速で動かして

 

こっちの刀でなぁ!

 

右腰の()()()()()()()()()()()

 

木偶龍の驚愕が伝わる。

それでも咄嗟に根元に生やした分枝を

 

「シャァッ!」

 

右手の(夜霜丸)で両断する。

 

「"鳴神ィ"!」

 

抜刀

 

「「「GyuRuaaAAA!!!」」」

 

一閃

 

 

 

 

 

 

…1つの影が宙を舞う

 

俺の"鳴神"は確かに斬った。

直径5mほどの、龍の()を。

 

氷刀(エッジ・オブ・クレバス)は刀を鞘ごと創り出す魔法だ。

だから初めて使った際、そのまま"鳴神"を放てた。

 

2mは"鳴神"が当たるまでの距離

俺が切ると決めた以上、

そこに大きさは関係無い。

両断したという事実が残るのみだ。

だが…

 

「「「GyaGiii!?」」」

 

唯一の(本枝)を根本から切り飛ばしたとはいえ、

このくらいじゃコイツ(木偶龍)は死なない。

そして俺は後ワンモーションが限界だ。

 

「…ここが今の俺の限界、か」

 

仕方ねぇ、こうなったら…

 

「…撤退だ!」

 

残った余力全てを使って断面を蹴り飛ばし、

切り飛ばした首を掴みながらすっ飛んでいく。

 

「あばよ!巨首樹海蒼龍(アズラリィギガルヒュドラ)

 俺が殺しに来るまで殺されるんじゃねぇぞ!」

 

空からヤツを見下ろせば、

口元に青い光が灯った数百の(分枝)が…

 

「ってマズッ!?氷t」

 

防御魔法を展開しようとした瞬間、

魔を喰らえ(鬼角解放)過剰燃焼(オーバースロットル)が切れ

 

「っ意識…が…」

 

 

………………

 

 

ソレは絶対者だった。

とある理不尽を除いて、

この山の頂点に君臨していた。

 

いつものように眠っていたところ

頭上が嫌に静かなことに気がついた。

 

この森は常に争いが絶えない。

強力な魔物同士が争い合うからだ。

だが、今日に限っては静寂を保っている。

少し(分枝)伸ばして偵察をすれば、

妙な人間が魔物を両断していた。

だが、人間にしては気配がおかしい。

魔物の気配が混ざっている。

 

興味を持って観察して見れば、

異様な()を使い、死角から襲いかかり…

 

一閃

 

その絶技によって両断する。

 

危険だと思った。

これを放置すれば必ず死ぬという確信があった。

だからこそ先手を取り、火球を放った。

避けられこそしたが、

幸い逃げる事無くこちらに向かってきた。

 

戦う中で拍子抜けした。

この程度なら排除するまでも無いと感じた。

確かにあの絶技は危険だが、

何か準備が必要らしく、

こちらの迎撃が間に合う。

確かに防御は上手かったが、

すり潰すのは容易だと感じた。

 

…が、間違いだった。

初めて攻撃が当たった瞬間、

ヤツの気配が一変した。

ソレの蒼炎を消したかと思えば、

尋常ならざる速度でこちらに迫る。

その速度は一時的とはいえ、

ソレが対処が遅れるほどに速い。

事前に絶技の予兆を知っていなければ、

間違いなく断ち切られていた。

いや、知っていて尚、

自爆というリスクを取らねばならなかった。

 

ソレは再び考えを改めた。

やはり此奴は殺さなくてはならない。

 

再生に徹しながら、考察する。

やはり分かりやすい脅威はあの絶技だ。

そしてヤツもまたそれを分かっている。

だからこそ、そこを突かねばならない。

次飛び込んできたその時に

前回よりもより高めた蒼炎を使い、

今度こそヤツを灰にする。

 

ヤツがこちらを見る。

何か策を弄したらしい。

その笑みがよりソレを苛立たせる。

 

仕掛けてきた。

攻撃を放ち、跳躍を誘う。

 

ヤツは恐れる事無く飛び込んでくる。

ソレに向かい、蒼炎の火球を放つ。

ヤツの息吹(ブレス)を放つ筒は無い。

当たる!

ソレはそう確信した。

だが

 

「それを待ってたんだよ!」

 

ヤツ(ヒリュウ)はその程度では殺せない

ヤツは火球を、あろうことか蹴り飛ばし、

こちらに撃ち返してきた。

ソレどころか本枝の息吹(ブレス)を駆け上がり、

空中を蹴り飛ばしてこちらへ向かってくる。

 

だが、それでもソレの勝利は揺るがない。

来るがいい…!

今度は複数の位置から

同時に爆発を浴びせる!

貴様が絶技を放とうとする瞬間

それこそが貴様が灰になる時だ!

 

そしてソレは再び驚愕に染まる

 

ヤツ(ヒリュウ)の創り出した二つ目の()によって!

 

咄嗟に生やした分枝の目を通してソレは見た

 

右半身を蒼炎に包まれ、骨が剥き出しになり

再生しようと筋肉が動いては焼け爛れる

 

そんな状態で狂笑を浮かべる鬼人を

その狩人の如き黄金の眼光を!

 

「"鳴神ィ"!」

 

そしてソレは斬られた。

死んだ、と思った。

だがヤツも限界だったらしい。

斬られた首を持ち去り空へ逃げていく。

 

今なら殺せる!

全ての分枝から火球を放とうとする。

だが、直前で辞める。

 

このまま敗北したままでいいのか?

 

消耗し切ったヤツを殺して満足か?

 

断じて否!

 

万全の状態のヤツを正面から焼き尽くす!

でなければ殺す意味が無い!

 

…もはやソレの目的は変わっていた。

ヤツ(ヒリュウ)を排除するのでは無く、勝利する。

それ故に追撃を辞めたのだ。

勝負は既に終わった。

敗者が勝者に追撃するなど、

惨めにも程があるからだ。

 

そうしてソレ… 巨首樹海蒼龍(アズラリィギガルヒュドラ)は再び地面に潜る。

まずは再生の為に体を休める必要があった。

そして再生が終わったら、狩りに出よう。

今度こそヤツを焼き尽くす為に、

ソレもまた強くなる必要があった。

 

待っていろ。鬼人

貴様を殺すのはこの私だ

 

数日後、蓬莱山から1匹の魔物が姿を消した

そしてこの世の中に、

一つの大災害が解き放たれたのだった。 

 

 

………………

 

 

結界に反応があった。

即座に屋敷を飛び出し、彼を探す。

 

「いた!」

 

四時の方向、空に青い光が見える。

 

一瞬で距離を詰め、受け止める。

全身が燃えている。

皮膚はなく、肉もところどころ燃え落ちて

命は風前の灯火だ。

 

「ヒリュウ!」

 

魔力で炎を消し飛ばし、

そのまま肉体に魔力を流して再生する。

10秒もしない内に肉が付き、皮膚が戻り、

ヒリュウは元の姿に回帰する。

 

「良かった…!生きてる…!」

 

反応があった時、背筋が凍るようだった。

生命力が底を尽きかけていたからだ。

ヒリュウを失うと考えただけで、

過呼吸になってしまいそうだ。

呑気に寝ているヒリュウの頭を撫でる。

 

いっそこのまま閉じ込めてしまおうか

そんな考えが頭を支配して…

 

「…いつか…」

 

ヒリュウが寝言を呟き、現実へと引き戻される。

 

「…何もかもを斬って…シオン…」

 

「…私?」

 

やはり倒すとかだろうか?

それとも殺す?どちらにしろ大歓迎…

 

「…お前に…幸せな…生き方を…」

 

「…えっ?」

 

ヒリュウの寝顔を覗き込むが、

寝言はそれで終わりらしく、

静かな寝息を漏らすばかりだ。

 

「〜〜〜ッ///」

 

顔が熱くなるのを感じる。

もう、この人は本当に…!

 

「貴方が悪いのよ…?」

 

額にキスをする。

本当は唇にしたいけれど

初めては彼から求めて欲しい。

 

「…閉じ込めたりはしないけど、

 ちゃんと生きて帰ってきてね?じゃないと…」

 

そう呟くシオンの目は

 

「…私、冥界にまで迎えに行って

 貴方を食べてしまうから、ね?♡」

 

恋する少女のようで、獲物を見る肉食獣のような

熱く蕩けた眼差しを宿していた。




ちょっと詳しい解説

・木偶龍とヒリュウの能力差
基本的には木偶龍側が優勢です。やはりデカいのは正義。
ただし回避能力と攻撃力、そして全力時の速度はヒリュウが上回ります。

・氷球と氷盾の違い
耐久は圧倒的に氷盾が上ですが、氷球は全方位を氷で覆って守るのに対して、氷盾は盾を3枚出すだけなので範囲攻撃に弱いです。
ですが氷球は使用中動かせず、使用者を中に閉じ込めてしまう為、回避することが難しくなります。その点氷盾は使用者周りをの自由に動かせる為、機動力が高いです。

・蒼炎
木偶龍の体内に存在する器官で生み出したものであり、魔力を含んでいますが魔法ではありません。その為、"雷切"の破魔の効果も意味がありません。
また、蒼炎は水を掛けるだけでは消えず、何かしらの魔力で相殺、または燃えている部分を隔離する必要があります。
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