〜天空に輝く"蛍"の光〜   作:やままん

3 / 18
どこまでやれるか分からない。

だが、俺は諦めたりはしない……。

落ちこぼれでもなんでもいい、やることをやる。

ただ、それだけだ……ーーー。


2話 テイク・オフ。

「フェイズ・アイオン、これより、敵性ロボットの撃破任務に移る!。テイク・オフ!。」

 

そう啖呵を切った途端、急加速による接近を試みる。その速さ故にロボットは処理が遅れる。

そして、フェイズは接近しながら、ライフルモードのトリガーを引く。そこから魔力弾が5発発射し、その全弾が命中。黒煙が立ち込める。

 

着弾を確認したフェイズはすぐさまにバイザーに映る魔力反応を確認、その反応に変化がないことから「息はある」…そう思って、再度銃口を向ける。

まあ、これで撃破できるとは思ってはいない。この程度で撃破できるなら、とっくに撃破されているはずだ。

 

思っていた通り、ロボットは黒煙を振り切って現れる。その周りには、薄い膜のような"バリア"が張られていた。ダメージはほぼ通っていない……。

 

「…このモデルは試作型と聞いたが……なるほどな、魔法に対してある程度の防御機構を搭載しているということか……管理局はこんなものを導入しようと考えているのか…?。」

 

冷静に分析しながら魔力弾を次々と放つが、その全てが無効化されていく。

やはりか…と思いながら、「ライフルモード」から「セイバーモード」へと切り替える。

 

(俺の魔力量ではこの防御機構の突破は難しいかもしれんが……エネルギーは無限ではないはずだ…。)

 

足元に魔法陣が浮かび上がり、蒼く輝くその魔力光は全身に行き渡る。

そして……加速。それは規格外の速度を叩き出し、ロボットはまたしても反応速度に後れを取った。

 

「……マニューバー・CQC…アクティブっ!!。」

 

自らが編み出した高機動戦術パターン。その接近戦仕様である。

魔力量が低い自分では、他の魔導士のように魔力に依存した魔法攻撃を行うことが出来ない。それ故に"手数"による方法でなければ対象に大きなダメージは与えられない。

特に、時空犯罪者級であれば無効化するために戦闘は必須となる。そこで、制圧力が無ければ対象を取り逃がしてしまうリスクは格段に上がってしまうのだ。

当然、その加速力に魔力を全振りしている状態は普通ではない…ある程度の防御魔法を展開してはいるが、それは身体にかかる"G"をごく僅かにしか軽減しない。人智を逸したその加速力はまさに人体を"壊す"もの。だが、彼はその加速にある程度の耐性を得ている。

 

自身の力量を理解しているからこそ、並みならぬ努力の末に得た代物……そう、彼は自らの身体能力のみでその負荷に耐えているのだ。

 

だからといって、身体に何の影響がないわけではない。そのスピードの中で内臓が押しつぶされそうな感覚はもちろん感じるし、かかる"G"の影響で一瞬だけ意識が飛びそうになることもある。しかし、「空」を駆けることを諦めない彼はその全てを受けきって見せる覚悟でこんな無謀な戦術パターンを編み出したのだ。

 

速度故に視野が限定される中、バイザーに映る反応を視界として距離の感覚を掴む。

そして…切り裂く。

 

ロボットの巨腕が吹き飛んだ。防御機構を展開する前に切り裂かれたのだ。防御機構展開のプログラムに不備はない…ただ単純に、"遅れた"のだ。フェイズが叩き出すその"異常"な速度のせいで。

 

切り抜いた後に地面に着地したフェイズは、身体の中から強烈な痛みが走り抜ける。

 

(ぐっ……急制動は負荷が強すぎる…か…だが、奴の特性を理解したぞ…攻撃を検知するセンサーが反応した後、即座に防御機構が作動するプログラムが組んである…なら、そのセンサーの検知よりも早くに仕掛ければ防御機構が発動する前に決定打を与えることが出来る…。)

 

後ろに下がりながら、攻略法を見出したが残った巨腕が伸びてくる。

フェイズは避けようと何とか身体を捻るが急制動の代償が祟ったのか、反応が僅かに遅れる。そして、その襲撃が直に身体全体に叩きつけられた。

 

「ぐふっ……!!。」

 

ロボットが現れた瓦礫の中に突っ込んでいくフェイズ。

思わず吐血し、意識が飛びそうになるも何とか瓦礫の中から這い出てはその戦意を失わない。

 

(…攻撃を喰らったせいか、少しばかり頭が冴えてきた……不思議と恐怖はしないな……。)

 

ライフルモードへと再度切り替えて集中。魔法陣が再掲載される。

 

(…普通なら、火力を叩き込めばこの程度の防御機構なんて突破は可能だが…あいにく、俺にはそんな大火力魔法は撃てない。だが……射撃戦が出来ないわけでもない…!。)

 

突撃。またしてもその速度で接近しながら、バイザーに捉えたロボットのマーカーを確認。そして、ロボットは防御機構を発動させようと、指令を出す各種のセンサーが光出す。

 

「…この速さで撃ち込めばそんなものは何の意味もないぞ…!。」

 

急旋回し、ロボットは頭部カメラでフェイズを追う。その瞬間、細長いビームがロボットの右肩に直撃。処理が間に合ったのか、防御機構が発動する。

 

「…おとりに掛かったな…そのタイムラグを利用させてもらう…!。」

 

頭上に現れたフェイズは連続作動に発生するラグを利用し、トリガーを引く。それは、ロボットの頭部を脳天から見事に捉えて貫通。駆動部ごと撃ち抜いてみせた。

 

「…終わりだ。」

 

地面に着地したと同時に、電装系統がショートして大爆発を起こす。周囲にその残骸が飛び散ると共に、炎が舞い上がる。

 

「ぐっ……もう少し、鍛えないといけないな……!。」

 

急制動の負荷と貰った一撃により、片膝を着くフェイズ。戦闘音を聞きつけたのか、一筋の光がこちらにやってくるのを確認する。

 

(…派手にやりすぎた…恐らく、管理局員だろう……市街地での無許可戦闘…やってしまったな…謹慎で済めばいいが…。)

 

そして、その光は自分の目の前にやってくる。視界に入ったのは栗色の髪の女性。その人物をフェイズは……知っている。

 

「そこの人、私は時空管理局本局所属の「八神はやて」と申します。この付近で戦闘が………。」

 

バリアジャケットを解いた制服姿のフェイズを見て、同じ職場の人間と認知した彼女…八神はやて。

 

最早、知らないものはいないとされる超有名人だ。数年前の"闇の書事件"の中心人物で、魔導士ランクも総合「SS」といった、自分とは天と地の差があると言っても過言ではない人物。年齢はほぼ同じにせよ、その才能の差からフェイズにとっては雲の上の人とも言える者だった。

 

「…すいません、貴方の所属と階級を聞いてもよろしいでしょうか?。市街地での戦闘です、許可が出てるか確かめなあかんので…。」

 

「…名はフェイズ・アイオン…時空管理局の「空戦魔導部隊」の新人局員です…階級は「二等空士」…許可は出ていません…俺の…独断です。」

 

その報告に、はやては真偽を確かめるために検索を掛ける。

 

「フェイズ・アイオン……うん、確かに。最近、入って来た人やね?。ごめんやけど、その階級での市街地無許可戦闘は流石に懲罰ものや。でもこれ…貴方が1人でやったん?。」

 

「…まぁ……そうですね…。」

 

(……これは、報告のあった暴走ロボットや…試作品や言うても、戦闘経験が殆ど無い新人局員が撃破出来るもんでもない……それに…失礼やけど、彼の魔導士ランクじゃ到底敵わへん相手や…保有魔力量も人並み以下…どうやって、これを撃破したんやろうか……。)

 

フェイズは立ち上がり、口の端から流れる血を拭って訪ねる。

 

「罰は受けます。降格でも何でも引き受けましょう。」

 

「ちょい待って?そんなヤケクソにならんでもええよ。無許可とはいえ、貴方の活躍があって人的被害が出てないのも事実…私が直接聴取します。所属部隊には私が報告しときましょ。」

 

「気を使わなくて結構です。俺のような"落ちこぼれ"に貴女の時間を使わせるのは…大丈夫です、失態は自分で拭いますので。」

 

「せやったら、"局員"としてではなくて"個人"として貴方に聴取を行います。それやったらかまへん?。」

 

その場から去ろうとするフェイズを、はやてが引き止める。

…何故、俺に構うのか?。理解が追いつかない…それに、この騒ぎだとじきに他の局員達もやってくるはずだ。彼女が先に来たと言う事は、報告はすでに行っているはず…俺に何を聞こうと言うのか?。

 

そんなことを思いながらも、フェイズはとりあえず彼女の言う通りにした。

 

…そして、近くのレストランへと入る。かろうじて、戦闘の傷はそこまで負ってはいない。急制動の負荷もマシにはなってきた。軽い食事くらいなら出来るだろうと、フェイズは軽食ものを頼んだ。

 

「なんや、ほんまにそんなんでええの?。」

 

「構いませんよ、そこまで腹も減ってはいないので…それより、後処理を任せてもよかったんですか?。俺がやった事だ、俺が処理をすべきで…。」

 

「言うたやろ?"個人"的に貴方を聴取したいって。現場の事は後回しや、事件の目撃者として当事者に話を聞く必要はある。せやろ?。」

 

「まぁ…確かにそうですが…でも、俺から何を聞こうと言うのです?。」

 

「…あのロボットは、管理局で掲示されている貴方の実力では倒しきれへんような相手や。それこそ、"違反"ものの魔導具とか使ってたら話は変わってくるけど…。」

 

…聴取…か。まさにそうだ、今の彼女の目は俺に少しばかりの"疑い"を持っている。そうだろうな、入局2ヶ月そこらでまだ訓練の最中である「空戦魔導士」が手配級の暴走ロボットを鎮圧したなんて話は、"天才"でもない限り、聞く事は無い。だが、彼女は俺の情報を調べきっているだろう…そう、訓練成績も良くなく、まして基礎魔法ですらまともに扱えない"凡人"が、あのレベルの敵を制圧出来るだなんて、"違反"ものを使用している他は考えにくい。

 

個人的に気になったのだろう、そこから俺の"処遇"を考えるのかもしれない…だが、流石に彼女に嘘は通じないだろう。

 

「…俺の情報を見たのなら、そう疑われても仕方ありません。しかし、"違反魔道具"の所持は決してありません。あれを倒せたのはたまたま……人より劣る俺が自分で編み出した戦術パターンを駆使しただけです。」

 

「…戦術パターン…?。」

 

「情報を送ります。まぁ…他の人間からは"バカのやる事"だと言われてますが……。」

 

フェイズから送られてきた彼の戦術パターンを確認するはやて。

そして、言葉を失う……そう、こんな馬鹿げたパターンは身を滅ぼすようなもの…自分の部隊なら確実に禁じ手とするものだ。でも、それよりも気になったのが…こんな"殺人的な速度を用いた戦術"を使っても、身体へのダメージが少ない彼自身の"身体能力"だった。

 

「…貴方、まさか……たったそれだけでこのえげつない戦術パターンをこなせるって言うんか?。」

 

「…それしか、取り柄がありません。まぁ…部隊行動でのこの戦法は迷惑行為そのもの…ですが…。」

 

はやてはじっと、その戦術パターンを見つめる。そして、頭に浮かぶのは…"親友"の姿だった。

 

(…"凡人"ならではの戦術…こんな滅茶苦茶な事をするのは貴女以来やわ…"なのはちゃん"…ーーー。)

 

……………………end。




八神はやて。
この出会いは、彼にとって大きなものとなる。
そして…「空」を巡る事件の影が迫りつつあった…。

次回
3話 エンゲージ(会敵)。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。