オールドアクションゲーム二次創作 作:dwwyakata@2024
喫茶店ミラージュに風桐一が入ると、スペランカーが待っていた。窓際の席にちょこんと腰掛けていた彼女は、あの戦いの後交流を持つようになって、時々楽しくお茶をしている。年下かと思っていたのだが、実は社会人らしく、おごって貰うことも多かった。何だかんだで、長く続いた貧乏生活で、経済観念は引き締まっている。おごって貰うと言われると、どうしても弱いのだ。
童顔のスペランカーと向かいに座る。今日は武田も来るのだが、まだ姿は見えない。
「スペランカーさんは、また海外に向かうんですか?」
「え? ああ、またお仕事でね。 今度はなにさせられるんだろうと思うと、凄く憂鬱だけど」
「いつもながら、大変そうですね」
「ははは、うん」
ちょっと空気がどんより。
年上なのだが、妙に可愛い人であることを知っているので、色々とからかうこともある。ただ、今後はこのコネクションを生かして、一緒に仕事をしようとも考えているのだ。自転車屋を継ぐつもりはある。だが、副業を持っておかないと、今後の経済状態では厳しいかも知れない。
だから、フィールド探索者とのコネクションを持っておく。
彼らの仕事は危険だが、仕事の報酬は桁違いだ。一緒に修羅場を潜ったというよしみもあるし、今後のためになる関係だと思って、大事にしていかなければならなかった。
もちろんそう言う打算の他に、話していて楽しいという部分もある。
武田は来ない。
もう、監視から外れていることは知っている。だから。
ずっと、聞きたいことを、聞いてみた。
「スペランカーさん」
「ん?」
「あの魔王マンドラーって、宇宙人じゃないですよね。 地球人だったんじゃ、ないんですか?」
すっと眼を細めたスペランカーが、左右を見回す。
そして、大きく歎息した。
「悪いけど、応えられない。 でも、どうしてそう思ったの?」
「……あまりにも、分かり易い悪としての存在が、異世界の住人だとは思えなかったからです。 それに、魔王という割には、その存在も、造型も、地球人的というか、身近に感じるものばかりでした」
スペランカーは、コーラフロートを、ストローで啜り始めた。
彼女は応えてくれないが、反応から言って、間違いないのだろう。
この間、図書館で借りた本で見た。
地球人はいっこうに進歩しない。彼らを団結させ、世界を纏め上げるには、外部からの強大な力が必要だ。
もしも宇宙人が圧倒的かつ恐ろしい戦力で攻めてくれば。地球人は団結して、危機に立ち向かおうとしたかも知れない。
それが、本の趣旨だった。
マンドラーという存在は、それにぴったり当てはまるのではないだろうか。もしも宇宙人だったのなら、なぜ地球を襲ったのか。反撃されながらも、どうして逃げようとはしなかったのか。
コーラフロートを飲み干すと、スペランカーは、無言でモノクロの写真を取りだして、見せてくれた。
それには、満面の笑顔を浮かべる優しそうな老人と。人種が様々であろう、笑顔を浮かべた子供達が多数映っていた。何かの孤児院であろうか。孤児院の上には、何か文字が書いてある。しかし、見覚えがない文字だった。異世界で使われていた文字とさえ、違っていた。
この世界にもマンドラーがいるという言葉は嘘だと、この写真を見て、一は確信する。
「私があの場所で見たのは、これに起因する悲しいものだけ。 後は他言無用にして」
「……はい」
話を切り上げると、スペランカーは最近N水産から出た缶詰がとても美味しいという話をし始めた。
土方は念願の独立を果たし、弟と静かに暮らし始めている。弟ともこの間会ったが、感じの良い子だ。
有馬は弟たちと一緒に、母の下を離れた。忙しいようだが、大学までは出ると言っている。この間の任務で稼いだお金で、それが十分可能だろう。
武田はお爺ちゃんの手術に成功。二人で静かに暮らしている。
ののも、政府の施設を出ることが出来た。最近はMに連れられて、見習いフィールド探索者として、実績を積んでいるという。
みんな、生きている。
マンドラーと、その配下達との交戦で傷ついたウィングギャリバーは、奇跡的に不時着に成功した。飛翔能力を持つMが少し手伝ってくれたらしいのだが、それ以上に、一の為した奇跡に近い飛行が、生き残りの要因だったという。
しかし、その生は、死の上にあるのだと、こう言う時に思い知らされる。
やがて、武田が来る。金の髪と青い眼を持つ彼女は、中学校の制服がとても初々しい。訓練の時はいつも道着だったからだ。最近はぐんぐん背が伸びていて、いずれ追い越されるかも知れない。
「お久しぶりです。 風桐さん、スペランカーさん」
笑顔が、眩しい。
あの戦いを生き抜いた仲間と、今はただ。
生を謳歌しようと、一は思った。
(終)
名前で分かったかも知れませんが、テラクレスタのパイロット達の名前には元ネタがあります。
こういう所では少しだけ遊ばせていただきました。