オールドアクションゲーム二次創作   作:dwwyakata@2024

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今回は、侵入されるフィールドの側にほぼ非が無い状態です。

元々、今回も治安最悪地域での仕事で、そもそも誰も入れませんからね……


2、地底の王国

此奴は驚いたと、ハリーはござのようなものを丸めた影に隠れたままつぶやいた。

 

目の前を飛んでいるのは、どう見ても翼竜だ。しかも、飼い慣らされている。一匹は顔をそのまま露出しているのだが、もう一匹は顔にどくろのようなかぶり物をつけられていた。

 

そして、それを操っているのは。

 

やせた体の小さな子供だ。どうも女の子らしい。というのも、膨らみかけの薄い乳房を大気に露出しているからである。

 

発展途上国などでは、たまに陰部だけを隠して生活している人々がいる。場所によっては、全裸と言うこともある。非常に暑くて服がいらない場合などにはこういう風習が発達するのだが。

 

そういえば、此処は空気の対流が少なく、とても温度が安定している。確かに、服など必要ないのかも知れない。

 

子供はどくろを模したかぶり物をしていて、素顔は見えない。しかし、物陰で見ている限り、他の人間達よりも、多少はましな格好をしているように見えた。そうなると、巫女か、或いは何か重要な役割を果たす存在なのかも知れない。あくまで、それは推測に過ぎないが。

 

追跡者から逃れようと地下通路をしばらく歩いていて、突然広い空間に出た。天井は、多分数十メートルはあるだろう。小さな丘がまるまる入るほどの、巨大な空間だ。

 

今までと比べて、格段に広い其処は、どうもこの石畳の通路を作った人間達の住処の一部らしく、人間や、それに近い姿の生物が多数行き交っていた。どうも複数の街をつなぐ中継点的なところであるらしく、大きな家もあった。人間達は殆どがかぶり物を身につけていて、多少の貨幣も使われていた。

 

物陰から観察していると、思ったよりも優れた文明があるのかも知れないと、驚かされる。

 

たとえば、家は非常に精緻な石材を組み合わせていて、隙間が殆ど無い。屋根の部分には、ちょっと材質が分からないが、木のような草のような皮が使われている。天井辺りの鍾乳石の辺りに何かが飛び交っているのに気づき、見てみたらテーブルのような岩に上っている女の子と翼竜を見つけた、というわけである。

 

女の子の手に止まった翼竜は、ギャアギャアと声を上げて何かを知らせている。こちらのことを気づかれたのかと思ったハリーは身を思わず身を縮めたが、どうも違うらしい。女の子が甲高い声で何か叫ぶと、行き交っていた人々が思わず足を止めて、女の子の方を見る。

 

何を言っているのかは、よく分からない。

 

だが、人々が熱心に話に聞き入っていることは理解できた。言葉はどうも、地球の裏側にある小国のものと似ているような気がする。といっても単語を二三聴いたことがあるだけの地域の言葉で、しかも微妙に違うので、理解はとてもではないが出来ないのだが。

 

視線が女の子に集まっている内に、移動。さっきぼろ小屋を除いたとき、見つけた布をかぶった。これで、少しは他の連中からも姿をごまかすことが出来るだろう。

 

通路の一つに入って、さっさと進む。石畳で出来ている通路には必ず側溝があり、水が流されていた。多分下水か、あるいは上水だろう。どっちにしても、豊富な水がある事がよく分かる。

 

誰とも出くわさないように、小走りで急ぐ。

 

一番大きな穴を選んだのは、そっちの方が目当てのものに行き当たる可能性が高いと思ったからだ。集落を出ると、やはり人影も少なくなる。二度、側溝に潜んでやり過ごさなければならなかったが、それでも充分に余裕を持って行動できた。

 

拳銃の弾は、数が限られている。

 

いざというときは発砲しなければならないだろうが、それはギリギリまで控えたいところだった。

 

多分目的のものがあるとすれば、神殿だろう。

 

こういった原始的な社会では、文明の高低に限らず、だいたい宗教が大きな力を持つ。当然のことながら、神殿に富が集中することになる。

 

ならば、そこに。

 

ハリーが求める第一のもの。伝説に残る巨大ダイヤモンドが存在している可能性が高かった。

 

此処が伝承に残るシャンバラだとすると、70カラットを超えるダイヤモンドがごろごろしている可能性さえある。もしそうならば、一発でこの沈みきった人生を大逆転出来る。ごろごろしているのならば、一つくらいとっても良いだろう。

 

本気で、そうハリーは考えていた。

 

今まで沈みきった人生を送ってきたのである。少しくらいは、良い思いをしても良いでは無いか。

 

ただコネがあるだけで出世していく同僚が派手に金を使っていて、それに女が群がっている様子を見る内に、ハリーは世の無常を感じるようになった。そして、心も歪んだ。しかしながら、人間社会で暮らしていて、心が歪まぬ者などいるだろうか。

 

社会が高度になればなるほど、その傾向は強くなる。誰かが悪いのでは無く、社会そのものに無理が生じてくる。

 

ハリーが思うに、元々人間はそれほど巨大な社会を作る生態をしていないのではないだろうか。

 

それなのに、数億に達する同種が集まり、社会を作っているから無理が生じてしまう。

 

社会の問題は、知恵で解決できるものよりも、むしろ本能に起因しているものの方が、多いようにハリーには思える。

 

看板の類は無いか。通路をこそこそと歩きながら、ハリーは探す。

 

三つの宝の内、一つ。金を。

 

 

 

やはり、微妙に翻訳機が示した言葉とは差異があるらしい。必死に翻訳してくれるのだが、時々意味不明な文章が混じった。スペランカーの頭があまり良くなくて、機械を上手に操作ができないという事もある。

 

三人目はまだ当分たどり着けそうにもないし、しばらくは一人で話をするしか無い。相手に戦意が無いことだけは救いであった。

 

モアイは、まだ後ろにいる。シュールな光景だが、むしろ周囲の人々はモアイを神聖視しているようで、何かの祈りのポーズをモアイに向けていく事も多かった。

 

「それで、そのハリーという奴は、なぜ此処に侵入してきたのか」

 

「分かりません」

 

「なぜ分からない。 同じ部族では無いのか」

 

「違います。 外には星の数ほど民族があって……」

 

四苦八苦しながら話を進めるが、どうもなかなか理解してもらえない。国という概念さえも無いのである。こちらで普通に通じる話が、どうしてもうまく伝わらないのだ。

 

連れて行かれたのは、どうも神殿らしい場所である。当然、モアイもついてきた。

 

入り口は広く、この世界にしてはかなり重武装の屈強な男達が、入り口を厳重に固めていた。作りが故か窓も無く、注意深く配置された光る草が中の荘厳さを後押ししている。入ってみると石畳の質が基本的に違い、柱なども非常に美しく磨き抜かれている。壁画には、無数の触手を伸ばしたまがまがしい塊が描かれていて、生け贄を捧げる台座らしいものが置かれていた。

 

流石に、モアイは神殿の中にまでは入ってこなかった。或いは、意思があるのかも知れない。

 

ダゴン神と同種の気配は、今のところ感じない。あの台座は儀式的なものであって、実際の神はもっと深い場所にいるのかも知れない。

 

話をしているのは、声からして壮年らしい人物だ。というのも、やはり大げさな骸骨の仮面をしているので、顔が見えないのである。ここに来る途中、街らしい場所を何カ所か通ったのだが、素顔の人もいた。ただし、子供でさえ、例外なく顔にペイントを入れていた。化粧が重要な意味を持つ文明らしかった。

 

「貴方の言うことはよく分からない。 外に人間の多く住む場所があることは、我々も知識として知っている。 しかし、星の数ほどもいるというのは、何とも信じがたい。 それに、もう一人の男とやらは、わざわざこんな危険な場所に、どうして来る」

 

「まだ、分かりません。 私も指示を受けてここに来ていますから」

 

「分からないことばかりだ。 我々では無く、貴方も。 それなのに、どうしてその男を助ける」

 

仕事と言おうとして、さっきそれが理解されなかったことを思い出した。

 

どうやら非常に単純な役割分担がされている社会らしく、誰はコレをする、誰はこうすると言った感じに、やることがことごとく決まっているそうなのである。しかも、年齢や性別、それに才能などでガチガチに、だ。階級と仕事が一体化していて、一種のカースト制度に近い様子だ。

 

しかしながら人々が苦しんでいるかというとそうでも無く、生け贄云々の物騒な話を除くと、むしろのびのび平穏にやっているように思える。巨大な生物はいるし、その危険も間違いなくあるのだろうが。

 

宗教紛争と民族紛争がごちゃごちゃに混ざり合い、凄まじい利権の混乱の中、明日をも知れない内戦で殺し合っているこの洞窟の外の国より、間違いなく平和なのではあるまいか。民だって、幸せだろう。

 

勿論体制に不満を持つ人もいるだろうが、此処にいきなり民主主義を持ち込んで上手く行くとは、とてもスペランカーには思えなかった。

 

ただし、一つだけ解決しなければならないことはある。

 

それを解決しないと、此処の人たちは家畜と同じだ。

 

ただ、その前に、話を進めておかなければならない。

 

「その人は、どうも私の助けを拒んでいる様子があります。 或いは、この地底の国のことを知って、あまり良くないことをしに来たのかも知れません」

 

「それは不快だ」

 

「だから、間違いを犯す前に、止めなければなりません」

 

「……」

 

壮年の男性が考え込む。

 

だが、彼が結論を出す前に、女性が一人こちらに歩み寄ってきた。多分陽光を受けていないからだろうか、白い肌で非常に美しい体つきをしているが、やはり顔は骸骨状の仮面で隠している。少しずつ傾向が分かってきたが、どうも神官やそれに類する人は骸骨の仮面をしていて、戦士階級は笑顔の仮面をつけている様子だ。

 

「神が、近々目覚めるようだ」

 

「神様、ですか」

 

「そうだ。 シアエガ様という」

 

ずきりと、胸の内が痛んだ。言葉だけで、強い気配を感じる。やはり、よその世界から来た神様か。

 

さっき生け贄云々という話をしていたが、このシアエガという存在が、生け贄を求めているのは間違いないところだ。

 

「どのような神様ですか」

 

「恐ろしい姿をしているが、かって地上で迫害されていた我らを、この理想郷へと導いてくれた偉大な方でもある。 ただし、地上の力ある人間達との戦いで狂気を発してしまったのだ」

 

「狂気、ですか」

 

「そうだ。 目を覚ますと、見境無くお暴れになる。 しかし、生け贄として、何名か若い娘を差し出せば、その命と体を喰らった後にまた眠ってくださるのだ」

 

かって、この洞窟に暮らしていた者達は、対立する部族との抗争に敗れ、全滅寸前まで追い込まれたという。

 

しかしそのシアエガの導きで、この洞窟の中に、逃れることは出来た。

 

その代わり、今でも生け贄を捧げなければならない搾取を受けていると言うことか。

 

「良いのですか、それで」

 

「もう地上はこりごりだ。 かといって、この理想郷は元々シアエガ様の住処だった場所なのだ。 住まわせていただいているのだから、それなりの事をしなければなるまい」

 

それに、と神官は言う。

 

いろいろな方法で押さえてはいるが、人口抑制が難しくなってきているのだそうである。シアエガは最近目覚める頻度が高くなってきているのだが、それによって人口の抑制を効率よく出来ている部分もあるのだとか。

 

流石に、その話を聞くと、不快だ。

 

「人口抑制という点については、何もそんなことをしなくても、他に方法がありませんか」

 

「難しい。 それに何より、この理想郷も、際限なく広いというわけでは無い。 地下深くには我らが足を踏み入れていない場所もあるが、増えていけばいずれ一杯になってしまうだろう」

 

「でも、生け贄は良くないです」

 

「それは、我らも良くは思っていない。 しかしシアエガ様の力は圧倒的だ。 我らには住まわせてもらっているという事も含めて、選択肢が無い」

 

古代文明からの脱皮に必要不可欠なのが、やはりいにしえの信仰からの脱却である。どこの古代型信仰も、やはり生け贄を要求する頻度が高い。

 

別に古い文明が悪いというわけでは無い。

 

しかし、やはり生け贄について、スペランカーは認めるわけにはいかない。信仰の形というものは尊重されるべきだと思う。だが、生け贄は。無為な犠牲と、多くの悲しみを生むだけだ。

 

たとえ神様が実在したとしても、それだけは譲ることが出来ない。

 

今の神官の答えを聞く限り、かなり現実的にものを考えている様子で、多少は話が早くて助かった。

 

「私が、その神様と交渉してみましょうか」

 

「貴方が? 確かに、他の神の力を得ている貴方であれば、神も交渉を受け入れるやも知れないが」

 

「ただし、後続の仲間と合流してから交渉に当たらせてください。 必ずしも、交渉が成功するとは限りませんから。 その場合は、どうにか倒して見せます」

 

「……分かった。 貴方ほどの存在が仲間と頼むのであれば、相当な戦士なのだろう。 迎えをやらせる。 ただ、シアエガ様は残虐で狂気に満ちた存在であっても、我らを迎え入れてくれた大恩あるお方なのだ。 出来るだけ非道は避けてほしい」

 

頷く。

 

これで、一通り、ネゴシエイトは済んだか。専門家では無いが、根気よく続けて正解であった。

 

後はハリーを捕捉して、連れ帰るだけである。後続の仲間はまた異界の神との戦いかといやがりそうだが、経験も積んでいるし、それに必ずしも戦闘になるとは限らない。それに、戦闘タイプだけあって頼りになる。スペランカーの戦闘スタイルの場合、どうしても路を作る人材が必要になってくるので、彼女がいなければ話にならなかった。

 

周囲を見回す。

 

流石に神殿で座り込むのも何だと思ったので、休憩所は無いかと聞いてみると、外に宿舎のようなものがあると教えてくれた。

 

護衛の戦士何名かと、外に出る。

 

神殿に併設されている宿舎はずっと粗末な建物だが、中はきれいに整備されていて、藁を敷きつめたベットもあった。中には沐浴場もある。ただし、使う意味についてはだいたい見当がついたので、スペランカーは流石に使用を遠慮させてもらった。それに、湯を使う習慣も無いらしく、体力の回復にも期待は出来なかった。

 

ぬれた布だけをもらって、それで体を拭いて、多少はリフレッシュした。洞窟の入り口辺りで結構汚い思いはしたから、これで多少は人心地がついたことになる。

 

しばらく休んで、外に。

 

ハリーさんは無事だろうか。悪いことをしていないだろうか。

 

それが、心配だった。

 

 

 

神殿らしき大きな建物に到着。やはりというか何というか、相当に警備が厳重であった。神像やらに興味は無い。もしかしたら宝物で飾り立てられているかも知れないが、警備が一番厳しい場所は、後回しだ。

 

まずは簡単なところから、順番に見ていく。

 

今のところ、人生をベットした賭は、順調に推移を見せている。このまま厄介者で半端物として扱われ、業績も全て馬鹿にされ、コネだけで何ら能力の無い人間が偉そうに金をばらまいて好き勝手に人生を送るのを指をくわえてみているくらいなら。人生全部をなげうって、賭に出た方がまだましだ。

 

最初は、迷いもあった。

 

ストイックに人生を送ってきたとはいえ、友だっている。若い頃は随分一緒に無茶をしたり、徹夜でゲームをしたり酒を飲んだりした仲間は、何人か指折り数えることが出来る。彼らを悲しませることになるかも知れないとは、確かに思う。

 

だが、それも勿論天秤に掛けた上での判断だ。

 

家族は、一人もいない。

 

いや、これから作るか取り戻す。だから、こちらに関しては、気にしなくても良いのが嬉しかった。

 

影から覗いていたが、それを見て思わず顔を引っ込めていた。

 

どうやら追跡者が、先に神殿に着いていたらしい。しかも、見覚えのある顔だ。

 

絶対生還者、スペランカー。一部では神殺しというあだ名を持つ女だ。不老不死という強力な能力を持ち、近年一流の仲間入りをしたという。鈍くて頭も悪いし運動神経も良くないと言うことだが、とにかく一生懸命に困難に立ち向かう事で、数々の難題を克服してきた。

 

憎い相手だ。

 

周囲の人間関係に恵まれているとも聞いている。友人達を除くとクズしか周囲にいないハリーとしては、絶対に認めることが出来ない相手だった。この手の連中に限って、周囲にクズしかいないのは努力が足りないのだとか、好き勝手なことをほざくものだと相場が決まっている。

 

努力なら、ずっと続けてきた。四十年、ずっとだ。

 

経済的に恵まれない中学校に行って、周囲が遊んでいる間必死に資格も取り、人生設計もしっかりやった。

 

友人達と遊ぶ時間もあまりとれなかったが、それでも精一杯全力で生きてきた。犯罪だって、今までは一度だって犯さなかった。街に出れば老人に道を譲り、レディファーストを必ず守り、拾得物は警察に届けてきた。

 

夢を叶えるために、全力で生きてきた。たばこも酒もほとんどやらなかったのは、それが夢のために邪魔になると思ったからだ。

 

その仕打ちが、現状だ。

 

周りは、ハリーを「いい人」だと言ったが、それはカモとしか見ていないことだと、ハリーは知っていた。何度理不尽な借金の連帯保証人を背負わされそうになったことか。何度無茶なセールスの餌食にされそうになったことか。人間社会で、いい人というのは馬鹿の同義語なのだ。そう、ハリーは少なくとも確信している。

 

だから賭に出たのである。きっかけはあったが、それが無くても時間の問題だっただろう。ハリーは謀反を起こしたのである。明らかに不公正な人生に対して、反旗を翻したのだ。

 

他人の苦労も知らないで、努力をしないのが悪いとかほざくようなアホどもをたたきのめすために。

 

多少は遠慮もしてやろうかと思っていたが、スペランカーの顔を見たら、流石に不快感が募ってきた。もう遠慮はいらない。

 

徹底的にやってやると、ハリーは決めた。

 

神殿の周囲を徘徊して、調べる。神殿の裏手に、警備が厚い小屋を発見。人が出入りしている形跡はないし、窓も無い。ドアにはかんぬきがつけられていて、小柄な緑色の肌を持つ人間が、数名警備に当たっていた。

 

どうも人間の他に、あの緑色の奴が混ざっている。人間の下位存在なのかと思ったがそうでも無く、普通に扱いは同じ様子である。むしろ戦闘能力は高いようで、こういう所での警備を任されていることからも、高い信頼がよく分かる。

 

だが、頭はあまり良くない様子だ。気も散っている。時々飛んでくる蠅に、視線が移りっぱなしなのを見て、ハリーは一計を案じた。

 

まず、シフトを確認。交代の時間、人がいなくなるタイミングを入念に調べた。どうも四時間程度で交代するらしい。全体的に、小刻みに警備を回している形式なのだろう。だれるのを防ぐためとみた。

 

仮面をかぶった男を、一人後ろから襲う。

 

棒で殴り倒すと、暗がりに引っ張り込む。そして、仮面を奪った。仮面をはがしてみると、案外端正な顔立ちが出てくる。現地の住民と共通項もあるが、若干細い雰囲気だ。肉体労働は、小さな連中に任せっきりなのかも知れない。

 

出来るだけ、混乱させた方が良い。盗むには、混乱の中が一番良いのだ。発覚も遅れやすい。

 

ライターで、燃えやすいものに着火。

 

今まで火を使っているのを殆ど見かけなかったことから考えても、火は絶大な効果を示すはずだ。石造りが中心とはいえ、この閉鎖空間での燃焼は致命的な事態を招く。それくらい、あの頭が悪そうな小さいのにでも理解できるはずだ。

 

倉庫らしいものを守っている連中に歩み寄り、火を指さす。

 

小さな守衛達は、火を見て文字通り飛び上がった。背丈よりも飛び上がるのを見てハリーはちょっと驚いたが、それどころでは無い。

 

甲高い声が上がり、人が集まってきた。かんぬきを外し始めると、他の奴らも意味を察して、手伝ってくれる。火を消しに掛かる連中は、見事なバケツリレーを始めていた。残念ながら、簡単には消えない。着火する前に、オイルを掛けておいたからである。

 

倉庫の中に入り、中のものを運び出す。

 

窓が無いだけあって、中は非常にひんやりしていた。明かり代わりの草を植えた鉢を持って、別のどくろ男が入ってくる。いそいそと運び出されていく中に、巨大な輝きを放つ石があるのを発見。

 

予想通りだ。

 

ルビーだけでも数個、ごろごろと放置されている。カッティングは若干雑だが、どう見ても数十カラットは堅いものばかりだ。他にも、まだまだ凄いものはある。ダイヤモンド。しかも、九十カラット程度はありそうなものがある。

 

持ち帰れば、確実に億万長者だろう。

 

人がどんどん増える中、堂々とハリーは。

 

ルビーを数個と、ダイヤモンドを持ち逃げしていた。

 

自分でもあまりに上手く行ったのと冷静なので、驚いたくらいである。ひょっとすると、真面目に生きずに泥棒専門でも、生計を立てられたかも知れない。スペランカーと、すれ違う。火事に気づいて、来たか。

 

翻訳機を使って、周囲に指示している。

 

「ぬらした布をかぶせてください」

 

意外に冷静な奴だ。バケツリレーで効果が無いと見て取るや、地底人共はスペランカーの言葉に従い、布を濡らして次々かぶせ始めた。見る間に火が小さくなっていく。倉庫の中は、もう殆ど空だった。

 

無言で、ハリーはその場を離れる。

 

求めるものは、あと二つであった。

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