オールドアクションゲーム二次創作 作:dwwyakata@2024
最近もリメイク版が出ていたりする人気作品ですね。
魔界村のアーサーは、本シリーズではスペランカーの頼れる友人として、また責任ある一人の大人として、現在でありながら大まじめに騎士としても活躍している人物でもあります。
今回はそんな彼のお話です。
序、見覚えある光景
つくづく、自分には縁がある場所らしい。
I国の片田舎で、事前に魔界であると判明しているフィールドに踏み込んだアーサーは、即座に外に対して通信を入れていた。
まだフィールドの入り口付近だから、無線で通信はできる。
たとえ、空に赤い月が出ているとしても。
地面が毒に浸されて、紫色の水が煮立っているとしてもだ。
プレートメイルを着込んだアーサーが無線を触っているというのもおかしな光景だが。現在に生きる者として、科学技術を無視することはできない。
「此方アーサー。 内部を確認した」
「魔界で間違いありませんか」
「ああ」
朽ち果てた村。
木々にはカラスがとまっているが、いずれもが野生個体より二割も三割も大きい。それだけではなく、全ての動物が凶暴な瘴気に身を包まれ、己を制御できずにいるのが分かった。
重異形化フィールドの中でも、特に王と呼ばれる特殊な存在に支配され、生態系と国家としての仕組みが作られている存在を、こう呼ぶ。
魔界。
パラレルワールド化するケースさえある、極めて強力なフィールドだ。今までアーサーは四度魔界を攻略して生還しているが、いずれも楽な戦いだとはいえなかった。歴戦の猛者でさえ尻込みする魔界に、アーサーは今、五度挑もうとしている。
無線を切ると、傍らで呼吸を整えているスペランカーに言う。
「スペランカー殿、大事ないかな」
「うん。 アーサーさんは、慣れっこ?」
「いいや、我が輩も、そう簡単には処理できぬさ」
からからと笑うアーサーだが。
既に心身ともに戦闘モードに切り替えている。
「魔王と異星の邪神が融合すると非常に面倒だ。 だが、魔界の特性上、あまり大人数を投入するのは得策では無くてな」
地面が、振動する。
違う。
周囲の土が下から掘り返され、手が伸びてくる。土まみれの手が、彼方此方の地面から、伸びる。
程なく、無数の生きた死体が姿を見せた。
ゾンビと呼ばれる怪物だ。冒涜された死者の末路。死人で有りながら死人で無く、生物でさえ無い存在。
魔界ではあまりにも一般的な障害である。
死体共は、生きた人間の匂いをかぎつけたか、一斉に此方に歩み寄ってくる。重心が定まっていない歩き方で、パワーはあっても何とも情けない。
剣を抜くと、アーサーは手慣れた動作で、まず手前に立ったゾンビを一刀両断に斬り伏せる。
手にしている剣は、かの聖剣エクスカリバーを再現したものだ。ゾンビなど、ひとたまりも無い。
まるで熱したナイフで溶けかけの氷を切ったかのようだ。殆ど手応え無く、ゾンビは崩れ落ちた。
二閃、三閃。
剣が閃く度に、ゾンビの体が両断され、内臓がはみ出し、腐った血がまき散らされる。
人間を殺すように切るのでは無い。
胴を二つにし、或いは唐竹割に左右に切り分ける。そうすることで、元が人間の悲しさ。身動きが取れなくなるのだ。
ゾンビは身動きが取れなくなると、しばらくもがいた末に消滅する。だが、出てくるゾンビは、後から後から、だ。
もう少し強力な能力は、まだ温存しておく。
強烈な腐臭が漂う中、アーサーは促した。
「さて、いくとするか」
「この奥に、ニャルラトホテプさんがいるのは、ほぼ間違いないんだね」
「間違いない、といいたいところだが。 可能性は、せいぜい四割という所だろう」
それに、今回の目的はそれではない。
もしも接触できたら幸運、くらいにアーサーは考えていた。もっとも、四元素神随一の策謀家という話であるし、それが「幸運」なのかはよく分からない。
うめき声を上げながら襲いかかってくるゾンビを、右に左に、足運びを工夫しながら斬り倒していく。
剣技は実力がついてくると、舞のようになる。
プレートメイルを着込んでいても、それは同じ。
左から襲ってきたゾンビに足を払っていなし、更に右から飛びついてきた一匹と一緒に切り上げた。
肩口からずるりと両断されたゾンビが地面に落ち、同時に灰になって消えていく。更にもう二体、薙ぐようにして切り捨てる。
体力を可能な限り温存しながら。なおかつ、相手にするのは一度に一匹まで。
相手の動きを良く見ながら、足運びを工夫。勿論そうしている間にも、足下からゾンビは出てくる。
足首を掴まれないように、細心の注意を払いながら戦う。
この死者達は、実際の死体が加工された存在では無い。
情報としての、かって生きていた人間を、歪めたものだ。魔術によるものだと、アーサーは判断した。
スペランカーは、アーサーの邪魔にならないように、良く動いてくれている。ゾンビの軍勢は、次から次へと現れるが、アーサーは黙々と処理しながら、無線で連絡を外に入れる。
「敵勢力との交戦開始。 通信はこれまでとする」
「了解。 グッドラック」
通信を切ると、アーサーは空を見上げる。
サヤが放った式神が、周囲を周回している。
今回も、厳しい戦いになりそうだった。
「サヤちゃんは無事みたいだけれど……」
「問題は、もう一人であるな」
スペランカーに躍りかかったゾンビの首を、通り抜けざまにはね飛ばす。しばらくもがいていたゾンビが、土に帰っていった。
今回、フィールドに入った人間は四人。
アーサーと、その頼れる盟友であるスペランカー。
もう一人は、最近支援系のフィールド探索者として名を上げつつある巫女のサヤ。それに、最後の一人は。
地響きがする。
ゾンビが現れるときとは、また別のものだ。
見ると、朽ちた家を押しのけるようにして、四メートル、いや五メートル以上はある巨人が、姿を見せた。
しかも目は一つだけ。
ギリシャ神話に登場するサイクロプスのようだ。しかも、額には、おぞましいねじくれた角を一本生やしている。
全身は非常に筋肉質で、手足には凶暴そうな容姿を更に引き立てるためか、プロテクターを付けていた。
「サイクロプスであるな」
サイクロプスが、突如跳躍して、後川に回り込んできた。
とんでも無い巨体とは思えないほどの、軽やかな動き。
だが、アーサーはそれを読んでいた。