オールドアクションゲーム二次創作   作:dwwyakata@2024

7 / 140
7、解き放たれたもの

洞窟を出たスペランカーは、さっそく独裁政権のトップの前に通された。

 

彼はやせぎすの老人で、如何にも高級そうなパイプを吹かしていた。もちろん、スペランカーがたばこを吸うかどうかなど、気にもしていない。何でも、二代続いた独裁権力の長だそうで、実質的な権力は、腹心に握られているという話である。まあ、それも実際に見た訳ではないから、どこまで信用できるかは分からないが。最近の独裁は何でもかなり研究が進んでいるらしく、容易に真実の姿を見せないという話もある。

 

目の下に隈ができている。頭もはげ上がっていて、健康状態はどう見ても良くは無さそうだ。この国が傾いているのは、誰もが知っている。怨嗟が満ちる中、己だけ豊かな生活を続ける、愚かな老人。欲望だけは人並み以上のこの男のような輩が、あの幽霊のような悲しい犠牲者を世界に作り続ける。

 

だから、これからスペランカーは、せめてもの仕返しをする。

 

隣に立っている男が、通訳をしてくれる。彼はスペランカーが怪しい動きをしたら、即座に撃ち抜く用意もしていた。実際問題、死んでも生き返る以外には何の取り柄もないスペランカーは、そうされると打つ手がない。コンクリ詰めにされて海にでも捨てられたら、地上に復帰するまで随分時間が掛かるだろう。だから、暗殺などと言う無粋な真似はしない。

 

「宝物を持ち帰ったというのは本当か」

 

「はい」

 

リュックから、それを取り出す。赤い布に包んで持って帰ってきたそれは。実に380カラットを越える、超大型のスターサファイアだった。しかも美しくカットされており、豪勢な魅力を存分に見せつけている。間違いない。この地に栄えた国で、至宝とされたものであったのだろう。

 

「おお!」

 

老人が皺だらけの手を伸ばす。スペランカーはそれを、無感情に見つめていた。

 

彼は知らない。来る途中、白骨にこのサファイアをかざし続けてきた事を。その結果、霊感のないスペランカーにも分かるくらい、強烈な怨念がサファイアに宿った。この老人は巨大なサファイアに目が眩んでしまっているが、まともな感性の持ち主であれば、絶対に触ろうとはしないだろう。その輝きは美しいと言うよりも、もはや禍々しいの域に達している。

 

老人の目が、まるで裸の若い娘を前にしたかのようにぎらついていた。

 

しかも、欲深い老人は、更に愚かな事をほざき出す。

 

「ほ、他には! 他の財宝は!」

 

「……」

 

「どうした、早く言え!」

 

「それだけです。 後は彫刻類がいくらかと、鉱石寿命が尽きた真珠がちょっと。 黄金はひとかけらもありませんでした」

 

これは、本当だ。

 

考えてみれば、かさばる黄金を運び込む余力はなかったはずである。それならば、もっとも価値のある上に、運びやすい他の宝物を隠す方が良い。そして選ばれたのが、この国の特産であるサファイアと、真珠だった訳だ。

 

そして真珠には鉱石寿命がある。

 

このサファイアも、桁違いの価値があるだろうが、しかしとてもではないが国家財政をまかなえるような代物ではない。

 

埋蔵金伝説は、所詮その程度の代物だ。化けの皮を剥がしてみれば、とんだ枯れ尾花である。

 

唖然としていた老人は、しばし頭を抱えていたが、やがて手でスペランカーを追い払うような動作をした。ため息をつくと、スペランカーは部屋を後にする。約束の報酬を受け取ってから、わざわざ目隠しをされて、独裁者の屋敷を後にした。

 

目隠しと耳覆いを外して貰ったのは、空港である。遠ざかっていく兵士達を見送るスペランカー。

 

彼らには、一応伝えてある。非常に危険な病原菌が充満している地域があるから、中には入るなと。それを考慮し、わざわざ洞窟を出てから、すぐに簡易組み立て式のシャワーを運んできて貰って、服も殺菌処理をしたものに替えた位なのだ。用心深い兵士達は、女性兵士を呼んでまで、徹底的にスペランカーをボディチェックした。だから、宝を持ち出すことなど不可能だった。もとより、ちょろまかす宝など、存在はしなかったわけなのだが。

 

だが、あの残忍で愚かな独裁者は信用しないだろう。ひょっとすると、あんな小娘にも行けたのだからとか言って、親衛隊を連れて洞窟に向かうかも知れない。今でも彼処はフィールド指定されている超危険地帯だ。下手に踏み込めば、死が待っている。だが欲に目が眩むと、如何に危険な呪いが身に降りかかっているかも分からないし、気付く機会さえ失う。多分この国は、近々独裁者を失うことだろう。

 

独裁者がいなくなったら、国が良くなるなどと言うのは、希望的観測に過ぎない。しかし、いるよりはましだ。すぐに別の独裁者が立つかも知れないし、少しはマシになるかも知れない。

 

もし、マシになったら。

 

そうしたら、またこの国に来るつもりだ。そして今回の報酬を使って人を雇い、あの白骨を供養する。それが、今のところの、スペランカーの目的であった。少し待たせてしまうかも知れないが、あの骨達の供養は必ずしたい。

 

飛行機の搭乗手続きをする。少し時間が出来たので、ロビーの長いすに腰掛けて、ぼんやりして時間を潰す。親子連れが、前を通り過ぎていった。羨ましい話だ。スペランカーは子供が作れないかも知れない。仮に出来たとしても、母乳など怖くて子供には与えられない。自分を喰らった動物がどうなるか、何度も見ているのだ。子供が破裂する所など、絶対に想像もしたくない。

 

リュックから取り出したのは、鯖の味噌煮缶だった。結構美味しい缶詰だ。

 

あまり豊かな生活をしていないスペランカーは、缶詰で過ごすことが多い。だから、これは立派な御馳走である。

 

鯖缶に舌鼓を打っている内に、飛行機が来た。

 

また、いずれ、この国に来よう。そう思いながら、スペランカーは立ち上がった。自分に出来ることはしたのだ。

 

今は、ただ、待つ事で。未来の変転を待ちたかった。

 

 

 

                              (続)




様々なファミコン時代、スーパーファミコン時代のゲームのキャラクター達が、異常な法則が働いている危険空間「フィールド」に挑む「フィールド探索者」として働き、それで生じる問題を解決しているこの世界。

スペランカーは、そのフィールドが発生する要因と深く噛んでいて。
だからこそ、こんな露骨にあわない仕事をしているのでした。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。