オールドアクションゲーム二次創作   作:dwwyakata@2024

21 / 140
はい今度はバードウィークの話です。

FC時代らしい容赦のない難易度を誇る、小鳥が雛を育てるゲームですね。この子育てが兎に角大変で、すぐに雛が餓死する(餓死したら一機残機が減る)、ステージが進むとどんどん敵が増える、攻撃手段が極めて限られる上にハイリスク、そもそも餌を捕まえるのが大困難と、全力で殺しに来ている作品です。

色々と難しいゲームなのですが、ちょっと普通とは違う観点からの話を作っております。

もう一度念を押しますが、これはあくまで架空の世界の話の、架空の国での出来事です。


高き空への飛翔
序、地獄と小鳥


待ち望まれる音があった。

 

場所はアフリカの最貧困国。国際支援団体の病院。

 

国際支援団体の病院でさえ、常に危険にさらされ、周囲を帯銃した警備員が彷徨いているその国で。待ち望まれるその音とは。

 

羽音であった。

 

カラシニコフだけならともかく、多数のRPG7で武装したゲリラが横行するその国では、危険すぎてヘリや飛行機での輸送など、簡単にはできない。だから、常にワクチンが不足する。特にマラリアの小児用ワクチンの不足は深刻で、救えない子供が毎日大勢出るような有様だった。過激化する民族紛争は、連日のように死者を大量生産し、弱者である子供など蹂躙されるだけの存在に過ぎない。

 

それを一部ながらも解決したのが。

 

グレート・マムと呼ばれる存在だったのである。

 

闇の中、舞い降りる羽音。木陰で待機していた白衣の医師が駆け寄ると、木の枝の上で、青い翼を持つ鳥が、丁度今枝に留まる所であった。空色の翼を持つその鳥は、小鳥と言うには大きすぎ、小型の猛禽ほどもサイズがある。ただし嘴や爪はさほど鋭くなく、肉食性ではないことが見て取れる。

 

この鳥こそが、グレート・マムである。

 

首からぶら下げているのは、密閉式のワクチンボックス。器用にボックスを外すと、鳥は人間の言葉で喋った。

 

「今日の分。 確かにこれで全部届けたよ」

 

嘴で、ボックスを落とす。医師は慌てて下でキャッチした。黒い手は苦労をあまり知らないため、筋肉も無く、弱々しい。

 

神経質に翼を手入れしていた鳥は、目に強い知性の光を宿している。それだけではない。至近で見るとよく分かるのだが、全身には歴戦の猛者であることを証明する、無数の傷跡があった。この鳥が、どれだけの死闘をくぐり抜けてきたのか。病院スタッフには、想像も出来ない程である。

 

「グレート・マム。 今日も危険な中、ありがとう」

 

「礼などいいさ。 私に礼を言っている暇があったら、さっさとこの馬鹿げた乱痴気騒ぎを解決するんだね。 無意味で非生産的なことこの上ない。 地面を蠢く虫だって、もう少し世界で有意義に生きているよ」

 

不機嫌そうな声だが、この小鳥は今まで二百三十回に渡り、フィールドと呼ばれる超危険地帯を経由することで、ワクチンの輸送を成功させている。人間では危険すぎて入ることが出来ないその場所を、確実に抜けてくる歴戦の猛者。

 

医師は、その鳥がなぜ其処までの実力を持っているか、詳しくは知らない。ただ、世界でもまれに見る、鳥のフィールド探索者だという話だけは聞いていた。

 

医師が、必要なワクチン類の目録が入った袋をボックスに入れて、鳥の首に掛ける。面倒くさげに何度か羽ばたいてボックスの位置を調整した鳥は、枝の先になっていた赤い木の実を口に入れると、そのまま飛び去る。夜闇など、ものともしていない。もはや鳥という生物の限界を、遙か超越しているとも言える。

 

やがて、病院には静寂が戻った。

 

このワクチン輸送により、救われる人間は多くいる。

 

だが、それを快く思わない連中がいるのも事実だ。

 

対立部族の子供を助けていると言うことで、この病院を目の仇にしている民兵の組織がある。名はアパ・カルタ。国外にも名を知られている、凶暴きわまりない悪鬼のごとき連中だ。病院の周辺は強力な軍部隊が展開しているから手を出せないが、輸送しているヘリや車は、何度も襲撃を受けた。被害の深刻さに耐えかねて、病院側が国連に、グレート・マムの出動を申請したのが先々月。それから、一気に状況は好転したかに見えたのだが。

 

医師が病院内に戻り、ワクチン類を倉庫に入れると、院長が来た。今は明星さえない早朝。院長は本来なら、シフトで寝ている時間帯である。何かあったのだ。

 

「エマリ君。 拙いことになった」

 

「アパ・カルタが気付いたのですか」

 

「どうもそうらしい。 国連軍からの警戒連絡があったのだ」

 

院長がそう額の汗を拭いながら言った。

 

この、地獄の別名ともなっている小国に、さらなる嵐が吹き荒れる予感が、一介の国連からの派遣医師であるエマリの心中を駆け抜けた。

 

国連軍が、あまりにも酷い現状に、平和維持部隊を派遣するという連絡は来ている。A国の軍勢を中心とした精鋭で、ゲリラの鎮圧にも多くの実績を上げている。この小国では、武装民兵組織と言っても多寡が知れている。鎮圧は、そう時間を掛けずに出来ることだろう。

 

だが、その前に、この病院を守りきることが出来るかどうか。

 

病院は、怪我人や、病人を治療する所だ。

 

医療具や薬品を、作成する場所ではない。

 

どちらも消耗品である以上、病院は物資が絶えず補給されなければ、機能しない。そうしなければ、誰も救うことは出来ないのだ。

 

医者とは不便な職業だ。

 

人を救う職業でありながら。道具、時間、スタッフ、そのいずれが欠けても、人を救うことは出来ない。

 

そして今。時間と道具は、決定的に不足していた。

 

病院にはこの瞬間にも、マラリアを始めとする凶悪な病に冒され、栄養を得られず死に瀕している子供達と、対人地雷や戦闘に巻き込まれて手足を失った子供、或いは武装解除はされたが、何時暴れ出してもおかしくない兵士達が担ぎ込まれている。

 

医師の戦いは、永遠に続くのだ。

 

それがせめて、多少は緩和されれば。エマリは、今後の状況が、少しでも良くなるようにと願った。

 

それが、多分かなえられないことだと知りつつも。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。