オールドアクションゲーム二次創作 作:dwwyakata@2024
複雑に絡み合った扉を通って最終面を目指すゲームで、使いづらい武器と複雑な面構成、苛烈な敵の攻撃もあってかなり難しいゲームです。
自分は(少なくとも一度は)地力で無敵アイテム無しでクリアした事がありますが、同じ事はあまりお勧めできないですね(笑)
今回はそんなアトランチスの謎の舞台になるアトランティスで、クトゥルフ神話の邪神勢力と、古い時代のゲームのキャラクター達が総力戦を行います。
序、異形の島
アトランティス。
ヨーロッパの伝承に登場する、謎の存在である。大陸であったり島国であったり、その正体は十七世紀前後まで判然としなかった。
フィールドと呼ばれる、軍隊でも侵入が不可能な超危険地帯が特に多数出現するようになった十七世紀前後から、その姿は露わになった。何度か出現しては消えていったそれは、海中を移動し、時々海面に浮上する、生きた島とも呼ばれる存在だったのである。それは楽園でも理想郷でもなく、入った人間がとても生きては帰れない、最高難易度を誇るフィールドであった。
西暦1661年の出現後、およそ三十年周期で大西洋に姿を見せていたアトランティスは、深層海流を移動していた事が判明している。調査艇の報告によると、深海でも空気のドームに覆われて、不可思議な発光現象を起こしているのだという。
そのアトランティスも、何度かの大規模な調査で多大な被害を出しながら、少しずつ分かってきたことがある。
上陸し、生きて帰った調査隊によると。どうやら人間が暮らしていたことがある、らしい事が判明した。これは独自の進化を遂げた装飾品や生活用具などからも分かっている。驚くべき事に、これは東洋と西洋の文化を巧みに取り入れており、かってムー大陸と呼ばれた太平洋上の謎の存在が、アトランティスと同一であったという説を裏付けることになった。
また、フィールドらしく島の上には奇怪な生物が山盛りに生活しており、その殆どが恐るべき事に接触した相手を石にする能力を持っているという。一時期はギリシャ神話に登場するゴルゴンの三姉妹は、このアトランティスの怪物がモデルになっているのではないかという説まで登場したほどである。
他にも幾つか分かったことはあるが、調査隊の犠牲が大きすぎた。そして犠牲の割にはあまりにも成果が小さかったため、各国は一旦調査を打ち切り、以降は立ち入り禁止令を敷いて、犠牲の拡大を防ぐようになったのである。実際、探検隊が持ち帰ったものの中には、金目のものなど無かったのである。
やがて、1814年の出現を最後に、アトランティスはぱたりと出現を止めた。そして十三年前、三日ほど大西洋に姿を見せて以降、その行方はようとして知れなかったのである。それなのに、しばらく沈黙していたアトランティスが。あまりにもこのたび、大々的に姿を見せたのだった。
今回の出現で泡を食ったのはT国である。何しろ沖合に、視認できるほどの近さでアトランティスが姿を見せたのだ。しかも最強最悪のフィールドの一つとして名高い場所である。貧しいT国は国連に救援要請を出し、N社とC社に声が掛けられたのだった。
最強の精鋭を多数有するN社は、フィールド探索者の会社としては世界最大最強であり、その気になったら総力戦態勢の米軍でもたたきつぶせると噂されている。だがそのN社でさえ、今回の探索には慎重にならざるを得ない理由があった。
N社の重役会議の場に呼ばれたMは、傲然と丸テーブルの最上座にいた。他にも周囲には、いずれもが国家軍事力級と噂される桁外れの猛者ばかりである。魔法班の長として君臨している最強も名高い魔法剣士リンクが、皆を見回しながら告げる。まだ若々しい細面の男だが、その積み重ねた戦闘経験は尋常ではない。Mの跡を継ぐのは彼しかいないという噂さえあるほどだ。
「結論から言いますが、アトランティスから漏れ出ている異神の気配と、この間F国にて採取されたサンプルが一致しました。 十中八九、アトランティスは異神の城だと言えます」
「ふん、それでは今まで歴代の猛者達が攻略できなかったのも当然か」
Mが鼻を鳴らすと、弟のLが不安げに周囲を見回す。
宇宙での戦闘を得意としている女戦士Sが、宇宙服にも似た戦闘衣を付けたまま、それに合わせた。
「アトランティス、ムー大陸、ルルノイエ。 それらが全て同じものの呼称だった、というわけね。 しかしそうなってくると、やはり其処に鎮座しているのは、例の発音できない神かい?」
「いえ、どうもそれが違うようでして。 その存在については、今までも歴史上の介入が幾度か確認されています。 しかし二十年ほど前に、ぱたりと消息が絶えておりまして」
「そいつは殺されて、別のが王に成り代わった、というところか。 やれやれ、難儀なことだね」
Sの言葉に、リンクがさようでと頷いた。
発音できない神とは、異界の神の中でも、かなり高位にいる者としてN社が把握している存在である。人間には発音しがたい名前だが、無理に発音するとなるとクルールーとかクトゥールーというのが近い、らしい。
実力は言うまでもなく強大で、その干渉によって滅びてしまった国さえあるという。腕組みして話を聞いていたMは、頷いた。
「いずれにしても、しっかり相手の目的を見極めなければなるまい。 場合によっては私とLで出向くが、何名か手練れの増援が欲しい所だな」
「僕がいこうか?」
小さな手をちょこんと挙げたのは、ブラックホールと異名を持つKA。ピンク色の球体状の生物だが、その戦闘能力は凄まじく、以前侵攻を掛けてきた異星人の小規模艦隊を単独で滅ぼしたことがある。Mとしても信頼できる戦友だが、此処はすぐにはいと言う訳にはいかない所がもどかしい。
会議を続けている内に、急報が入る。
「アトランティスに、強引に侵入した者がいます! 気球を使い、警戒中の艦隊を出し抜いたようです!」
「何、気球だと」
また、随分無謀な輩である。ローテクを駆使して敢えてハイテクの探知機器を欺く知恵だけは敬服に値する。それ以外は侮蔑以外の感情が湧いてこないが。
接近したヘリが退去を勧告しているようだが、聞く耳を持たないという。撃墜するかと、パイロットが聞いてきていると言うことだが、Mは首を横に振った。
「捨て置け。 ミサイルの無駄だ」
「わかりました!」
「それにしても、この時期に侵入者とは。 何処の阿呆だ」
ヘリのカメラからのライブ映像が届く。
映し出されたのは、気球の中で不安げに身を縮めている、まだ若い男だった。
「情報照合。 中堅企業に属する、ウィルというフィールド探索者です。 実績は殆ど無く、まだ駆け出しのようですね」
「所属企業は?」
電話を手にしていたリンクが、ため息をつきながら受話器の電源を切る。その様子だけでも、大体状況は推察できた。
「社長が出ました。 どうやら独走を知らなかった様子です」
「それでは会社を責める訳にはいかんな。 やれやれ、慎重な対応が必要な時期だというのに」
Mは頭を振った。
これほどの暴挙をやらかしたと言うことは、よほど何かアトランティスに深い思いがあるのだろう。
Mも若い頃は色々と無茶をした。闇の世界の顔役Kの守る城に単身殴り込みを掛けたり、異世界からの侵略者と拳一つで渡り合った。そう言う意味では今も本質は代わっていないが、準備の有無という点では段違いだ。
しっかり戦略を整えることは恥ではない。無謀な行動は、最終的には自分の死という最悪の破滅を招く。あの若者もそれなりに準備をしているのかも知れないが、どうせN社が募集を掛けるのである。其処で応募すればよいものを。独走して、どうにか出来る場所ではないだろう事くらいは、この業界に入ったことがあるのなら、分かっているだろうに。
「ホーク1、撤退しろ」
「了解。 そろそろアトランティスの索敵範囲に入りますし、一旦距離を取ります」
ヘリからの連絡が途絶える。Mは咳払いをすると、会議の再会を促した。
ヘリが遠ざかっていく。大きく嘆息したウィルは、思わず丸鍔帽を抑えた。熱気球は安定した高度を保ったまま、アトランティスに確実に向かっている。
海の向こうに見える伝説の大陸は、黒々とした大地に、多くの遺跡らしきものを見せつけていた。
あれの何処かに、師匠がいる。
きっと、ウィルの助けを待っている。
ごくりと、唾を飲み込む。師匠を助けるために、此処まで来た。そして、もはや引くことは出来ない状態だった。
会社に辞表は出してきている。今頃社長は鮹のように真っ赤になって怒り狂っているだろう。もはや後には退けなかった。
ウィルは、駆け出しのフィールド探索者である。
数年前までは、師匠について修行をする身だった。一緒に小規模なフィールドを何度か攻略して、些細な宝を得て。殺し合いというよりも、冒険を楽しんでいたような記憶がある。
やがて、そんな日々に終わりが来る。
腕利きで知られる師匠が、単身アトランティスに向かったのだ。
もちろん、浮上している状態のアトランティスではない。潜水艇を使って、潜水中のアトランティスに、直接乗り込んだのである。
師匠は元々変人として知られていた。天才的な発明家ではあったが、同時に筋金入りの無政府主義者で、会社もいつも手を焼いていた。怪しげな発明によって四十代の姿を保っているが、実際にはJ国で起きた最後の一揆にも参加していたことがあるという。ウィルも、いつも散々振り回されたものである。
だが、師匠のことは今でも親だと思っている。
ストリートチルドレンであり、体格に恵まれず弱って死にかけていたウィルを拾ってくれたのは、師匠だけだった。乱暴で待遇は悪かったが、それでもきちんと一人前の人間としても扱ってくれた。
だから、師匠が行方不明になった時は愕然とした。会社にも周囲にも助けを求めたが、誰もが鼻で笑うか、或いはアトランティスの名を聞いて二の足を踏んだ。
再び一人になってしまったウィルは、小さな仕事をしながら、機会を待った。いつかアトランティスが浮上したら、必ずや乗り込んで、師匠を助けに行くのだと。生きている確率は限りなく低い。だが、あの師匠が、簡単にくたばるわけはなかった。
準備は入念にした。アトランティスの過去の移動パターンや深層海流から、次に現れる位置を予測し、近くの街に倉庫を借りて念入りに物資を蓄えた。アトランティスが現れたら、N社が出張ってくるのはほぼ確実。そうなると国連軍も出てくるだろうから、最新鋭の装備をした軍の警戒網を抜ける必要もある。気球を使うことを考えたのは、それが故だ。最新鋭の装備が相手なら、逆にローテクの方がやりやすいと思ったのである。
そして、やっとウィルは此処に来た。
軍の警戒網も抜けた。後は、アトランティスに降り立って、師匠を捜し出し、一緒に帰るだけだった。
「待っていてください、師匠」
孤独な青年、ウィルは呟く。
師匠に呼びかけ、なおかつ己の心に活を入れるために。
ここから先は、歴戦のフィールド探索者でも死を覚悟しなければならない、魔境中の魔境だ。無謀な行為の代償は高く付く。だが、それでも、ウィルは引く訳にはいかなかった。