オールドアクションゲーム二次創作   作:dwwyakata@2024

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4、最後の戦いの形

いきなり動きを止めた兵器群を見て、Mは舌打ちした。

 

敵が戦意を無くしたのが目に見えている。

 

戦いが好きなMも、無抵抗な敵を嬲る趣味はない。そんなことをするのは、ただの阿呆だと思ってもいる。

 

体の大きさを元に戻して、着地。

 

敵は、文字通り崩れはじめている。何か理由があって、本音は死にたくともあらがっていたが、それも消えたという事なのだろう。

 

戦わない奴を潰す気は無い。そのまま辺りを睥睨して、歩き始めたMに、後ろからリンクが呼びかけてくる。

 

「Mさーん!」

 

「どうしたあ」

 

「スペランカーさんがやったみたいですよ! ガーディアンの無力化に、成功したそうです!」

 

そうだろうよと、Mは内心毒づく。この状況を見れば、いやでも分かるというものだ。

 

視線をそらしたのは、気付いたからだ。

 

Kが来る。

 

待ち構えていただろう城を放棄したのか。という事は、何かあったのだろう。

 

Kは巨大な亀のような戦闘形態を取ることが出来る。今回も、その姿を取っていた。此奴の子供達も同じ能力を持っていたが、おそらくこれは先天的なものではない。何かしらの手段で、手に入れた力と言うことだ。

 

着地したK。

 

Mは戦闘態勢を取りながらも、相手の出方を待つ。

 

Kの体格は、背丈だけで七メートルを超えている。全身の筋肉も巌のごとく盛り上がり、怪物体の時は亀に近いため、皮膚も緑色に変わる。

 

そして此奴は、フィールドの怪物を喰らうことで、更に力を増す。

 

今まで、交戦すること数も知れず。

 

その全てが、引き分けか勝ち。だが、Kの勢力は、たとえ力尽きたとしてもまた再生する。

 

何度倒してもよみがえる大魔王。

 

それが、Mのライバル、Kだ。

 

リンクは跳び下がり、距離を取って見守りはじめた。戦いに巻き込まれないようにするためだろう。

 

「姫は城の中に残してある」

 

「ほう……何故わざわざ拐ったのに、質として活用しない」

 

「お前を正面から倒すためのエサとして使った、と言いたいところだがな。 俺がいると言うだけでは、お前が来ない可能性があったから、拐った。 それだけだ」

 

「相変わらずくだらん事を。 それで、殺りあうか?」

 

Kは周囲を見回した。

 

既に、無数の兵器は、塵になり始めている。

 

「思い出すな。 俺が八つの国を瞬く間に陥落させ、その全てをお前が制圧し返したことがあったか」

 

「どれも発展途上国だったな。 あれは面白い戦いだったが」

 

「俺は、これからも戦いを続けるつもりだ。 なぜなら、人間は戦わなければ進歩しない生物だからだ」

 

あらゆる手を使い。

 

力を増し。

 

財力を蓄え。

 

やがて、世界の支配者になる。

 

それが、Kと、その一味、同盟者達の勢力の思想。

 

フィールド探索者の中でも、通常の人間との融和を拒否した者達や、利権や勢力の確保がしたい者達。

 

故に、表には出られない。

 

邪悪の限りを尽くす者もいる。彼らは人間の、欲望がそのまま形を為した組織。

 

「今回此処にお前が来たのも、ビジネスのためだろう?」

 

「その通り。 此処はどうみても、地球よりも文明が進んだ星だ。 俺が持ち帰った技術の幾らかは、それこそ金の卵を産むガチョウになってくれるだろうよ。 この狭い地球に囚われず、宇宙進出の要となるかもな」

 

「そうかそうか。 それで?」

 

「これで引き上げるさ」

 

いきなり拳をMが叩き込む。

 

瞬時に同格の大きさになっての行動だ。だが、KはMの拳を受け止めてみせる。

 

同時に、空から降り注ぐ無数のミサイル。ホーミング機能付き。Mが一喝すると、衝撃波で全て吹き飛ぶ。

 

足下に絡みついてくる緑の蔦。

 

上空から落ちてきた、巨大な鉄塊。

 

Mは鼻を鳴らすと、全身を瞬時に燃え上がらせた。木のように太かった蔦が丸焦げになる。更に上空に拳を叩き込んだ。

 

鉄塊が二つに割れ、左右に落ちた。

 

着地する、メットとゲッソー。パックンフラワーは遠隔地から植物を操作したのか、周囲には見えない。

 

背後から繰り出される、首筋を狙ったハイキック。Mは小指一本で受け止め、はじき返す。ノコノコか。今の完璧な奇襲、相変わらずだ。雑魚の蹴りなら、ガードさえ必要のない所だった。

 

ただし、M自身も、その場から一歩も動きはしなかったが。

 

この程度はただのじゃれあいである。

 

既にKはいない。

 

四天王どもも、それぞれ別方向に散っていった。Kが残ると言って、Mに奇襲を仕掛けるためにつきあったのだろう。

 

相も変わらず、仲の良い主従だ。

 

今、Mに傷を付けられる存在は、さほど多くない。フィールド探索者の上位連中や、Kとその部下達。それに、戦略兵器くらいだろう。

 

リンクが此方に来る。

 

「いやー、強敵でしたね」

 

「お前の力なら、彼奴らの一匹くらいはつぶせただろう。 何をただ見ていたか」

 

「だって、Mさん、邪魔したら怒るじゃないですかー」

 

「ああ、そういえばそうだな。 以前それで貴様をぶん殴ったことがあったか」

 

そうだったそうだった。繰り返して言いながら、Mは巨大化を解く。

 

恐竜のような笑みを浮かべると、Mはその場にどっかと腰掛ける。

 

ガーディアンが潰れた以上、後は最後の術式とやらを用いて、アザトースを潰すのみ。姫については、後でゆっくり探せば良い。Kは律儀なところがあって、人質は必ず丁重に扱ったし、制圧した国でも自分に従う相手には優しかった。むしろ、前の独裁者より、Kの方が良かったと、Mを責める民までいたほどだ。

 

今はとにかく、やる気が失せた。

 

どうせ、スペランカーがすぐにここに来ることだろう。そうしたら、姫を探すことを口実に、この場を離れれば良い。

 

ただ、Kがさっさと撤退した理由は気になる。

 

奴なら、ギリギリまで粘ってから戦う可能性の方が、高そうだからだ。

 

やはり、今のうちに、助けておくか。

 

「リンク、スペランカーが来たら、Kの一味は撤退したと告げておけ。 俺は姫を助けてくる」

 

「はいはい。 それよりも、何だか嫌な予感がしませんか?」

 

だから、姫を助けておくんだよ。

 

Mは内心で応えたが。決して、口にも顔にも、出すことは無かった。

 

 

 

兵力の再編成が終わり、再突入が開始された。

 

Mとリンクだけが大暴れしていた暗闇の惑星には、前線基地も何も作られていない。Mがいる位置は、幸いにもリンクが使い魔を使って知らせてくれていたから、その最寄りの地点にヨグ=ソトースのゲートを開く。

 

残り時間は、一日と少し。

 

既に、他の七つの星では、魔法陣の設置と整備が終わっている。後は、惑星直列現象の発生を待って、儀式を行うだけである。

 

暗闇の星でも、Kの撃退が終わったこと、ガーディアンの排除が済んでいることは分かっている。

 

だから、リンクが魔法陣くらいは作ってくれているかという、甘い希望もあったのだが。

 

突入開始と同時に、その希望は、打ち砕かれることとなった。

 

最初に突入したのはスペランカー。そして、おくれて川背とアーサー、それにLが入ってくる。

 

だが、スペランカーは、思わず空を仰いで、絶句していた。

 

黒い空の彼方此方が裂けるようにして、金色が覗いている。その金色の中には、明らかに眼球と思われるものが、多数浮かんでいるのである。

 

降り注いでいるのは、隕石。

 

いや、違う。

 

一つ一つが、全て特大の怪物だ。先ほどまで戦っていた怪物達とは、根本的にものが違うのが分かった。

 

きっとあれは、ガーディアンとは別物。

 

おそらくは、アザトースという巨体を守る、免疫細胞だろう。

 

「兄貴!」

 

Lが叫ぶ。

 

リンクの、此方を呼ぶ声。

 

最強と言われる魔法の剣を振るって、リンクは群がる金色の何か得体が知れない怪物達と戦っていた。

 

だが、世界最強の魔術師と言われるリンクでさえ、容易に叩くことが出来ないほどの怪物達なのだと、一目で分かる。

 

斬り付けた剣は、肉に埋まる。

 

傷は瞬時に再生し、触手だか腕だか分からないものが振り回され、魔術の防御ごとリンクをはじき飛ばす。

 

至近距離から特大威力の魔術を連発して叩き込み、やっと討ち滅ぼす。だが、既に周囲には、敵意と殺気をむき出しにした怪物の群れが、檻を作るように、強固な群れを作っていたのである。

 

「困っていた所なんですよ。 支援を頼みます!」

 

「これは、一体!」

 

「いやあ、何だかKが話をしに来たと思ったら、どばって沸いてきましてねえ」

 

次々に突入してくるフィールド探索者達。あらゆる武器と技を使い、敵を押しとどめようとする。

 

だがその数、巨体。それに何より、強さ。

 

川背がリュックをふるって触手を抉り、跳躍して重要臓器があるらしい場所に蹴りを叩き込む。

 

凄まじい速度で叩き込まれた蹴りだが、一度では埒があかない。

 

アーサーが既に鎧を黄金にし、無数の魔術を展開して、周囲を薙ぎ払っているが。強力なアーサーの魔術を浴びてもなお、怪物は確実に倒れるかは分からない。

 

「なんと。 こ奴ら一体一体が、異星の邪神に匹敵するというか!」

 

「数が多すぎる!」

 

スペランカーは、事態を理解した。

 

何か、アザトースの本能的な部分に危険を感じさせるか、或いは怒らせるような事があったのだろう。

 

着地した、巨体。

 

Mだ。

 

抱きかかえているのは、美しい女性。深窓の令嬢に見えた。

 

宝を下ろすように、あの巨体を誇る傲岸不遜なMが、優しく女性を下ろすのを見て、スペランカーは驚いた。

 

「悪いが、先に戻っていてくれ」

 

「はい。 無理をなさらないでください」

 

「私と貴方は一蓮托生だ。 無理をしたくとも出来はしない」

 

美しい女性が、地球に通じるヨグ=ソトースの穴に逃げ延びるのを見ると、Mは中空に躍り上がった。

 

回転しながら、四方八方に、殺戮の炎をまき散らしはじめる。

 

爆発が連鎖して巻き起こった。

 

流石に巨大怪物達も、これには怯む。

 

「リンクさん」

 

「はいはい、何ですか」

 

「儀式を始めて」

 

「ちょ、正気ですか!?」

 

正気も正気、大まじめだ。

 

スペランカーの目を見て、げんなりした様子でリンクは呻く。アーサーと川背が、スペランカーの様子に気づき、それぞれ敵を押しとどめるべく、更に大胆に攻勢を掛ける。勿論、敵も黙っていない。

 

Mの怒濤の対空砲火をくぐり抜けてきた者達を、各個撃破していくしかない状態。

 

敵の数は、無数。何しろ、星系を丸ごと飲み込んでいる邪神の体内免疫だ。億どころか、兆や京にさえ達するかも知れない。しかもそれぞれが、地球に飛来していた異星の邪神並の実力を有している。

 

「長くはもたん! いそげ!」

 

アーサーが剣を振るい、わずかな隙が出来た瞬間。

 

真上から、襲いかかってきた金色の巨体が、大口を開ける。流石のアーサーも、逃れるすべが無い。

 

だが、其処へ。

 

直撃したのは、隕石のような破壊力の、サッカーボールだった。冗談のように吹っ飛んだ怪物が、体勢を立て直す前に。アーサーの放った魔法の槍がその体を貫き、引き裂いていた。

 

まだ怪物はそれでももがいていたが、他のフィールド探索者達が、よってたかってとどめを刺す。

 

スペランカーの側に着地したのは、本多宗一郎。かってあるフィールドで共に戦った仲だ。既に全身傷だらけだが、それが故に、彼の能力を十全に引き出せる。

 

「以前の礼だ。 彼奴らは、俺がなんとしても食い止める」

 

「分かった、お願い!」

 

触手が、一本跳んできた。

 

味方の攻撃をくぐり抜けて、此処まで来たらしい。千切れた触手とは言え、その巨体は尋常では無い。電車の一両がそのまま跳んできたようなものだ。その上に、ふわりと乗った髭の男性。

 

触手はいきなり真下の地面に落ち、潰れた。

 

戦闘向きでは無いフィールド探索者のハリー。以前いろいろな経緯で、アトランティスにスペランカーが居場所を作った事がある。それからはもっぱら写真家としてアトランティスの収益に関与してくれたが、今回は予備戦力として待機してくれていた。

 

猪突してきた、黄金の怪物。

 

その前に立ちはだかった二匹のペンギンが、連携してスプレーを浴びせる。

 

悲鳴を上げながら、怪物が冗談のように溶けていく。

 

グリンとマロン。かっては人間だったフィールド探索者。二人の能力は、破邪。今はスプレーという形を取っているが。

 

少しずつ、持ち直しはじめる。

 

リンクがやれやれと、とがった耳が飛び出した髪を掻き回した。

 

「三十分です。 絶対に、此処まで敵を入れないでくださいよ」

 

儀式の準備が出来るまでに、それだけ掛かるという。

 

そこから、八つの惑星で、同時に儀式を行う必要がある。どういうわけか、此処以外の星に、怪物達は飛来していないという。最小限の人員だけを残して、他は全て此処に集中できるというわけだ。

 

空が軋んでいるのが見えた。

 

暗闇がどんどん裂け、無数の目が空に浮かびはじめる。

 

モウヤメテ。

 

そんな声が聞こえた。

 

タタカワナイデ。

 

同じ声だ。

 

これは、アザトースの声か。

 

「ごめんね。 止めるわけには、いかないの」

 

スペランカーも、前に出る。

 

後ろは、任せてしまって大丈夫だろう。

 

戦闘向きでは無いフィールド探索者達まで頑張っている。それだけではない。

 

ジープに乗って来たジョーが、指揮を執り始める。兵士達が必死に防壁を造り、銃を並べて敵を乱射しはじめた。

 

「牽制だけで構わない! 敵の撃破は、本職に任せろ!」

 

そう言いつつ、ジョー自身は恐るべき手練れで、神に効くらしい特殊な弾丸を次々敵に撃ち込み、その勢いを減らしている。

 

Lが飛び上がった。

 

そして全身を燃え上がらせ、一つの火の玉となって、敵陣に突入していく。Lが掠っただけで、怪物達の巨体が爆散し、空に美しい一文字が描かれた。N社の精鋭部隊も、C社の精鋭部隊も、皆が一丸となって、怒濤となって押し寄せる敵を、ひたすら阻み続けた。

 

敵の触手に潰されそうになっている味方を見つけた。即座にスペランカーは飛び込む。

 

手を広げて立ちふさがったスペランカーを見て、一瞬の躊躇が怪物に生まれる。

 

「どうして、怒っているの? 聞かせて」

 

「お前達は、戦争をするために、古き知識を持ち出した」

 

それで、分かった。

 

Kの目的が。

 

そうか、そう言うことだったのか。邪神の領土にまで、貪欲に知識を求めて出向いたのか。世界を手にするための行動をしていたのか。

 

嗚呼。

 

やはり、人は。

 

躍り込んできた戦闘機が、無数のビーム兵器を乱射して、敵を撃ち抜きはじめる。あれはシーザーの戦闘機か。見ると、ビームは凄まじい連射をしているようだ。

 

地面に叩き落とされる怪物。

 

上にいるのはアリスだ。酷い怪我をしているようだが、闘志はみじんも衰えていない。

 

Mに向けて、数万か、或いは数十万かと思われる、とんでも無い数の火球が叩き込まれたのは、次の瞬間。

 

辺りを、爆発が蹂躙した。

 

だが、魔法陣の上に、サヤの式神達が多数展開して、衝撃波を防ぎ抜いていた。

 

M自身も、全身から煙を上げながら、なおも無事だ。

 

「面白いィ! この私の全力、どうやら気がねなしに振るう事ができそうだァ!」

 

もはや、怪物以上の怪物と化したMが、今まで以上の勢いで敵を薙ぎ払いはじめる。更に巨大化したMは、もはや意味も分からないほどの数の火球を常時周囲に出現させ、それを狙いも付けずに放っている。その全てが、飛来する怪物に、直撃している恐ろしさだった。

 

そのMに、怪物達も、今まで以上の怒濤の猛攻を続けた。

 

殺戮の宴は、加速する。

 

 

 

死骸の山が、出来ていく。

 

怪物は打ち払っても打ち払っても、なおも押し寄せてくる。Mは不屈の闘志と凄まじい戦闘力をふるって暴れ狂っているが、味方はどうしても徐々に押されはじめていた。

 

先ほどから、Pが参戦している。

 

老体はふわりふわりと浮きながら、時々バチンと鋭い音を立てて、口を閉じている。その度に、黄金の怪物の巨体が、冗談のように抉られるのだった。

 

確かに凄まじい。

 

おそらく防御を一切無視するタイプの能力なのだろう。

 

だが、それでも怪物の数が多すぎる。

 

スペランカーは走り回って、味方を守って、既に数え切れないほどの数、死んだ。

 

地面に押し潰され、触手で吹っ飛ばされ、焼かれ凍らされ雷を落とされ、引きちぎられて、すりつぶされて。

 

それでも、立ち上がる。

 

気付くと、川背がコートを掛けてくれた。既にスペランカーの服は、失われてしまっている。

 

川背を見ると、既に血だらけだ。

 

額からも血を流していたし、体中傷に覆われていた。

 

「ごめん。 もう少し、我慢して」

 

「僕は、まだ平気です。 それよりもM氏がもちますか?」

 

川背がMを視線で指す。

 

多分、その保つかという言葉の意味は。キレてアザトースを殺しに行かないか、という事ではないのか。

 

「きっと、平気」

 

「見てください。 あの空」

 

もはや、直視できぬほどの狂気がらんらんと降り注いできている、空。闇の帳は申し訳程度にしか残らず、降り注いでくるのは金色の悪意。

 

おそらく、精神が脆弱な文明の人間だったら。きっと、これを見ただけで、発狂して死んでしまうだろう。

 

「もう、アザトースの戦闘を司る部分は、この星の近くまで来ているのでは?」

 

「川背ちゃん、どういうこと?」

 

「決断をするときです。 もしも、あのヨグ=ソトースの門を通って、金色の怪物達が、なだれ込んできたら。 地球は一晩で壊滅します」

 

今ならまだ間に合うと、川背は言う。

 

だが、スペランカーは首を横に振る。

 

魔法陣が出来たと、リンクが叫ぶ。魔術師達が、儀式を始める。魔術師達にはアトラク=ナクアが指導をしているから、必ず上手く行くはずだ。

 

此処から、更に惑星直列が起きるまで。耐え抜かなければならない。

 

後どれくらいだっただろうか。思い出せずに苦労しながら、スペランカーはまた、戦場を走り始めた。

 

怪物達は、どれだけMに倒されても、次から次へ来る。

 

しかもそれぞれが、様々な魔術を使って襲いかかってくるのだ。味方の被害も、うなぎ登りのようだった。

 

儀式が、開始される。

 

魔法陣の中で、魔術師達が、一心に術式を組み始める。

 

魔法陣から、光が伸びる。全ての星で、おそらく同じ光景が、展開されているはずだ。伸びる光は八方向に、光の路を作っていく。

 

みんなが、しあわせになれれば、うれしい。

 

そんな声が聞こえた。

 

今度はかなりはっきりしている。或いは、良い傾向かも知れない。アザトースの拡散しきった意識が、集まりつつあるのだとすれば。

 

金色の怪物達は、ますます熱狂的な攻撃を仕掛けてきている。

 

遙か向こう。

 

山ほどもある怪物が、着地したのが見えた。

 

あんなのが来たら、もうどうしようもない。Mはかかりっきりになるだろうし、誰も支えきれなくなる。

 

万事休すか。

 

だが、その時。スペランカーの前に出たのは。川背だった。

 

「あまり長くは保ちません。 儀式とやらを、出来るだけ早く終わらせてください」

 

「川背ちゃん!」

 

「大丈夫。 僕は未来世界で、千メートルほどある巨大戦闘ロボットと正面からやりあいましたから。 あの程度の邪神なら、どうにかして見せます」

 

頭が良くないスペランカーにも、それが無理のある強がりだと言うことは分かっている。そもそもその話は、以前川背自身から聞いた。ジョーと、未来の戦士二人、それに軍隊と共闘して、やっと出来た話の筈ではないか。

 

邪神の力は、圧倒的だ。

 

さっきまでの、やる気が見えなかったガーディアン達とは違う。本気で殺しに来る四元素神以上の相手に、どれだけ保つのか。

 

だが、川背は行くと言う。

 

「信じています、先輩。 だから、命だって、賭けられます」

 

「……うん。 でも約束して。 絶対、捨て石になるなんて、思わないで」

 

「分かっています」

 

川背が、一直線に敵陣を突っ切る。

 

そして、山ほどもある邪神に向けて、躍りかかっていった。

 

他の味方を支援しながら、スペランカーは見る。

 

空に浮かんでいる無数の粒のような邪神。

 

あれが全部、山サイズなのか。

 

此処まで来られてしまったら、もう終わりだ。儀式の様子は。そろそろいけそうだが、惑星直列は、どうなっているのだろう。

 

アーサーが飛び出し、黄金に輝く宝剣を振るう。

 

空中にいた敵が根こそぎ薙ぎ払われ、爆散するが。これでアーサーも力を使い果たしてしまったか。鎧がいぶし銀に戻り、片膝をつく。

 

Mはまだまだ余裕がある様子だが、Lはそろそろばててきている。敵陣を蹂躙して廻る速度が、確実に落ちてきていた。

 

空を、一直線に横切る丸い影。

 

あれは確か、グルッピー。以前共闘した、バルン族の戦士だ。その後ろには、棘だらけの体をした、球体状の戦士達がたくさんいる。あれは、グルッピーが言っていた、ウニラ族の戦士達だろうか。

 

対立部族だと聞いていたが。この機に、来てくれたというのか。

 

思わぬ援軍。

 

更に、援軍はそれだけではない。

 

「何だ、アーサーさん。 もうへばってるの?」

 

おどけた声。見ると、子供のような姿をしたロボットだ。

 

C社最強の戦士、R。このタイミングに、ついに参戦か。たしかPと一緒にガーディアンと戦ったとき、かなり酷いダメージを受けたという話だが。急ピッチで直して、来てくれたか。

 

Rが腕を大砲に換え、空を連続して薙ぎ払う。

 

多数の敵が落ちてくるのが見えた。

 

気持ちを切り替える。

 

今こそ、スペランカーがやるときだ。

 

「ダゴンさん、ニャルラトホテプさん」

 

取り込んだ邪神達に呼びかける。

 

そして、空を見た。

 

金色の空が、変わりはじめている。儀式が、ついに効果を示し始めたらしい。

 

意識を、彼処に飛ばせるか。

 

聞いてみると、イエスと応えられた。

 

現在ニャルラトホテプのコアになっている人格は、この間打ち倒した主人格よりも、かなりスペランカーに忠実だ。

 

ダゴンはあれから、スペランカーの邪魔は基本的にしない。

 

「儀式の成功率は、五分五分という所だろう。 意識を飛ばして、戻ってこられる保証は無いが」

 

「それでも、やって」

 

「分かった。 いいだろう」

 

空に、光が伸びる。ついに儀式が完成して、空に向けて、精神を集約するための術式が放たれたのだ。

 

スペランカーは、その光と一緒に。

 

宇宙に、意識を踊らせていた。

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