オールドアクションゲーム二次創作 作:dwwyakata@2024
現在でこそシューティングゲームは玄人向けのジャンルというイメージがあるかも知れませんが、FCゲームの初期の頃はアクションと並ぶ最初に触るゲームがシューティングという人も多かったのです。
スターソルジャーはそんな黎明期シューティングの傑作。
本作では、この作品シリーズの未来で何が起こったのかを描写しております。
序、黒の会合
とても明るい部屋だ。
世界でもトップクラスの高度を誇るビル、スターレン・ユニバーサルビル。世界最大の財閥本社であり、創業者一族の別荘でもある建物だ。その最上階であり、全面が硝子張りのトップルームなのだから、無理も無い。
しかし、集まっている人間達は、どういうことなのだろう。
全員が、黒いフードを身に纏っていた。
円卓にはプロジェクタが有り、映像が映し出されている。
邪神ハスターが、葬り去られる画像だった。
「間に合わなかったか」
男達の一人が、無念そうに呟く。
わざわざ戦力を戦う前に抑えさせたというのに。あの連中は、苦も無く四元素神最強の戦闘力を持つハスターを倒して見せた。
それが、地球に対して、どれだけの災厄をもたらすかを知らずに。
正直な話、四元素神がエサである狂気を求めて、少しくらい暴れる事など、何でも無いのである。
もっと恐ろしい事がある。
それこそ、地球の未来が、180°ひっくり返るほどの、恐ろしい未来予想が。
「もはや一刻の猶予もあるまい」
「予言者よ、何か手は無いだろうか」
男達の視線が、ちいさな影に集中する。
同じように黒ローブを被っていて、顔は全く見えないが。それが子供である事は、体型からも分かった。
「ハスターが倒されたことで、残りは土の王、ニャルラトホテプだけとなった。 奴はそもそも自分の生に執着があるかさえ疑わしく、もしもMが本気で駆逐に乗り出したら、ひとたまりも無く屠られてしまうだろう。 このままだと、破滅の未来は回避できないだろうな」
「やはりそうか」
「本来の歴史から、既に一年以上、ハスターの撃破は遅れている。 それでもなお、回避は不可能か」
首を横に振る「予言者」。
黒ローブの男達は、大きくため息をつくのだった。
「確かにMは強い。 スペランカーも、その実力は充分なレベルに達しつつある。 だが、それが徒になるとは」
「観測できる未来が限定されすぎている。 せめて土の王と、もう少し連携が高められれば良いのだが……」
「あー、諸君」
一番年かさの声に、議論が止む。
彼が皺だらけの手を伸ばして、リモコンを操作すると、プロジェクタにある画像が映し出されていた。
「これは、我らの独自技術によって、三日前に撮影された映像だ。 高速で地球に接近しつつある宇宙船を映し出している」
「また侵略宇宙人ですか? この時期にこれ以上トラブルを抱え込むのは良くないでしょうし、悔しいですがN社にでも通報して撃退してもらう他ありますまい」
「いや、どうも違うようだな。 宇宙船は純粋な戦闘機のようだが、小型の可変型で、しかも地球の戦闘機の系統を汲んでいる様子だ」
顔を見合わせる黒衣の者達。
もう一度咳払いすると、長老格の男は、付け加える。
「恐らく未来から来た戦闘機だろう。 ひょっとすると、これが大きな歴史的改変につながるかも知れん」
「なるほど、確かにこれを利用しない手はありますまい」
「すぐに米国にいる特務員に連絡して、N社の介入を阻止させましょう。 問題は、此処からどうMとスペランカーを抑えるか、ですが」
「いっそ、アトランティスにいる連中と接触させるのも手かも知れん」
正気か、と言う声が上がるが。
長老格の男は、至って真面目だった。
「スペランカーは権力欲が希薄で、対話が可能な存在だ。 Mのように戦闘狂でもないし、周囲には自然と人材が集まってきている。 もしも味方に取り込むのなら、スペランカーだろうと、儂は踏んでいる」
「しかし、長老」
黒ローブの老人は、これは決定だと立ち上がった。
非常に巨大な口が、一瞬だけ見える。
子供のような姿をした「予言者」が、頷いた。
「面白い案かも知れん。 権力欲の塊であるKや、戦闘における錬磨を求めるMと違って、スペランカーは身寄りの無い子供を引き取ったり、行き場の無い者を受け入れたりする度量がある。 アトランティスが未来世界での特異点になると分かっていても、スペランカー自身が未来を限定的にでも知れば、確かに打開可能かも知れんな」
飽食者、と予言者は長老を呼ぶ。
ずんぐりと丸い姿が、老人のローブのかげに見えた。
「最古のフィールド探索者である貴方が、どうこの事件を動かすか、期待している。 反フィールド探索者の連中の操作は、誰が行う」
「国連軍に潜り込んでいる反フィールド探索者思想の連中については、私が捜査しておくとします」
挙手したのは、まだ若い男だ。
わずかに、とがった耳が黒いローブの影から見えた。
「魔法剣士か。 良いだろう。 後はニャルラトホテプだが」
「あの性悪は儂がどうにかしよう。 少なくとも今、ニャルラトホテプのコア部分と、Mを接触させる訳にはいかん。 陽動作戦については、幾つか心当たりがある」
「戦車乗りよ、任せよう。 ただし、貴殿は数少ない、友好的な異星の神だ。 命を粗末にしないようにして欲しい」
「心得ている」
それから、幾つかの話を終えると、会合は解散となった。
予言者は全員が去った後も、円卓についていた。
知っている。
この後、本来であれば、何が起きていたかを。
Mは容赦なく、土の王ことニャルラトホテプも駆逐した。その結果、宇宙の門たる存在が、反応した。
そして、この地球に。
宇宙の中心にある白痴が、降臨したのである。
その後のことは、悲劇と言うほか無い。
結果として地球人は生き残ることができたが、それ以外には何一つ残らなかったと言っても良い。
最悪なのは、種としての強さが、失われてしまったことだ。
代償は、あまりにも大きかったのである。
悪夢の未来を避けるため、長い年月を掛けて、古参や、理性的なフィールド探索者から同志を募った。反フィールド探索者思想を持つ連中も取り込んだのは、必要だったからである。魔術師の一部も、今は麾下に組み入れている。
だが、結局の所。
自分の本音が別にある事を、予言者は理解していた。
本当のところ、自分は。
頭を振って雑念を追い払うと、会合場所を後にする。外にいた軍人に敬礼を返すと、エレベーターで一気に一階まで降りる。VIPのみ利用が許されている、高速エレベーターだ。
外に出て、黒塗りのリムジンに乗り込む。
護衛の手練れ達に囲まれているが、いつ攻撃を受けてもおかしくない状況だ。ふとテレビを見ると、「英雄」Mが映し出されていた。
Mは確かに英雄だ。
今後の歴史でも、最大の戦力として、最高の働きをする。
問題は、Mが自分の意思以外では、制御が出来ないと言うことだろうか。それが、悲劇へつながってしまうのだから、皮肉な話だ。
「予言者。 二日後に、アトランティスに宇宙船が降りるように、調整いたします」
「頼む」
既に、賽は投げられた。
取り返しがつかない地獄絵図から、世界を救わなければならなかった。