〜天空に輝く"蛍"の光〜   作:やままん

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…私は昔、兄さんに助けられた。
あれは13歳の頃かな…学校帰りに誘拐された。目的は私の持つ「希少技能(レアスキル)」だった。
だけど、犯行が大胆すぎたのか管理局が動き出してそれどころじゃなかった…錯乱した犯人グループは私を殺そうとした。

でもその時、見張りの人を倒した兄さんがやってきたんだ。手には鉄パイプ…魔法もろくに使えないのに、たった1人で。でも…嬉しかったんだ。
…私の為に、ここまで来てくれたことが…ーー。




5話 高町なのはの"再来"。

…あれから、数時間後。

俺はローレルとの戦いで生き残り、05小隊へと帰ってきた。当然、同僚達は俺が死んだものだと思っていたのか驚いていた。

まぁ、当然だろう…あの「極東の旅団」の遊撃隊長と戦って五体満足で帰ってきた奴なんて珍しいくらいだ。しかも、入局2ヶ月ちょっとの落ちこぼれが…な。

 

今回の収穫はそこそこあった。皮肉にも、それが評価されたらしい。部隊長はご満悦だ。まぁ…俺にはどうでもいい事だ。出世になんて興味は無いし、空が飛べたらそれでいい。どこにいようと俺の志は変わらないから。

受けた傷はそこそこのものだったが、入院レベルではなかった。一日、休暇を貰って次の日から出勤だ。奴が手加減してたおかげで背中の傷もどうって事はない。そして、どういうことか…奴とはまた何処かで会う気がする。そう、何故なら…奴らの次の狙いは「本局」だからだ。

奴が去り際に行った「空の不穏」…"何か"がやってくると言ってはいたがそれが何なのかがはっきり言って分からない。だからこそ、俺は部隊に報告はしなかった。きっと、信じてもらえないだろうから…。

だけど、"1人"だけ、言った方がいいと思う人物が居た。

 

…八神はやて。

彼女にだけは告げた方が良いと思っていたが、連絡先なんて当然知らない。そして、彼女は本局でそこそこの地位を持つ人物だ。俺のような、新米局員が気軽にアクセス出来るような人ではない。

まぁ、なんとかして伝えられる手段を探すしか無いか…そう思って、気晴らしに街を歩いていた。

 

「…休暇は休暇で暇だな…。」

 

買い出しを済ませ、俺は埠頭のベンチに座って空を見上げている。

ここ、首都「クラナガン」は昼も夜も賑やかだ。そして、一際大きいあの建物こそが「時空管理局」本局だ。局員は皆、そこに勤めるのが目標だろう。辺境の警備隊や、支部の部隊止まりは嫌だという奴が結構いる。それが普通だろう、ハングリー精神というやつだ。社会に出れば、そう思うのも当然だし、おかしいのは俺のような奴だろう。

そう、俺は"空"を飛べればなんだって構わない。所属なんてどうでもいいし、扱いもどうだっていい。最低限の仕事はキッチリとこなして任務に就く…食っていければ何の問題もない。

 

その時、俺の携帯から電話が鳴る。相手は…「妹」だ。

そういえば、学校に通いながら仕事をするとか言っていたな…あいつは俗にいう"天才"だ。普通なら、承認が降りずらいこの"制度"の条件も楽々にクリアしたのだろう。そう思いながら、俺は電話に出る。

 

「…もしもし?。」

 

『兄さん、おはよう?。元気?。』

 

「元気も何も…何の用だ?「ユナ」?。」

 

ユナ・アイオン。

俺が幼少期に引き取られた「アイオン家」の一人娘で、血の繋がっていない俺の妹。まぁ、義妹というやつだ。

明るく誰にでも優しいその性格は俺とは正反対とも言えるだろう、俺はどこか冷めているし、興味の無いものにはとことん興味が無い。その反面、彼女は何にだって興味を示すし、そして何をやらせても直ぐに出来る天才肌の持ち主だ。

事実、彼女は極少数の人物にしか持ち合わせていない天性の技能「希少技能(レアスキル)」の持ち主だ。

それは「魔力順応」。あらゆる状況下において、自身の魔力を状況に合わせて"順応"させることの出来るとんでもないスキルで、保有魔力量も常人の数倍も持ち合わせている。まさに、「オールラウンダー魔導士」足りうる実力を初期の段階から持ち合わせている"天才"だ。

 

『何の用だ、じゃないよ。兄さん、管理局に入局してからちっとも連絡してくれないじゃない?。』

 

「ああ…すまんな。新米故に、色々と忙しくてな。」

 

『…嘘。私、知ってるんだよ?。兄さん、あまり仕事がうまくいってないんでしょ?。』

 

「…そんな事は無い、俺が鈍臭いだけだ。それよりも、誰から聞いた?。」

 

『内緒!。それに、相当な無茶をしてるって事も知ってるんだからね!?。ダメだよ、自分を大事にしなきゃ!兄さんが喧嘩強いのは知ってるけど、実戦とは全然違うんだから!。』

 

「喧嘩って……そんなつもりは無いのだが…まぁいい。俺のことは心配しなくてもいい、ユナ。叔父さん達にもそう伝えてくれないか?。」

 

『叔父さんって…もう、いい加減「父さん」と「母さん」って呼んであげたら?。きっと、喜ぶよ?。」

 

ユナのその言葉にフェイズは……。

 

「…そういうわけにはいかんさ。拾ってくれた恩は一生ものだ、馴れ馴れしくそう呼べるものでもない。それに、反対を押し切ってまで俺は局員になったんだ。叔父さんの会社に入れてくれるという話を一方的に蹴ったのは俺だ。だから…合わせる顔が無い。結果も残せていないのに。」

 

『…ねぇ兄さん。自分の出自と才能を気にしなくてもいいんだよ?。私たちは…"家族"なんだから…。』

 

「……わかっている。だからこそ……胸を張って誇れる人間になりたいのさ。抱いた夢の一つくらい、叶えられるくらいまで大きな人間になってな。そろそろ、戻る。定期的に連絡はするよ、ユナ。それじゃ。」

 

電話を切るフェイズ。その電話越しのユナは、ただただ兄を想って。

 

「……前々からスカウトを受けてたし……決めたよ、兄さん。私…ーーー。」

 

……………………………………。

数日後。

いつも通りの業務をこなしていた05小隊に、臨時のブリーフィングが開かれることになった。

また任務か?…そう思いながら、フェイズは席に着く。

 

同僚達はどこかしら、緊張した面持ちとなる。それはそうだ、先日の"調査任務"でリアルな命の危機を感じたのだから。当然、怖くなる。

 

フェイズはいつものような感情と気持ちで静かに席に着く。するとその時、部隊長が入ってくる。

 

「臨時のブリーフィングを始める。喜べ、本日から新しい仲間が1人増える。」

 

…この時期に、新人局員?…そんな事を思っていながら、入ってきた人物にフェイズは思わず声が出た。

 

「なっ…お前……!!。」

 

桜色の綺麗な髪色。そして、整った顔の美少女…そう、ユナだった。

局員の制服を着用し、そして部隊の証であるバッジもつけていた。だが、そのバッジの示す「階級」が他のものとは一足違っていて。

 

「本日から我が部隊に配属となった「ユナ・アイオン」准空尉だ。」

 

アイオン…その姓に、全員がフェイズを見る。

 

「なっ…おい、ーファイアフライー!。この子、お前の妹か!?。」

 

「しかも「准空尉」って…新人が与えられる階級じゃないぞ!?。」

 

ユナは深々と頭を下げる。

 

「ユナ・アイオンです。今日からよろしくお願いします。」

 

…局員となったユナ。その後に行われた訓練での成績は「総合S」…つまり、課題の全てを高水準でこなしていたことを示す。そして、フェイズは…「総合C」。いつもならからかってくる同僚達は今は自分に絡んで来ない…それよりも、ユナに釘付けだった。

専用の「アームドデバイス」持ちに、術式も「近代ベルカ・ミッドハイブリッド」といった高等術式を軽々と扱っている"天才"…そして何よりも、持ち前の社交性の良さと可憐な佇まい。その姿から、フェイズの同僚達はその日からユナに夢中だった。

 

そして、休憩時間……フェイズはユナを呼び出して休憩室で話をする。

 

「…どういうつもりだ、何故局員になった…?。」

 

「前に言ってたでしょ?学校に通いながら、仕事をするって。"特別制度"を使って、局員になったんだよ?。」

 

「違う、俺が言いたいのはそれじゃない!。何故、"ここ"なんだ!?。お前のその成績だと、本局勤めの"執務官"補佐だって…。」

 

「…兄さんを近くで支えたいからだよ。」

 

「…俺を…支える…だって……?。」

 

「うん。兄さんが無茶ばっかりしてるって聞いたから…だから……。」

 

「それは俺が決めた事だ!!。第一、「空戦魔導士」という事は戦闘が主になる任務ばかりだぞ!?お前に何かあれば、叔父さん達が…!。」

 

「それは、兄さんもだよ?。」

 

ユナのその一言に、フェイズは言葉を詰まらせる。

 

「この間、電話で話した通りに兄さんだって"家族"だから兄さんに何かあっても父さん達は悲しむ。私だって、悲しい…この間、すごく強い人と渡り合ったんでしょ?。それに、身体のダメージを無視した高機動術だって…もう、無茶のオンパレードじゃない……どうして兄さんは自分を大事にしないの?。どうして負い目を感じるの?。」

 

「………俺は………。」

 

…わかっていた。これは"意地"だと。だけど、その"意地"を通したいと決めている……俺は、常に誰かに心配されている。でも、俺だってもう立派な大人だ。かけた心配の数だけ、俺がちゃんとしているところを見せなければいけない。そう…俺はまだ巣から飛び立てていない"雛鳥"のようなものなのだから…。

 

「…ごめん、私…兄さんの気持ちを考えてなかったね?。だったらこうしよう?兄さんが空を飛ぶなら私も飛ぶ。兄さんが見たい景色を私も見たいんだ?。」

 

「お前……わかったよ。だったら、俺の目指す空を一緒に飛ぼう。まぁ…お前にはすぐに追いつかれるだろうが。」

 

「えへへ…すぐに追い抜いちゃうかもね?。なーんてっ!。」

 

無邪気に笑みを浮かべながら、ユナはフェイズの手を取る。

 

(……あの日、私を助けてくれた事はずっと忘れない…だから、私は兄さんを支えたいんだ。ずっと、孤独で生きてきた兄さんの力に……。)

 

………………………。

〜時空管理局・本局〜

 

「…先日の「極東の旅団」との戦闘……まさかあの"遊撃隊長"が出るなんてな……流石に、当たる相手が悪すぎやろ。でも、軽傷で生き残った…悪運の強さもなかなかかな。それに、今日入ってきた妹さん…とんでもない逸材やん。」

 

はやてはユナの情報を見る。

 

「魔導士ランク「空戦AAA」に希少技能持ち…その技能がごっつエグいものや…まさに"天才"…まるで、貴女を見てるようやわ…"なのは"ちゃん?。」

 

向かいに座ってコーヒーを飲む女性…時空管理局が誇る最強のエース…「高町なのは」は、カップを置いて嬉しそうな笑みを浮かべる。

 

「私なんて大した事無いよ?はやてちゃんが気になってる"彼"と同じで身の丈に合わない無茶をずっと繰り返して来ただけだし…きっと、このユナという子はすごい魔導士になるよ?。それに比べ,今の私は"制限"をかけられてるから昔のような動きはなかなか出来ないからね。」

 

「まぁ…"制限"を解くのは余程の大事の時だけや。最も…そうなる可能性もゼロじゃないっていうのが本音やけど…。」

 

窓の外に映る空を見るはやて。何かを感じたように、複雑な面持ちとなる。

 

「…"あの話"…本当なの…?。」

 

「…信じたないけどな…ほんまや。ミッドの外気圏に忽然と姿を現した謎の"戦艦"……すぐに反応は消えたけど、「ロストロギア」とも言い辛い謎の物体……本局の偉いさん達と研究者達は「異星文明」や言うてるけど……。」

 

「"異星文明"…"異星人"っていう事…?。」

 

「わからん…けど、可能性はゼロじゃないっちゅうことやな。「極東の旅団」もその辺の情報を掴んどる可能性があるけど……嫌な空気が漂ってるのは確かや……。」

 

2人は、空を見る。

この世界に……何が迫っているのか……ーー。

 

………………………end。




ミッドチルダに漂う不穏な空気。
そして、「極東の旅団」は動き出す。

本局襲撃の前に狙うのは…「聖王教会」。
そこに保管された、とある"ロストロギア"を狙って。

次回
6話 "アルテミスの弓"。
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