〜天空に輝く"蛍"の光〜   作:やままん

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1章 "空“の異変
1話 ーファイアフライー


「いつか、あの空を自由に飛んで自分の力で生きていくんだ。」

 

=================

 

…俺の名前は「フェイズ・アイオン」。高等学校を卒業したての18歳の男だ。

俺は今、時空管理局員となり定職に就いている。本当の名前は「フェイズ・スフィア」。「アイオン」という姓は、俺が幼少期の頃に引き取られた資産家の姓となり、いわば俺の第二の「親」だ。

 

そう…俺は俗に言う「捨て子」と言うやつだ。ここ、"ミッドチルダ"は大都市でありながらも、その華やかしい風情とは裏腹に、闇も多く存在している。

 

違法魔道具の取引、希少技能(レアスキル)を持つ子供の人身売買…大都市の裏に隠れた闇社会も少なくはない…俺はその闇の中で困窮した最初の「親」によって、児童施設の前に置いて行かれた。

 

…別に、その「親」を恨んじゃいない。人は生きていくために何かを間引いていく必要がある…俺はただ、その間引きによって"切り捨てられる側"に選ばれただけの話…児童施設の前に置いていったのはせめてもの贖罪だったのだろう、俺が食い扶持に困って餓死しないようにちゃんと人として育ててくれるところに置いて行ったのだ。きっと、苦渋の決断だったと思う。願わくば、その後の生活が安定しているといいんだが…ただ、今更会うつもりもないし探すつもりもない。そう、そこから"道"は分かれてしまっているのだ。だったら、互いの道を進んで生きていけばいい。

 

俺は、他人に対してそう思っていた。友人と呼べるものもいずれは道を違える…それまで、共に楽しんでいけばいい。

 

…俺は、これまでの人生でいつも誰かに手を差し伸べてもらっていた。施設に引き取られたのもそう、「アイオン家」に拾ってもらったのもそう、そして高校を卒業するまでに何不自由もない暮らしをしてきたのもそう……俺はずっと、誰かの手で生きてきたとも言える…自分の力でまだ羽ばたいてすらいない。

 

だから、卒業と共に「アイオン家」を出ることにした。自分の力で生きていくために…そして、空を自由に飛び回る鳥のように、俺は自分の色の世界で羽ばたきたい…そう思って。

 

………だが、現実はそう上手くはいかない。

 

「……魔導士ランク……空戦「B」…か……。」

 

入局時に手渡された自身の成績表を見る。

魔導士ランク空戦「B」…それは、可もなく不可もなく……「空戦魔導士」というとエリートばかりが結集しており、それに伴って割と競争率の高い魔導士となる。

幼少期から分かっていたことだが、自身の保有魔力量は低いほうにある。いえば、「DSAA」という、格闘競技で名を馳せている子供よりも低い数値にある。

 

今回、このランクを言い渡されたのは正直言うと、身体能力でカバーしたようなもの……本来なら、「空戦魔導士」という位置付けは協議ものだ。魔力を「飛ぶ」ことに集中させたおかげで、何とかもぎ取った席……だが、当然のように他の同僚たちはちゃんとした魔法を使えるまでもある。それに比べ、自分は犯罪者を相手取るために必要不可欠な「バインド」すら、まともに機能しないほど…採用に至ったのは、他の魔導士よりも「速く」跳べるということ……人員不足も合い間って、俺はお情けで入れられたようなものだ。

 

それでも、第一候補であった「空戦魔導士」の肩書は手に入れられた。あとは、結果を示すだけ…とにかく、食っていく分には問題ない職業に就けたのは大きい。寮もあるし、ここから頑張っていけばいい…その時は、そう"思っていた"。

 

……………………………。

 

「おい、今日の成績もなかなかの悪さだったみたいだな?ーファイアフライー?。」

 

ーファイアフライー

それは、虫の「蛍」を英語読みし、「一瞬の為に輝いて消える」という、"落ちこぼれ"を指す言葉だ。

故に、俺のような自分の身の丈に合わない戦い方をするような人間に向けられる言葉で、結果を残すために必死に足掻く様が滑稽だという意味もある。しかし、俺はそのあだ名を嫌いにはなれない。

 

その一瞬の輝きのために全力を尽くせる…そう、やる事全てに意味があると俺はそう思っている。だから、この煽りを気にする必要もない。何せ俺は…人に興味が無い。

 

「そうだな。次はもっと精度をあげなければならない。」

 

目を向ける事なく、タオルで汗を拭う。その態度に苛ついたのか、絡んできた男は食ってかかってくる。

 

「……何をする、その手を離せ。」

 

「気に入らないんだよお前、落ちこぼれの癖に!!お前のような落ちこぼれが空戦魔導士の一員だなんて認めないぞ!。」

 

「…お前に認めてもらう必要があるのか?。」

 

「この……ッッ!!。」

 

振り翳された拳。それは振るわれる事は無かった、そこへ所属長…いわば、この部隊の隊長がやって来たからだ。

 

「何をしている?喧嘩は懲罰ものだぞ?。」

 

「チッ……!。」

 

気に入らないのか、掴み掛かったその手を離す。フェイズは溜め息を付き、乱れた制服を正す。すると、隊長はフェイズの顔を見て。

 

「フェイズ・アイオン。この後、私の部屋に来い。話がある。」

 

「………わかりました。」

 

そして、隊長室へとやってくる。この雰囲気からして…あまり良くない話だろう。

 

「アイオン、君が局員になってから何ヶ月が立つか…分かるか?。」

 

「はっ…2ヶ月と15日です。」

 

そう言うと、隊長はタブレットを見て小さな溜息をついた。

 

「…そうだな、だがその日数のうちに積んできた訓練での成績はそこまで良くない。この事実が分かるか?。」

 

「…私に力が足りない…という事でしょうか。」

 

「違う、私が言いたいのはな?この期間でお前の同僚達は徐々に成績を伸ばしてきている。中には、任務に赴くものも居るほどだ。「空戦魔導士」の意味を理解しているだろうが…その人材は即戦力とも言えるほどだ。なのに、この成績ではお前を任務に斡旋することも出来やしない。本局の者にどう示しを受ければ良い?。」

 

フェイズはその言葉を冷静に聞く。

…どうやら、この隊長は本局への異動意欲が凄まじいらしい。俺のような足枷がいれば、評価に響くと言いたいのだろう…なら、直接そう言えばいいじゃないかと思う。

だが…これも仕事だ。理不尽だと思っても聞き入れるしかない…事実、結果を出せてない俺が悪いのは紛れもない事だ。隊長の指摘は的を射っている。

 

「…わかりました。なら、結果で示します。訓練場を開けて頂けますか?。残業代は要りませんので。」

 

「それに割く経費と時間が勿体無い。自主練は自分でやるんだな。時間通りに退勤して他の場所でやるといい。以上だ、次の訓練でノルマ以下の成績を収めれば「空戦魔導士」としての肩書きを検討せねばなるまい。頼んだぞ?。」

 

……崖っぷちとはこの事だろうな。俺は今、窮地に立たされていると言える。だが、不思議と焦りは無い…俺はただ…「飛ぶ」事に執着していると言えるから。

 

帰り道…辺りは街の綺麗なライトで煌びやかに照らされている。その中で俺は徒歩で帰る事にした。先ほど、隊長に言われたように訓練所すらも貸してもらえない。他の同僚達はこの後どうするか話していたな…それもそうだろう、仕事終わりはプライベートな時間だ。崖っぷちに立たされていない者はそう思うのが当然…俺は他人より劣る。だからこそ、人の数倍も努力をしなければいけない。

 

手にしたデバイスを握り締める…それは、部隊で支給された一般的な「ストレージデバイス」。

俺はそれに独自の改良を加えている。昔から、機械弄りは得意だった。デバイスを組んだ事だってある、しかし武器の製造は違反ものだ。競技用のデバイス止まりにはなるが、その知識を応用して俺の戦い方にあったものを自分で構築した。

 

「…ードラグーンー。今日も、俺の訓練に付き合わせる事になるが…頼んだぞ。」

 

…そう言うも、何も答えない。それもそのはずだ、これは高性能AI搭載型の「インテリジェント」ではなく、扱いやすいように製造されたデバイス「ストレージ」であり、支給型の量産仕様のものだ。だが、俺はコイツ出なければ真価を発揮出来ない。自らが構築した自分専用のデバイスなのだから。

 

そして人目のつかない場所についた途端、デバイスを機動させようと集中力を高める。

 

だが、その時……周囲で「機械音」が鳴り響く。

もしかして、誰かがここにいたか?しかし…この機械音は車でも何でもない…何というか…"ロボット"のような。

 

この場に似つかわしくないその音に警戒を示したその時、瓦礫が崩れる巨大な音と共に、一つ目の人型ロボットが姿を現す。

 

「な……コイツは……!!?。」

 

フェイズは、自分の頭に入れ込んだ情報を読み漁るようにそのロボットを見る。

 

…確か……新人魔導士達の任務の中にコイツの撃破任務が入っていた気がする…そうだ、コイツは……。

 

そう思ったその時、ロボットはフェイズを敵と認識したのかその巨腕を振り翳す。

 

間一髪で横に飛んでかわしたフェイズ。地面を転がり、手にデバイスを握り締める。

 

(……許可が出ていない状態での戦闘は違反行為……普通ならば、所属部隊に一報を入れなければいけないが……!。)

 

自分の背後には、居住区が見える。ここで動きを止めればきっとそこに向かうだろう。そして、コイツはロボットメーカーが作り出した兵器…プログラムが暴走し、工場から逃げ出した個体だ。故に、討伐対象でもある。

 

「……局員として、四の五の言ってはいられないな……ドラグーン!セットアップッッ!!。」

 

起動。その身にバリアジャケットを纏う。ライダースーツのような空気抵抗を減らしたものに、二又に伸びるマフラー。手には、蒼いライフル…そして、その上から防御機構のある蒼いジャケットを羽織ってその場に降り立つ。足元に広がるのは「近代ベルカ式」の魔法陣が。

 

フェイズは深呼吸をする。そして、ロボットは魔力を探知してフェイズを完全に殲滅対象として自動プログラムにより臨戦モードへと切り替わった。

 

(………集中しろ、これは訓練じゃない……やれる…ここでやらなければ、俺は……「空」を飛べない……!。)

 

魔力探知用のバイザーが目を覆う。そして、ドラグーン01・ライフルモードを静かに構えては、その銃口を向けて。

 

「フェイズ・アイオン!!。これより、敵性ロボットの撃破任務に移る!テイク・オフッッ!!。」

 

………………………end。




落ちこぼれ…ファイアフライ……そう呼ばれた、自分。

だが、決してその"光"は一瞬の為なんかじゃない。

戦う、1人の人間として。

次回
2話 テイク・オフ。
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