無双ゲーの無双される側に転生したので、ネームド達を避けつつ生きていき…たかったなぁ?   作:ムクロウ

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うーん、中々面白い展開が思いつかない…


イレギュラー発生によるチャート崩壊という恒例行事

 

「起きなさいグリム」

 

違う

 

「またサボりかよ?グリム」

 

違う!

 

「どうかしたの?グリム」

 

違うッ!

 

僕はグリムなんて名前知らない!

皆んな何故僕をそんな目で見る!?

 

「大丈夫、大丈夫よグリム」

 

違うって言ってるだろ!

 

「今は混乱してるかもしれないけど、

 きっといつか思い出すから」

 

そんなの知ったことじゃない!

僕は僕だ!

 

僕は…僕は…

 

 

 

()はなんだ?

 

 

………………

 

 

「あぁ〜疲れた〜」

 

プロファナと別れた後も不死鷹(フェニーク)狩りを続けたが

初回が運が良かっただけなのか全然集まらず

確保できた風切羽はたったの6枚

 

「せめて二桁は欲しかったな〜」

 

メインシナリオで何かあった時用に

他者の蘇生手段は多く持っておきたいんだけど…

 

「まぁ本腰入れて関わる気はないけどさ」

 

シオンの結界内に入りながら思考を続ける。

 

「にしてもプロファナの最後のアレ…」

 

グリムって誰だ?

『リベプリ』においてんな名前のキャラはいない。

 

異常発生個体(イレギュラー)こと死神(グリム・リーパー)って魔物はいるけど

流石に俺に魔物の名前は付けないだろうし

 

「俺の知らない裏設定の一つか?」

 

良くも悪くもこのゲームの運営陣は性格が悪い

"鳴神"の一件のように他の誰かが発見して

そのまま消えてしまった設定もあるだろう。

 

「となるとこの体が知ってそうなもんだが」

 

転生する前のコイツが

どう過ごしてたのかの記憶が曖昧だ

果たしてどういう形で俺は転生してきたのやら

 

「グリム…グリムねぇ…」

 

なーんか引っかかるような…

どこで聞いたんだったかな?

 

上の空のまま屋敷の暖簾をくぐる

 

「ただいま…」

 

殺気ッ!?

 

魔力を最大限までブン回す

 

抜刀は間に合わない!

 

鞘ごと夜霜丸を持ち上げてながら

鯉口を切り刀身を半身ほど出し

 

「ッオ、ラァ!!」

 

甲高い金属音と共に閃光を弾き逸らす

 

「…随分と物騒なお出迎えじゃねぇの?」

 

「フフフ…貴方なら問題ないでしょう?」

 

なんかシオンが笑顔のまま凄い圧を掛けてくる…

 

「どうかしたのか?」

 

「いいえ?私は何もしてないわよ?」

 

そう言いながら高速で繰り出される"箒星"

 

「っぶね!?絶対怒ってるだろ!?」

 

「あら、何に怒ってると思うの?」

 

うっわ面倒臭ぇ…

 

「分からん!」

 

「じゃあ分かるまで頑張りなさい?」

 

性格悪っ!

 

「ってうぉぉっ!?」

 

飛び交う閃光を逸らし躱す

 

「クソッ!魔を喰らえ(鬼角解放)!」

 

吹き上がる魔炎を閃光が容赦なく削り飛ばす

 

反応速度と身体能力を上げ、

追いつかない対処を間に合わせる

 

ギリギリで首を振ると

頬をかすめて死の閃光が通過する

 

「おまっ!?洒落にならねぇって!」

 

「そう言いながら対処してるし、

 話せる余裕まであるじゃない?」

 

クソッ!?何なんだマジで!

このままじゃくたばるのも時間の問題だぞ!?

まだ使いたくなかったが、

こうなりゃ木偶龍の力の解放も視野に…!

 

「…本当に分からないの?」

 

「分かるか…よぉっ!?」

 

今脳天狙いだっただろ!?

 

「仕方がないから教えてあげる。

 貴方、今日私以外の女と会ったでしょ?」

 

「!?」

 

なんかバレてらぁ!?

何で?why?

 

「どうしてそう思うぅ!?」

 

4方向同時は殺意高過ぎるだろぉ!?

 

「貴方に薄汚い魔力が付着してるのよ。

 しかも背中側にバッチリね。

 魔力の性質からして女のもの、

 しかもそれなりに若い女なのは明らか。

 これは浮気の証拠として充分でしょう?」

 

俺とお前は別に恋人でも夫婦でもないが!?

と言いたいけど言ったら死ぬなこれ!

理不尽過ぎるだろ!

 

「浮気じゃねぇわ!

 転移事故でここに来て

 魔物に襲われてたのを助けた後、

 治療の為に一時的に背負っただけ!

 俺は回復系の魔法も権能もないから

 薬草取るしか無かったんだよ!」

 

「へぇ…助けてあげたのね。

 私のことは助けてくれないのに」

 

「いつ!どうやって!お前が!

 ピンチになるんだよ!」

 

顔面に迫った刀に寸前で仰け反り

そのままバク宙して足を刈る閃光を躱す

しんどい!

そろそろ死ぬってこれ!

 

焦燥感と共にシオンを見ると

どこか不安そうな顔をしていて…

 

「…悪かった!お前が一人で寂しい時に

 不安になるような行動した事を許してくれ!」

 

俺を攻撃していた刀群が一斉に停止する

 

「…そう。分かったならいいわ」

 

どうやら許されたらしい

 

緊張が解けて座り込む

 

「死ぬかと思ったぜ…」

 

普通に考えて俺良い事しかしてないのに

帰るだけで殺されかかるの酷くない?

とは思うが、まぁシオンだしな(諦め)

 

「ただ…」

 

「ん?」

 

「今日は混浴と添い寝をすること。

 これが許す条件ね」

 

「…はぇ?」

 

どうやら俺に対する試練は終わってないらしい

 

 

………………

 

 

「…なぁ、やっぱこれおかしいって」

 

「あら?踊り足りなかったかしら?」

 

「…」

 

現在俺は屋敷の温泉で

シオンと背中合わせの形で混浴中だ。

元々は隣り合わせにする予定だったらしいが、

その辺はどうにかして阻止した

 

「良い夜ね…星がよく見えて」

 

上を見上げれば、満天の星空

 

「…良い景色だ」

 

俺は星空を眺めるのは好きだ

その間は、自分のことさえ考えずに

ただ純粋に輝きに目を向けていられるから

 

「星は好き?」

 

「見るだけなら」

 

「あら、それ以外に出来ることがあるの?」

 

「そこが嫌いなんだよ」

 

「欲張りね」

 

「言ってろ」

 

少しの間、静寂が訪れる

水の音しか聞こえない中で

背中に感じる体温がシオンの存在を教える

 

「…ねぇ」

 

「なんだよ」

 

「どうしてダメなの?」

 

「…」

 

それを答えるのは、全部終わった後だ

 

「星に手が届いた時に教えてやるよ」

 

「…教えないってことでいいの?」

 

「俺が手を伸ばすだけで終わるかよ」

 

カラカラと笑うと、不満そうな声がする

 

「上ばかり見上げてると、

 大事なものを見落とすわよ?」

 

「一番大事なものは既に手元にあるからな」

 

「他のものはどうでもいいの?」

 

「天体観測しながら

 周りを見渡すくらいは訳ねぇよ」

 

「生えてる花には目もくれない癖に」

 

「その花が俺とは違う惑星にあるから仕方ない」

 

再び静寂、ふと背中の感触が無くなったと思えば

背後から優しく抱き締められる

 

「…おい」

 

「貴方さえいれば、私は他には何もいらない」

 

「俺はそうは思わない」

 

「並行線ね」

 

「今はな」

 

「いつまででも私は待つわよ?」

 

「お前は動くしかなくなるよ」

 

「それは何故?」

 

「人は目標が出来れば変わる」

 

「私の目標は貴方と添い遂げることよ?」

 

「だから動くことになるのさ」

 

研ぎ澄まされた刃のような気配と共に

体に回された腕に力が入る

 

「…逃げるの?」

 

「おいおい、人聞き悪いな」

 

「答えて…!」

 

「必死だな。待つんじゃ無かったのか?」

 

「貴方が側にいないんじゃ

 いつ消えてしまうかも分からない!」

 

「俺は死なねぇよ」

 

「つい昨日死にかけたでしょう?」

 

「それでもなんだかんだ生きてる。

 俺だって死ぬに死ねない理由がある」

 

そうだ。星を地上に叩き落とすまでは

何がなんでも飛び続けてやるさ

 

「…居なくならない?」

 

「居なくならない」

 

「私を置いて行かない?」

 

「置いて行かない」

 

「結婚してくれる?」

 

「それは答えられないかな」

 

どさくさに紛れて言質取りに来やがった

油断も隙もあったもんじゃない

 

「…」

 

「無言で力を込めるなミシミシ言い始めたから!」

 

力が緩まる。

良かった。湯が血の池にはならないらしい。

 

「大分堪能したし、そろそろ出るから離してくれ」

 

「…もう少しだけ、ね?」

 

「…はいはい」

 

それからしばらくは、

無言のまま抱き締められていた。

 

…背中の感触からは全力で意識を逸らした

拷問かなんかだろこれ

 

 

………………

 

 

「…いや流石に寝る時くらいは」

 

「…」

 

「分かった。分かったから笑顔で

 刀の切先を向けるのをやめてくれ」

 

クソゥ、マジでヤバい

布団の中は抵抗の余地ないから

力尽くで襲われたらそのまま喰われる…!

 

「…」

 

怖いって!

無言で脅すのをヤメロォ!

 

抵抗虚しく同じ布団に二人で眠る

 

「んじゃ、お休み…」

 

「…」

 

「あっちょっおまっ!?」

 

布団の中で浴衣を(はだ)けて迫るシオン

そのまま腕を掴まれて押し倒される

 

「おい…!洒落になんねぇぞ…!」

 

「…ふざけてこんなことする女に見える?」

 

ですよねぇ!知ってたよ!

 

「せめて今日だけは…貴方を感じさせて?」

 

「お前の今日は随分と長そうだな?」

 

「あら、バレちゃった?」

 

長命特有のクソデカスケール感!

アイツの『今日』は満足するまでとか

その辺になるだろうな!

いざとなりゃ時間に干渉するだろうしな!

 

「そんなに私は嫌?

 身体にも顔にも、

 それなりの自負があるのだけれど?」

 

「俺は見た目で女を選ぶほど、

 短慮でも低能でも無いんだよ」

 

「あら、私は不合格かしら?」

 

「いいや、お前は最高の女だよ。

 多少強引な点を除けばな」

 

「女の子は積極的なくらいが可愛いのよ」

 

「お前は可愛いというより綺麗だし」

 

…何顔赤くしてんだコイツ?

 

「…そういう所よ」

 

「事実を言ったまでだが?

 というか俺は割と歯が浮くセリフを

 結構な数言ったはずなんだが?」

 

「しっかり褒めてくれたのはこれが初めてよ」

 

「そうだったか?」

 

「えぇ、初めて女として見てくれた気がしたわ」

 

まずったか?まぁいいや

それよりこの状況から抜け出す方法だ

まぁ転移板とかはあるが、もし破壊されたら

今度はこの家からの脱出方法が無くなる

 

「出来れば貴方から求められたかったけれど、

 このままだと未亡人になりそうだし」

 

「おい、誰がすぐ死ぬ夫だ。

 死ぬ気もなけりゃ結婚した覚えもない!」

 

「遅かれ早かれ、でしょ?」

 

「冥婚が認められてる国なんてあったか?」

 

軽口を叩きながら、打開策を考える

一か八か転移を発動する手もあるが、

なんらかの手段で妨害されるオチが見える

なら、信じられるのは己の技術だけだ。

 

右腕を素早く動かし、

ほんの少し下に動かしながら持ち上げる

俺を傷つけない程度に手加減をしている為、

シオンの腕がほんの少しだけ浮く

 

「"渦風"…!」

 

「キャッ!?」

 

その瞬間体ごと右腕を右半回転させ、

残った左腕を軸に高速左回転

シオンを押し除けながら空中に飛び出し

脱出に成功する

 

帝国式体術"渦風"

緩急を付けた回転を利用して

拘束状態から抜け出す為の技だ

 

本来ならここから"墜天"や"凪浪"等の

足技に繋げるのがメジャーだ

 

「ハァ…寝る前なのに疲れた…」

 

「…流石に今の据え膳を拒むのは無粋じゃない?」

 

「悪いが俺はロマンチストでね。

 初めてはもう少し順序立てて頼むわ」

 

そう言いながらいそいそと布団を被る

 

「興が冷めたろ?早よ寝ろ」

 

「…」

 

無言の威圧を感じるが、

そもそも疲れて眠いので無視する

 

「添い寝してのスキンシップくらいはいいが、

 やり過ぎるならキレるからな」

 

「…いくじなし」

 

「いいから寝ろ節操なし」

 

そう言って目を閉じると、

流石のシオンも大人しく布団に入る

 

「ん…」

 

と思った矢先、背後から抱き締められる

 

「おい」

 

「ただのスキンシップよ」

 

そのまま首筋に甘噛みされる。

 

「…おい?」

 

「…ふふっ」

 

手を当てて見れば、歯形が付いていた

 

「…このぐらいは妥協してやる。

 抱きついたままでいいから寝ろ。

 そろそろ眠気が限界だ」

 

「あら、女を放って寝るつもり?」

 

「…言っておくが、

 睡眠妨害=粋も矜持も捨てたブチギレ状態で

 殺し合い開始のゴングだからな」

 

「それも少し興味はあるけれど、

 貴方との殺し合い(逢瀬)は風情あるものでないと困るわ」

 

「じゃあ我慢して寝ろ」

 

「…仕方ないわね。今回だけよ?」

 

「どの口が言う」

 

「教えてあげましょうか?」

 

「結構だ…」

 

眠…

 

「あら?…寝てしまったのね。

 相変わらず気持ち良さそうな寝顔だこと…」

 

そう言いながら欠伸をするシオン

 

「…眠気が移ったかしら」

 

そう言って目を瞑り、

ヒリュウを抱き締めたまま眠りにつく

 

月明かりが部屋に差し込む

 

一人は月明かりの下で輝きを増し

その光の側で暗がりに染まるものが一人

 

それはきっと、今後の二人を暗示していたのだろう

 

 

………………

 

 

朝日で目が覚める

 

「んん…」

 

隣で寝てる可憐な天災を起こさないようにして

さっさと身支度を整える

 

シオンには悪いが、

俺はこの家にいつまでもいるわけにはいかない

 

まず第一に強くなる為

第二にシオンから離れる為

そして最後にこの世界が

どのルートなのかを確かめる為だ

 

『リベプリ』はルート選択式のマルチエンディング

場合によってはこの時点で詰んでる可能性まである

せめてどのルートを選んでるかは見ておきたい

 

服をシオンが用意していたものから

魔物の素材で用意していたジャケットに着替える

 

(割と着心地良いな)

 

魔物の素材は魔力で加工出来る

これ作るのにも大分苦労したが、

シオンから貰った服を着続けるのはリスクが大きい

 

他の部分も魔物製の衣服に着替え終えて

音を立てないように隠密に全神経を注ぐ

多分側から見たら俺の姿は限りなく薄くなっている

 

特殊部隊を舐めてもらっては困る

これでも隠密能力だけなら世界最高レベルだ

特に魔力隠蔽は全力で集中すればシオンすら騙せる

 

まぁ流石にシオンの結界を誤魔化せるほどじゃないが

シオン本人の感知能力では見つからないだろう

 

ちなみにこの世界で魔力隠蔽はマイナーだ

魔力隠蔽を鍛える時間で10は新しい魔法を習得出来る

殲滅力が重視されてる世界でこのロスはかなりデカい

故に俺達特殊部隊くらいしか持ってない技術だ

 

(さて、こことももうお別れだ)

 

気配を消して縁側まで辿り着き、

これまた魔物製のブーツを履きつつ家の外に出る

 

(よし、シオンはまだ起きていない。

 今なら転移を起動すればギリギリ間に合う!)

 

魔力隠蔽は魔法の発動すら隠すことが出来る

魔力で何かを作り出すならば

作り出した何かの魔力を感知されてしまうが

転移魔法にはその心配はない

 

転移をする寸前になったら、

魔力隠蔽を解除して魔力を完全解放する

そうすればシオンの魔力によるマーキングを

体内から根こそぎ吹き飛ばせる

 

よしっ!早速

 

「転移起どu」

 

瞬間、目の前の空間が揺らぎ

大きめの魔力反応とともに小箱が現れる

 

「なっ!?」

 

慌てて小箱を掴むと、手紙が付いている

 

『拝啓 グリムへ

 貴方の為ならと、頑張って早く薬を作りました

 帰ってきたらちゃんと恩に報いるように!

 プロファナより』

 

(何が恩だこのポンコツ科学者がぁぁぁああ!!)

 

クソッ!

シオンが飛び起きてこっちに向かってる!

 

言い逃れ出来る状況じゃねぇしもうやるしかねぇ!

どうして毎回毎回予定通りにいかねぇんだ!

 

「転移起動!」

 

速攻で転移を起動しつつ、魔力を完全解放する!

 

「シィィィッ!」

 

体から朱赫と濃紺の魔力の放流が吹き出す

 

「ヒリュウ!まさか貴方!」

 

焦った様子のシオンが飛び出してくる

転移魔法陣が展開されるのを見て、

その瞳に強烈な憤怒が宿る

 

ありゃ説得は無理だな

完全にブチギレ状態だ

 

「ホントは内緒で消えるはずだったんだがな!」

 

「逃がさない…行かせる訳ないでしょう!

 貴方だけはッ!!」

 

シオンの紫紺の魔力が溢れ出す

右手を勢いよく天に向けたかと思えば

 

「ウゲェッ!?」

 

空に聳え立つような金属の壁が現れる

 

いや、あれは…

 

巨刀(プラネット)ッ…!

 貴方が消えようとするならッ!!

 いっそ私の手でッ!」

 

「クソデカい刀かよっ!」

 

一時の衝動に任せて一国を滅ぼす技を

個人に向けるんじゃねぇよ!

 

シオンが右手を振り下ろした瞬間、巨刀が一瞬輝き…

 

「っ蘇生行使(リザレクション)ッ!」

 

「"箒星ィ"ッ!!」

 

俺の視界が光に覆われ

 

あっこれ死n

 

 

………………

 

 

「…」

 

私の目の前には断崖絶壁が広がっている

愛しいあの人は、影も形もありはしない

 

()()()()()()

 

死後3秒以内で肉片が一つでも残っていれば

蘇生魔法等による他者の蘇生は可能だ

 

だが今回は跡形もない

さらに私は蘇生手段を有していない

 

こんなことなら、不死鷹(フェニーク)を無理にでも探すべきだった

 

いや、例え有ったとしても

跡形も無くしたのでは意味がないか

 

冷静さを失って、力任せに叩き潰した

 

その結果がこれだ。滑稽極まりない

 

「フ、フフッ…」

 

乾いた笑いが漏れる

 

もう、いいのかもしれない

 

充分私は生きた

 

最後の希望すらも、

自分の手で呆気なく消してしまった

 

いや、そもそも希望があると考えたこと自体が

きっと間違いだったのだろう

 

都合の良い妄想

夢見る年でもないだろうに

 

「あぁ…」

 

やはり私は愛など、最初から持ち合わせてはいなかった…

 

天を焦がす火柱が上がる

 

「えっ…」

 

これは確か不死鷹(フェニーク)の…

 

「貴様の勝手で俺を殺すな!

 簡単に殺されてやるほど軟弱でないわ!」

 

火柱から飛び出してきた人影は

鬼の角と樹の鱗を持ち、朱炎を纏った人外で

 

その顔と金色の眼光は確かに愛する彼で

 

私の脳が理解を終えるその前に

 

「少しはそこで頭を冷やせ!この愚か者がぁ!」

 

蒼い炎が、私の視界一杯に広がった

 

 

………………

 

 

死ぬかと思ったわ!

 

直前に蘇生行使(リザレクション)を宣言していなければ

アレで終わりだ!

 

にしてもだ。勝手に俺が死んだと思うなど、

どこまで戯けたことをしでかすのか

 

俺を誰だと思っている?

『リベプリ』内で何千回と死を迎えた廃人だぞ

蘇生アイテムの仕様など、完全に網羅しておるわ

 

蘇生条件は死後3秒以内の()()()()()蘇生

または()()()()()死亡前0.1秒以内の蘇生行使だ

 

つまりは死ぬ直前に蘇生を行使していれば

死後どんな状態だろうと蘇生が可能だ

 

知らないのも無理はないかもしれんが

だとしても流石に舐めすぎだろう

 

俺がこの計画で何も策を練っていないとでも?

貴様相手に万全などという言葉が意味無いことは

何百と挑んだ俺自身が知っておるわ

 

…というか口調と考え方の強制変更とは

樹鱗再臨(禍を仰げ)は取り回し最悪だ

もしや鬼角解放(魔を喰らえ)にも性格への影響が…?

…まぁいい

 

蒼炎(ナパーム)は燃費が悪いにも程がある

再生能力と防御能力は格段に上がっているが、

代わりに心臓が致命的な弱点となる

 

また随分とピーキーな手札が増えたものだ

 

シオンに蒼炎を叩きつけて着地しつつ評価していると

転移魔法陣が輝く

 

「っ!転移が始まったか!」

 

そのまま転移しそうになった瞬間、

蒼炎の中から無数の刀が飛び出してくる

 

「まだよっ!」

 

「粘着質な女は嫌われるぞ!」

 

今度は殺傷力のない拘束特化の刀か!

刀で触れた瞬間拘束され、

転移もキャンセルされるだろうな

確かに最適な選択だ

だが、一歩遅い!

 

「"鳴神"」

 

抜刀

 

一閃

 

斬撃は俺の目の前の空間を切り裂き、

刀達は着弾する寸前にズレた空間によって

俺を通り過ぎていく

 

「さらばだシオン!

 次に俺から会う時にこそ、

 星を空から引き摺り落としてやろう!」

 

「ヒリュウ!」

 

転移魔法陣が一際輝くと同時に、

樹鱗再臨(禍を仰げ)鬼角解放(魔を喰らえ)共に解除する

確か転移先は帝国郊外のはずだが、

人に人外姿を見られでもしたらヤバい

流石に因子を解放した状態じゃ隠密は出来ないし

 

そして俺の視界が一瞬暗くなり…

 

俺は空にいた

 

「ハッ??」

 

…まさか"鳴神"の空間切りで転移がバグったのか!?

 

強烈な重力を感じ、視界が下へと流れていく

 

まぁ端的に言えば、落ちた

 

「嘘だろぉぉぉおお!?」




魔力について

ヒリュウの魔力は朱赫が魔物としての魔力、
濃紺が人間としての魔力の色です

魔力は普段は目に見えないのですが、
密度が一定以上の濃度になると視認することが出来ます
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