〜天空に輝く"蛍"の光〜   作:やままん

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局入りしてから初の対人戦闘は……とてつもなくハードなものだ。

「極東の旅団」。

いきなり、こんな強者と当たってしまうとは…やるしかないか…

エンゲージ…フェイズ・アイオン。テイク・オフ…!。


4話 極東の旅団。

"調査任務"で訪れたここ、ミッドチルダ郊外。

俺達は「極東の旅団」と呼ばれる魔導傭兵部隊の1人、「ローレル・ランドルフ」によって待ち伏せされていた。

 

同僚達は模擬戦での成績から、対人戦闘も楽々にこなせると思い込んでいたのだろう…だが、生憎これは"実戦"だ。

故に、命のやり取りとなる。

当然、そんな覚悟も持っていなかったのか、先ほどまであんなに余裕があったというのは今やパニックに陥っている。かの俺もそうだが、いきなりこんな勝者と当たってしまうのは流石に運が悪いと言える。

 

この状況でまともに動けるのは俺だ。不思議と、恐怖心は無い…ただ、勝てる見込みも無いが。

 

ここで取れる最善の行動を瞬時に判断するとなれば…なるほど、平常心を保てている俺が残る他なさそうだ。コイツの力量も分からない上に無謀な事は出来ない、下手をすれば全滅だ。ならば、ここは同僚達を逃す他、選択肢はない。

 

「今のうちに逃げろ。」

 

背中を斬られた同僚と肩を持つ2人に俺は駆け寄る。その言葉に、3人は俺の心配もせずに一目散に逃げていく。そして、他の同僚達も蜘蛛の子を散らすかのように、パニック状態となっては必死に逃げ始めた。それはそうだろう、死にたくないのだから。

 

そして俺はただ1人…そこに置いて行かれた。

いや、そのつもりだった。すると、奴が不思議そうな顔をしながら頬を掻きむしり、こう言った。

 

「酷ェ奴らだなァ?仲間1人置いて自分たちだけは逃げるってか…お前、組む相手を間違えちまったな?そんな奴らのために背中を預けたり殿を引き受けたりだなんて、損しかしねェぞ?。」

 

「生憎、俺は損得勘定で動いたりはしないのでな。この場で最も最善な選択をしただけだ。戦えない者には用は無い…それだけだ。」

 

すると、ローレルは舌舐めずりをして。

 

「いいねお前…よし、お前に一騎打ちを申し込もう。お前が逃げなければ、逃げた奴らに手を出さねェ事を約束してやる。その代わり…。」

 

一瞬だけの魔力反応。フェイズは反応が遅れた。

 

「!!!。」

 

「俺を楽しませろよな!?。」

 

迫り来る斬撃。フェイズはセイバーモードを起動させて両手で柄を握り締めて受け止めた。それに比べ、ローレルは片手だ。経験と力がまるで違う…これが"本物"かと歯を食いしばる。

 

「受け止めたか…だが、パワーが…!!。」

 

「舐めるな……!。」

 

足元に魔力を集中させて、横っ飛びで競り合いを中断。ローレルの虚を突いた。

 

「おうおう!?なんだその速度は!?。」

 

「もらった…!!。」

 

まずは一太刀…そう確信したが、鈍い金属音が鳴り響く。

ローレルは逆手で剣を握り締め、虚をついたフェイズの一撃を簡単に受け止めたのだ。

 

「!!?。」

 

「いい線をいってるけどよ…俺には通じねェな?。」

 

フェイズはローレルに違和感を感じた。そう……殆ど魔力を使っていないのだ。

 

「…お前、どういうつもりだ…魔法を使わないのか?。」

 

「使わねェんじゃなくて"使えねェ"んだよ、お前と"同じ"だ。俺の保有魔力量は人並み以下だ。ま…簡単な魔法くらいしか扱えねェけどな。」

 

「なんだと……なら、さっきのは…。」

 

「んなの、魔法に頼らなくても勘でなんとでもなるだろ。お前と違って俺は死線を潜り抜けている。魔力があろうがなかろうが、戦闘を制するのはいつだって「センス」なんだよ。」

 

愛剣「グロリアス」を構えてローレルは瞬時に魔力を纏わせる。

 

「魔力が全てを制するだなんて、それはアホの考える事だ。お前の逃げた仲間がそうだろ。自身の魔力の高さに過信して勝てる気でいやがる。そういうのはな、早死にすんだよ。己の覚悟と力量がまるで分かっちゃいねェんだからな。」

 

そして、踏み込み。その斬撃は確実に命を狩りに来るもの…フェイズは集中力を高めてその斬撃の軌道を読み上げる。

回避。だが、まぐれで終わらせてはいけない…奴は戦闘のプロ。次の一手なんて既に考えているはずだ…そう、避けたと同時に刃の軌道が変わる。

 

「ぶった斬れなッッ!。」

 

横薙ぎに振られた白刃は、フェイズを捉える。しかし、身体を逸らせて皮一枚でなんとか避けた。

 

(くっ…性格無比な攻撃…次は…!?。)

 

空中で姿勢を戻したフェイズは辺りを見渡す。

…奴が居ない…?…視界から消えたローレルを見渡すように探す。

すると、背後に殺気を感じた。

 

「ほらほら、背中がお留守だぜぇええ!?。」

 

奴の白刃が赤く染まって炎が噴き出る。

 

「フレイム・スラッシャー!!。」

 

熱を浴びた斬撃が背中に迫る。これは……避けられない。

 

「ぐぅううう!?。」

 

背中に灼熱の痛みを感じる。咄嗟に動いた事で致命傷は避けられたが、後から来る熱のダメージが痛みを加速させた。だが……。

 

「…俺は…痛み程度で止まりはしない…!。」

 

そう…痛みなんていくらでも経験している。空を飛ぶために何だって耐えてきた。だからこそ…まだ"飛べる"。

 

(…へぇ……根性だけじゃねェってか……。)

 

ローレルは再び、「グロリアス」を担ぐ。そして、戦意の衰えないフェイズをジッと見てはニヤリと笑みを浮かべて。

 

「シーケンス、マニューバー・AG(アサルトガンナー)!!。」

 

一気に加速して飛び出したフェイズはライフルモードに切り替えて猛スピードの中で射撃を繰り出す。

縦横無尽に飛び回るその連続射撃はまるで全方位射撃。ローレルの四方から魔力弾が次々と伸びてくる。

 

「おいおい、人力のオールレンジ攻撃ってか!?。」

 

空中を蹴って、避け続けるローレル。しかし、フェイズの速さに対応が出来ない。

 

(なんて馬鹿げた加速力だ!。持てる魔力を速度に全振りしてやがる!!。)

 

紙一重で避けていくが、数発は攻撃を貰う。しかし、ローレルは歴戦の猛者。削られながらも致命的なダメージを受けないように感覚で避け続ける。

 

「仕方ねェ、だけど長くはもたねェだろうが!!。」

 

(…そうだ、長くは持たない…だが……!。)

 

高機動攻撃の最中、フェイズは前面に魔法陣を形成。ローレルの正面に現れる。

 

「…俺と白兵戦をやるってか!?。」

 

「チェンジ、マニューバー・CQC!!。」

 

射撃戦から近距離戦への瞬間切り替えを行い、機動力を維持したままローレルとの競り合いに持ち込む。

 

「重い!?。ちっ…速度がパワーに変換されてやがるのか!?。だがなぁ!?。」

 

強引に振り抜いては、「グロリアス」に魔力が籠った。

 

「俺を斬るには力が足りねェなぁ!?。喰らえ…デッドリー・スラッシュッッ!。」

 

空気を切り裂くほどの横薙ぎ一閃を繰り出したローレル。フェイズはすかさず防御姿勢に移るがその威力は絶大だった。まともに斬られはしなかったがそのまま地面に向かって撃墜された。

 

「ぐおおおお!!?。」

 

「…久しぶりに自分の血を見たな…。」

 

頬に流れる血を見るローレル。そう…高速斬撃の中、一刀だけが入り頬に傷をつけていた。だが、それがフェイズの精一杯だった。

落ちた場所を見下ろすローレル。その余波が凄まじかったのか、地面の土は抉り取られていた。

 

「流石に死んだか…?。」

 

着地してゆっくりと歩み寄るローレル。だが、砂煙の中から一筋のビームが放たれては顔面の横を通り過ぎた。

 

「…へぇええ……こりゃ、驚いたな…。」

 

砂煙が晴れて徐々に視界が良くなる。そこには、上体を起こしたフェイズが、ライフルモードの銃口を突き付けていた。

 

「はぁ…はぁ…はぁ……!。」

 

もう満身創痍でズタボロだが、フェイズは意識を手放していなかった。それどころか、まだ戦う事を諦めていない。

高機動戦術を連続使用した代償で身体が満足に動かせない。息を切らしながらでも、身体を起こそうとする。

 

「スゲェやお前!この俺を相手にここまで粘るなんてな!?本当に新人か!?。」

 

「……踏みつけられた数なら…負けはしない…だが、その度に俺は立ち上がって来たんだ…空を飛ぶことを諦めたくないが故に…俺は…諦めの悪い男だ…!!。」

 

「根性は認めるがよ?でもお前、この状況じゃあ死は免れないぞ?。」

 

首筋に切先を向けるローレル。だが、フェイズ歯を食いしばって戦意を衰えさせない。

 

「…何がなんでも噛み付くってか。はは、ますます気に入ったわお前。管理局に居させるにゃ勿体無い。魔力主義社会の管理局にはな。」

 

そう言って、剣を収めたローレル。

一体、どういう風の吹き回しだ?…そう思いながら、フェイズは意外そうな顔をする。

 

「まぁいい、楽しめたから良しとするわ。元々、殺すつもりもねェしな。」

 

「…お前…加減していただろう?。」

 

「いや、割と本気だな。ただ、お前は"速さ"だけだ。それ以外がまるでなっちゃいねェ。速さに振り回されて攻撃が正確じゃねェんだよ。」

 

「なに……?。」

 

(…あの戦闘下で俺の分析をしていたというのか……戦闘は「センス」…コイツはそう言っていたな…。)

 

「戦闘に関してのセンスは悪く無ェ。しかし、その戦術はもっと上手く活かせると思うけどな。他の奴が誰も真似出来ねェ唯一無二の戦術…エリート揃いの管理局ははっきり言って"天才"の巣窟だ。過去のデカいヤマをいくつも解決してきた実力者だっている。その中にお前のような"凡人"がどこまで輝けるのか…試してみろよ。」

 

踵を返して去り始めるローレル。だが、フェイズは彼を呼び止めた。

 

「待て、何故俺にアドバイスをする?敵同士だろう?。」

 

「互いに命をかけてやりあえばそれは敵とは言えねェ。俺はそう思ってるけどな、ただ…お前にゃもっと伸び代がある。"完璧"になったお前と戦ってみてェと思ったのさ。特別だ、俺たちの行動を教えてやるよ。次は本局を狙う。」

 

本局を狙う…それを聞いたフェイズは目を大きく見開いた。

 

「バカな…そんな事が出来るはずなんて…!。」

 

「やるんだよ。いいか、この「空」には不穏な空気が流れてやがる。"何か"がここに来やがる前兆だ。」

 

「なんだそれは…そんな、アバウトな…!。」

 

「本局の一部はある程度知ってやがる。だが、それを公表すらしねェ。目の前の脅威を叩きつけねぇとお偉いさんは重い腰を上げないのか……まぁ見てろよ、直にこのミッドの空は……。」

 

青い空を見上げながら、ローレルは意味深いことを口にする。

 

「燃えるぞ…?。」

 

そう言って、ローレルは去っていった。

フェイズはただただ、不思議に思う。コイツらは「何のため」に戦っているのかを。その言い回しだとまるで……。

 

…管理局に代わって、このミッドを守ろうとしている…ような…ーー。

 

…………………………end。




ローレルから聞かされた"謎"。
ミッドの空を"燃やす"出来事…彼らは、そして管理局は何を知っているのか…。
疑問に思いながら毎日を過ごしていたある日、05部隊に新人局員が入隊した。

それは……"天才"と呼ばれた義理の妹…ユナ・アイオンだった。

次回
5話 高町なのはの"再来"。
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