〜天空に輝く"蛍"の光〜   作:やままん

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恩師の仇を討つため、世界の必要悪へとなる道を選んだ男。
そして、その男の真意を聞いて青年が思う事は……。




15話 信念と正義。

PM19:43……。

ローレルは1人、埠頭を歩きながらキャンディを舐めていた。そして、端末から通信が鳴る。

 

『…例の"候補"は引き抜けた?。』

 

端末から聞こえる少女の声。それを聞いたローレルは、吹き出すように大声で笑い始めた。

 

「なっはははは!。ダメだこりゃ、一方的フラれちまったよ。やっぱ面白ェわアイツ!。」

 

『…その割には随分と嬉しそうだけど?。』

 

「そっかァ?。ま……嬉しいというより、変わった野郎だなって改めて思っただけだよ。」

 

 

ーーーーーーーーーーーー。

 

「…今、何を…?。」

 

「もう一度言う、フェイズ・アイオン…「極東の旅団」に来い。管理局にいさせるには勿体無ェ。」

 

…まさかの、勧誘とはな……コイツは……。

そう思ったフェイズはローレルからもらったキャンディを咥えて廃倉庫の出口に向かって歩き出していく。

だがその時、ローレルは銃を突き付けた。

 

「…何も言わずに去るって事は…「ノー」って意味だな?。ま…ベラベラと話されても困るし、ここで死んでくれよ。」

 

引き金を引こうとするローレル。しかし、フェイズはお構いなしに歩く。

 

「…実力はあっても脅しは下手だな。それ、モデルガンだろう?。答えは「ノー」。お前達と共に行くつもりなんてない。俺は"空"を飛ぶために管理局員になったんだ、顔も知らん奴の仇討ちに巻き込まないでもらおう。」

 

そう言って、フェイズは"何か"をローレルに投げ渡す。

 

「なんだこれ……?。」

 

「俺がよく食うチョコレートだ。思考を研ぎ澄ますのに糖分は持ってこいだからな。お返しだ、受け取っておけ。安物だが味は悪くない。」

 

去り際に、フェイズは顔を向ける。

 

「その話を聞いて確信した。お前達は"敵"じゃない。」

 

「はぁ?。何言ってんだお前…テロ事件を起こす奴らが……。」

 

「"道"は同じだ。きっと、どこかで交わる。次に会う時は"センチネル"の奴らをミッドから叩き出す時だ。情報提供感謝する、ローレル・ランドルフ。」

 

ーーーーーーーーーーーー。

 

(このオレが一本取られるとはなァ……随分と"先"を見てやがる。無謀…奴にピッタリの言葉だ。)

 

………………………。

一方、フェイズはローレルの話を聞いた後、自宅に向けて歩を進めていた。

 

(……仇討ちか……やはり、奴らにも"理由"はあった。)

 

舐め終えたキャンディの棒を手に取り、近くのゴミ箱へと向かったその矢先、自分を呼ぶ声が聞こえてくる。

 

「あれ、フェイズ君やんか!。何しとん、こんなとこで?。」

 

「緊急会議」を終えて帰宅途中のはやてに出会す。

気付いたフェイズは小さく会釈して。

 

「お疲れ様です、八神二等陸佐。会議、結構長引いたんですね?。」

 

「ほんまそれや…評議会の人らは異星人の脅威を目の当たりにしてやっと重い腰をあげるつもりなんやけど…それと同時に「極東の旅団」の壊滅も掲げてな…なんかえらい、やる気になってるけどおかしな方向に行ってしもうとる…話は平行線や、途中で帰ったろうかなって思ったんよ?。」

 

ニハハっと、無邪気な笑みを浮かべるはやて。

フェイズには分かった、「相当、疲れたんだろうな」と。

 

「それで…君は一体何してるん?。」

 

「あ…それは…。」

 

…ローレルに呼ばれて"密会"していたなんて言えない…やってることは、指名手配犯を前に見逃したことと同義だ。

どう言い訳をしようか悩んでいた矢先、彼女は続けるように。

 

「暇してるなら、ご飯行こや?。あ……お財布の中にお金入れとくん忘れてた…。」

 

「いいですよ、俺が奢ります。」

 

「え…でも、君と私じゃ立場が…。」

 

「これでも"同い年"でしょう?。遠慮なんていりませんよ。」

 

「あ、ほなタメ口で喋ってぇな!?。」

 

目を輝かして言うはやて。

フェイズは一瞬、笑みを浮かべると。

 

「それはお断りします。ほら、早く行きましょう。店が閉まってしまう。」

 

「もうっ!。」

 

それから2人は近くのファミレスに入る。

フェイズの稼ぎではこれが限界…しかし、こういった庶民的なもののほうが好みだった。

引き取られた「アイオン家」は有名な資産家ではあったが、食事に関しては一般家庭と遜色ないものばかり。苦労を重ねて事業に成功した叔父さんが、その苦労を忘れないために高級なものは好まない性格だったからだ。

自分も、孤児院出身だ。変に気を使わなくて済むし、何ならインスタントでも全然構わない。だから、ファミレスは自分にとって贅沢なものでもある。

はやてもまた、家庭的な性格もあってこっちの方が好みだった。その方が、話も弾むだろう…そう思って。

しばらく食事を楽しみ、一息ついた時に現状はどうかと、彼に聞くことにした。

当然、ティアナとの関係性である。

 

「…苦労してるやろ?。部隊長ってのも。」

 

「ええ…俺は使うより使われるほうが楽だと改めて思いましたよ。」

 

「そっか。でもな、あの子(ティアナ)は悪い子やないんよ?ちょっとプライドが高いだけで根はすごい努力家や。口が達者な部分もあるけど、悪く思わんといてほしいな…?。」

 

「大丈夫です、俺がもう少し歩み寄る必要があるだけで彼女に落ち度はありません。」

 

フェイズはその後に、深刻そうな顔をする。

はやてはそれを覗き込むようにーーー。

 

「ただ…彼女には焦りが見えます。あの状態は…危険だ。」

 

「…やっぱ、君にもそう見えるか…。」

 

クリームソーダに刺したストローをクルクルと回しながら、液面に映る自分の顔を見る。

 

「……あの子が努力する理由は知ってるやろ?。部隊長になる時に見せたあの子の経歴…目を通してるはずやから。」

 

「はい。任務中に殉職した兄……の事ですよね…?。」

 

「そ…ティアナのお兄さんは「執務官」を目指してはった。それに見合うぐらい、優秀な人やったんよ?。」

 

「俺も当時の資料に目を通しています。『ティーダ・ランスター』…高町一等空尉と同じ階級で、執務官志望の空戦魔導士…。」

 

「せや。当時は有能な魔導士として一目置かれてたんやけど…知っての通り、任務中に殉職しはってな…お兄さんの夢を追うように、あの子も執務官を目指すためにずっと頑張ってきた。でも、現実は残酷やった。空戦適性は無く、士官学校も落第…そして、今に至る…ってわけや。」

 

フェイズはその気持ちが痛いほど分かる。

小学生の頃、魔法学の授業で発覚した自分の魔力適性。

通常の小学生の半分以下…つまり、"落ちこぼれ"といわれても可笑しくないほどの保有魔力量。

当然、物事の善悪を自覚しにくい年頃の子たちは"普通"じゃない子が不思議でたまらない。

そしてそれは、年齢を重ねる毎に"劣る者"として、いじめの対象にもなりやすい。

 

だから、フェイズは腕っぷしだけは負けないように喧嘩の術を覚えた。

これが、ユナの言う「喧嘩が強い」という由来だ。いじめに遭い、自分を拾ってくれた「アイオン家」に心配を掛けないようにするために。

 

人の数倍、努力しなければいけない辛さは誰よりも理解しているつもりだ。しかし、彼女の進むその道は兄の夢を叶えるため…人の為に努力するということは、使命感に近いものもある。

そしてそれは、実感が得られなければ自ずと焦りに繋がる。それが示す先は暴走に近いもの…つまり、危険だということだ。

"信念と正義"…彼女を突き動かしているのはまさに、そうだ。

 

(…ティアナ…焦りは自分の本当の"長所"を潰すことになる…それに気付けばお前はきっと…。)

 

 

 

………翌日。

 

「さて…『ファイアフライ分隊』が持ち帰った情報と先日の魔導兵器の残骸の調査から分かったことは、例の"戦艦"が"異星文明・センチネル"のものということが確定したわけで…。」

 

緊急招集…はやては昨日の緊急会議の内容を各分隊に発表する。

フェイズは昨日のローレルとの"密会"の事は伏せることにした…言えば混乱を招くし、それに彼女が発表している事の大半は同じ内容だったからだ。

 

奴らが恩師の仇討ちの為に異星文明という途方もない相手に戦いを挑んでいる…。

この意味を知ったフェイズは彼らが敵には思えない。ただ、やり方が過激過ぎる…到底、許されることではない。罰は当然、受けてもらわねばならない。

 

フェイズは、そう考えていた。

 

「そこで、上層の人たちは"対センチネル対策本部"を立ち上げた。彼ら能力は知っての通り、私らの魔法を簡単に解析できる力を持っとる…つまり、一度見せた魔法は"対策"されるっちゅうことやな。長引けば長引くほど不利になる…相手に学習される前に倒さなあかん。」

 

「だったら……勝負は一瞬で決めるしかないということだね?。」

 

「せやね…フェイトちゃんの言う通り、『速戦即決』。これに限る。」

 

それを聞いたティアナは、何かを決心したような瞳で真っすぐ見つめては。

 

(…奴らを倒せるくらい、強くなれればきっと…!。)

 

「……………。」

 

フェイズはティアナを見る。

 

「…でも、相手はまだ"先兵"や。"本隊"が様子見しとることも視野に入れなあかん。何も、"センチネル"と全面戦争を望んどる訳やない……その先兵を追い払って侵攻を諦めさせるのが第一目標…これは星と星の問題……下手したら"星間戦争"のも発展するくらい、重要な事や。そこで、私らの任務は以下の通りで進めたいと思う。」

 

はやては、モニターに映し出されたミッド全域の地図を見せる。

そして、各ポイントに自分の分隊を示すシンボルが浮かび上がった。

 

「ミッド北部はなのはちゃん率いる『スターズ分隊』。南部はフェイトちゃんの『ライトニング分隊』…そんで、東部は『ファイアフライ分隊』の3つに分かれて、"先兵"達を撃破する。」

 

「…この3つのポイントで奴らの"先兵"が目撃されたんですか?。」

 

「奴らというより、不可解な魔導兵器やな。先日の事もあるし、これはビンゴやろ。それで、残る西部やけど……これは私の『ロングアーチ』…そんで、ヴィータ達を連れて行く。」

 

「…流石に、今回ははやてちゃんも出るんだね…?。」

 

「まあね…直接対決やと被害もえらいことになるやろうし……撒かれた種を駆除していくのが今のところってことやな。相手さんの情報も少ないし、何よりこの強すぎる"先兵"に打ち勝てることを見せつけんと相手さんも姿を現さへん…話し合いの為にも、ここは「雑草狩り」に徹しようってわけや。」

 

モニターを閉じ、ブリーフィングの終わりを告げる。

 

 

 

「よし、そんじゃ『機動六課』…出撃や!!。」

 

 

……………………end。




"センチネル"との対話を図るため、各地にバラまかれた種…"先兵"狩りに繰り出した『機動六課』。

北部…『スターズ分隊』は3体の魔導兵器と出くわす。
フェイズからの情報通り、戦闘の中でどんどん進化していくその様子に実戦慣れしていないユナとスバルは追い込まれていく。

しかし、彼女達には心強い者が付いている。

『エースオブエース』。

『最強』ともいえる、白き空戦魔導士が…ーーー。

次回
16話 白き星、高町なのは。
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