オールドアクションゲーム二次創作 作:dwwyakata@2024
当然この世界でも、悪さをしているのです。
這い寄る混沌、ニャルラトホテプ……
どことも知れぬ闇の奥底。
複数の影が集まっていた。それらはいずれもが人間であったり、そうではなかったり、形が一定していなかった。
「以上にて、定時報告を終える」
「なるほどねえ。 まさかこのタイミングで、未来からの来訪者があるとは思わなかったよ」
けたけたと、若い声。
同じく若い声だが、落ち着いた雰囲気のものが、触手を揺らしながら応える。
「それで、どうするつもりか」
「Mが此処に辿り着くか、スペランカーがそれを全力で阻止しに掛かるか、その勝負になりそうだな」
あのMでさえ、スペランカーを暴力でねじ伏せるのは無理だろう。
それは、そうだ。
何しろ、スペランカーの体を覆っている海神の呪いは、分析の結果、とても面白い事が分かっている。
クトゥルフが面白半分に掛けた祝福は。今や、かの邪神が思いも寄らぬ力へと変じつつある。
単純な暴力では、たとえ門の神でも、宇宙の中心に座する白痴でも、それを屈服させるは不可能だろう。
ただし、スペランカーについては、いくらでも攻略法がある。
「計画を早めるか」
「スペランカー如き、いくらでも押さえ込めよう」
「奴自身はな。 問題は周囲だ」
スペランカー自身は、判断力以外は、さほど警戒しなくて良い。
奴が多数の邪神を葬っている事を無視している訳では無い。無力化の手段はいくらでもあるのだ。
問題は、その左右にいるアーサーと海腹川背が、どちらも相当に頭が切れる、ということである。特にアーサーは、Mに不満を持つフィールド探索者達とコネがある。奴自身は派閥を作ろうとはしなかったようだが、いざというときに備えてコネは確保したままであったようだ。
それをフル活用されると、色々面倒だ。
川背については、本人のスペックが高い。近年は尋常では無い身体能力を実現していることが、ハスター戦で分かっている。文字通り、体だけで一個師団の軍とまともに渡り合える使い手だ。
もう少し能力に応用性があれば、Mの喉にさえ牙が届く使い手に成長していたかも知れない。
それと、スペランカー自身についても、最近気になる報告が上がって来ている。
奴自身は別に良いのだが、やはり周囲を侮るわけにはいかないだろう。アーサーがコネを持っているフィールド探索者達が、早い段階でスペランカーの周囲に結集すると、面倒だ。
「月に吠える者」
「おう」
「貴殿は計画Bを前倒しして実行。 Mを引きずり出して、斃されろ」
「了解した」
誰もが、死ぬ事など全く恐れてはいない。
顔の無い女と呼ばれる同位体が、挙手する。
「ならば私は陽動としてでよう」
「うむ。 ならば嘲笑う噛む者も同道せよ」
「承知した」
順番に、彼の同位体が、その場を離れていく。
名前が無いほど脆弱な同位体も、それぞれに任務を与えられ、離れていった。
彼らの名前は、ニャルラトホテプ。
人格が複数あるのでは無い。無数の存在が精神世界内で結合し、一つの存在となっている、希有なタイプの異星の邪神である。
単独での戦闘力はハスターやクトゥグア、クトゥルフといった武闘派には及ばない。ただし、その強みは、複数並列思考できる事と、何より一度に多数の体を動かせるという特異性にあるのだ。
そして、その目的は。
「中心にある邪悪が、目覚める時が、まさか来るとはなあ」
「這い寄る混沌よ」
フードで体を隠した、その場で唯一ニャルラトホテプでは無い存在が言う。非常に巨大な口が目立つ老人だった。
這い寄る混沌と呼ばれたのは、ニャルラトホテプの中枢思考システム。
それ自体は体さえ持っていない。
この闇の空間、そのものだ。
「分かっていような。 約束は、必ず守れ」
「ああ、分かっている」
返事をしながらも、ニャルラトホテプは知っている。
この老人が、自分など全く信用していない事を。勿論、老人もそれに気付いているだろう。
J国のことわざで言うと、狐と狸の化かし合い、という奴に他ならない。
この老人も、若い頃はMに匹敵しうる使い手だったのだ。今はその老獪な頭脳を生かして影働きに徹しているが、実際に斃すとなると骨が折れるだろう。
ただし、頭脳戦であれば、ニャルラトホテプの方が上だ。
それに関しては、軍の中にて胎動している、かの勢力も同じ事。
そして、スペランカーも、同じように糸に取り込めば良い。何しろ、奴には決定的なアキレス腱がある。
弱点を持たない方が、人間は強い。
信念は、実はとても簡単に折ることができるものなのだ。
そして、操作もたやすい。いい加減に生きているクズどもも、そうでない輩も。人間なんて、実際には手のひらで踊る道化に過ぎない。
だが、それは。
ニャルラトホテプも、同じなのだが。
ニャルラトホテプは、他の四元素神とは違い、直接宇宙の中心にある白痴とつながりがある。そして、その存在する目的も。
だからこそに、ニャルラトホテプは願うのだ。
皮肉まみれに、思うのだ。
誰もいなくなってから、這い寄る混沌は呟く。
「死にたいなあ。 それで自由になりたい」
けたけたと、無数の個が集まり、それでいながら究極の孤独にある邪神は呟く。
既に、門の神は目覚めている。
後は、一手のみ。
それで、全てが終わる。
あらゆる奸計を巡らせてきた、宇宙屈指の邪悪な頭脳は、ただ全ての破滅だけを願い続けていた。
(続)
破滅の未来が到来しようとしている中。
それを知った者達はどう動くのか。
暗躍するクトゥルフ神話のとっても有名人なあいつ。
全ての因果が収束していきます。