オールドアクションゲーム二次創作   作:dwwyakata@2024

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人類側が決して一枚岩でもない状態。フィールド探索者もそれは同じです。

それでも、平和であろうと心がけている者は此処にいました。


1、異星からの訪問者

久しぶりに時間が出来たので、スペランカーはコットンを伴って、アトランティスを見て廻っていた。

 

以前激しい戦いの末、異星の邪神の支配から解放されたこの移動大陸は、今やスペランカーにとって第二の故郷となっている。戦いの先で、行き場を無くした者達を引き取って受け入れ、今ではフィールド探索者の中でもとびきりの変わり種が、多数住み着いていることでも有名だ。

 

案内をするのは、半魚人の長老。車に乗って、見て廻る。

 

かってこのアトランティスで、神に奉仕をするためだけに造り出された種族だ。他にも骸骨やミイラ男の戦士達が、今やこのアトランティスでは、人間に混じって暮らしている。軋轢は当然あるが、それでも今のところは、全体的に見れば平和だった。

 

「それじゃあ、このアトランティスは、元は宇宙船なの?」

 

「はい、そう言うことにございます。 現在は機能停止していますが、その気になれば、宇宙に民を乗せたまま飛び立つこともできるでしょう。 現在の地球の規模からは考えられないでしょうが、それだけ異星の神々の力が凄まじい、という事にございます」

 

ただし、防空機構などは元々異星の邪神の武力に頼るところが大きかったため、今は殆ど機能していないという。

 

考えて見れば、この大陸は、ずっと海底を移動し続けていたのだ。その間、空気はあったことを考えると。それくらいのことは、できるのかも知れない。

 

今まで戦った異星の邪神は、いずれも桁違いな強さの持ち主だった。防空を彼らが担えば、半端な戦力では手も足も出ないだろう。

 

確かに、合理的なのかも知れない。

 

沼地にさしかかった。

 

半魚人の猟師が、泥沼に住むドジョウににた魚を捕っていた。唐揚げにするととても美味しいのだ。此方に気付いて、手を振ってくる。笑顔で手を振り返した。長老はずっとにこにこと笑顔を浮かべていたが、咳払いする。

 

「スペランカー様。 これから、ご案内したい所がございます」

 

「何か、重要な場所?」

 

「はい。 いざというときに備えて、スペランカー様には、知っていていただきたい場所なのです」

 

神殿は、アトランティスに幾つも建造されている。

 

中心にある場所は、以前ザヴィーラと呼ばれる異星の邪神との決戦を行った場所。そのほかにも、いろいろな異星の邪神を崇める神殿が、古くから建立されていた。後から来た人間の中には、邪神の神殿を残すなんてとんでも無いと言う人もいるようだが。元から住んでいる民達にとって、神殿は今でも、敬愛の対象なのだ。

 

時々、これが争いの原因になる。

 

神殿の中には、以前スペランカーが殺さずに受け入れた邪神が暮らしている場所もある。ミ=ゴはまだ恐怖に心をわしづかみにされたままだが、こういった神殿の一つで、静かに過ごしている。心が壊れてしまった邪神シアエガも、同じようにして、神殿の一つで世話されていた。

 

それが、人々の恐怖を煽ることも、スペランカーは理解できる。

 

だが、コミュニケーションを限定条件では取ることが可能な証明でもあるのだ。できれば、みんなには、恐怖を殺して、理解を深めて欲しい。それが、スペランカーの本音であった。

 

向かった先にあった神殿は、かってニャルラトホテプをまつっていたものだと、長老が言う。

 

四元素神の中では土を司り、もっとも性格が悪く、何を考えているのか全く分からない存在なのだという。

 

「いわゆるトリックスターでありますな」

 

「トリックスター?」

 

「北欧神話の、ロキ様とかと同じだね」

 

「おお、その通りでございます。 コットン様は聡明でありますな」

 

長老が満面の笑顔でコットンの頭をなでなでする。

 

魔術師としての知識を勉強しているコットンは、急速にいろいろな事を覚えている。スペランカーが分からないことも、もうたくさん知っていた。

 

北欧神話のロキというのは、いたずらを司る神様で、その場その場で悪さをしたり神々の味方をしたり、とにかくつかみ所が無い存在なのだという。

 

何となく、それで分かる。

 

ギリシャ風の神殿に到着。ただし、それは見かけだけだが。後で習ったのだが、構造はギリシャ式とは大きく異なる。

 

円柱の間を通って、神殿の中に。床はつるつるぴかぴかに磨き上げられていて、一歩ごとにきゅっきゅっと気持ちいい音がした。天井もとても高い。そして、誰か人間の技術者が施工したのか、電気によるライトが付けられていて、明かりが一定に保たれていた。思い出す。そういえば、電気を神殿に入れるかで、随分揉めたのだ。スペランカーが、電気が無い場所で転んで死んだという話をした途端、半魚人達が電気の導入に積極的になったが。

 

死は、スペランカーにとって、日常の隣にあるものだ。

 

海神の呪いと呼ばれるおぞましい神の祝福によって身を包まれているスペランカーは、不老不死の代償として、著しく身体能力が制限されている。だから転んでもぶつけても、簡単に死ぬ。その度に、電気ショックのような痛みを伴って蘇生する。

 

死んだとき、欠損があると、周囲から自動的に補う。悪意のある攻撃によって死んだ場合は、攻撃者から補填が行われる。

 

スペランカーの唯一の武器であるブラスターとあわせて。絶対生還者と呼ばれる所以だ。この能力のおかげで、無能なスペランカーが、フィールド探索者などと言う危険極まりない仕事をしていられるのである。

 

だから、スペランカーは気にしていないのだが。この大陸の民は、本当にスペランカーを大事にしてくれる。

 

神殿の中には、たくさんの神像が建ち並んでいた。一つとして、同じものは存在していない。全てが同じ神様の像だというのだから、とても面白い反面、何だか不思議な気分になる。

 

神像を磨いていたミイラ男の戦士が、深々と会釈してくる。

 

軽く頭を下げて、奥に。仕事を邪魔してしまってはいけないからだ。

 

神殿の奥の廊下は曲がりくねっていて、一本道だというのに、迷いそうにさえなった。あまりにひねくれた造りに、怖がってコットンがしがみついてくる。

 

「もう少し、奥にございます。 何、危険な存在はいませんので、ご安心を」

 

「ええと、ニャルラトホテプさんだっけ。 どうしてこんなにひねくれた通路にしているの?」

 

「伝承に寄りますると、ニャルラトホテプ様は、至高なる神の夢の番人という事でございまして」

 

「……!」

 

その存在は、確か覚えがある。

 

以前戦った蜘蛛のような異星の神、アトラク=ナクア。今は力を喪失し、アトランティスの相談役になっている彼女が、倒そうと考えていた神だ。

 

確か、後で聞いたところによると。

 

その神様の名前は、アザトース。

 

「あくまで我々の伝承によると、ですが。 この世は至高なる神の夢に過ぎず、夢を保つために、ニャルラトホテプ様は様々に暗躍なさっているのだとか」

 

神殿の最奥につく。

 

其処には、肉の塊があった。

 

時々脈動している肉の塊には、多くのコードが結びつけられている。そして、コンピュータらしき建造物と、結わえ付けられていた。

 

空間はとても広い。

 

ドーム状で、広さは四十メートル四方はあるだろう。肉の塊は、その殆どを締めていて、明らかに、今も生きていた。

 

「これは……?」

 

「宇宙船としてのアトランティスの頭脳にございます。 今までは一切手を加える必要が無かったのですが。 もしもの時に備えて、スペランカー様には知っていただきたいと思い、此処に来ていただきました」

 

「……」

 

コットンはよほど怖いのか、ぎゅっと強くスペランカーにしがみついている。

 

「大丈夫だよ。 敵意とかは感じないから」

 

そればかりか、邪神の力も感じない。

 

これは恐らく、ただ考えるだけの道具だ。

 

「いざというときには、どうすれば良いの」

 

「制御装置が必要になります。 生きた制御装置が」

 

その場合は、我らの誰かが、そうなりましょうと。恐れる事も無く、半魚人の長老は言った。

 

勿論、彼らは喜んでスペランカーのために、命を投げ出すだろう。

 

だがそれは、絶対にさせてはならない事だ。

 

「分かったよ。 でも、これを絶対に使わないようにしないとね」

 

「有り難き幸せ。 スペランカー様が我らを気遣ってくださること、今までの神々とは比較になりませぬ。 故に我ら、いざというときには、貴方の盾にも肉にもなりましょう」

 

この人達の忠誠は、本物だ。

 

だが、それに甘えてはいけない。此処は、スペランカーの第二の故郷だ。だからこそ、大事にしていかなければいけない。

 

この人達も、スペランカーが守らなければならなかった。

 

曲がりくねった通路を通って、外に。

 

長老が、入り口を念入りに封印する。外では、まだ多数ある神像を、ミイラ男の戦士が磨いていた。

 

彼らは体が腐敗しているように見えるが、元々そう言う生物であるらしいと、最近知った。ベースになっているのは死体なのだが、形を活用しただけで、今は生きているのだという。ただ、生きていた人間の知識がある場合も少なくは無いのだとか。それは、骸骨の戦士達も同じだそうだ。

 

一度、車で中枢にある神殿に戻る。

 

この間、ハスターが倒れたことで、異星の邪神達は活動を沈静化させている。この機に一気に異星の邪神を駆逐しよう、という動きが、フィールド探索者達の間に生まれつつある。主導者は、言うまでも無くMだ。

 

事実Mは、各地を廻って、小物の異星の邪神を片付けているという。

 

勿論、素手でだ。

 

スペランカーも、対話の可能性が無い異星の邪神と戦う事は、仕方が無いと思っている。専門家として、誰よりも多くの異星の邪神を葬り去ってきてもいる。Mでさえ、スペランカーの撃破スコアには及ばないのだ。異星の邪神に限定すれば、の話だが。

 

ただし、全ての邪神が消えたとき、この大陸に残っている者達は大丈夫なのだろうか。あのMが、スペランカーの話を聞いてくれれば良いのだが。

 

それも含めて、話し合いが必要だと思っていた。

 

車を走らせはじめて、三十分ほど過ぎた。基本的に悪路を進むから、揺れは大きい。具合が悪そうにしているコットンを気遣って、声を掛けようとしたとき。携帯に連絡があった。

 

川背やアーサーからでは無い。

 

よりによって、国連軍の人からだ。

 

「今、そちらに所属不明の戦闘機が向かっています。 国連軍の戦闘機の追跡を振り切って、貴国の防空圏に入り込みました」

 

それは、良くない。

 

すぐに迎撃について、指示を出さなければならない。戦闘機となると、一個人やテロリストが所有できる武器では無い。何処かの国が出してきたとなると、国際問題も視野に入れないといけない。

 

いつかは来る事だったのだ。

 

アトランティスは、公海上に突然できた大陸である。今まで利権問題が発生しなかったのは、様々な状況が複雑に絡み合い、それらが互いに牽制し合っていたからだ。それは非常に脆いバランスの上に成り立っていることで、永遠に続きはしないだろうと、誰もが言っていた。

 

スペランカーだって、分かっていた。

 

すぐに防衛のための戦力が動き出す。

 

今の時点で戦闘機はいないが、対空迎撃の術式を持っている半魚人はたくさんいるし、ミイラの戦士は射程距離が数キロに達する火球を放つことができる。しかもその精度は、近代兵器に全く劣るものではない。

 

何しろ戦ったのだ。彼らの強さは、よく知っている。

 

長老は、車を念のために、近くの木陰に隠すように指示。

 

「戦争が、始まるの?」

 

「大丈夫。 戦争になんて、させないから」

 

連絡をしていると、追加で情報が来た。

 

飛行機の速さは、マッハ6に達しているという。瞬時に防衛線を抜かれたが、被害は無いと言うことだった。此方からの猛攻に対し、反撃しなかったとも。ただし、一発も当たらなかったそうだが。

 

しかも、此方に向かっているという。

 

スペランカーが見上げる先の空に。

 

飛行機雲を引きながら飛んでくる、戦闘機の姿が見えた。予想以上に、とんでも無い速さだ。国連軍の追跡を振り切っただけのことはある。

 

たった一機だけ。

 

それも、武装を放棄したらしい。その上、攻撃を受けたわけでもないらしいのに、既にボロボロだ。

 

ちかちかと発光信号を出している。

 

運転手が、読んでくれた。

 

「救難信号です」

 

「すぐにお医者さんを手配して。 私が見に行くよ」

 

自分が見に行くのは、事故に巻き込まれた場合、周囲に被害を出さないようにするためだ。

 

マッハ6なんて速度、普通の戦闘機に出せると聞いたことが無い。

 

コットンを長老に任せる。最悪の事態に備えて、武闘派を集めるように指示。アトランティスには、いろいろな事情があって住み着いたフィールド探索者も何名かいるが、彼らの中には優れた戦士もいる。

 

運転手と二人で、着陸に掛かった戦闘機を追う。

 

車も、飛行機が降りたのを見計らい、止めさせた。

 

「あの速度で、VTOL機のようですね」

 

「何かあったら、すぐに逃げて」

 

「そうは行きません。 命に代えても、スペランカー様をお守りいたします」

 

今日運転手をしているのは、半魚人のまだ若い男だ。

 

言葉にはとても強い使命感がある。帰れと言っても、無駄だろう。つまり、彼の命は、スペランカーの行動に掛かっているという事だ。

 

飛行機は近づいてみると、全長二十メートル近い。

 

ただし、全体的にとてもずんぐりした形状で、マッハ6などという途方も無い速度で飛べるようには思えなかった。

 

近くで見てみるが、ミサイルの類は積んでいない。

 

ただし、レーザー砲のような武器はある様子だった。

 

半魚人の運転手は、強力な魔術が掛かった槍を、ずっと構えている。稲妻を放つことができる強力なもので、破壊力は近代兵器に全く劣らない。射程距離も相当に長い。

 

スペランカーが近づいていくと、飛行機の底部が開いて、誰かが降りてくる。

 

そんな風に、人が降りてくる飛行機は、もっと大きいサイズのものだと思っていた。だが、目の前にいる飛行機は形状がとてもずんぐりしていて、しかも円形でさえなく、どちらかといえば四角形が近い。

 

降りてきたのは、非常に筋肉質な青年だった。

 

パイロットスーツの類は身につけていない。ぼろぼろの革ジャンにジーンズと、極めてラフな格好だ。厳しい目で此方を見る青年は、腕に付けている何かの装置を動かす。翻訳機らしかった。

 

「俺は惑星連合軍第三十七宇宙艦隊十四師団所属、特務大尉のシーザー。 此処は、21世紀の地球で間違いないか」

 

「ええ。 私はスペランカーと言います」

 

「おいおい、マジかよ……」

 

シーザーなる青年は、ぼさぼさの髪を乱暴に掻き回した。

 

半信半疑ながら、一応言ってみたという感触だ。しかし、それに予想外の答えが返ってきてしまい、困惑しているという風情である。

 

「武器は持ってない。 けが人を、何名か収容してる。 手当をしてくれないか」

 

「分かりました。 すぐに手配します」

 

「いいのかよ、俺の素性聞いただろ? 惑星連合ができたのは……だって聞いてるんだが」

 

何故か、その言葉は聞き取れなかった。

 

だが、警戒している運転手に、すぐに現在位置を知らせて、医療チームを手配するように言うと。シーザーという青年は、大きく嘆息した。

 

「本当にスペランカーなんだな」

 

「それがどうかしたの?」

 

「どうかも何も、あんたは俺の知る限り、邪悪な神とつるんで、悪の限りを尽くした極悪人ってなってるからな。 それに、此処はアトランティスだろ? 俺は……で、この大陸そのものと戦ったんだ。 宇宙空間でな」

 

背筋に、寒気が走った。

 

如何に頭が良くないスペランカーでも、それがどういう意味かは、よく分かる。聞き取れない場所も幾つかあったが、それはつまり。

 

このアトランティスが、宇宙船としての機能を使用していること。

 

そして、それはほぼ間違いなく、未来での出来事であること。

 

なおかつ、どうしようも無い状態に陥っている事を意味している。

 

救急車が来た。

 

まだ警戒していた青年だが、本当に医者が来たのを見ると、けが人を下ろす。非常に筋肉質な大男が一人。意識を失っている様子だった。身長は二メートルに達しているが、全身傷だらけの血まみれで、非常に痛々しい。

 

他にも、何名か血みどろのけが人がいる様子だった。

 

「船内での医療設備だと、生命維持が限界でな。 急いで頼む」

 

「貴方の怪我は?」

 

「俺は無事だ。 これでもトップエースだからな。 ちょっとやそっとじゃ怪我なんてしねえよ」

 

自分を親指で指しながら、快活な笑みを浮かべるシーザー青年。

 

やがて、武装した半魚人やミイラ男が、わらわらと現場に到着した。飛行機を運ぶための、レッカー車両も、である。

 

「精密機器だ、乱暴に扱わないでくれよ」

 

「分かったが、まずは話を聞かせてもらう」

 

「へいへい」

 

スペランカーの前から、シーザーが連れて行かれる。

 

これは仕方が無いだろう。専門の人間に、尋問は任せた方が良い。それに、国連軍を振り切って、此処に逃げ込んだ戦闘機だ。

 

国際問題になる可能性もある。亡命や何かの手続きは、かなり面倒なのだ。それに身の上もしっかり調査しないといけないだろう。

 

もっとも、状況証拠からして。

 

あの青年は、未来人に思えるが。

 

何か、とんでも無い事件に巻き込まれているような気がする。いつものことと言えばそれまでなのだが。

 

飛行機が運ばれていった後、長老がコットンと一緒に来た。

 

「スペランカー様、何事も無かったようで、何よりです」

 

「あの人達に、できるだけ乱暴はしないであげて」

 

「スペランカー様の望むままに。 既に、医療班は全力で治療に当たっております。 いずれも、命に別状のある怪我をしている者はいないようですし、すぐに意識を取り戻すことでしょう」

 

運ばれてきた人達も、未来人だったのだろうか。

 

いずれにしても、はっきりしていることは。

 

これが、とても大きな事件に発展するだろう。その事だけだった。

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