オールドアクションゲーム二次創作 作:dwwyakata@2024
病院で目を覚ましたスペランカーは、まず最初に伸びをした。何日眠っていたのだろうか。よくわからないが、とても気持ちが良い目覚めだった。
点滴の注射がされていないのは、つけるだけ無駄だと判断したからだろうか。個室なのはなぜだろう。入院費が、保険が利くかどうか不安になる。あまりお金持ちではないのだ。
それにしても、あれからどうしたのか。
記憶が綺麗に消えている。ダゴンと契約して、塔のような怪物にブラスターを叩き込んだ後の事が分からない。
ブラスターを連射したのだから、相当なダメージがあったのは疑いない。しかも、邪神を体内に受け容れるという極めつけの無理をしているのである。このまま、目を覚まさないこともあり得たのだ。
「ダゴンさん、いる?」
返事はない。
力が漲るような感覚もなかった。
ドアがノックされる。返事をすると、川背が入ってきた。手足に包帯を巻いていて、かなり痛々しい姿である。
「先輩! 良かった!」
「私、どれくらい寝てたの?」
「一週間と少しです」
それは酷い。それだけ、桁違いのダメージを受けたと言うことだ。何万回もダゴンに殺されたダメージが、今頃になって負担になったのかも知れない。ベットから起きようとして、すっころんで床に激突。
意識が戻ると、川背が心配そうに覗き込んでいた。
「大丈夫ですか、先輩」
「うん。 いつも通り」
「もう、しっかりしてください」
手を貸してもらって、立ち上がる。そういえば、白衣の下はオムツに尿管なのだと気付いて、流石に赤面する。一週間も寝ていたのだから当然の処置だが。
ナースコールを鳴らして、看護師さんに処置をして貰う。一通り検査をするも、何も問題は無し。これなら明日には退院できるという。ダゴンは眠っているのか、気配を全く感じなかった。
川背と一緒に、ロビーに。大きなテレビがあるという。途中、色々と聞いた。
あの後、N社のレスキューヘリが来て、ぶっ倒れていた三人を回収してくれたそうである。アリスも酷く消耗していたが、今は歩くことも出来るそうだ。
謎なのはアンリエッタである。あれから姿を消したという。村人達には厳重な監視が付いているから、彼らの仕業でないことは確かである。川背は小首を傾げていたが、スペランカーにはぴんと来たことがある。
あの鐘の音。
アンリエッタの家の呼び鈴に、良く似ていたのだ。
次に会う時は、あのように友好的な宴は開いてくれないかも知れない。もしも黒幕だったとしたら、大勢人も殺しているだろうし、許すことは出来ないだろう。
ロビーに出ると、テレビの前に大勢人が集まっていた。白衣を着たアリスを見掛けたので、歩み寄る。アリスはぱっと華が咲くような笑顔を浮かべた。
「ご無事で。 良かったですわ」
「え?」
「目が醒めてから、こんな感じです。 僕もびっくりしました」
以前の何もかもが気に入らない様子のアリスは何処かにいなくなってしまったかのようである。とても可愛らしい笑顔が、実に眩しい。
「この間は有難うございました。 わたくし、一皮剥けた気分です」
「そうなんだ。 何だか、肩の力が抜けたみたいで、安心したよ」
テレビを見ていた患者達が、わっと声を挙げる。
何かあったのだろうか。
「ああ、先輩にこれを見せたかったんです」
川背の言葉に振り向くと、船に乗ったテレビディレクターが、興奮した声で喋っていた。日本語ではないので何を言っているのかわからないが、アリスが通訳してくれる。
「アトランティス大陸が、三日前、南大西洋に浮上しました。 広さはおよそオーストラリア大陸の半分に達するほどです。 周囲はフィールドに覆われており、既にN社を筆頭とする各社が、調査を始めている模様」
「アトランティスって、あの伝説の」
胸の中で、何かが疼く。
ダゴンの気配を、目覚めてから初めて感じた。
世界は変わりつつあるのかも知れない。だが、スペランカーは、この世界を生きるのだ。
そう、決めたのだから。
(続)
如何だったでしょうか。
本作に登場する邪神ダゴンの凄まじい戦闘力は、ファミコン版バルーンファイトのトラウマ要素である「魚」をモチーフにしています。
この魚の恐ろしさは実際にプレイして見れば分かりますが、一大ブームを引き起こしたジョーズのような逆らえない圧倒的恐怖を有しており、水際に近付いたり落ちたりすれば満遍なくエジキにされます。敵も自機も。
あの魚はダゴンだったのです(笑)
クトゥルフ神話では本来それほど強大な神格ではないダゴンですが、本作での圧倒的な実力も原作バルーンファイトの逃れ得ない圧倒的恐怖に起因しています。