オールドアクションゲーム二次創作   作:dwwyakata@2024

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6、明らかになるアトランティスの謎

ウィルが目を覚ますと、手当がされていた。隣には、縛り上げられた師匠が転がされている。師匠は遠い目で、ぶつぶつと何か呟いていた。

 

手当をしてくれたのは、どうやらジョーらしい。ぼそぼそと説明してくれる。後方から殺到してくる敵を食い止めていたら、突然ウィルと師匠が落ちてきたそうだ。師匠を一撃で殴り倒して気絶させると、ウィルの傷を見て、意識はないが致命傷でもないことを確認してそのまま戦闘続行。時々ウィルの手当を進めながら、邪神を倒したアーサーとスペランカーが戻ってくるまで、見事に耐え抜いたそうである。

 

タフな大人だ。まさにワンマンザアーミーである。

 

既に、周囲の戦闘音はない。そればかりか、神殿の通路では、武器を放り出して呆然としている半魚人達の姿が目立った。

 

体を起こそうとするが、止められる。ジョーは、武器を分解し、リュックに詰め込んでいた。

 

「まだ寝ていろ」

 

「あ、はい。 すみません」

 

「ロード・アーサーによると、お前のおかげで邪神は倒せたのだそうだ。 後でN社から報償も出る」

 

必要なことだけ告げると、ジョーはリュックを背負う。そして、半魚人達に何か告げた。担架が運ばれてきて、半魚人に乗せられた。触れても石にならない所からすると、本当に邪神は滅びたのだろう。

 

神殿の外には、Mが来ていた。他の面子も大体無事のようだ。

 

「これは、名誉の負傷だね」

 

女戦士Sが傷口を見て、処置は完璧だと保証してくれた。無事ではあっても、全員が激しく傷ついている。にも関わらず笑っているのは、勝ったから、というだけではないだろう。

 

戦士だからだ。

 

当然のように無傷のMが、長老と何か誓約書を交わしていた。内容は、アトランティスは今後この海域に停泊すること、独立国として認められること、国連軍はその安全を保証すること、などなどだという。この辺りは何T国の領海だが、戦略的な価値はなく、漁場としても価値が低い。ただ、当然T国および幾つかの先進国にはある程度の見返りを渡す必要が生じてくるだろう。もっとも、先進国側も、簡単にこの島に侵攻は出来ないだろうが。

 

こういった、重異形化フィールドが独立国として認められることは、この世界では良くあることだ。

 

ただし、N社を始めとする研究チームが来ることを、阻むことも出来ないだろう。それに邪神がいない今、本気で戦えば敗北するのは彼らの方だ。だから、これらの条件は呑まざるを得ない。

 

師匠は当然、牢獄行きになる。多分終身刑になるはずだ。時々面会に行きたいが、それも許されるかどうか。或いは師匠の知識や経験が、N社に必要とされて、ある程度の待遇は与えられるかも知れない。

 

バンゲリングベイが降りてくる。医療班が到着したのだ。怪我人が乗せられ、輸送されていく。医師達は半魚人とも話し合い、彼らの重傷者の怪我も見ると話をしていた。他にも大型の輸送機が来て、赤い十字架の腕章を付けた医療チームが続々と周囲にテントを貼り始めた。

 

もう、此処にいても邪魔になるだけだ。

 

始まる喧噪の中、Mが歩み寄ってきたので、緊張する。

 

「邪神を倒した決め手は、お前の一撃だったそうだな」

 

「はい……」

 

「そうか。 俺から、S社の方に話はしておく。 今後は先輩達を困らせるような事はするなよ」

 

Mは師匠を一瞥すると、大股に歩み去っていく。

 

ウィルは嘆息した。これで、きっとウィルは一人前になることが出来たはずだ。ジョーが師匠を立たせる。バンゲリングベイに乗せて、連れて行くのだろう。

 

「師匠」

 

うつろな目を、師匠がウィルに向けてきた。ジョーは早くしろと視線で語ると、後は黙っていた。

 

「このアトランティスは、一体何なのですか」

 

「此処か。 此処は、異神の揺りかごだ」

 

ぼそりと、師匠が呟く。

 

かって、この島に降りてきた異星の神々がいた。彼らはその優れた技術を使って世界に干渉し、人間を進化させた。神々にとって都合がよい食料にするために。

 

だが、神々同士の争いもあり、また、異常に強く進化しすぎてしまった人間にみきりをつけたこともあり。多くの神々は星を離れた。

 

後は、神々の揺りかごと、僅かな人数だけが残った。揺りかごには多くの知識が、手つかずのまま残されていた。

 

いつしか、海底に沈んだこの島には。神々と、彼らに仕えるべく作り上げられた生物と、奇怪な生態系だけが残されたのである。

 

神々の要塞であるが故に、複数次元を使った迷路のような構造が作り上げられた。そして、ここを訪れる人間の多くは、その桁違いの知識のために神々に心酔して、その走狗となっていった。

 

時には、一部だけではあったが、神の制御に成功した人間もいた。師匠もその一人だった。

 

語り終えると、師匠は暗い目をウィルに向けてきた。もう、和解は不可能かも知れない。

 

「この島は、人間の知識を大きく進歩させる宝の山だ。 もっとも、お前が宝石を砕いてしまったせいで、その一部は失われてしまったがな」

 

「……」

 

学究の徒として、それは忸怩たるものがある。

 

だが、一つ。これだけは言いたかった。

 

「師匠。 僕は今でも、貴方を家族だと思っています」

 

「……そうか」

 

きっとこの島でも、孤独だったであろう師匠。神を制御して、その命とも言える宝石を預かって。しかし、満たされることはあったのだろうか。

 

ミイラ男達も骸骨の戦士達も、半魚人達も。師匠を理解したとは思えなかった。

 

バンゲリングベイが浮上して、次元の孔に消えた。別のヘリがまた降りてくる。

 

「あ、ウィルくん!」

 

スペランカーが手を振っている。何か疲れ切っているように見えるのはどうしてだろう。それになぜか服がさっきとは違う。

 

何だかエキゾチックというかエキセントリックというか、ギリシャ風というか、そんな服だ。そういえば半魚人達と同じ服ではないか。生地が薄いからその貧弱すぎる体型がかなり露骨に出ているが、あまり気にしていない様子なのが頭が痛い。

 

「何ですか、その服」

 

「ああ、前のはアーサーさんに放り投げられたとき、着地でビリビリになっちゃったから、半魚人さん達に貰ったの。 ウィル君は、もう帰るの?」

 

「はい。 スペランカーさんは残るんですか?」

 

「ちょっとだけね。 半魚人さん達に頼まれたことがあって」

 

彼女は邪神の呪いを受けているという。それならば、此処はとても居心地が良いかもしれない。あくまで想像だが。

 

ウィルの担架も運ばれる。一旦テントの中で治療を受けた。ナイフは刺さっていたが、内臓を巧く避けており、二月ほどの入院で対処できるという。ただ、それまでは絶対安静という事であった。

 

輸送機に乗せられて、そのままアトランティスを離れる。

 

ウィルは一度だけ、アトランティスを窓から見た。

 

知識。師匠を狂わせたもの。それは一体、何だったのだろう。人間は知識を得て進歩したが、生物としては何も変わっていないと聞いたこともある。

 

悩みは、まだある。

 

だが、これからは、もう前に進める。

 

頭を切り換えて、これからの人生を行きよう。そして師匠の失敗を、繰り返さないようにしよう。

 

ウィルは、そう誓った。

 

 

 

混乱が収まって数日。外ではまだ医療班が動き回り、M氏がN社やC社のお偉いさんと交渉を続けている。国連の幹部達も島を訪れていた。

 

交渉は巧く行っているようで、大体予定通りの条約が締結されるようだ。殆どのフィールド探索者達も帰還していった。

 

そんな中、スペランカーは残っているアーサーと一緒に、独自の行動を続けていた。

 

「この間はすまなかったな、スペランカーどの」

 

「もう、紳士だと信じてましたのにー」

 

「手持ちに術が残っていなかったのでな。 帰ったら我が輩がどこか高級店でおごるから許して欲しい」

 

結構根に持っているスペランカーに、アーサーが苦笑しながらそんな事を言う。

 

この人はずっと年下の恋人に苦労しているという話だし、こういう不器用な所に好感を覚える。

 

「あ、それなら川背ちゃんのお店が良いですね」

 

「おう、川背どのの店か。 それなら我が輩も金を出す意味があるな」

 

「美味しいですもんね。 他の人も誘って、今度行きましょう」

 

雑談しながら、アーサーと一緒に、神殿の奥へ。曲がりくねった階段を下りていく。綺麗な白磁だった壁が薄汚れていき、最深部は鍾乳洞同然だった。其処には鉄の檻が填められた牢獄があり、まるで蟻の巣穴のように点々と並んでいる。

 

その一つ、恐らくはもっとも罪が重い人間が入れられる牢の前に立つ。見覚えのある人が入れられていた。

 

アンリエッタ・ロマノフ。

 

髪型も雰囲気も随分違う。だが、スペランカーには分かった。アンリエッタはスペランカーを一瞥すると、鼻を鳴らして視線を逸らす。

 

「やっぱり、貴方だったんですね。 この島を浮上させたのは」

 

「だったら何だって言うの?」

 

アンリエッタは。

 

M氏との戦いの時に、部下に反逆されたのだという。M氏の凄まじい戦闘能力を目にしていた上に、邪神が滅ぶと聞いた部下は。自らに跨っていたアンリエッタをその場で石化させたのだという。

 

戦いは、それで終わった。蝙蝠や蜂達さえ戦闘を放棄し、それぞれの巣穴に逃げ帰っていったという。そして殆どの怪物達からは、事実石化の能力が失われていた。

 

半魚人の長老によってアンリエッタの石化は解除されたが、それは牢の中での事だった。

 

そして、今である。スペランカーに、恭しく半魚人の一人が差し出す。やはり見覚えがある。呼び鈴だ。

 

以前F国でアンリエッタの家を最初に訪れた時、その呼び鈴の古風さから印象に残っていたのだ。半魚人によると、これを逆さにして振るう事で、異神を呼び出し使役するのだという。

 

「もう少しで、この世界を私の一族が操れたのに」

 

「それが、貴方の目的だったんですか?」

 

「そうよ。 政って、そういうものでしょ? 貴方の国だって、民主主義とかいっときながら、票を集めるためには正しい政じゃなくて、如何に派手なパフォーマンスをするかじゃない。 民衆は愚劣よ。 だから国は、世界は力があるものが支配するべきで、それには力とブレインとスポンサーが重要なのよ。 私の一族が、何十年も血の涙を流しながら練った計画で、力は得られた。 この島でブレインだって手に入れた! なのに……」

 

M氏に、話は聞いている。

 

闇世界の顔役達は、誰もがアンリエッタの提案を鼻で笑ったと言う。それはただの危険物で、兵器などではないと。

 

スペランカーに、難しい話はよく分からない。

 

だが、一つだけ、言えることはある。半魚人に、スペランカーは頷く。

 

「この鈴、床において離れてください」

 

「はい」

 

「ちょっと、何をするつもり!?」

 

ブラスターを向ける。アーサーが、無言でそれを見つめていた。

 

「これは、此処に存在していてはいけないものです」

 

「馬鹿なことは止めなさい! ふざけるな、馬鹿ーっ!」

 

「或いは、これを上手に使える人が出てくるのかも知れないです。 でも、今の人間には、きっと無理」

 

鈴が震え始める。

 

やっぱりこれは、鈴の形をした邪神なのだ。

 

「数日は、目を覚まさないかも知れませんので、医療班には言っておいてください」

 

「うむ、後は任せておいてくれ」

 

「あんた、自分のやっていることが分かってるの! それがあれば、世界は一つにまとまるかも知れないのよ!」

 

「家畜として、ですか?」

 

「愚民なんか、昔っから権力者の家畜でしょうが! 如何に効率よく管理するかが、全てだっていうのに! この馬鹿! 幼稚園児以下の倫理観念で、世界の可能性を、壊すんじゃないっ!」

 

何だか気の毒だ。

 

人を否定するのは嫌いだ。だから出来るだけ否定しないようにもしている。嫌いな人はいるが、だからといってその人の理屈まで否定しようとは思わない。この人の過激な理屈には、真実が混じっているのかも知れない。でも、いずれにしても。これだけは断言できる。

 

そんな理屈が如何に正しくても、今の人間には扱えない。

 

世界中の人間が少しずつ努力して、少しでも良い世界を造っていくしかないのだと、紛争地域に出向いたこともあるスペランカーは思う。地獄は、人間が造り出す。ならば、人間が地獄ではない世界を造ることが出来るかも知れない。未来には。

 

スペランカーは、ブラスターの引き金を引いた。

 

半魚人達は、スペランカーの体内の呪いとダゴン神を貴重な者だと考えてくれているらしい。それで、象徴としてで良いから、崇めさせて欲しいと、この島を時々訪れて欲しいと懇願してきた。この島を、貴方の家にして欲しいとも。

 

断れないし、それに。初めて得た帰るべき場所。

 

ならば、なおさら。スペランカーは、この島のためにも、鈴を壊さなければならない。そして、この島の外にいる、友達のためにも。

 

誰よりも、この鈴のせいで、狂気に囚われてしまったアンリエッタのためにも。

 

鈴が壊れるのを薄れる意識の中で、スペランカーは見て。

 

そして、やっと一つ何かえられたのかも知れないと思った。

 

 

 

(続)




邪神の勢力と古い時代のゲームキャラクター達の総力戦、如何でしたでしょうか。

これ以降アトランティスはスペランカーの家となって、彼女に従う事を決意した元邪神の眷属達の住処として再出発していくことになります。
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