けど、それは悲痛を生み、俺は憎悪された。
死ななければいけないのは俺だ。やって初めて、事の大きさに気がつく大馬鹿者だ。
助かりたくば、大切な命を差し出せと言われた。それを、俺は、俺を救うためにノラは自ら進んで死地に赴いた。
俺は止めた。必死で止めた。行かないで、俺みたいなバカのためにお前が死ぬことはない。
それでも、彼女の決意は硬かった。
彼女はその小さい体を八つ裂きにされたらしい。
大切なものを2回も失った、一回目は一人暮らしになったときにノラは捨てられ、大泣きした。つらすぎる。探し回った。けど見つからなくて、明日も仕事だからと、諦めた。それもあって毎年、彼女の子ども達に顔見せに行った。謝るために。その子達を育ててやれなかった。家計のためとは言え、俺はとんでもないことをした。6匹もいた。
最近になって、守護霊としてやっと戻ってきてくれた。なのに目の前で殺された。ひどい男だ。
悲痛。
俺があやめた人を愛していた人たちもこうだったのだろう。
敵を取ってやりたいと思ったが、やめた。
憎しみの連鎖なんていらない。そんなことをしても、鎮魂にならない。
愛する人が殺されるさまを直視はできなかった。
黒犬「鎮魂には毎日生花を手向けろ。神棚でいい。月命日にはそいつが好きなものを手向けてやれ。」
「好きだったもの?」
黒犬「過去形にするな。好きなものだ。チュールだ。」
『みんな好きなんだなぁ。』
黒犬「生花とチュール代、計算してみろ。」
「算数は苦手なんだが……」
黒犬「やれ。いつも生活費の計算してるだろ。」
なんで知ってんだ?まぁ、限られた、カツカツの収入から毎日の食費代の計算はしてたが。
「一食1451円かぁ……」
黒犬「やれそうか?」
「俺が食わなきゃ良いだけだ。」鎮魂のためだ。俺の犯した過ちなのだ。そのくらいやらなければ……
生きる理由ができた。
けど、すぐに地獄で合わせてやる。
という思いが伝わってきた。それだけ俺は憎まれてる。当然だ。俺にはわかる。それだけのことをしたのだ。
「黒犬、俺を噛んでくれ。」
肩口に黒犬の牙がめり込む。
痛い。黒犬の俺に対する、怒りと憎悪、動物の命を犠牲に助かったものへの殺意を感じた。
俺はそれ以上に自分が愚か者だと言うことに、やったことに懺悔した。これがせめてもの償いになれば……
黒犬「ノラの味わった痛みはこんなものではない。生きたまま八つ裂きだ。」
そんな目に合わせたのか、俺は自分のやったことが、なんて愚かなことだったのかとものすごく後悔した。
殺されても仕方がない。
「もっと強く噛んでくれ。」
その度に魂に傷がつく。けど、それでいい。自分が許せない。
黒犬「これ以上、かみたくない。顎が疲れる。マズイ。」
俺ってマズイすじ肉なんだ……
「色々、教えてくれてありがとうな。」
攻撃。いろんなところが、チクッとする。
黒犬「おい、防御をしろ。お前が死んだら鎮魂にならん。」
別に殺されても仕方がない。そう思ってたし、すぐに会えるんだと思って防御態勢をとらなかった。けど、鎮魂はしたい。してやりたい。少しでも彼女の決意に報いる為に。
いつか、自分が殺めてしまった人たちも供養してやらないといけない。お互い、自分の信じる正義のために戦ったのだから。
俺の正義は誰かの悪。分かっていたことなのに。
じいさんやヒコマロ達が痛みだけで留めていたのは、ネガティブ野郎が止めてたから、なんだろうな。
今俺を止めてくれるやつがいない……
誰かに助けてもらわないと、何も出来ない自分が情けない。
もう、攻撃なんてしない。したくない。
けど、もらった禍津神達は俺への邪な心に反応してしまう。
どうやったら、このプログラミングを止められるのだろう。変えられるのだろう