オールドアクションゲーム二次創作   作:dwwyakata@2024

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5、偉大なる母

目を覚ますと、透明なケージの中にいた。

 

グレート・マムはゆっくり翼を動かして、まだ痛みが残っていること、死なずに済んだらしいことに気付く。首からかけていたワクチンのケースはなくなっていた。

 

「あ、起きた!」

 

子供の声。

 

無邪気そうな、病院着の子供が、満面の笑みを浮かべている。グレート・マムは愛想を振りまく元気もなかったので、ただ首を動かして、医師を捜した。どうやら、病院までは、辿り着くことが出来たらしかった。

 

いつもワクチンを受け取る若い医師が現れる。

 

「グレート・マム! 目覚めましたか!」

 

「生憎死にはしなかったようだね」

 

「良かった! 貴方が命がけで運んでくれたワクチンのおかげで、今日も助かった子供がいます! 子供達のためにも、貴方を死なせる訳にはいかなかった!」

 

「そうかい」

 

感動に、若干醒めた声で返す。ただ、子供達が助かったと言うことに関しては、良かったと思う。このくだらない乱痴気騒ぎがさっさと収まれば、もっと効率よく子供達も助かるのだろうに。

 

周囲を見回す。

 

どうやら人間達と同じ部屋であるらしい。子供が多かったが、大人の病人も、好意的な視線を向けてきていた。若干こそばゆい。

 

部屋に、呼ばれて入ってきたのは。スペランカーだった。子供みたいな笑顔で、小走りで駆け寄ろうとして、案の定手前ですっころぶ。そして完全に停止。見ていて不安になったが、何とか自力で立ち上がると、ちょっと恥ずかしそうに歩み寄ってきた。

 

「えへへー、転んじゃいました。 ご無事でしたか?」

 

「見ての通りだよ。 何があったのか、話してくれるかい?」

 

スペランカーは話す。控えめに、自分がアパ・カルタを潰したと言うことを。彼女が死に追いやったアパ・カルタ幹部は、事実上のリーダーであり、その死によって過激派アパ・カルタは崩壊。事実上機能していない国軍でも抑えられる程度の存在にまで弱体化し、既に掃討が終了したという。

 

医師が付け加えてくれる。アパ・カルタが倒れたことで、若干この国の混乱も収まった。だが、まだ全体では、酷い内戦状態が続いているとも。

 

あまりにも足りていない物資と富。そして不公正すぎる内情。何よりも、食料に比してあまりにも多すぎる人。

 

様々な理由が、内戦の終結を阻んでいる。そして、それが故に。まだ当分、中立地帯として重要なフィールドは潰すことが出来ないという。

 

「フィールド内には、何がいるんですか?」

 

「巨人達だったね。 目が一つの奴とか、腕がたくさんある奴とか。 色々いたね」

 

「それは、この国の神々なのではありませんか」

 

医師が言う。或いは、そうなのかも知れない。

 

もしそうだとすると、あまりに愚かな子孫達に対する怒りに化けて出たのかも知れなかった。

 

「どっちにしても、怪我が治ったら、すぐにまた仕事をしなければならないみたいだね」

 

 それは、どうしようもない事実。

 

 だが、別に構わない。それが仕事であるからだ。そして、仕事をこなせば、唯一の望みはかなうのだから。

 

「すみません。 次のコンボイが到着する時に、医療物資はかなり補給できます。 その後に、お願いします。 それまでは、此処の子供達の話し相手にでもなってやってください」

 

見れば、右手がない子供、左足がない子供、目が片方無い子供もいた。

 

いずれも戦災だろう。自然の摂理で失われた四肢ならば仕方もないだろうが、これは大人の腐った事情によって奪われた未来だ。

 

それなのに、子供達は笑っている。喋る鳥が、珍しいらしかった。

 

「分かった。 そんな任務で良いならば、幾らでも受けてやるさ。 どうせ、この翼は直さなければ使い物にならないからね」

 

医師があたまを下げる。

 

少し、こそばゆかった。

 

 

 

国連軍の本部に出てから、スペランカーは貸与されている寮に戻った。と言ってもそれほど上等な代物ではなく、軍基地の片隅に建てられたプレハブである。それでも士官待遇なのだから、兵士達の状況が伺える。

 

ベットにごろりと横になる。そしてため息一つ。

 

結構、フィールド探索者コミュニティの上層から、絞られたのだ。

 

フィールド探索者は、紛争に介入してはいけない。

 

人間同士の戦争に、関与してはならない。

 

今回は、攻撃を受けた末での反撃だから、許されたことだ。もしもこれ以上この国にとどまり、民兵と交戦したりすれば、それだけで資格を剥奪され、仕事を干されかねない。それは困る。

 

飢えは、トラウマだ。

 

今でも、一番怖いのは、痛いことでも酷いことをされるのでもない。飢えることなのだ。

 

ドアをノックする音。いつの間にか寝てしまっていたらしく、ベットの上で目を擦りながら起きた。裸足のまま1DKの玄関に出てドアを開けると、あの鳥使いの少年が、肩に隼を載せて立っていた。

 

そして、おもむろに土下座する。バランスを崩した隼が、何度か不満そうに羽ばたいていた。

 

ぽかんとするスペランカーの前で、少年はたどたどしい英語で言った。

 

「J国では、無茶な事を頼む時に、こうすると聞きました」

 

「へ? う、うん」

 

「僕を弟子にしてください。 もう無力は嫌だ。 貴方のような強さと、二度と外敵に村を蹂躙させない力が欲しい、です」

 

しばらく困り果てていたスペランカーだが。腰を落として、頭を掻きながら言った。

 

「顔を上げて、ジラトルくん」

 

「……」

 

近くで見ると、幼さが残る少年だ。しかし、目には強い意志の光が宿り始めている。少年から、男になりつつある顔だ。

 

「君にはフィールド探索者のコミュニティから、誘いの声が掛かってる。 私よりずっとずっと優れた使い手が、鍛えてくれるよ」

 

「僕には、先生が良いです」

 

「強さが欲しいなら、学ぶ相手を選んでちゃ駄目だよ」

 

少年は若干落胆した風でもあったが、しかしスペランカーの言葉を理解したのだろう。やがて、その場を去っていった。

 

スペランカーは思う。ああいう少年が、この国を変えていかなければならないのだろう。しがらみにがんじがらめにされた大人達よりも。

 

生き抜いて、この国を良い方向へ変えて欲しい。

 

もし良くなったら、また此処に来たい。

 

その二つは、今のスペランカーが、切に願う事であった。

 

そして、この国が平和になったのなら。

 

あの口が悪いグレート・マムと。一緒に観光をしたい。そう思った。

 

 

 

(終)




偉大なる母のお話。

そしてこう言う世界にも、救いようが全く無い存在がいるというお話です。
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