〜天空に輝く"蛍"の光〜   作:やままん

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…これまでに無いパターンの敵。
戦いながら進化していくこの敵は時間を掛ければ掛けるほどこちらが不利になる。
俺達の初任務は……誰も経験したことのない"敵"との戦いだ…ーー。




13話 異星より来たりし"監査団"。

突如現れた謎の魔導兵器。

人型のそれは、前にもあった通り何処かの軍事企業が開発したものなのかそれとも、「極東の旅団」が送り込んだウイルスプログラムで暴走させた個体なのか…初めはそう思っていた。

 

しかし、得られたデータからそのウイルスプログラムは「プログラム」とは言い難いもの…つまり、"生物"に近いものだと考えるのが妥当だろう。

 

ナノマシンといえば良いだろう…それも、途轍もない処理速度で敵対者を分析し、相手を倒すための"最適"な判断を反映させる代物…複雑なプログラムさえも瞬時に書き換えて常に更新し続ける化け物じみた性能を持ったもの…魔法ですら解析し、それを躯体に顕現させて魔導士と同じ魔法戦ですら仕掛けることが出来る……そして何よりも、前述の通りこの兵器は常に"学習"していっている…だから、時間を掛ければ掛けるほどこちらの手が全て解析されて"対策"されてしまうのだ。

 

そんな化け物と対峙する俺達『ファイアフライ分隊』。

人間と機械では、状況処理に圧倒的な差が生まれる。つまり、こちらが立てた作戦なんてものの数秒で書き換えられるし、それに対する対応も瞬時に判断する強敵…こんなもの、どうやって勝てばいいのだ?。

そう思いながらも逃げるわけには行かない…そして何より、コイツは明確な意思を持った"何者"かに送られて来た"刺客"だ。

 

撤退の2文字なんてない…コイツは撃破しなければならない。更なる進化をする前に何としてもここで。

 

そう思いながら、俺達は攻撃を仕掛けていく。

 

「各位、最短で奴を撃破し任務を遂行する!。がむしゃらな攻撃は全て奴の成長糧となってしまう、コンビネーションで行くぞ!!。ティアナ、今だけは俺の指示に従ってくれ!。ソロプレイは全滅を招くッ!。」

 

「…わかりました。」

 

フェイズ、ティアナ、エリオは並び立つ。

 

(初手の波状攻撃はもう対策されているだろう…ならば、ここは当初のコンビネーションで行く…!。)

 

先行するフェイズ。魔導兵器はアイカメラでフェイズを追う。

セイバーモードへと切り替え、真っ直ぐに突進。すると、魔導兵器は左腕部を実体剣へと変化させ、足元にベルカ式の陣を張る。

 

(やはり、魔法を使ってくるか…!。)

 

カートリッジが消費される…それと同時に、刀身にエネルギーが籠った。

 

「rising slash。」

 

重々しい機械音声が響いたと同時に横薙ぎに振られたそれは三日月型の斬撃となって突き進んでくる。

 

(…攻撃を極限まで引き付けて……今…ッ!。)

 

その斬撃が眼前にまで迫り、ギリギリで回避。皮一枚を斬らせて反転したまま突撃する。

 

「なんて無茶な回避を…見てられないわね…!。」

 

すかさず、クロスミラージュを構えるティアナはフェイズの"合図"を待つ。そして、フェイズは空中で不規則な軌道を描きながら「マニューバー・CQC」で、敵の武装を中心に刃を入れていく。

 

…狙い通り、魔導兵器はフェイズに対応しようとする。そして、その処理速度の速さからフェイズの速度に順応し始めたその時……。

 

「クロスファイア…。」

 

ティアナが魔法を展開する。

 

「ーーシュートッッ!。」

 

十字砲火のごとく、無数の弾丸が突き進んでくる。

 

(…遠慮無く撃てとは言ったものの…本当に当たらないのかしら…!?。)

 

高機動近接攻撃によってフェイズは魔導兵器に攻撃を仕掛け続けている…その対応処理は、今は彼にしか向けられていない。その最中、ティアナが放った無数の弾丸がフェイズの傍をギリギリで通過。敵に着弾していく。

 

流石に、処理が追いつかなかったのかこれは効いた様子があるようだ。装甲が剥がれ落ち、黒い煙が噴き出る。

 

そして、真打…ーーー。

エリオが魔力を高めてストラーダを前面に突き出す。

 

「…よろめいたその隙を一瞬で貫く…!!。」

 

無数の斬撃と銃撃を浴びた魔導兵器が体勢を崩したーー。

その隙を逃さない、エリオは極限までチャージしたエネルギーを一気に放出。フェイズの速度に迫る勢いで直進する。

 

「スピーアシュナイデンッッ!!。」

 

爆発的なその加速による突きはどんな装甲であろうが簡単に貫く。速度は重さ…それを理解しているフェイズはそう確信した。

そして……見事に命中。槍先は完全に魔導兵器のボディを捉えた。

 

だが……爆発しない。それどころか、機器がショートする素振りも全く無い。

その状況を一番最初に理解したのは…エリオだった。

 

「そ…そんな……!!。」

 

なんと、魔導兵器は内部にある小さなアーム…"隠し腕"でストラーダの槍先を握り止めていたのだ。

…ーー攻撃は失敗。3人は状況が飲み込めない。

 

「なっ…まさかコイツ…!!。」

 

「どうしたの…何か分かったんですか!?。」

 

…まさか、ここまで"賢い"とは……コイツ…。

ーー"わざと"このフォーメーションの前座を受けていたなんて…。

 

…その瞬間、エリオが悲鳴をあげる。

 

「エリオッッ!!。」

 

「ぐぅ…ぁ……。」

 

掴んだそのアームから電撃を放ち、感電したエリオは意識が刈り取られた。

 

「まずい…エリオを回収して後退する!。ティアナ、援護を頼む!。」

 

「……っ…!!。」

 

倒れたエリオの救出に向かうフェイズ。魔導兵器は迫り来るフェイズに攻撃を仕掛けようとするがティアナの援護射撃に妨害される…そして、回収に成功。最速でその場を離脱した。

 

「しっかりしろエリオ!おいッ!。」

 

気を失ったエリオを呼びかけるフェイズ。しかし、返事は無い…完全に意識を失っていた。

そして、この状況からか…ティアナは攻撃に転ずる。

 

「待てティアナ!!。突っ込むなっ!!。」

 

「時間は掛けられないんでしょッ!!。なら、最速最短で撃破するしかないじゃないッッ!!。」

 

銃撃を浴びせながら突進。そして、「ダガーモード」に切り替えて近接戦闘に入ろうとする。

 

「下がれ!近接戦闘は"対策"されている!!。」

 

懐に入ったティアナがその切先を突き刺そうとしたその時、バインドが掛けられる。そして、右腕部の砲身が展開。ゼロ距離の砲撃が容赦無くティアナに直撃した。

 

「きゃあああああッッ!。」

 

「ティアナッ!クソ…ッッ!。」

 

吹き飛ばされたティアナを空中で抱えたフェイズはそのまま地面に落下する。

しかし、その落下した場所には魔導兵器がすでに次の行動に移ろうとしていた。

 

ー-落下のダメージはある…受け身は何とか取ったが、ティアナを庇った事で固い地面に叩きつけられたも同然だ。そしてコイツは……"搦め手"まで学習してしまった…ーー。

 

(バインドまで駆使している…"勝利"するための最適解を導き出す速度が速すぎる…このままじゃ、嬲り殺しだ…。)

 

今、自分に出来る行動は……戦闘続行が難しい2人をこれ以上傷つけない事。

救難信号は送っている…誰かがそれを探知すれば来てくれるはずだ。悔しいが、自分の力ではどうにもならない。なら、分隊長としての責務は……仲間の命を優先すること。

 

フェイズは2人の前に立つ、そして、ライフルモードに切り替えて迫りくる魔導兵器をしっかりと見据えた。

 

「…戦えるのは俺一人…逃げるにしても、ここが潰されてしまう……すまんな、初任務がこんなにも難易度の高いものとは……。」

 

勝てる確率は…まあ、片手の指の数ほどしかないに等しいだろう。しかし、退く選択肢は無い。

状況は最悪だ…コイツは今でも"成長"している…しかし、学習している対象が「自分」でまだ良かった。ここに六課の誰かが来てくれれば倒すことも造作もないだろう。それまで、なんとか粘ればいい……。

 

そう思っていた直後…ーーー。

 

「ーーーデッドリー・スラッシュ。」

 

ーー男の声が響く。

それと同時に、魔導兵器の右腕が斬り飛ばされた。

転がる腕…そこに、現れた赤髪の男…。

 

「よォ、やっぱ縁があるな?。」

 

出刃包丁のような形状の剣を担ぎ、顔を向けるその男……『ローレル・ランドルフ』、その本人。

 

「ローレル……なんでお前がここに……!?。」

 

「つっても、お前の方こそオレに"用"があるんじゃねェのか?。そんな顔してるぞ?。」

 

……あまり喜べないが、状況を好転させるには良い戦力だ…それに、向こうから"来てくれた"。

後は、応じてくれるか……俺は、この状況を"利用"させてもらう。

 

「…気を付けろ、コイツ…普通の魔導兵器じゃないぞ!。」

 

「知ってるよ。これはあんたらが血眼になって探している件の"戦艦"に関係しているものだからな。」

 

そう言って、ローレルはジリジリと魔導兵器に歩み寄る。

 

「お前は部下を守ってなよ、コイツは……!。」

 

ーオレが殺る。

 

フッと消えたローレル。

その一瞬で魔導兵器の背後を取っていた。

ローレルの戦闘データはまだアップロードされていない…だから、遅れを取った。

 

「お前らさ、コソコソしてねェで一気に仕掛けて来いよ。こちとら、いつでも歓迎なんだからさ…?。」

 

横薙ぎ一閃。背部のバックパックを切り裂いた。

だが、魔導兵器は瞬時にローレルを解析、反撃の一撃を放つ。

 

「チッ…相変わらず、気持ち悪ィほどの反応だな…でもな…!。」

 

グロリアスを分割。"ツインソードモード"に切り替える。

そして、走り出して一気に接近する。

 

「うっしゃあああ!!。」

 

魔導兵器の攻撃を皮一枚で避けていき、その眼光は鋭く輝く。

 

「一つッ!。」

 

左手の剣を逆手で持ち、足を切り裂く。体勢を崩した魔導兵器をバインドで固定。そして、右手の剣を投擲して頭部に突き刺した。

 

「二つッ!。」

 

ミッド式の魔法陣を展開。

紅く輝き、刺さった剣と共鳴するように光り輝く。

そして、ニッと笑みを浮かべると同時に刺さった剣からエネルギーが放出。親指を下に向けるとそのまま爆散した。

 

「…デストロイ・クラッシュ。」

 

爆炎の中から飛んできた剣を手に取って、フェイズに向かって歩いてくる。

 

「ッ……!!。」

 

「まぁ、そう警戒しなさんな。完全にはぶっ潰しちゃいねェよ。内部の記憶データくらいは無事だろ。持って帰って調べろよ。」

 

「……待て、お前は…あの魔導兵器について何か知ってるようだが…。」

 

ローレルはため息をつき、頬を掻きながら。

 

「…お前な、敵に教えを乞うなんて上手くいった試しなんてあるかぁ?。」

 

「お前達は情報を持ちすぎている…少しくらい分けてくれても罰は当たらんと思うが。」

 

「…へぇ、随分と生意気な事を言うようになったな?。まぁいい、オレ個人としてはお前はそこそこ見所のある奴だと思ってる。いいぜ、コイツらの"名前"くらいは教えてもいいだろ。コイツらは…いや、この「ウイルス」を仕掛けた奴らは……。」

 

"銀河監査団"…オレ達はコイツらの事を…「センチネル」と呼んでいる……ーーー。

 

その直後、ローレルは複数の魔力反応をキャッチした。

そして、スタスタと歩いていく。

 

「どうやらお仲間が来たようだ。続きが聞きてェなら明日の19時にここに来な。」

 

そう言って、紙に書かれたポイントを投げ渡す。それを受け取ったフェイズは中身を確認し、グッと握り締めた。

 

「一人で来い。他の誰かを連れてきたらこの話は無しだ。安心しろ、俺も一人だ。そんじゃあな?。」

 

飛び去っていくローレル。そしてやって来たのは、なのは率いる"スターズ分隊"。

フェイズは魔導兵器の残骸を見て。

 

(…"センチネル"…監視者…か……。)

 

静かに、ローレルから渡された紙をポケットに入れた。

 

…………………………end。

 




銀河監査団"センチネル"。
ローレルはそう語った。

約束の場所…そこにローレルは待っていた。
そして、彼の口から語られる……。

次回
14話 "蛍"と"遊撃隊長"。
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