オールドアクションゲーム二次創作   作:dwwyakata@2024

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はい今回はスーパーマリオブラザース3です。

歴代マリオシリーズでも傑作で知られるタイトルで、適切な難易度、先進的名システムの数々と、これをよくファミコンで出せたなと感心してしまう作品です。バグも結構多いんですが……それはそれとしてステージギミックがとても多くて、探索しても探索しても味があるゲームです。

今回はメインシナリオの最終話。

クトゥルフ神話の最高神格であるアザトースとの決戦です。
宇宙一救われない魂とどう向き合うかの話になります。


救われるべき闇との対峙
序、傲然たる男


これほどの数のフィールド探索者が集うのを見るのは、初めてだ。そう、世界最強の男であるMは思った。

 

以前、異星の邪神の手から解放した浮遊大陸アトランティス。オーストラリアに匹敵する面積を持つ此処に、今数百を超えるフィールド探索者が集まっている。Mもその一人だ。ついに、長く続いた異星の邪神との戦いが、終わるときが来る。

 

不安そうにしている者達も多い。

 

軍の関係者も、かなりの数が集まっていた。彼らを蚊帳の外にするわけにはいかないから、仕方が無い。

 

Mの隣には、世界最強の魔術師であるリンク。そして、その少し後ろには、最近ようやく貫禄がついてきた、Mの弟であるLがいる。

 

この三人だけで、世界の国の半分は焼き払えるのでは無いかと言う噂があると言うが、Mは肯定も否定もしない。

 

用意された宿舎に荷物を置くと、会議を行うという神殿に向かう。

 

辺りは整備されていない更地が延々と続いていて、その周囲には訳が分からない植物が密生している。

 

此処は元々、ヒトの領土では無かったのだ。

 

妙な好奇心を起こすと、怪我ではすまない。そんな危険が、周囲には満ちている。

 

「ようまいられましたな、M様」

 

「うむ」

 

話しかけてきたのは、半魚人の老人だ。

 

このアトランティスで、奉仕種族として酷使されていた者達の長老。今、Mが最も嫌っている存在の一人である、スペランカーの配下として動いている。スペランカー自身はそんなつもりではないだろうが、この老人は少なくともそう身を置いている。

 

異星の邪神が大嫌いなMとしては、此奴らもいずれ隙があれば皆殺しにしてやりたいほどだが。

 

今の時点で、それをやれば問題になる。Mも戦闘能力では無敵だが、一つだけ致命的な弱点があり、それをつかれるのは好ましくない。スペランカー自身にその弱点をつく気が無くとも、周囲はどうだろう。スペランカーの腹心である川背など、頭が切れるフィールド探索者はいる。そいつらが、何をするか分からない以上、Mも滅多な事は出来ないのである。

 

老人に案内されて、神殿へ。

 

途中、用意されていたジープに乗り、悪路を行く。他のフィールド探索者のうち、一流どころと呼ばれる者も、おいおいジープやバスで移動を開始しているようだ。

 

「既に作戦は決まっていると聞いたが」

 

「はい。 どうにか間に合いました。 間もなく、我々の造り主でもあるアザトース様との、直接対決がかないましょう」

 

その直接対決というのが、実際に武や覇を競う物では無いことは、Mも知っている。不快なことに、奴を殺すとフィールド探索者の特殊能力も全てが消え失せてしまう事が判明しているからだ。

 

あのスペランカーの言うことに従わなければならないだけでも不快なのに。

 

邪神共を殺さず、生かさなければならないとは。何たる事か。

 

今でもハラワタが煮えくりかえりそうだが、それでも。表面上は、Mは笑顔を保ち続けていた。

 

神殿に着く。

 

ギリシャ式の荘厳な神殿に、見えなくも無い。

 

白磁の神殿は丁寧に整備されており、汚れ一つ見当たらなかった。美しい柱は大理石か、それに近い素材で作られているようだ。

 

以前、此処に足を踏み入れたときには、もっと汚れていた。

 

スペランカーの意向で、綺麗にしたのだろう。

 

「此方でございます」

 

「うむ……」

 

老人に案内されるまま、先へ行く。以前は、此処でかなり緊張感のある政治的なやりとりをした。

 

今回は、最後の決戦を行うべく、歩調を合わせなければならない。

 

見ると、各国の大物政治家や、財界のボスクラス、元帥などの高位退役軍人も来ている様子だ。

 

文字通り世界の命運を賭けた戦いである。

 

彼らの中には、アトランティスの悪口を言い合っている者もいる。半魚人が、他の連中の案内に離れた隙を見て、そいつらの後ろから近づいた。

 

「何とも野深い場所でありますな。 発展の欠片も無い上に、粗野で下品だ」

 

「原住民共を全て追い払って、入植した方が経済的には有用でしょうに。 ここに住む小娘程度の頭では、理解できませぬかな」

 

「何、Mと対立していると聞いています。 いずれMと手を組んで、小娘もろとも全員を追い出してしまえば良いでしょう。 その際には、利権の分配は……」

 

「うぉほん」

 

Mが大げさに咳払いすると、くだらない話をしていた連中は弾かれたように此方を見た。

 

後ろで、にやにやとリンクが様子を見守っている。

 

「おお、これはMどの。 お久しぶりですな」

 

「悪巧みはかまわないが、私のいないところで勝手に進めないでいただきたい、ハーマイン元帥」

 

「これは失礼した。 いずれそれならば、席を改めて」

 

「私は今のところ、この大陸に手を出すつもりは無い。 面倒だから、もう一度明言しておこう。 この大陸に、手を出すつもりは無い」

 

わざと二回繰り返すと、その場にいた連中は鼻白んだ。

 

Mにしてみれば、このような連中は路傍の小石に等しい。中にはMの弱点を知っている者もいるだろうが、それでどうにかなるほどヤワな自分では無い。

 

スペランカーの事は大嫌いだが。

 

こういう連中は、もっと嫌いだ。

 

一応政治的なつきあいはしてきたが、それだけの関係である。一緒に侵略を進めるような人間だと思われたら、迷惑する。

 

それに、もしもアザトースをMが葬っていた場合。

 

此奴らが、Mだけではなく、家族も皆殺しにしていただろう事は、疑いの無い事実なのだ。

 

その場を後にすると、リンクがけたけたと笑った。

 

此奴は綺麗な顔をしているくせに、底意地が悪い所がある。

 

「何だ、Mさんも、男気があるじゃないですか。 普段は破壊神みたいなのに」

 

「殺すぞ、貴様」

 

「冗談ですってば」

 

リンクと本気でやり合ったら、アトランティスが焦土になる事を覚悟しなければならないだろう。

 

そうなると、色々面倒だ。

 

鼻を鳴らすと、戻ってきた半魚人に案内されるまま、応接室に。さて、ここからが、本番だ。

 

奇しくもというか或いは意図的なのか、以前案内された応接室と同じ部屋だ。周囲には仮設のプレハブも見受けられたから、まだましな部屋だと言えるだろう。それに、調度品は、前回よりずっと良くなっている。

 

アトランティスは儲かりはじめていると聞いていたが、この状態を見ると、それは嘘では無いのかも知れないと思えた。

 

巨体をソファに深く沈ませながら、Mは不機嫌そうな声を敢えて出した。

 

リンクがその側で、ポットから茶を淹れている。

 

「リンク、それで何かしらトラップの類はあるのか」

 

「いえ、非常に閑かなものですよ。 勿論立ち入り禁止の地区には色々仕掛けてあるようですけれど、この部屋にはありませんね」

 

「油断はするなよ」

 

「分かっています」

 

会議が始まるまで、三時間ほど。

 

さっきの立食パーティに混ざる気はしないし、此処で暇を潰すとするか。

 

それに、会議と行っても、作戦の説明。それに対する理解を求めるだけの事だろう。ニャルラトホテプをスペランカーが従えた今、奴は四元素神に等しい存在だとも言える。勿論、力があると言う話では無い。

 

ヨグ=ソトースとかいう巫山戯た邪神を使って、アザトースの所に赴くには、奴の力が必要、という事だ。

 

馬鹿にした話だが。

 

茶を飲み干す。意外にも良い茶で、味も香りも素晴らしい。淹れたタイミングに茶葉の選定まで、しっかりやっている。見ると、J国から取り寄せたものであるらしい。この辺り、本職の料理人である川背の手管か。

 

Mも悔しいが、スペランカーが他人の言うことを良く聞いて、受け入れるべきを受け入れていることは認める。川背はスペックが高いが、極めて気むずかしい女だ。あれを此処まで心酔させ、しっかりした仕事をさせている以上、カリスマとしてのスペランカーの手腕については、Mとしても認めざるを得ないところである。

 

「ふん……」

 

不快になって、Mは天井を見た。

 

会議が始まるまで、少し時間がある。ずっと黙っていた弟のLが、空気に耐えられなくなったか、口を開く。

 

「兄貴、今回で、邪神どもとの戦いは終わるのかな」

 

「何だ、怖いのか」

 

「怖いに決まってるだろう。 俺は兄貴みたいに強くないんでな」

 

そういうが、Lが以前の戦いで、一皮むけたことをMも知っている。以前はひたすらに情けない奴だったが、今は必要なときには勇気を奮える男になっている。

 

Lがこのようなことを言うと言うことは。

 

不肖の弟なりに、感じているのだろう。

 

今までに無い、大きな戦が始まるのだと。

 

「いずれにしても、お前が最強の敵とやりあうわけじゃない。 少しは落ち着いたらどうだ」

 

「落ち着いているさ。 俺が怖いのは、将来のことだよ」

 

「それなら余計に安心しろ。 アザトースを殺すわけじゃ無いんだろうよ、悔しいがな」

 

何をトチ狂ったか、スペランカーは邪神との共存を、などと考えている。アザトースについては、元の素性を割り出すことに成功。感情移入して、救い出すことを考えているようだ。

 

はっきりいって、甘い。

 

だが、それでも。この場で主導権を握っているのは、奴だ。

 

何より、未来から来た連中から、アザトースを殺すとどうなるかは聞いている。Mとしても、身に宿った最強の力を失うのは、本意では無い。

 

「本当に、上手く行くのかなあ」

 

「行くのか、じゃあない。 うまく行かせるんだよ」

 

「さすがはMさん」

 

リンクが、皮肉混じりに言う。

 

此奴は、身内だけの場合は、本音をさらけ出す。外面は良いだけに、此奴の本性を知っているMには、余計腹立たしい。

 

Mとしても、自分の感情を、現実に優先させることの愚かさはよく知っている。

 

今回の戦いに勝つことができれば、異星の邪神どもに決定的な打撃を与えることが可能だろう。

 

そして、今までのやり方では。

 

M自身の破滅を招く事も、分かっていた。

 

命を失うことなど怖くない。最初フィールド探索者になったときに、既にMは命を捨てる覚悟など済ませた。最初に戦いに赴いたフィールドは、薄暗い地下。配管が並ぶ中、まだチンピラだったライバルKの部下達と、いつとも知れぬ戦いを続けた。

 

戦場から帰ったMは、人相が変わってしまっていた。

 

それまでは、まだ笑顔に愛嬌があるとか、気のよさそうなおじさんだとか、そういう評価が出る容姿だったのだ。体型も筋肉質と言うよりもむしろ小太りで、子供達からも気の良いおじさんと呼ばれて好かれていた。

 

だが、その時を境に。

 

Mは鬼神のようだと、評されるようになった。勿論子供達も、寄って来ることはなくなった。

 

初めての戦いが、想像を絶する地獄であったが故に。Mはそれ以降、何も怖くなくなった。

 

むしろ戦いそのものに身を置くことが、普通になってしまった。

 

あらゆる能力を開発し、世界最強の魔人と呼ばれるようになった今も、あの時の戦いのことを思い出すと、慄然とする。

 

限られた能力。閉鎖的な空間。どこから襲ってくるか分からない難敵。

 

実力が充実してからの戦いでは、ああはならなかった。きっと、Mはあの時に、戦鬼になってしまったのだろう。

 

結局の所、今のMは、戦いにだけ生きる存在だ。

 

だが、抱えているアキレス腱の事を思うと、スペランカーにこれ以上高圧的には出られない。

 

Mはプライドと、己の抱える傷のことで、ずっと悩み続けてきた。

 

最強の戦鬼であるプライドは、Mを此処まで高め上げた。

 

しかし、抱えるすねがある事で、今の地位を得たことも事実なのだ。

 

世界最強という称号。

 

それは、決して不動のものではない。Mが長い間、努力を続けてきたからこそ、得られたもの。

 

故に知っている。

 

「なあ、リンク」

 

「はい?」

 

「私が呼ばれたという事は、激しい戦いになると言うことだな」

 

「間違いないでしょう。 情報を総合するに、相手は星系を丸ごと飲み込むほどの特大の邪神です」

 

そう言う意味では無いのだが。しかし、戦う機会があるのだとすれば。

 

其処には、Mのいる場所がある。

 

Mにとって、戦いは人生。居場所。そして、存在意義なのだ。

 

「ふん、まあいい。 先に、実戦でのフォーメーションを……」

 

「大変です!」

 

部屋に、慌ただしく飛び込んできた者がいる。

 

フィールド探索者としてはまだ若い存在だ。星形をしていて、回転しながらの体当たりを得意としている。

 

新入りである彼は、慌ただしく部屋に飛び込んでくると、息を必死に整えた。

 

「何事か」

 

「姫様がさらわれました! 犯人はあのK! 決戦の地で待つと、手紙を出してきています!」

 

思わず、Mは顔中に憎悪を湛えて、立ち上がっていた。

 

そうか、Kの奴。

 

このようなときにまで、立ちはだかるか。

 

奴とは何度戦ったか分からない。ついに、今回が最後の血戦となる可能性が高い。何故、このタイミングで邪神共に肩入れするような真似をしたのかは分からないが。いずれにしても、叩き潰す。

 

「スペランカーはどうしている」

 

「今、最後の戦いについて、調整しているようです」

 

「私もその調整とやらに参加させてもらおう」

 

部屋を出ると、周囲が流石にざわめいた。応接室に飛び込んだ新入りの血相を変えた様子からも、ただ事では無いと悟っていたからだろう。

 

周囲の制止など、ものともしない。

 

邪魔をする奴は、はじき飛ばすようにして、先に行く。

 

会議室の前にはスペランカーの腹心である川背が立ちはだかっていたが、Mは傲然と胸を反らした。

 

小柄な川背は、巨躯を相手に一歩も引かない。

 

「どくがいい。 スペランカーに用がある」

 

「今、作戦の最終調整中です」

 

「私もそれに参加してやろう。 邪魔をするならば……分かっているな」

 

「分かりません。 スペランカー先輩の邪魔をするなら、貴方がたとえ相手でも引きませんよ」

 

瞬時に、川背が戦闘態勢に入るのが分かった。

 

此奴も今や超一流の使い手。戦えば、そう簡単には勝てないだろうが。それでも、勝率は百%だ。それに、たとえ多少揉めたところで、Mは引く気が無かった。

 

視線が火花を散らしあう。

 

だが、それは。

 

部屋から、アーサーが出てきたことで終わった。

 

E国最強のフィールド探索者であるアーサーは、C社ナンバーツーのフィールド探索者であり、その実力もそうだが人望が厄介だ。人脈もスペランカーの次程度には広く、各国の要人ともつながりがある。爵位を持つ本物の騎士であるという事も、厄介さに拍車を掛けている。

 

戦場と同じくフルプレートアーマーを着込んでいるアーサーは、既に戦闘態勢に入っているが。

 

奴はMと、そのうしろにいるリンクとLを睥睨。咳払いした。

 

「いい加減になされよ。 見苦しい」

 

「騎士ィ。 貴様も邪魔をするならば、まとめて私が畳む事になるが?」

 

「決戦前に殺気立つでない。 桃姫の事であれば聞いている。 既に作戦については決まったから、部屋に入られよ。 貴殿にも悪いようにはせぬ」

 

「入るぞ」

 

「アーサーさん?」

 

川背が低い声で言うが、アーサーは問題ないと応じていた。

 

面白い話で、川背は心酔するスペランカー以外には、基本心は開いていない様子だ。笑顔も、スペランカーがいる時以外には見られないと聞いている。

 

別に同性愛者では無いと言うが、忠誠心が深すぎるのと。それまでの人生に、強い孤独を感じていたのが理由だろう。

 

まあ、Mにとっては、他者の戦う理由はあまり興味が無い。

 

忠誠心の源泉についても、だ。

 

Mは、自身の肉体だけを信頼している。それだけでいい。

 

部屋に入ると、スペランカーが魔法陣の中央に正座していた。かなり広い部屋で、多くの奉仕種族の半魚人達が、槍を持って立っている。骸骨の戦士や、ミイラ男など、他の奉仕種族の幹部もいる様子だ。

 

彼らはMに咎めるような視線を向けたが、スペランカーが目を開ける。

 

何だ。

 

以前より、更に落ち着きを増している気がする。

 

まるで、道場で精神集中している武道家のようだ。だが、スペランカー自体からは、武芸や戦技の類は感じられない。スペランカーは、相変わらずの、不死と特殊能力しか取り柄が無い、弱者の筈だ。

 

何故だろう。Mは、スペランカーが大嫌いなのに。今の此奴を見ていると、今までの憎悪が和らいでくる気がする。

 

これは、いわゆるカリスマか。

 

長年様々な土地で名士と交流してきたが、本物のカリスマを持つ相手はごく一握りだった。

 

今、Mは。

 

今まで見た中でも、最大級のカリスマを目撃しているのかも知れない。

 

スペランカーは相変わらず弱い。

 

だが此奴の戦闘力は兎も角、どうしてか。作戦について、任せても良いという気分になりつつあった。

 

「Mさん、其処に席があるから、座って。 これから、作戦の説明をします」

 

「……既に話は聞いていますね」

 

「うん。 大丈夫。 作戦については、既に細部まで決めてあるし、Mさんには、Kさんと直接戦って貰えるようにするから」

 

それならば、文句は無い。

 

嫌みのために使っている敬語も、自然に発しそうになった。不快感がせり上がってくるが、まずは着席だ。

 

川背が、スペランカーの側に立つ。

 

魔法陣は、いつの間にか光を失っていた。

 

「川背ちゃん、説明をお願い」

 

「はい、スペランカー先輩」

 

川背は、相変わらずスペランカーの隣にいると、機嫌が良さそうだ。

 

普段は冷厳なまでの現実主義を取る事が出来るのに。或いはこの娘、根本的な所で、心を子供から成長させることに失敗したのかも知れない。

 

「今回の作戦の骨子は、アザトースの拡散した精神を集中させ、一つの人格として再構成し、肥大化した肉体から解放して救出する事となります」

 

腕組みしたまま、話を聞く。

 

問題は、その後だ。

 

「現在、アザトースの体内には、八つの惑星が確認されています。 アザトース自体はガス状の体を持っていて、その密度自体は大変薄く、それぞれの惑星にも酸素と適切な重力がある事が分かっています。 気温も、活動には申し分ありません」

 

ただし、問題があると、川背は言う。

 

それらの惑星には、考えられないほど強大なガーディアンが存在しているという。

 

そして、ここからが、作戦の骨子だ。

 

「それぞれの惑星にて、事前に用意していた魔術を展開。 惑星が十字直列するタイミングを見計らい、魔術を発動。 アザトースの精神を一点に集め、解放します」

 

「それで、私の出番は?」

 

「それぞれの惑星には、四元素神級のガーディアンがいます。 彼らを、この場にいる戦士達で、抑える必要があります」

 

それだけではない。

 

どういう方法を使ってか、Kがこの八惑星に、部下と息子達を伴って赴いたのだという。いわゆるK配下の四天王、ノコノコ、メット、パックンフラワー、ゲッソーの、それぞれが超一流の使い手達が確認されてもいる。

 

此奴らは、Mと何度となくやり合ってきた戦士達だ。

 

その実力は折り紙付き。生半可なフィールド探索者では、束になっても片手で捻られるだろう。Kに加えて四人がかりであれば、Mとでさえ良い勝負が出来るほどの奴ら。

 

それに加えて、Kの息子達。

 

それぞれが戦場で経験を積み、能力を磨いてきた戦士達だ。

 

確か、Mが以前に調査したところでは、七名。男子六に女子が一。いずれもが、高い戦力を持ち、油断できる相手では無いという。

 

半魚人の長老が、なにやら石像を見せる。

 

それは、おぞましい、形容も出来ない姿をした存在と。その周囲で、様々な楽器を鳴らしながら、狂気の宴にふける姿。

 

なるほど、これがアザトースと、その取り巻き達か。

 

この取り巻きの一柱一柱が、それぞれの惑星にいるという事なのだろう。

 

Kが何を考えているのかは分からないが、これは決戦になる。

 

「惑星直列が発生するまで、およそ七日。 それぞれの惑星へは、戦力を幾つかに分けて、派遣します。 本来は兵力分散は愚の骨頂ですが、今回は調査も同時に行わなければならないため、無理を承知でやるしかありません。 四元素神級の相手を倒すには、それ相応の戦力が必要です。 M氏を中心とする戦力、スペランカー先輩を中心とする戦力、それにL氏を中心とする戦力と……」

 

ぬっと、会議室に姿を見せるのは。

 

Mも知る古豪。

 

全てを喰らう者の異名を誇るPだ。以前同盟を組んだから、その行動については、逐一把握している。

 

それにこの老人、年を経たとは言え、今でも充分な戦闘力を有している。並のフィールド探索者の比では無い。

 

「儂が残りの一チームを率いる。 これで、2セット。 惑星八つを制圧したら、その後魔術師部隊の降下を行う」

 

「今回は、軍にも支援任務で参戦してもらいます。 確保した惑星における魔術部隊の護衛、惑星降下時の支援など、様々な場面で救援が必要です」

 

「それで、この戦いに勝ったら、どうなるのだ」

 

不安そうに挙手したのは、国連軍の最高幹部の一人。

 

元帥の勲章を身につけている男で、Mも個人的な交友がある。もっとも、あまり高い評価はしていない。実戦指揮よりもデスクワークの方が得意で、典型的な後方官僚なのに、自分を専門家だと思っている寂しい人物だと思っている。

 

ただ、この男の不安は分からないでも無い。ただのフィールドでも、軍は役に立たないのだ。ましてや四元素神級の怪物がいる場所に乗り込んで、無事で済むとは思えない。だが、川背は、気弱な相手を一瞥した。

 

「アザトースの中枢精神を確保すれば、おそらくその肉体は致命打を受けて、冬眠に入るでしょう。 異星の邪神の活動は一気に低下し、フィールド探索者の能力はそのまま残るかと思います」

 

「な、ならば、世界大戦が起きたり、邪神に苦しめられることは無いのだな」

 

「零では、ないでしょう。 しかし、今までの状況よりも、遙かに改善されるはず。 命を賭けて、戦う価値は充分にあります」

 

命を賭けて、戦う価値か。

 

Mにとって、最初の戦場に投入されたとき。そのようなことを考えている余裕は、一切無かった。

 

使い捨ての駒。

 

それ以上でも、以下でも無かった。

 

この戦いは転機になる。出来れば最初にKの奴をぶっ潰しに行きたいところだが、そうも行かないだろう。

 

奴を叩き潰し、姫を救出するのは最後だ。

 

「分かった。 私は作戦に乗ってやる。 魔術部隊はリンク、お前が指揮を執るのだな」

 

「川背さん?」

 

「最初からその予定です」

 

やはり川背の声は不機嫌そうだった。

 

別にどうでもよい。今更買った恨みが一つや二つ増えたところで、どうとも思わないからである。

 

それから、具体的な作戦の内容に入った。

 

心が高揚することは無い。戦いは常に行うものであって、Mにとって人生そのものだからだ。

 

今更新しい戦いに出向くくらいで、どうこうは思わない。

 

更に言えば、今までに危機に直面したことなど、数え切れない。特にMが裏世界の大物になってからは、ヒットマンに襲われた回数も、覚えていないほどだ。姫を助け出すことは絶対条件だが、それくらいのことは、危機とは思わない。

 

ただ、不快だ。

 

Kを殺す事は決めているが、それは是非今回成し遂げたい。

 

詳しい作戦の内容について、策定が行われる。スペランカーは川背とアーサー、それに若手のフィールド探索者達と、N社の精鋭何名かと出向く。Mはリンクだけを伴う。LはC社の精鋭部隊と共に。そしてPは、C社最強のフィールド探索者、最強のロボット戦士Rと一緒に、戦いに赴く。

 

これに国連軍の七個師団と二個艦隊が参加。主に無人支援機を中心に、ヨグ=ソトースの力を利用した大規模空間転送で、現地での作戦行動を支援する。

 

参加するフィールド探索者の数は二百七十。魔術師の数は六十。これは、史上最大規模の参加人数だ。

 

国連軍兵士は十三万を越える。これにバックアップの部隊を換算すると、およそ二十五万の人間が、この作戦に身を投じることになる。勿論予備の人員もあるから、実際には更に数が多い。

 

文字通りの総力戦。

 

「作戦開始はいつか」

 

「翌日には、国連軍の準備が整う。 それと同時に、作戦を開始する」

 

「まあいいだろう。 私はそれまで、寝ていることとする」

 

部屋を後にしたMは、一度壁に拳を叩き付けた。

 

手加減したから、小さめのクレーターが出来るだけですんだ。

 

よりにもよって、あのスペランカー主導の作戦で、拳を振るわなければならない。その怒りは、これくらいで勘弁してやる。後は、Kやその部下にでも、怒りをぶつければいい。

 

応接室に戻ると、Mは横になって、本当に眠ることにした。

 

戦いまで、後は力を温存するだけだ。

 

「起こしたら殺すぞ」

 

「はいはい、分かっていますよ」

 

リンクの減らず口を聞きながらも。既にMは、眠りの世界へと落ちていた。

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