オールドアクションゲーム二次創作   作:dwwyakata@2024

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はい今回はスーパーピットフォールです。

広大な一枚の複雑なマップや、説明書を見ると本格的な洞窟を探索して行く孤独な男の戦いみたいな雰囲気なのですが、色々と問題も多くクソゲーという評価もある作品です。自分は結構やり込んでいた作品ですので、嫌いじゃない作品です。

このお話では、原作に沿った展開にクトゥルフ神話風味の味付けでシナリオを組んでいます。


生還者と冒険者
序、その穴の名は


世界最大の鍾乳洞が、その山にはある。だが残念なことに、幾つかの理由から、探検隊は入れない場所であった。

 

一つは、それが世界最大の紛争地域にあると言うこと。

 

複数の宗教原理主義者が血みどろの抗争を繰り広げる、世界でも最も危険な地域の一つ。そのど真ん中に、この穴はあるのだ。

 

更にもう一つの理由が、地形的な問題である。

 

高名なギアナ高地に近い、非常にそそり立った険しい山々に囲まれており、なおかつヘリコプターでさえ近づけない乱気流が渦巻いている危険な場所である。実際、この鍾乳洞が発見されたとき、生きて帰った探検隊は、二十人いたメンバーを五人にまで減らしていたのだ。

 

そして、最後。

 

この鍾乳洞が、フィールド認定されている、という事である。

 

スーパーピットフォール。

 

正式に名前がついていないこの鍾乳洞は、探検家の間で、そう呼ばれるようになっていた。

 

ハリーはヘルメットをかぶり直すと、その入り口を見つめる。

 

まるで、巨大な獣のあぎとが如きまがまがしさだ。中の写真も殆ど流出していない。わずかに、探検隊が持ち帰った数枚だけが現存していた。勿論中は特殊な進化を遂げた、固有種の宝庫だ。

 

此処に、三つの宝が眠っている。

 

その内二つは、ハリーにしか価値が無いものだ。宝になる経緯はあまり思い出したくも無い。他の人間にとっても価値があるかも知れないが、その意味が違っている。だから、今はただ、この鍾乳洞に挑む。

 

あまりにも巨大すぎる上にうまみも無いこの鍾乳洞フィールドだから、今までどのフィールド探索者も攻略しなかった。実害は皆無に等しいという事も、それに拍車を掛けていた。

 

齢は既に四十。

 

各地の鍾乳洞で写真を撮り、生計を立ててきたベテランの探検家であるハリーでもなお、この鍾乳洞は危険すぎる。ある特殊能力を持っていることからフィールド探索者としての登録もしているが、こんな危険な場所に入ることはまず認められない程度の腕に過ぎないのだ。

 

だが、挑まなければならない。

 

既に、写真での生計は難しくなりつつある。給金は安く、このままでは老後もままならない状況だ。ロマンだけでは喰っていけない。しかしながら、フィールド探索のほうを本業にするには、経験も実力も、何よりも体力が足りていなかった。

 

体力が足りないのに、このような危険フィールドに入るのは、もはや賭に等しい。

 

だが、結婚もせず、ばくちもせず、今まで静かに人生を送ってきた。そして、これ以上年を重ねると、賭さえ出来なくなってくる。

 

最後に賭を出来る今の瞬間を大事にしたいと、ハリーは考えていた。だから、会社に無理を言って、ここに来たのである。手伝いを回す手配をするとか調子が良いことを言っていたが、そんなもの待ってはいられない。

 

少しでも大きな手柄を立てなければならなかった。

 

一歩を踏み出す。

 

ヘルメットについているランプだけでは足りない。だから、懐中電灯もつけて、ゆっくりと進む。

 

下は非常にぬるぬるしていて、異臭もひどい。上は大量のコウモリが住み着いていて、その糞がたまっているのだから当然だ。更に言えば、それを求めて、天文学的な数の蠅やゴキブリが蠢き、それらを餌にする肉食性の昆虫も徘徊している。

 

大変に不潔な場所であり、転んだりすれば病気になる可能性も低くない。

 

慎重に歩く。

 

こんな入り口で、死ぬわけにはいかなかった。

 

 

 

ヘルメットをかぶり直すと、スペランカーは辺りを見回した。少し前に切ったばかりだから、茶色がかった髪の毛はあまり邪魔にならない。童顔で、子供のように小柄で、なおかつ平坦な体をしたスペランカーは、中堅と呼ばれるくらいの実力を持つフィールド探索者である。ただし、豊富に積んだ経験と、この間ある壁を越えたことから、既に世間的には一流とみられ始めている。

 

女性である事もあるが、それにしても身体能力は並の人間以下。頭もあまり良くない。顔立ちも、整っているとは言いがたい。

 

だが、不老不死という強力な特殊能力を持っているため、この仕事を出来ている。そのリスクはとにかく大きいので、毎回苦労も耐えないのだが。しかし、スペランカーは何よりも飢えが嫌いだ。だから、ご飯を食べるためにも、仕事をする。

 

今は、その気になれば、寝ていてもご飯を食べられる環境も作れるようになった。だが、やっぱり自分の足で手で、稼いでご飯を食べたい。自立心と言うよりも、何処かで安心していないのだろう。

 

自分の危なっかしさは、誰よりも自分自身が一番知っているのだ。ただでさえ能力が低いのに、更に此処で怠け癖がついたら、お先真っ暗だ。

 

見回す限り、誰かが先にこの洞窟に入った形跡がある。事情は既に聞いている。数日前、小さなフィールド探索社から通報があったのだ。かなり強引に、秘境ともいえる場所にあるフィールドに潜り込んだ男がいると。彼を救出するように、たまたま所要でこの国に来ていたスペランカーに声が掛かった。

 

だから、お仕事を切り上げて、こっちに来たのだ。装備品は国連軍に支給してもらったが、ちょっと心許なかった。

 

とにかく、今回はフィールドに来るまでが大変だった。

 

紛争地帯で治安は最悪。護衛についてきてくれた兵士までが、途中でスリに遭うほどの国である。爆弾テロも見た。ビルからもうもうと煙が上がっていて、しかも誰もそれを見て驚いていなかった。

 

この国では、もはや利権構造が複雑すぎて、誰にも解きほぐせない所まで来てしまっている。その上、それに宗教的な原理主義勢力が噛んでいるのだから最悪だ。複数の原理主義勢力が互いに凄まじい殺しあいを繰り広げており、彼らの資金源は麻薬や臓器だった。子供は殺されて臓器を取り出されてしまうので、誰も昼間は外を歩かない。国連軍の兵士達も、自分の身を守るだけで精一杯だった。

 

どうにか人間がいない山岳地帯まで来て、ほっとしたほどである。

 

ただし、そこからも何度か悶着があった。自分たちの聖域に入ったと考えたテロ組織が襲撃してきたりして、ひどい目に遭った。フィールドに入る前に、三十回くらいは「死ぬ」羽目になった。

 

如何にスペランカーが、死を克服する能力を持っているとはいえ、こんな仕事は何度もやりたくなかった。

 

治安の悪い国には、今まで何度も足を運んだ。たちの悪い組織に連れ去られたりしたこともある。怖い目に遭った経験があるとはいえ、やっぱり嫌なものは嫌だ。

 

不老不死だからと言って、無敵では無い。弱点はいくらでもあるし、何より痛いものは痛いのである。武器も、実質一つしか使えないと言って良い。単純な攻撃力という点で、スペランカーはある特殊な相手を除けば、まず役立たずと言って良いほど非力なのだ。

 

だが、その特性故に、こう呼ばれている。

 

絶対生還者。

 

今回も、スペランカーはその特性を期待されていた。

 

ヘルメットをかぶり直すと、異臭がする洞窟の中に。鍾乳洞だが、やはりコウモリがたくさんいて、地面はふんまみれだ。蠢いている無数のウジ虫やゴキブリたち。見ないようにして、歩く。

 

滑らないように、気をつける。

 

病気を気にしなくても良いとはいえ、あまり気分は良くない。転んで糞まみれになどはなりたくなかった。

 

元々スペランカーというのは、無謀な洞窟探検者という意味だ。何度か呼吸を整えながら、奥に奥に。やっぱり彼方此方、人が通った痕跡がある。先走った人はかなりの高齢だという話だが、生きているだろうか。

 

フィールド内部で長時間過ごしていると、人間は精神に異常をきたしやすい。

 

しかも、高齢と言ってもフィールド探索者として立身してきた人では無いらしく、お世辞にもこちらの分野ではベテランとは言いがたいとか。一応特殊能力持ちだそうだが、出来るだけ早く見つけないと危ないだろう。

 

このフィールドは、世界最大の鍾乳洞が変異したものだ。

 

だからといって、何もとてつもなく広い迷路のようなものとは限らない。案外鍾乳洞は、単純な構造になっている場合も多いのである。

 

しかし、それは期待できない。ここに入った調査チームが、どれだけひどい目に遭ったかは、既に資料を読んでいる。

 

転びかけたりもしながら、どうにかコウモリがいない奥にまで到達。

 

上の方に穴が開いている。光が差し込んでいるから、周囲を見回すことが出来て良い。穴から種が落ち込んでいるらしく、周囲には普通の草花も生えていた。だが、足を止めたのは。

 

とんでもないものと、真っ正面から遭遇してしまったからである。

 

蛙。

 

ただし、足を伸ばせば二メートルに達しそうな、とんでもないサイズの蛙だ。その上、動くものとみれば何にでも飛びつくことで知られる貪欲なツノガエルである。丸っこい体が特徴的で、殆ど動かない品種なのだが、凶暴性は非常に強い。何でそんなことを知っているかと言えば、以前攻略したフィールドで、その怪物に喰われたことがあったからだ。死んだ蛙の腹から這い出したが、消化液やら未消化の獲物やらにまみれて、さんざんだった。そんなことがあれば、頭が悪いスペランカーだって覚える。

 

できるだけ、ゆっくり蛙から離れる。蛙はじっとこちらを見つめていたが、動かない。ほっとした瞬間、ものすごい声で鳴き始めた。

 

吃驚したスペランカーは、思わずその場で固まってしまう。蛙は大きく頬を膨らませて鳴いていたが、やがて何処かへ跳ねて行ってしまった。最初からこれでは、先が思いやられる。

 

おそらくこの鍾乳洞内の生物は、片っ端から巨大化している。そう考えて間違いないだろう。

 

久方に、ほぼ単独での行動が必要になるフィールドである。一番奥に何がいるかは分からないが、まずは効率よく進んで、先に入ったハリーさんを探さなければならない。

 

どんな理由で先走ったのかは分からない。人にはそれぞれ事情があるからだ。

 

だからスペランカーは。

 

それを責めようとは思わなかった。

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