薄汚いガキを拾ったんだが?   作:ス、スカ

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自分の作品がルーキー1位というのを見てびっくり。


プレゼント

 

「────なんでこんな暑いのにそんな物なんか首に巻いてるんだ?」

 

あれから数ヶ月が経ち、雪が溶けて完全に元の灼熱のアビドスに戻った頃、何故か季節外れな格好をしている馬鹿が居たので、俺は素直な疑問をその馬鹿に問いかける。

 

「これの事?」

 

「それしかないだろ」

 

俺の問いかけにガキはキョトンと不思議な顔をして首を傾げ、自分の首に巻いてあるマフラーを軽く手に取る。

 

「暑くないのか?」

 

「ん、平気」

 

前世の頃もそうだが、やっぱり女子高生のファッションセンスは俺にはサッパリ分からない。真冬に可愛いからという理由だけで、短いミニスカートを履いたりしているのと同じ様な感じなのだろうか。

 

「なんでそんな毎日マフラーを巻いてるんだ?」

 

「……これは先輩から貰った大切な物だから、なるべく肌に離さず持っておきたいの」

 

「先輩ってアビドス高校のか?」

 

「うん、そうだよ」

 

アビドス高等学校。かつてはたくさんの生徒が通っており、最も長い歴史を誇り、キヴォトス最大の学園だったらしいが、数十年前のある時期から頻発し始めた大規模な砂嵐によって学区の環境が激変し、人口の流失などによって生徒の数は激減し、今でアビドス学校の生徒の数はシロコを入れて三人くらいしか居ない。

 

最初はそんな学校にシロコを行かせようとは俺は思っていなかったのだが、何故かシロコはこの学校がいいと言って、頑なに他の学校に行こうとはしなかったので俺が折れて今の現状に至る。

 

「優しそうな先輩で良かったな」

 

「ん、本当に良かった」

 

シロコは嬉しそうな顔でニコリと笑い、俺を見る。最初はアビドス高校に行かせた事を失敗だと思っていたが、そんな事は全然なかったようだ。

 

「それで桐生からは何かないの?」

 

「何かって何だ?」

 

「プレゼント」

 

「なんで俺がお前にプレゼントをあげる必要がある」

 

「先輩はプレゼントをくれたよ?」

 

シロコは自分のマフラーを軽く手に取りながら、ドヤ顔をする。

一体何故それが、俺がプレゼントをあげる話に繋がるのかは全くの謎だ。

 

「…………それにしてもガキ、お前は本当に俺に対して図々しくなったな」

 

「ん、それが私」

 

学校に行く為の制服や教材、毎日の食事、その他の生活必需品諸々を買い与えてやったというのに、このクソガキは俺に更にプレゼントまで要求してきた。最早これまでに買い与えてきたやつがプレゼントで十分ではないのだろうか?

 

俺は横目で軽くシロコを見ると、何処か期待したような眼差しで俺の事をジッと見つめていた。よく見ると獣耳の方もピクピクと動いている。

 

「…………はぁ。それでガキ。お前は何のプレゼントが欲しいんだ?」

 

「え?」

 

まあコイツの図々しさは今更だし、偶にはこういった我儘を受け入れてやるのも良いかと俺は思い、シロコに何が欲しいのか尋ねると、シロコはえっ、と驚いた顔をする。

 

「何驚いた顔してんだ?」

 

「え、えっと、冗談のつもりで言ったから、本当にくれるとは思わなくて………」

 

自分で俺にプレゼントを要求しておいて、そんな事を言っているシロコに俺は軽く呆れる。

 

「じゃあプレゼントは要らないか?」

 

「要る!」

 

「じゃあ出掛ける準備をさっさとしろ」

 

「ん!」

 

シロコは獣耳をピンと立てて嬉しそうに声を上げる。もしシロコに尻尾が生えていたのなら、俺はきっと今のシロコは散歩前に楽しみで尻尾をブンブン振る犬にしか見えなかっただろう。本人謂く狼らしいが。

 

 

 

 

▼▼

 

 

 

「着いた」

 

キヴォトス内にある大型ショッピングモール。辺りには学校帰りの色々な学園の生徒たちがおり、それぞれがショッピングモール内にあるカフェで雑談したり、服を買ったり、文房具を買ったりと楽しそうにしている。

 

そんな中に俺とシロコは、シロコのプレゼントを買う為に来ていた。因みに俺はもちろんロボットスーツを着用している。

 

『それじゃあ、行くか』

 

「……その前にやっぱり桐生はそのスーツを着ないと駄目なの?」

 

シロコがその左右の色が違う瞳でロボットスーツを装着した俺の事をジッと見つめる。

 

『駄目だ。もし俺の正体がバレて、色々な奴等に俺が男でヘイローを持っているなんて知られたら、まず間違いなく面倒ごとになる』

 

もしそうなってしまった場合、俺はこのキヴォトスに存在するあらゆる学園や犯罪組織から目をつけられる事になるだろう。……まあそうならない為に俺の正体を隠すロボットスーツがあるんだけどな。

 

「私は桐生の正体を知ってるけど平気なの?」

 

『別にお前は俺の正体を言いふらしたりしないだろ?』

 

「ん、当たり前」

 

『なら安心だ』

 

シロコが口を滑らしたりしない限りは俺の正体がバレる事はないだろう。そもそもこのガキに俺の正体がバレたのは、コイツが俺のロボットスーツをぶっ壊したからだけどな。

 

「そういえば桐生のそのスーツって何処で売ってるの?私も欲しい」

 

『あー。……これは何処にも売ってないと思うぞ』

 

「なんで?」

 

『昔に裏で悪い事をやっている企業があってな。確か名前はカイザーなんちゃらって企業だった筈だ』

 

「それと桐生のスーツに何が繋がるの?」

 

『いやそれがこのスーツはその企業を俺が襲撃した時に奪い取った物なんだ』

 

「は?」

 

あの時の俺は、訳の分からない世界にいきなり放り出されて、生きて行くのに必死だった。その時の俺は所持金などは一切持っていなく、食べる事さえままならない程の状態だった。

 

そんなボロボロの状態だった俺はある時、こんな話を聞いた。

 

カイザーコーポレーションは銀行経営、リゾート開発、兵器の販売、など色々な事業に手を出している一方、違法兵器の密売だったり、借りたお金に対して膨大な額の利子を請求したり、武力による実力行使など、色々と裏でやっているという話だ。

 

──── 銀行を経営しているカイザーコーポレーションなら金も沢山あるだろうし、別に襲撃したって悪い企業だし大丈夫だろう。

 

簡単にまとめると即ち、強盗をしてやろうという事だ。

 

その話を聞いた時、俺はそんな馬鹿みたいな考えが頭に浮かんだ。今考えると本当に馬鹿みたいな考えだと思うが、あの時の俺は本当に生きるのに必死だった。

 

毎日ように銃撃戦に巻き込まれ、腹が減ったら公園の水で凌ぎ、寝る時は公園のベンチで震えながら寝る。前の世界で平和ボケして暮らしていた俺には酷すぎる生活だった。

 

しかもこの世界には俺のような男性は存在しておらず、前述*1のとおり俺は正体を隠さないといけなかった。

 

幸い、俺の身体はどれだけ銃弾を受けても傷一つ付かない程の強靭な身体に変化していたので、襲撃自体は簡単に出来た。俺の姿を見たロボットもスクラップにしてしまえば正体も簡単に隠す事が出来た。

 

そしてその時に盗んだ物が大量の金とロボットスーツだ。ロボットスーツは二個あったので、二個とも盗んだのだがもう一個は壊れて既に使い物にならなくなってしまった。*2

 

『………あの時は大変だったな』

 

「その話を詳しく聞きたい所だけど、また後にしておく」

 

『そうしてくれ』

 

「ん」

 

 

 

▼▼

 

 

 

『それでシロコ。お前が欲しい物ってなんだ?』

 

「えっと………」

 

『なんだ、何もないのか?』

 

「うん」

 

シロコは俺の問いかけにコクリと頷く。何とか欲しい物を思い浮かべているようとしているみたいだか、浮かんでこなかったのだろう。

 

『本当に何もないのか?』

 

「うん………なんかごめん」

 

このガキ、欲しい物がある訳でもないのに俺にプレゼントを要求してきたのかよ……

 

『はあ………。ガキちょっとそこで待ってろ』

 

「分かった」

 

 

 

▼▼

 

 

 

「ん……遅い」

 

桐生がシロコに待機するように言ってから数十分と経ったが、一向に桐生の戻って来る気配が感じられないシロコは暇な時間を持て余し、退屈を感じでいた。

 

このまま何処かに行って遊ぼうかなという考えが頭に過ぎるが、桐生から待っていろと言われているので、シロコはその考えを振り切る。

 

もしかして私を放っておいて他の女でもナンパしている?

 

だがそこからシロコの頭に新たな考えが頭に過ぎる。もし桐生がそのような事をしているのなら、今度からしっかりとマーキングをしておいて、他の女なんか見れないようにしなくては、という危ない考えだが。

 

桐生は私のお父さんの様な存在で、私の一番大好きな男の人であり、私だけの桐生。

 

シロコの脳内がだんだんと危ない方向に染まりかけていく。

 

『悪い遅くなった』

 

そんな時に丁度、シロコがいっその事このまま探しに行ってマーキングでも付けようかと考えていた時に桐生がシロコの元に戻って来る。

 

「遅い」

 

『悪かった。色々と見て回ってたら遅くなっちまってな。………それのお詫びと言ってはなんだが、これをお前にやるよ』

 

桐生が謝罪と共に後ろからある物を転がしてシロコの前に差し出す。

 

「これって………」

 

『お前のプレゼントだ』

 

シロコの目の前には、車体の色が美しく透き通るような水色のロードバイクがあった。

 

「なんで私にロードバイクを買ってくれたの?」

 

『俺の家からだとアビドス高校までまあまあ通学時間が掛かるだろ?大変そうだから少し手助けをしてやろうと思ってな』

 

確かにアビドス高校まで徒歩だと凄い時間が掛かるが、それで桐生がロードバイクを買ってくれるとは考えもしなかったので、シロコは嬉しさと驚きで、顔の口角が自然と上がる。

 

「桐生……」

 

『なんだ?』

 

「ありがとう」

 

そのシロコの笑顔は、今まで桐生が見てきたシロコの笑顔の中で一番の幸せそうで嬉しそうな笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

▼▼

 

 

 

 

 

〜〜シロコとのロードバイクに関する会話〜〜

 

 

 

「そういえば、あのロードバイクってどれくらいの値段がしたの?」

 

目的のシロコのプレゼントは買えた為、現在俺たちは家でダラダラしていた。そんな時にシロコがふと俺にそんな事を聞いてくる。

 

「あー、あれの値段ね。確か二十九万円ぐらいだった筈……」

 

「え」

 

「ぶっ壊したらマジで許さんからな」

 

「ん、分かった。善処する」

 

「飯も抜きにする」

 

「自分の命より大事にする」

 

「いやそこは自分の命を大事にしろ」

 

「ん、分かった」

 

 

 

 

*1
もしそうなってしまった場合、俺はこのキヴォトスに存在するあらゆる学園や犯罪組織から目をつけられる事になるだろう。

*2
シロコに壊された為




名前 桐生龍

年齢 二一歳(現時点での場合)

誕生日 4月25日

ここで軽くロボットスーツに関する話を紹介。

ロボットスーツはカイザーコンポレーションが多額の資金を注ぎ込んで開発した、対キヴォトス人戦闘スーツ。ある組織の技術によりヘイローを擬似的に隠す事が出来る。

ミニレアムで一度、桐生が二個持っていてもしょうがないという事で鑑定して売ろうかなと考えていた時に、最先端の技術で作られたとんでもない価値のあるスーツだと知る。

なのでシロコにスーツを壊された時は、実は軽く凹んでた。

因みに桐生はロボットスーツ装着する事が出来ても、戦闘システムへのアクセス権限がない為、対キヴォトス人戦闘スーツ(笑)になっている。




最後にどうでもいい事かもしれませんが、そのスーツの制作にゲマトリアが関わっているとかいないとか………
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