オールドアクションゲーム二次創作 作:dwwyakata@2024
スペランカーは、ずっと気になっていた。
逃げたニャルラトホテプの分身がもくろんでいたことは、当神の口から聞いた。ニャルラトホテプを斃させて、この宇宙の中心にいる邪悪をこの星に呼び込むことだと。
彼ら四元素神は鍵。
宇宙の中心に座する邪悪は、目覚めつつある。
問題は、その後だ。
未来から来た人達から聞く限り、未来世界にそんな邪悪は存在していない。ならば、何が起きたかは明白だ。その強大な邪悪というものは、おそらくMに斃されたのだろう。
しかし、能力者も消えているという。
それならば、その後に、或いは邪悪を屠ったときに、一体何が起きたのだろう。
何度か、アーサーさんを交えて、話はしてみた。
しかし、未来のことだ。結論が出る筈もない。何が起きるにしても、碌な事でないのは確かなのだが。
飛行機が、徐々に高度を下げつつある。
久しぶりのJ国。
単独で訪問するのは、本当にしばらくぶりだ。隣に座っているのは、SPの人である。別に良いと言ったのに、J国政府がわざわざ派遣してきたのだ。窓際のスペランカーを囲むようにして合計六人、SPがついている。そのうちの四人は私服だ。
本当に一言も喋らないので、息が詰まりそうだが。
飛行機が降下を開始したのだ。もうすぐ、針のむしろからは解放されるだろう。それに、空港からは頼りになる後輩の川背と一緒だ。
ジャンボジェットが空港に着陸すると、今までぴくりともしなかった隣のSPの人がむくりと動き、他のSPの人達も、いそいそと席を離れる。そして、スペランカーが廊下に出ると、人の壁を自然に作った。前後の人は、左右も警戒しているようだ。
大丈夫だと言おうかと思ったが。
彼らは自分の仕事に一生懸命なだけだ。お仕事に本気で取り組んでいる人達を、あまり無碍にも出来ない。
おそらく、護衛対象であることを悟らせないためだろう。SPの人達は、空港のロビーでは、少し間隔を開けてスペランカーを囲んでいた。時々囲みを調整しているのは、多分狙撃に備えているからだろう。
「スペランカー先輩!」
遠くから、手を振っている川背の声が聞こえた。
ようやく一安心である。ただ、SPの人達は、空港の後も、目的地に着くまでは護衛をしてくれるという。
話し相手が出来るだけで、この空気が多少は緩和できるのなら、御の字である。
川背が小走りで来る。
SPの人達はみじんも油断せずに、周囲の警戒を続けていた。少し前に川背に聞いたのだが、今、スペランカーは時の人、なのだという。
異星の邪神を、ひょっとすればこの星から根こそぎたたき出せるかも知れない。
その鍵を握る人物であるからだ。
余計な事に、Mがこの間、ニャルラトホテプに致命打を与えたとか、広報してくれたおかげで、その傾向には拍車が掛かった。
空港の外には、政府が用意してくれたマイクロバスが来ていた。
至れり尽くせりだが、これも全部J国政府にとっては「外交」なのだ。アトランティスの事実上の代表であり、異星の邪神に対する切り札にもなっているスペランカーは、迷惑なことにこういった「外交」を常に受ける立場にある。
いつの間にか、SPの人達が増えている。助手席や後ろの席は、SPの人達で満員になった。しかもこのバスは、おそらく軍仕様の防弾だ。民間業者のバスに見せかけているのは、偽装からだろう。
他のフィールド探索者とは、現地で合流の予定だ。
川背がスポーツドリンクを差し出してきた。よく冷えていて、とても気持ちが良い。初夏のJ国は蒸し暑くて、苦手だ。
「先輩、疲れましたか?」
「うん。 川背ちゃんは大丈夫?」
「僕は鍛えていますから、へいきです」
川背はにこにこと、優しい笑みを浮かべている。
ただ、思い出してしまう。少し前に、スペランカーの被保護者であるコットンが、料理を覚えたいと川背に言ったのだ。何でも、スペランカーに料理を作ってあげたい、というのが理由であったらしい。
保護者としてはとても嬉しい。川背も、それを汲み取ってくれたのだろう。「本気」で、取り組んでくれた。
その後、料理のイロハを、丁寧に教えてくれたようなのだが。
しかし、それを境に、コットンは川背を怖がるようになった。
キッチンは料理人にとって、戦場であり聖域。
料理は戦いであり、食材は有限で、お客様に満足していただけなければ意味が無い。
そういった心構えを持つプロの料理人である川背が、コットンをびしびし鍛えたからである。おかげで、川背の事は尊敬しているけれど、怖いとコットンは感じたのだろう。
確かに川背は本物のプロだ。
しかし、或いは。器用でかしこい彼女も、人にものを教えるのは、さほど得意ではないのかも知れない。ましてや料理は、川背にとっては聖域だ。土足で他人に踏み込ませる気は無い場所なのだろう。
あれだけ美味しい料理が作れるのに、川背はまだ自分は修行中だと常日頃から言っている。彼女が弟子を取るとしたら、きっとずっと未来のことになるのだろう。
「後で、此方に目を通してください」
手紙を渡される。
最近、川背が色々と影で働いてくれていることを、スペランカーは知っている。さっと手紙を見ると、どうやら川背が、かなり状況を整理できてきた事が分かった。
現在、幾つかの勢力が、影で動いているという。
そのうちの一つは、少し前に接触してきた。まだ一部だが。
フィールド探索者の中でも最長老と言われる存在を首魁としたグループで、ニャルラトホテプを斃させないようにと、様々な行動をしている者達だという。彼らはおそらく、どこからか知ったのだろう。ニャルラトホテプを斃した場合、何が起きるかを。
この勢力を中心に、様々な勢力が放射状に書かれている。
ややこしいことに、これは具体的な組織ではない。一つ一つが一種の派閥、という事だ。つまり、複数派閥に所属している個人も、当然いるだろう。
一つは国連軍上層に巣くう勢力。
これはどうやら、ニャルラトホテプの息が掛かっているらしい。来るべき未来の後の、能力者が存在しない世界を理想として動いている者達なのだそうだ。
軍人には、フィールド探索者や魔術師を好ましく思わない者は多い。彼らにして見れば、そういった思想に傾倒したくなる事もあるのだろう。フィールドが出てきてしまうと、軍は後方支援しか出来ず、あくまで主体はフィールド探索者。それでは面白くないという気持ちは、分かる。
ただし、来るべき時のあと、人類の何割かが死んでしまう事は、既に未来から来た人達が告げてきている。しかも想像を絶する混乱に地球は包まれて、世界は大変なことになってしまう。
そのようなことが分かっている以上、好きなようにさせるわけには、いかない。
此方に関しては、今Mがあぶり出しを進めている。粛正が起きるかも知れないが、それはとても悲しい事だ。出来るだけ人が死ななくてもすむように願うばかりである。
もう一つは、Kによる闇の組織。
大魔王とも呼ばれるKは、邪神に対しては明確な敵対的意識を見せている。ただし此方の目的は、事態を混乱させて、暗躍しやすい状況を作る、というものであるらしい。此方は勢力のバランスを考えて行動を常にしており、状況次第で味方にも敵にもなり得るそうだ。
更に、これは未確認だが。
どうやら、異星の邪神の中に、人間に協力的な勢力が存在しているようなのだ。
戦車乗りと呼ばれている者が中心だそうだが、アトランティスにいるアトラク=ナクアなどの、スペランカーとの戦いの結果交戦意思を放棄した者達とはまた違う。狂気を喰らう邪神でありながら、地球の人間に対して友好的な意思を持つ者。そういった存在であるらしい。
他にも細かい派閥が幾つかあるが、大まかなものはこの三つだ。
これらに付随したり敵対したりしている小規模な勢力は、三百を超えているという。中には跳ねっ返り的な者達もいて、非常に危険な思想を持っているという。主にJ国政府が警戒しているのは、そういったテロリストまがいの者達だそうである。
何しろこれらの派閥は、各国にも根を張っている。政界財界いずれにも根は届いている上に、場合によっては民族紛争や宗教などにも絡んでいて、複雑極まりない。更に言えば、これらの派閥は必ずしも常に敵対している訳でもなく、時には手を結んでいる事もあるようだ。
訳が分からない、怪物的構造。ある意味、人間達が作り上げたこの複雑な組織こそ、ニャルラトホテプなのかも知れないと、思ってしまう。
勿論情報の全てを川背が一人で調べたわけではない。
国連軍のエージェントや、アトランティスの関係者も動いてくれている。今、アトランティスの存在は重要らしいからだ。
「よく調べたね。 お疲れ様」
「僕はたいした事をしていません。 情報の整理は、後方のメンバーの仕事です」
川背自身は、危ない場所に足を運んで、情報を集めたり、或いは直接様々な派閥の幹部と接触しているようだ。
その時、スペランカーの親友、という肩書きが使える。
スペランカーは川背を全面的に信頼しているから、その肩書きを使う事を、許している。ただし、表だって川背がそれをひけらかしたことは、一度もない。
川背が集めてきた情報を、後方にいるアトランティスの半魚人達が整理している。元々彼らは、邪神の奉仕種族。文明レベルは高く、独自の生体コンピューターまで持っている。知能は高く、人間よりもむしろ賢いものも少なくない。
バスが港に着く。
此処からは、フェリーだ。海自のこんごう級護衛艦(川背が教えてくれた)が来ているのが見えた。かなり本格的な警備である。
「今回は、あまり大規模なチームじゃないね」
「僕と先輩、それにじゃじゃ丸さんが来ます。 後は何名か、中堅どころのフィールド探索者が」
はて。
少し前にもらった情報だと、じゃじゃ丸はメンバーに名前が載っていなかった筈だが。
今回のフィールドは、孤島に一週間ほど前、急に出現した。
今のところ人的な被害はないが、内部で異星の邪神の反応が検出されたため、スペランカーに声が掛かったのである。
確信はないが、ニャルラトホテプの可能性は高い。ただし、まだ断言できる状態ではない。
もしニャルラトホテプの場合は、前回ほど簡単に撃退できないかも知れない。ニャルラトホテプは、無数の分身を持つ邪神だという。この間退けた固体とは、別の者の可能性が高い。
ニャルラトホテプには、まだまだ聞きたいことがたくさんある。
今回は川背が側にいてくれる。きっと力になるはずだ。前回の戦いで、ニャルラトホテプの目的は分かった。今回は、話すことだけが目的ではない。何故、宇宙の中心にいる邪悪を、この星に呼び寄せたいのか。その先に何をしたいのか、見極めなければならないだろう。
フェリーで二時間ほど揺られて、離島に着く。波は静かだったが、乗っている人は殆どおらず、政府関係者らしい姿ばかり。その中で、スペランカーの周囲ばかり人がいて、少し恥ずかしかった。
到着したのは、般若島という恐ろしい名前がついている島だ。見るからに岩がごつごつしていて、船着き場も一つしか無かった。
一応東京都に入る島である。南北に三キロ半、東西に二キロ半と、少し縦長の造りになっている。人口は二百七十名だが、既に一部の老人達を除いて、全員が強制的に避難させられていた。
寂れた島だが、一応特産はある。絹糸が現在でも専門で生産されている珍しい島である。そのほかには、多少の漁師も生活しているが、漁獲高はあまり高くないようだ。島に残った老人達は、生命線であるかいこの世話をするために残ったのだ。桑畑も世話をしなければならないし、フィールドがつぶせてもかいこが全滅した場合、島は再起不能になる。
スペランカーも、彼らの悲しみは、よく分かる。できる限り早く、フィールドを攻略しなければならない。
フィールドが発生したのは、集落がある南部ではなく、北部。
空間が歪んで、よく見えない。
まだ内部の調査は本格的に入っておらず、情報収集を行っている段階だ。今のところ、フィールドそのものは拡大しておらず、周囲に鉄条網を張って、住民が入り込むことを防ぐだけの仕事を、自衛隊がやっていた。フィールドの監視自体は国連軍がやっているようで、別国籍の人間がちらほら見える。
ベースには、既に中堅どころのフィールド探索者達が集まっている。
その中の一人は、スペランカーの知り合いだった。
「宗一郎君」
「久しぶりだ」
寡黙でぶっきらぼうな少年は、少し見ないうちに、また背が伸びていた。かってはスペランカーよりも小さいくらいだったのだが、今ではもう十センチは背が高い。顔立ちからも、少しずつ幼さが消えている。美男子とは言いがたいが、J国では珍しい精悍な顔立ちだ。
本多宗一郎。以前戦いを共にした、フィールド探索者である。最初にあった時はまだ駆け出しだったが、今ではかなりの戦闘を経て、中堅と呼ばれる所にまで成長していた。彼は傷つけば傷つくほど打撃力が上がるという特殊な能力の持ち主で、今も武器である特注のサッカーボールを手にしていた。
「どう? 元気にしていた?」
「おかげさまで。 川背さんも、変わりないようで何よりだ」
「ん。 そちらも」
三人で立ち話していても仕方が無い。
ベースそのものは国連軍が作ったものらしく、多国籍の兵隊さん達が警備をはじめている。今回は邪神がらみだから、一個中隊が来ているらしい。
ベースの中にはプレハブの設備があり、中には自動販売機まである。普通自動販売機は見かけないのだが、此処では規律がよっぽどしっかりしているのだろう。自動販売機が壊されている様子も無い。
川背は周囲にずっと気を配っている。スペランカーの状況が、それだけ難しいという事なのだろう。
「じゃじゃ丸って忍者が追加で来るって聞いた。 スペランカーさんは、何か知らないか」
「私も途中で聞いたの。 私も一緒に戦ったことがある腕利きの人だから、きっと安心だよ」
「そうだと良いんだが、忍者のフィールド探索者は、裏に大きな政治的な意図があるときしか出てこないって聞いたことがある。 何か嫌な予感がしてならない」
宗一郎は案外聡い。今回の件の裏で蠢く、訳が分からない幾多の闇について、肌で感じているのかも知れない。
世界が一つになって、何か強大な敵と立ち向かう。
そんなことは、映画の中でしかないと、スペランカーも分かっていたけれど。こうして現実で、邪神をおいださなければ世界そのものが危ないと多くの人が認識しているにもかかわらず、まとまりのない世界というものを見てしまうと。悲しくなってくる。
ざっと今ある情報を交換する。
だが、どうやら宗一郎はあまり詳しいことは知らされていないらしく、フィールドがまるで未調査である事くらいしか分からなかった。
今、国連軍の無人調査ロボットが内部に入って、必死にデータを集めている所だが、どうも上手く行っていないらしい。
「近々、あんたに偵察の依頼が来るはずだ。 一通り内部を見て廻ったら、後は俺たちが露払いって感じだろうな」
「重異形化フィールドにしても、入り口近辺のことも分かっていないの?」
「俺も何度か問いただしたが、言葉を濁されるばかりだった」
川背が目を細めた。不機嫌になった証拠だ。
彼女はスペランカーには優しいが、他の人間には基本容赦を知らない。状況を知らないと何とも言えないのだが、頑張っている軍人さん達が酷い目に遭うのはちょっと悲しい。咳払いすると、スペランカーは話を進める。
「他に何か、おかしな事は無い?」
「今の時点では、特に聞いていない。 俺も少しは力を付けてきた。 多少はスペランカーさんの露払いとして、役に立てるつもりだ」
「頼もしいよ」
席を立つと、川背と一緒に現場を見に行く。
フィールドにも色々種類があるが、今回のは重異形化フィールドだろうと、スペランカーは当たりを付けていた。
内部の物理的な法則までも歪む、最悪のタイプのフィールドだ。
空間がかなり広い範囲にわたって歪んでいて、周囲は鉄条網が張り巡らされている。スペランカーが来ると、警備していた長身の兵士が、胡散臭そうに睥睨した。ライセンスを見せて、通してもらう間も、ずっとじろじろ見られていた。
鉄条網の中には、何名か科学者がいて、話し合いをしている。
その中に、一人女の子がいる。最近J国では三十代の女性を「女の子」というような妙な風潮があるようだが、そうではない。見るからに年齢不詳なのだ。白衣を着込んでいる彼女は、リスのような印象を受ける。小柄で目が大きく、髪の毛を何故か鯰の飾りがついたヘアピンで留めていた。
スペランカーに気付くと、彼女は立ち上がり、此方に来る。
サンダルを履いているが、最近流行のネイルアートはしていない。
「スペランカーさん?」
「はい。 貴方は?」
「知鯰外世子(ちねんとよこ)。 今回、国連軍の派遣学者として、フィールドの解析をしています」
川背がぴくりと眉を上げた。知っている人なのかも知れない。
握手を交わした後、話を聞く。他の人は技術者みたいで、おそらくこの人が指揮を執っているのだろう。
「内部はかなり特殊な構造になっていて、一筋縄ではいきません。 今はいるのは危険すぎますので、もう少し待ってください」
「少しでも、見せてくれないんですか?」
「多分、下手に入ると、貴方でも生きては帰れないですよ」
そう言って、図のようなものを見せてくれる。
それは何というか、複雑な結晶体のように思えた。巨大で何とも言えない形状で、そして左右対称。
真ん中にある黒い穴が、入り口だろうか。
だがその周辺にも、多数記号や文字が書き込まれている。
「これは……?」
「部屋が連なることで、このフィールドは形成されています。 一つ一つの部屋にはどうやらガーディアンになる守護者がいるようなんですが」
問題は、その後だ。
部屋のつながりが、意味の分からないほど複雑なのだという。しかも一方通行になっている事さえ多く、入り方によって違う部屋に到達することもある。その構造と解析に時間が掛かっているのだとか。
「パターンらしいものが見当たりません。 蠅サイズの偵察マシンを使って内部を調べているのですが、電波が届く範囲でさえこれです。 下手に入り込むと、おそらくフィールドの作成者の所にさえたどり着けず、内部で骨になるまでさまようことに」
スペランカーにとっても、それは嫌だ。骨になることはないにしても、飢餓はスペランカーにとって、最悪のトラウマの源泉である。
川背が挙手する。
「僕は空間に穴を開けることが出来ますが、それでは駄目ですか?」
「ああ、貴方が海腹川背さん。 話は聞いています」
知鯰さんはしばらく腕組みして考えた後、首を横に振った。
止めた方が良いと断言する。
内部は泡状の空間が、複雑かつ滅茶苦茶に絡み合っていて、解析が済むまで文字通りどこに何があるか知れたものでは無いという。泡に穴を開けたりしたら、何が起きるか、見当もつかないのだとか。
「偵察もしなければならないですから、まずは偵察用の蠅型ロボットを内部に多数放ちます。 どうにかして、このフィールドの首魁のいる場所さえ特定できれば、川背さんの空間に穴を開ける力なり、他のフィールド探索者の能力なりで、中枢への突破を掛けられるのですが」
「時間は、どれくらい掛かりますか?」
「これから、偵察のロボットの数を倍増させます。 もう三……いや二日、待っていただけませんか?」
川背と顔を見合わせる。
別にスペランカーには異論は無いが、問題は島の状況だ。
疎開している人達は不安になるだろうし、時間が経てば経つほど、島の産業はダメージを受けるだろう。
それに、万が一の事態とはいえない。
フィールドが拡大して、島を飲み込みはじめたら。覚悟して島に残ったお年寄り達の苦労と涙を、踏みにじることになる。
急かしても仕方は無いが、ただ待つのも芸がない。
一端プレハブに引き上げる。
殆どすれ違いに、すっと黒い影が歩いて行くのが見えた。思わず振り返ると、以前戦いを共にしたじゃじゃ丸だ。挨拶もせず、奥へ向かった。
声を掛けようかと思ったが、やめておく。
「一度、ここに来ている皆と話し合いましょう」
「それが良さそうだね」
休憩もしたい。
プレハブに足を向けながら、スペランカーは何か良い案が出るといいのだけれどと、心中呟いていた。