オールドアクションゲーム二次創作   作:dwwyakata@2024

103 / 140
はいというわけで今回はルート16ターボの話です。

カーレースゲームというわけではなく……スーパーカーを使って追跡者を巻きながら目的のものを集めていく……というようなゲームですね。

ゲームの設定的にはかなりダーティーな内容で、一種のピカレスクロマン的な話だったようですが。

本作では、この作品を題材に、クトゥルフ神話における大物邪神、ハスターとの決戦を描いていきます。


車中の孤独
序、誰も知らぬ正体


軍でも対処不可能な、危険地帯フィールド。物理法則がねじ曲げられ、怪物が跋扈する人外の土地。

 

それを攻略する事を生業とする者達を、フィールド探索者と呼ぶ。

 

異能の持ち主である事が普通のフィールド探索者だから、変わり種も多い。最強と呼ばれる一人Rなどはロボットであるし、とても人間とは思えないような姿をしている者達も少なくない。

 

此処は、R国の片田舎。

 

急ピッチで作られたらしい仮設の基地の敷地内には、既に十人を超えるフィールド探索者が集まっていた。

 

スペランカーが知っている者も多い。最強の名を恣にするMを筆頭に、様々な猛者が揃っていた。奥で武器の手入れをしているのは、ワンマンザアーミー、スーパージョー。特殊能力が脆弱にもかかわらず、その圧倒的な戦闘経験値で、一目置かれる男。彼がいじくっているのは、何かの突撃銃らしいが、軍用兵器の知識が乏しいスペランカーは、詳しくは知らない。彼らの他にも、一流どころとされるフィールド探索者が既に三人、奥で談笑していた。

 

今回、攻略対象となっているのは、街のすぐ側にある巨大な凍結湖。その湖が、一夜にして、真っ黒い闇に覆われたのである。

 

しかも闇は、一秒ごとに拡大を続けていた。偵察機を送り込んだところ、内部には世にも奇怪な空間ができあがっていることが、確認できたのである。物理法則もねじ曲げられている様子だ。

 

何より、その内部には。

 

現在最も警戒されている異星の邪神ハスターが、姿を隠すことも無く、座していることが分かったのである。

 

「先輩、情報を仕入れてきました」

 

スペランカーが最も信頼する後輩、川背が来る。

 

今回は、風の邪神王と呼ばれる筋金入りの強豪が相手だ。それもあって、フィールド探索者には最強のメンツが集められていると、川背は言う。

 

まだ此処にいるのは先発隊で、これから更に十名以上が来る予定だという。リストの中には、スペランカーが最も頼りにする一人、騎士アーサーの名が無い。小首をかしげるスペランカーに、川背がフォローしてくれる。

 

「実は、土の邪神王が動いているという話があります」

 

「土……」

 

風がいるのなら、土がいてもおかしくは無いか。

 

そうなると、いざ土の邪神王が来た場合は、アーサーをはじめとする戦力が対処する、という事なのだろう。

 

近年は大規模なフィールド攻略が増えている。

 

何か嫌なことが起きなければ良いのだがと、スペランカーは懸念してしまう。

 

国連軍は、湖の畔にある街の住民を避難させるので手一杯だ。プレハブの仮設指揮所さえ無く、鉄条網で覆っただけである。

 

とても寒いが、たき火はある。

 

自然と、たき火を囲んで、皆が集まる結果になった。

 

全身を分厚い筋肉で覆った大男、Mが来る。

 

凶暴な眼光で皆を見回すと、彼は口を開いた。

 

「早速だが、偵察隊を派遣したいと思う。 無人偵察機では、そろそろ無理が出てきているからな」

 

ホワイトボードを、軍の人が持ってくる。

 

Mは腕組みしたまま、大まかな情報が書かれるのを、横目で見ていた。

 

フィールドの広さは、現時点で四キロ四方。一秒辺り一辺が0.05メートルずつ拡大していて、このベースにまで到達する時間はおよそ三日。

 

湖を既に覆い尽くす勢いのフィールドは、このままのペースだと、半日後には街を飲み込みはじめるという。

 

勿論住民の避難は急いでいるが、何かしらの手は打った方が良い。

 

遅れている戦力は、後八時間もあれば、全員が揃うという。

 

それなら、その時に総攻撃を仕掛けるためにも。

 

事前に、敵の出方くらいは、見た方が良い、というわけだ。

 

「まずは、こういうときの第一人者、スペランカーさん」

 

スペランカーは、Mが皮肉たっぷりにさん付けをして呼んできたので、思わず苦笑いしていた。

 

Mがスペランカーを毛嫌いしていることは知っている。

 

だが、一度聞いてみたいとも思っていた。どうして、そんなにスペランカーを嫌うのか、をである。

 

「次にマッドエックス」

 

「ンー、俺か」

 

奥で駐車しているスポーツカーの中から、声がした。

 

彼こそは、今回の参加者の中でも、とびきりの変わり種。日がな一日中特殊なスーツに身を包み、顔さえ見せたことが無い人物。マッドエックスだ。いつも特殊なスポーツカーと一緒に現れ、フィールドもそれに乗って攻略する。ロボットだとか、サイボーグだとか、様々な噂がある。

 

また、彼が乗るマシンも、スポーツカーと言っても、充分に戦闘可能な代物だ。馬力といい頑強さといい、装甲車並みの仕様だと、聞いたことがある。

 

確かに、偵察人員としては、これ以上無い足だ。

 

川背が挙手して、同行を認められる。

 

更に連絡要員として、ベースに残る事を命じられた人員が一人。ここのところ、行動を共にする機会が多くなってきた経験が浅いフィールド探索者、巫女のサヤだ。

 

彼女は式神を使う能力者で、フィールドの内外の情報をやりとりするには非常に適切である。

 

「俺も行こうか」

 

「いや、貴殿は此処に残って、指揮を手伝って欲しい」

 

挙手したジョーに、Mが言う。

 

ジョーは何度か作戦を共にしたが、とにかく頼れる戦士だ。戦闘タイプのフィールド探索者と比べるとどうしても身体能力などでは見劣りするが、銃火器の扱いや、歴戦の知恵で、格上とも互角以上に渡り合う。

 

来てくれれば心強かったのだが、Mの発言力は強い。川背が側にいるだけでかなり頼もしいのだし、これ以上を望むのは贅沢だろう。

 

とりあえず、マッドエックスに乗せてもらって、フィールドにスペランカーが入ることで決まった。川背がサポート。そして後方支援として、サヤである。

 

すぐに突入の準備を開始。

 

遭難したときに備えて、食糧。川背が、幾らかの武器類を見繕う。マッドエックスは、王と呼ばれる戦士と組むことが多いのだが、彼は今回姿が見えない。リストにも名前が無かったから、アーサーと同じ待機要員だろう。

 

十分ほどで、準備終了。

 

バタンと音がして、マッドエックスのドアが開いた。

 

「ンー、乗りたまえ」

 

「良いの?」

 

「ンー、フィールドの中に入ったら、屋根に上がってもらう。 それくらいの間は、まあいいだろう」

 

喋るときに、独特の音がする。マッドエックスがロボットでは無いかと噂される原因の一つだ。

 

乗せてもらう。

 

スポーツカーの中はかなり狭い。

 

マッドエックスと共闘するのは初めてでは無い。だが、車に乗せてもらった事は、あまり多くない。

 

だが、今回も、以前と変わらない印象を受けた。

 

負傷者が出たとき、マッドエックスが搬送した事がある。その時車の中に乗せてもらった人が、感想を言っていたのを、聞いたことがある。

 

おおむねスペランカーと同じだった。

 

あまり言いたくは無いのだが、墓穴のような感じを受けるのだ。この車は、愛情から生まれたのだとは思えない。中には、悲しみと怒りが籠もっている気がする。

 

その上、マッドエックス自身は、人相さえ見えない有様だ。あまり良くない評判が立つのは、仕方が無い事かも知れない。

 

怖いとは思わない。

 

むしろ、その人となりを知りたいと、スペランカーは前から思っている。気持ち悪いから遠ざけたい、というのでは、下劣な輩と同じだ。

 

「ンー、出るぞ。 シートベルトはしたか」

 

「大丈夫」

 

ぐんと、車が加速した。

 

だが死ぬほどでは無い。加速自体は柔らかい。

 

フィールドは、既に静寂の湖を覆い尽くそうとしている。川背は平然と、ルアーつきゴム紐をふるって、ついてきていた。

 

彼女は生身で車以上の速度を出せる。

 

「ンー、たいしたものだ」

 

マッドエックスが、くつくつと、独特の笑い方をした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。