オールドアクションゲーム二次創作 作:dwwyakata@2024
ようやく、忙しい時期が一段落した。
アトランティスから増援を呼んで、スペランカーは掘り出したシアエガの本体を何度かに分けて運び出した。輸送には国連軍が力を貸してくれた。というのも、厄介払いをしたかったというのが本音なのだろう。本体はぐちゃぐちゃに潰れてしまっていたが、時間を掛ければ勝手に再生すると言うことであった。事実、切り分けた本体をくっつけると、その場で融着が始まっていたくらいである。
後は世界最大の鍾乳洞を国連軍の保護下においてもらった。ひどい内戦が続いている国だったが、これで事態も沈静化に向かうだろう。邪神がずっと潜んでいた洞窟があったような地域である。放置するには危険すぎるからだ。
これで、アトランティスから離れられるかも知れないと思ったのだが、彼の地の長老達は、引き続きスペランカーにいてほしいと懇願。頼まれて断るわけにも行かず、残ることになった。
もっとも、アトランティスはとても居心地が良い。
幼い頃、母親にネグレクトされ、飢餓の中で蘇生と再生を繰り返し、地獄を見たスペランカーにとって。優しく迎え入れてくれるアトランティスの地は、確かに今までに無い、たとえて言うなら故郷のような、そんな優しい場所であった。
この場所を、守らなければならない。
そう、今は思う。
軍基地で、最後の肉塊を輸送機に積めて運び出す作業を、スペランカーは見守っていた。ダンプに積んで持ってきた神の肉塊を、この国唯一の基地から空路を使って運び出すのだ。全部がきちんと運ばれることも、しっかり見届けた。
「スペランカーさん」
声を掛けられる。
振り返ると、アリスだった。手にはやっぱり風船を持っている。だいぶ人間的に成長した今も、常時戦闘態勢なのは、習慣からだろう。
「どうしたの、アリスちゃん」
「これ、持ってきましたわ」
受け取った包みを開く。
それは、本だった。
タイトルは、美しきアトランティス。ハリーの写真をふんだんに用いた、おそらく世界で初の、アトランティスからの輸出品である。既に世界で数百万部の売り上げを見せているという。
観光客を受け入れるわけにはまだ行かない状況もあるが。これは、世界と隔絶されたアトランティスにとって、様々に意味を持つ本になるだろう。
地底世界の復興が終わった後、一足先にハリーはアトランティスに、姪と一緒に向かった。
そして、往年の腕を完全に取り戻し、今はアトランティスで最初の出版社にて働いてくれている。社長にと言う声もあるようだが、ハリーはあくまで写真家として生きたいのだそうだ。勿論、きちんと待遇に関しても、問題ない状態である。一緒に暮らしている姪のロンダも、少しずつ精神の平衡を取り戻しつつあるという。
本を開く。
素晴らしい写真が目白押しであった。
朝露にぬれる、美しい砂漠の夜明け。連なる砂丘の曲線が、なんと美しいことか。
いつも夜になっている地域の、あまりにも神秘的な光景。空の黒は、こうも映えるものなのか。
切り立った山々にしがみつくように作られている集落。生命力は、実にたくましい。
アトランティスの住人であるミイラ男や半魚人達の、日常を切り取ったような写真。生き生きとした喜びと、人間とは違うが確かに息づく彼らの呼吸までもが見えるようだ。
それらの価値を、再確認させてくれるハリーの腕前もまた素晴らしい。
「この場所を、守らなければね」
「及ばずながら、その時は私も協力いたしますわ」
「ありがとう」
アリスと笑顔を交わし合う。
そしてスペランカーは、アリスと一緒に、最後の肉塊と一緒にアトランティスに向かうべく、輸送機に乗り込んだのだった。
(終)
この話くらいになると、スペランカーさんは邪神対策、更にはアトランティスの顔役としての行動などで、すっかりベテランになって来ていますね。最弱でも独自の強さを得ています。
傷つきながら新しい人生を始めた男の話とあわせて、楽しんでいただけたでしょうか。