オールドアクションゲーム二次創作   作:dwwyakata@2024

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はい今回はFC時代の名作シューティングゲーム、テラクレスタの話です。

合体機能を有する五機の戦闘機を操作するシューティングで、原案では合体後に巨大ロボに変形する話もあったそうです。

五機合体、フォーメーション攻撃(エディット可能)、火力と引き替えに被弾面積が増えるなど、ロマンの塊みたいな作品ですね。

難易度は高いですが、なかなかの名作です。


風の剣舞う
序、平凡の終了


これから、戦闘機に乗って、殺し合いをしなければならない。

 

風桐一(かざきりはじめ)は、高校生になると同時にその事実を知らされた。しかも、目の前にいる、ゴリラのような強面の、愛想の欠片も感じられない黒服からである。

 

「こ、殺し合いっ!?」

 

思わず聞き返してしまった。引きつった口元を、なかなか元に戻せない。客商売をしている以上、営業スマイルは身につけていたはずだったのに。

 

「そう、殺し合いだ」

 

「ど、どうしてっ! それに、何で私が!」

 

「お前だけではない。 他にも四人。 そして、これに負ければ、世界が滅ぶ」

 

あまりのことに、意識が落ちかける。頬をつねったのは、夢だと思いたくなったからである。

 

痛かった。

 

両親が、隣で涙を流している。

 

自宅の応接室だというのに。空気はただひたすら、暗かった。

 

 

 

風桐一は二十一世紀の日本で暮らす、普通の女子高生である。

 

背は少し平均より高め。ポニーテールにしている髪の毛は、同級生達から綺麗だと言われることもあるが、一時期は鬱陶しい男子が寄ってくるので短髪にしていたこともある。長身の割に胸囲は小さく、それが気になる唯一の点であった。また、健康的に外を自転車で走り回っているため良く焼けていて、それが「遊んでいる」ように見えるらしく、ろくでもない男ばかり寄ってくるのが頭痛の種であった。

 

顔立ちについては、よく分からない。友人達からは「親しみやすい」とか言われているのだが、実感はない。特に目立った所のない普通のルックスで、将来社会人になっても化粧のしがいがないだろうなあと、今から思っている程度である。

 

得意なのはスポーツ。身体能力はかなり高めで、特に視力は常に2.0以上と計測されていた。学業はあまり得意ではなく、いつも成績は平均以下。趣味は自転車屋の娘であるという事もあって、サイクリング全般。特に、マウンテンバイクで強烈な傾斜を持つ山道を登り切るのが大好きだった。山を征服する快感は他に代え難く、多分男が出来てもこの趣味だけは止められないだろうという確信がある。

 

蛇は平気だが、蜘蛛は苦手。どうも足が多い生物は駄目らしく、家にアシダカグモが現れた時は年甲斐もなく黄色い悲鳴を上げてしまうこともある。

 

いずれにしても、ずば抜けた身体能力を除いてしまえば、現代日本に暮らす、平凡の域を超えない女子高生である。

 

もちろん、殺し合いなど、まるで無縁の世界に生きてきた娘であった。

 

だが、一は知っていた。小学生の頃から、両親の所に、時々黒服の恐ろしげな男達が、深夜訪れていたことを。今時自転車屋は何処も経営難だから、余程商売が上手か、或いは大手チェーン店か、それとも大型ディスカウントストアの店内店でもなければやっていけない事も多い。にもかかわらず、零細である実家の自転車は経営を続けて行けている。不審は幼い頃からあった。中学の頃には彼らが借金取りだと思っていた。

 

高校を卒業したら進学せず働こうと決めていたのも、実家の経済状況を知っていたからだ。どれだけ酷い借金をしているにしても、少しはそれでマシになると思ったから、働こうと考えていた。

 

しかし、商店街の店が次々潰れていく中、一の自転車屋は平然と経営を続けていた。いつの間にかシャッター商店街になっていたのに、自転車屋だけは無事という、異様な光景となっていた。そして年を経る度に、両親の顔は青ざめ、夜に二人で泣いている事が多くなってきた。きっと、あの黒服が原因だと、一は思っていた。

 

それは事実だった。

 

そして、今に至る。

 

店の正面から、夕刻堂々と訪れた四人の黒服が。一に、事実を告げたのである。しかも、実に不快そうに、だ。両親がおずおずと出した高級な紅茶をこともなげに飲み干しながら、黒服の男は続ける。

 

「我々とて、何ら戦闘経験のない小娘を、戦場になど放り込みたくない。 勝率を上げるのであれば、歴戦の特殊部隊隊員や、アグレッサー部隊の精鋭でも使えば良いことなのだからな。 だが、これに関しては、お前も含む特定の五人しか、責務を果たすことが出来ないのだ」

 

「だ、だから何で!」

 

「詳細は訓練の過程で説明する。 明後日から、政府の特務施設に来て貰う。 ちなみに口外したら、お前よりも、情報を知った人間に危害が加わるから、そう思え。 警察などの、公的機関の人間でもそれは例外ではない」

 

そうやって、渡される名刺には。内閣特務機関とか、恐ろしげな組織名が書かれていた。

 

もはや、反論が許される雰囲気ではなかった。泣く泣くという言葉が相応しいが、ともかく一はその怪しげな施設に出向かなければならない。分かっているのだ。自転車屋が潰れないように、この黒服どもが金を出していたことは。ありとあらゆる状況証拠が、それを告げている。

 

「しょ、証拠は」

 

「証拠?」

 

「貴方たちが、政府の人間で、私が必要だって証拠は」

 

「明日テレビを見ろ。 チャンネルは国営放送第一で、時刻は夕方七時半。 他の四人にも、丁度その時間に、特定の不釣り合いなワードが流れることを告げてある。 ワードは……」

 

確かに、国営の放送で、そんなワードが流れる訳もない。しかもその時間帯は子供向けのアニメであり、放送事故と取られかねない状況だ。逆に言えば、国営放送にそれだけの圧力を掛け、しかも放送させる価値がある、ということだ。

 

数学がいつも10段階中2の一でも、それくらいのことは理解できる。

 

翌日は、殆ど食事の味がしなかった。母が作ってくれた弁当は、塩と砂糖を間違えていたらしいのだが、食べていても何とも思わなかった。クラスメイトに恋でもしたかとからかわれたが、もしそうだったらどれだけ幸せであったか。

 

無言で、家族と一緒にテレビを見た。

 

国営放送のアニメでは。男が言ったとおりのワードが、放送された。ネットの大型掲示板などでは放送事故として騒ぎになっていたが、自分には無関係の事として騒いでいる連中が、羨ましくてならなかった。

 

 

 

指定された場所は、近所の駅の近くであった。そんな所に、恐ろしげな施設があるとは、とても思えなかった。事実、愛用のマウンテンバイクをとばして辿り着いた其処は、大型の企業ビルだったのである。少なくとも、外見は。

 

裏手に駐輪場があったので、愛車を止めて中へ。自動ドアを潜った中は、どう見ても大手の企業ビルだ。綺麗に磨かれた大理石の床、流行の吹き抜け、そして応接用の革張り椅子。社員食堂らしいものもあって、正面には受付があった。

 

本当に、あのゴリラ野郎の指定したビルなのだろうか。不安に思って携帯のGPS機能を使って場所を確認するが、間違いない。

 

大きく歎息すると、つかつか歩いて受付に。周囲のサラリーマンらしい連中を観察すると、妙なことに気付く。誰も明らかに高校生である(嫌がらせに制服で来た)一を咎める様子もないのである。いやな予感が大きくなる中、愛想が良さそうな、化粧が似合う素敵な笑顔の受付さんに、一昨日渡された名刺を見せる。途端に、受付さんの笑顔から、表情が消えた。

 

ぞっとするほどの変化だった。

 

「エレベーターで、七階に。 其処から右手に出て、奥にあるクレードエンジニアリングの受付にいけ。 押す番号は331だ」

 

「は、はい」

 

「それと次からは私服で来るように」

 

言い終えると、受付さんはまた笑顔に戻った。

 

ひょっとすると機械なのではないかと思えてしまうほどの、極端な変化だ。もう帰りたい位だが、もしも此処で逃げたりすれば、両親がどんな目に会うか知れたものではない。

 

貧しい経営を幼い頃から見てきた一は、金がどれだけ大事なものか良く知っている。漫画の世界では金より大事なものがあるとか良く言うが、そんなに簡単な言葉で片付けて良いものではない。

 

ましてや、政府を敵に回したら、どんなことになるのか。

 

エレベーターにはいる。同時に、サラリーマンが何人か一緒に乗り込んできた。七階を押す。誰も、階数指定のボタンには、見向きもしなかった。

 

多分、監視を兼ねているのだろう。

 

エレベーターは異常に滑らかで、すぐに七階に着く。降りると、サラリーマン達も一緒に降りてきた。よく見ると、全員スーツだが、愛想笑いもなく、筋肉質な者達ばかりだ。正直怖いが、もう後には引けない。

 

言われた会社にはいる。受付には綺麗な花が生けられた花瓶があり、何と静脈認証の装置までがあった。電話で、指定された番号を押す。同時に、うしろでがしゃんと凄い音。何と、入り口が鉄格子で塞がれていた。

 

もうやだ。帰りたい。

 

しかも鉄格子の向こうでは、サラリーマン達が、此方の一挙一動を見ていた。スーツの下には、多分拳銃か何かを隠し持っているのだろう。

 

静脈認証のドアが内側から開く。顔を見せたのは、例のゴリラ男だった。

 

「入れ」

 

「……」

 

唇を引き結ぶ。他の四人も、こんな風に脅されて、来ているのだろうか。そう思うと、怒りも沸き上がってくる。

 

しかし、何も出来ない自分が悔しくて仕方がなかった。

 

政府の施設とやらに入る。つんとした刺激臭があった。照明は低く抑えられており、ずっとサーバの稼働音らしい低い音がしている。

 

変な台の上に上がらされて、ロボットのアームみたいなのが体の周囲をぐるりと回った。どうやらスキャンされたらしい。更に、静脈認証の手続きを受ける。何度かやったことはあるが、あまり気持ちがよいものではなかった。しかも指と目と両方させられて、肩が凝った。

 

それが終わると、少し広めの部屋に通される。外から見て大きめのビルだったが、それにしても大きい。ひょっとするとこの階にある他の会社は全部ダミーで、此処だけが機能しているのかも知れなかった。間取りから言って、それが事実なのだろう。

 

中には既に四人いた。気の毒な同胞という訳だ。

 

長いソファーが奥に。其処に二人座っている。

 

一人は小学生くらいか。いわゆるゴスロリ系の格好をした、根暗そうな女の子だ。眼鏡は分厚く、一心不乱に何か読んでいる。もう一人は多分同年代の男の子だろう。若干背は低いが、それなりに顔立ちは整っていた。ジーンズとTシャツというラフな格好だというのに、座り方が妙に女々しい。

 

壁際で、腕組みして立っているのは、とっつきにくそうな長身の女性である。背も高いが、それ以上に胸も大きくて、羨ましい。背負っているのは多分竹刀だろう。剣道部なのかも知れない。彼女だけは一と同じく制服だった。近場の、結構有名なお嬢様学校の制服である。

 

最後の一人は床で正座して、目を閉じていた。金髪だから、或いは外国の子かも知れない。それなのに、熟練した柔道家か何かのような、もの凄く落ち着いた面持ちである。しかも何処かの道場のロゴが入った道着姿である。ただし背丈はかなり低い。小学生くらいの女の子より、少し高いくらいだろうか。

 

「貴方が最後?」

 

「へっ!? ええと、うん」

 

ソファに座っていた男の子が、もの凄く可愛らしいアニメ声で言ったので、反応が遅れた。どうやら男の子ではなく、女の子であったらしい。となると、全員が女の子という訳か。

 

「私、有馬伊座実(ありまいさみ)。 よろしくね。 高校一年だけど、貴方は?」

 

「あ、よろしく。 私、風桐一です。 同学年です」

 

見かけのインパクトとは裏腹に、女の子らしい気配りが出来る性格のようだった。

 

他の三人はと言うと、やりとりに無反応だった。眼鏡の子は、注目されていると気付くと、面倒くさげに言った。声は格好の割に妙に低い。

 

「沖田のの」

 

「ののちゃん? よろしくね」

 

「多分、私は君たちより年上。 高校三年生」

 

一方的に言うと、ののは本に再び視線を落とした。壁際にいた長身の女性が、咳払いする。

 

「土方琴美だ」

 

「よろしくお願いします」

 

彼女は高校三年生だという。土方という名前で思い出した。確か県大会などで賞を総なめにしている、神童と呼ばれる剣道少女が近くの高校にいたはずだ。そういえば、着ている制服と、情報が一致している。

 

男子には怖がられて女子にはもてるとかいう話だが、雰囲気を見れば納得である。鋭そうな切れ長の目と言い、凛とした雰囲気と言い、異性よりも同性に好感を持たれるタイプであった。容姿はそれなりに端麗だが、余程年上の男子でなければ、近付こうとは思わないだろう。

 

最後に正座していた女の子だが、じっと瞑想を続けていて、此方など眼中にない様子だった。だが、不意に目を開けると、周囲を見回す。

 

綺麗なマリンブルーの瞳だ。やはり欧州人の血が混じっているのだろう。

 

「全員、揃ったようですね」

 

「貴方は?」

 

「私は武田クライネです。 中学一年です。 以後よろしくお願いいたします」

 

日本人より巧みに、45°の礼を完璧にこなしてみせる。やたら折り目正しい言葉遣いと言い、何処か良い道場の娘なのかも知れない。

 

いずれにしても、かなり濃い面々だ。しかしながら、彼女らがこれから戦闘機に乗って殺し合いをさせられるとなると、同情せざるを得ない。一番下のクライネに到ってはまだ中学生と言うことではないか。

 

部屋に黒服の男達が入ってくる。

 

一様に皆が非好意的な視線を向けたので、少しだけ一は安心した。

 

「全員揃ったところで、状況の説明をさせて貰う」

 

「子供、しかも女ばかり集めたのには、ちゃんとした理由があるんだな」

 

「くどいぞ、土方」

 

黒服がさっさと来るように促したので、土方が最初に歩き出す。歩き方まで颯爽としていて、羨ましいなと一は思った。

 

隣の部屋に全員で移動。三列に机が並べられていたので、適当に座る。一番先頭の真ん中に土方琴美が座り、他はばらけた。面白いのは、武田クライネが先頭右に座っていることだろう。見かけの年齢と、中身に相当な乖離があるらしい。

 

プロジェクターが部屋の真ん前に置かれていて、なにやら映像が流れ始める。何とモノクロである。

 

其処には、現代のどの戦闘機とも似ていない、非常に鋭利な姿をした大型機が映っていた。本当に飛べるのか不安だったが、何とVTOL機である。垂直に上昇して、瞬く間に加速。飛行機雲を引き、やがて音速を超えた時に生じるマッハコーンを生じさせていた。

 

「これが、ウィングギャリバー。 お前たちに、乗って貰う機体だ」

 

「こ、これが!?」

 

特撮に出てくるような、異常な動きを、モノクロの画像の中でウィングギャリバーとやらは行っている。機動性能にしても、形状にしても、いずれもが一の知る「戦闘機」とは完全に別物だ。

 

何かと戦っているようなのだが、敵側も露骨に異常な動きをする戦闘機ばかりだ。どうして中に乗っている者が耐えられるのか、さっぱり分からない。しかも飛び交っているのはミサイルでも機銃でもない。明らかにビームとしか形容しようがないものであった。レーザーか、或いは荷電粒子砲か。

 

やがてモノクロ映像の向こうに、小山のような何かが映り込む。

 

近付くにつれ。それが無数の腕を持ち、兜を被った人間にも思える頭部を持つ、邪悪な意思を秘めた何者かと言うことが分かってきた。

 

「そして、これがお前たちが倒すべき存在。 魔王マンドラーだ」

 

不意に、映像が途切れて、砂嵐になる。

 

負けた、のだろうか。

 

いずれにしても、暗澹たる気持ちを、一は味わい続けていた。

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