オールドアクションゲーム二次創作   作:dwwyakata@2024

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1、未来からの刺客

森の中は、まさに異界。

 

粘ついた糸が木々の間を縦横に行き交い、異臭が辺りに漂っている。歩きながら、周囲の様子を確認する川背。

 

少し遅れて、ジョーがついてきている。軍の特殊部隊も同行したいと言い出したのだが、拒否した。

 

既に四十人以上の兵士が、内部で行方不明になっている。二次遭難するだけだ。

 

川背は、最近ようやく一流どころとして認められたフィールド探索者である。普段は料理人として活動しているのだが、戦場では空間をつなげる能力と、ずば抜けた身体能力、それに伸縮自在のルアーつきゴム紐を駆使して暴れ回る。

 

こういう足がかりになるものが多い地形は、川背にとってはまさにホームグラウンドだ。多少の粘液など関係ない。更に言えば、大型の怪物との交戦も川背はどちらかと言えば得意としている。

 

後ろにいるジョーは、能力という点ではたいしたことが無いが、歴戦の経験で手数を補う戦士である。軍人らしい軍人で、寡黙でおっかないおじさんだが、戦士としての信頼度は高いと、川背が尊敬している先輩から聞いている。もっとも、あの先輩は、基本的に他人を悪く言わないが。

 

死体を発見。

 

喉を食いちぎられている。辺りには、引きちぎられた人体が散乱していた。

 

内臓がぶちまけられており、手足が木々の間に張り巡らされた粘液の糸につり下げられている。侵入した兵士達の末路だ。

 

フィールドは、特殊な能力持ちで無ければ手に負えないから、専門の攻略業者が存在しているのである。

 

たとえ最新鋭の装備をしていても、軍隊でも、かなうものでは無い。

 

それが分かっているのに、時々いるのだ。現在の技術を過信して、フィールドを軍事力で攻略しようとする輩が。

 

そういう奴が無茶をするたび、大勢の死者が出る。

 

実際問題、最新鋭の道具を使ってフィールドに挑む者はいる。いつも良い仕事をしているジョーなども、本来の能力は極めて脆弱なので、その一人である。だが、近代兵器だけで、どうにか出来ないことも、ジョーは知っている。だからこそに、自身は支援や索敵などに徹して、全体の勝利に貢献するように動いているのだ。

 

声が聞こえた。

 

弱々しいが、悲鳴だ。罠の可能性もある。

 

後ろに向かって、指を鳴らす。ジョーへの合図である。そして自身は、手元にルアーを出現させ、ゆっくり前に歩み出た。

 

周囲の異臭が、濃くなってくる。

 

人影が見えた。だが、それは、粘液の糸でぐるぐる巻きにされている。そして、真後ろから殺気。

 

振り向くまでも無く、跳躍。事前に上の枝に引っかけておいたゴム紐の伸縮力も利用して、一気に十メートル上の枝にまで到達、半回転して枝を蹴った。そして、ジョーが、一瞬前まで川背がいた場所に躍りかかった人型を蜂の巣にするのを確認してから、木の幹を何度か蹴って着地。

 

降りてみると、そこにいたのは人間に近い姿をした、しかし別の生き物であった。

 

ボディアーマーらしいもので武装しているのだが、どうも様子がおかしい。顔を見ると、醜悪なエイリアンのように、目鼻立ちが人間とは違っている。手にしているナイフも、みたことが無い素材だった。

 

そして、死んだ途端、塵になって消えてしまう。

 

ぶら下げられていた兵士を救出。どうにか生きていた。一旦ジョーには、負傷者と共に撤退して貰う。同時に、川背は更に奥に進んだ。

 

奥へ進むと、有機的な得体が知れない物体で、辺りが覆われはじめていた。

 

もはや穏やかな森の面影は無い。この辺に来ると、兵士の遺品も残っていない。ぱちんと、指をはじく音。ジョーが戻ってきたらしい。

 

同時に。

 

四方八方から、無数の殺気が襲いかかってきた。

 

むき出しの骨格の怪物がいる。人間型なのだが、肉付けした骸骨の怪物とでも言うべき姿で、しかも後頭部が長い。

 

それの幼生らしい、グロテスクな胎児のような海老のような生物が、奇声を上げながら飛びかかってくる。

 

どれも、動きが凄まじく速い。

 

発砲音。ジョーが近づく敵を薙ぎ払っているのは間違いない。

 

川背は残像を残して跳躍、飛びかかろうとした一匹の首を蹴り折りつつ、海老胎児にルアーを引っかけ、自身は幹を蹴った。胎児を振り回し、上を見上げたエイリアンの顔面にたたきつけつつ、別のエイリアンの頭上に着地。首がへし折れたのを確認しつつ、再び飛ぶ。

 

バースト音が連続して響いている。後ろでも、激しい戦いが繰り広げられているのは間違いない。

 

不意に、視界の隅に異物。

 

あれは、手榴弾か。

 

即応。ルアーをふるって、はじき返す。同時に自身は、頭上の木の枝を掴み、遠心力を利用して旋回、木の枝の上に着地した。

 

爆発。

 

知っている手榴弾よりも、随分破壊力が大きい。

 

わらわらと群れはじめている何者かに対して、飛び降りつつルアーを振るう。此方が手強いとみて、総攻撃を仕掛けてきたと言うことだろう。

 

願ったりだ。

 

一気に此処でたたみかけておけば、生存者がいる場合助かる可能性も高くなる。

 

敵の中に、三メートル以上ありそうな巨人の姿があった。ホッケーマスクのようなものをつけており、全身は強固な筋肉の塊だ。だが、口元に見えるずらりと並んだ牙を見る限り、人間だとは思えないが。

 

敵には、銃らしいものを使ってくるものもいる。だが、当たってなどやらない。

 

高速でジグザグに動きながら間合いを詰め、ルアーを引っかけて飛び、ゴム紐の反発力を利用して首をへし折り、或いは動きを止めて脊髄を蹴り折る。十、二十、倒した敵の数を心中で数えていく。

 

ジョーが追いついてきた。

 

そして、有無を言わさず、巨人にグレネード弾を叩き込む。

 

川背はそれで生じた煙幕を武器に跳び、幹にルアーを引っかけて垂直に駆け上がった。枝を蹴って高々跳躍。

 

既に、敵の残存戦力は無い。

 

稲妻のように落下しつつ、巨人の首にルアーを引っかける。滑車の原理。

 

グレネード弾を喰らってもびくともしなかった巨人だが、落下分のパワーを一気に込めたゴム紐の収縮力をまともに食らい、釣り上げられる。枝がそれほど保たなくても良い。数秒、つり上げるだけで充分だ。

 

川背が着地したときには。

 

両手に突撃銃を持ったジョーが、驚異的な腕力でそれをぶっ放し、巨人を蜂の巣にしていた。しかも集弾率が凄まじい。顔面に百を超える軍用弾を喰らった巨人は、流石に絶息した。

 

枝がへし折れ、巨人が地面にたたきつけられる。

 

そして、他の怪物同様、消えて行く。

 

手をふるって、ルアーを消えゆく敵の首から外す。そして、ゴム紐共々、手元に戻した。

 

徐々に、周囲の殺気が和らいでいく。更に足を進めると、おぞましいものをみることになった。

 

折り重なった兵士達の死体。食害された跡が、かなり残っている。

 

あの怪物達に喰われたのだろう。目を閉じて黙祷。そして、見上げる。

 

死体の山の上に、妙な球体がある。その上の空間が、スパークを放ちながら、徐々に閉じていくのが分かった。

 

やがて、周囲はフィールドでは無くなった。

 

「生存者を探すぞ」

 

「はい、ジョーさん。 でも、これでは」

 

「現に一人生きていたのだ。 まだ生きている可能性はある」

 

無線で、一応外に連絡。怪物ははっきり言って、フィールドに出るものとしてはさほど強力では無かった。もっと強力な怪物が出てくるフィールドは、それこそいくらでもあるし、死にかけた経験など数えるのも馬鹿馬鹿しくなるほどなのだ。やっと一流どころと言われるようになった川背でさえそうだ。この世界のトップにいるフィールド探索者達は、それこそとんでもない修羅場をくぐってきているものなのである。

 

二人で手分けして、殉職した兵士達の死体を探る。殆ど原型が無いほど食い荒らされている気の毒な死体も目だった。

 

木の枝に、粘液で縛り上げられて吊されている兵士を発見。下ろしてみると、どうにか生きていた。

 

そうやって生存者を探していって、四人だけが救助できた。

 

大きなため息が漏れる。

 

現在の人類の技術は進んでいるが、それでもまだフィールドに入り込んで、怪物を駆逐するには早い。それを思い知らされる。

 

一通り作業が終わってから、帰投。後始末は、国連軍の調査チームに任せることになった。屈辱と絶望に顔を青ざめさせているケニーを一瞥だけすると、ジョーは言う。

 

「共闘するのは初めてだったが、頼りになった」

 

「ありがとうございます。 此方もばっちり後ろを守って貰えて、心強かったです」

 

頭二つ以上大きなジョーと握手する。

 

その後、基地のシャワーを借りて、リフレッシュする。といってもプレハブの簡易なものだったが、異臭と汚れを落とすには充分だった。

 

敵は全滅。後から来た国連軍の調査チームも、フィールドの消滅を正式に宣言。ケニー准将は軍のコネを使って生き残ろうとあがいたようだが、フィールド探索社の大手であるC社が派遣しているジョーが証言したこともあり、正式に軍法会議に掛けられることとなった。

 

彼にもプライドがあったのだろう。駐屯軍の司令官を長年勤めてきたし、軍人としての誇りも持っていた。

 

しかし、正確な状況判断を欠き、大勢の兵士達を死なせてしまったのは事実なのだ。

 

一通り事後処理が済むまで、川背はその場にいることとなった。フィールドが復活と言うことも、低確率ながらあり得るからだ。

 

一旦フィールドが消滅してしまえば、辺りは鶏肉の揚げ物が美味しい田舎のK州である。空気も美味しいし、食べ物にも恵まれている。魚を専門としている川背も、料理の素材を探して辺りを散策することが出来た。

 

ジョーはというと、軍に頼まれて、兵士達の訓練をみているようだ。

 

一見すると、もう平和が来たようにも思えた。

 

だが、事件はこれでは終わらなかった。

 

 

 

フィールドを攻略してから四日後。

 

そろそろJ国に帰る準備をしようと思っていた川背は、貸し出されている基地内の宿舎で、ベットに寝転がっていた。良さそうな素材の買い付けルートは確保したし、近場の川や山もみた。良さそうな素材については、地元の業者に注文して、届けて貰う手はずも整えた。

 

豊かな自然の中で暮らしている動物は、とても美味しくなる。勿論丁寧に何世代も掛けて作られた家畜にも、とても美味しいものが多い。良くないのは中途半端だ。それこそ数え切れない食材をみてきた川背は、それをよく知っている。

 

とりあえず、準備は全て終わった。

 

帰ろうかなと、ベットから起きようとしたところで、ドアがノックされる。プレハブの宿舎だから、凄く音が良く響いた。

 

「何ですか?」

 

「急用です。 すぐに来てください」

 

「はい」

 

ただ事では無い。

 

すぐに装備一式が入っている上、切り札にも使っているリュックを片手に、部屋を出る。迎えに来ていたのは、真面目そうな青年軍人だった。

 

「フィールドに関する事ですか」

 

「はい。 丁度今、本部に専門家が来ています。 そちらから、詳しい話は聞いていただきたく」

 

となると、この青年も、あまり詳しいことは知らされていないのだろう。

 

軍基地の中はさほど広くも無く、歩いて数分で本部のある建物にたどり着ける。本部もプレハブだが、周囲は兵士が固めているし、防弾性能の強い素材を壁に使っているのが一目でわかる。

 

本部の側に、ジープが停まっている。多分、よほど急ぎで来たのだろう。普通だったら、あんなに近くには停めさせて貰えない。

 

中へ入ると、ちょっと兵士達が殺気立っていた。先に来ていたらしいジョーが、川背をみて声を掛けてくる。

 

「来たか。 こっちだ」

 

「すぐ行きます」

 

奥の会議室に、一緒に歩く。足の長さが違いすぎるが、ジョーはしっかり歩く速度を合わせてくれた。こういう細かい所に、戦士の中の紳士を感じてしまう。

 

会議室に入ると、二人の人物が目についた。

 

一人は気が弱そうな少年である。眼鏡を掛けており、多分年は十代前半という所だろう。もう一人は、気むずかしそうな老人。紫色の、フードつきのローブを被っており、人相を半ば隠している。口元からは長い白髭が伸びており、節くれた手にはどくろがついた禍々しい杖が握られていた。何度かみたことがある。N社と関係がある魔術師だ。

 

己の才覚で様々な魔術を使う魔術師は、フィールド探索者とは似て非なる存在である。あるときは対立し、あるときは協力し、歴史の影でうごめき、結果様々な軋轢や争いそれに混乱の原因となってきた。

 

この魔術師も、フィールド探索者と関係が深いとは言え、かなり立ち位置が微妙なところにいる人物だという。N社としても有能さから押さえているが、いつ造反してもおかしくないそうだ。

 

魔術師は手強い。

 

以前川背も手練れの魔術師と交戦したことがあるが、多分一対一では負けていただろう。能力者以上に、秘匿されていることが多い連中であるが故に。実際に戦ってみると、マニュアルが通用しないことが多いのだ。川背は超高速での機動戦を得意としているから、一瞬の判断が生死を分ける。そういう意味でも、リスクが高い魔術師は、苦手な相手だった。

 

更に、見慣れない人物が一人入ってきた。

 

外でエンジン音がしたから、今駆けつけてきたのだろう。まだ若い科学者だ。いや、若いように見えるが、かなり老けているかも知れない。

 

「揃ったようですな。 はじめますか」

 

「貴殿は」

 

「私はDr、L。 お見知りおきを」

 

「貴方が!」

 

川背は、思わず声を上げていた。

 

L。C社のエースであるロボットフィールド探索者、Rの生みの親。ライバルであるDr、Wの方が有名だが、この人物もなかなかに侮れない実力の持ち主だ。若々しい姿をしているが、どうも妙なきな臭さも接していて感じる。

 

会議が始まった。全員に資料が配られる。少年の左右には、屈強な軍人が張り付いていた。それもまた気になった。

 

「今回のフィールド発生についてなのですが、実ははっきりとした原因が分かっています」

 

「原因、というと」

 

「この少年です。 カール=ロベルト=ハインラインと言います」

 

恐縮した様子で、少年が身を縮める。見たところ、戦闘経験があるわけでもなく、闇を宿しているわけでも無い。ちょっと気が弱そうな、普通の少年である。何かしらの特殊能力があるようにも見えない。

 

小首をかしげる川背に、Lは続けて説明をしてくれた。

 

「実は、今回貴方たちが潰したフィールドだけでは無いのです。 ここ最近、このカール君が移動した、もしくは移動しようとしていた場所で、立て続けに小規模なフィールドが発生しています。 殆どは数日で潰されていて、このような騒ぎにはなっていなかったのですが」

 

「何……」

 

「様々な偶然で彼は難を逃れてきたのですが、今回は特に危なかったようです。 山の中に住んでいるおばあさんの所に家族で向かうところだったらしく、おばあさんと一緒に辛くも逃れたのだとか」

 

しかも、それは偶然では無く、六度にわたっているという。

 

そのたびにたまたま地元に来ていたフィールド探索者達が活躍して、悲劇を事前に潰してきたのだが。今回はそのフィールド探索者が帰郷した途端に事件が発生し、なおかつ三十名以上の犠牲を出すという事態に発展してしまった。

 

「様々な方面から調査をした結果、色々と面白いことが分かってきました。 ああ、被害者には哀悼の念を表します。 そういう意味では無くて、どうもこの一件には、未来からの干渉があるようなのです」

 

「えっ!?」

 

「SFの世界だな」

 

思わず声を上げた川背を、柔らかくジョーがたしなめる。L博士は、元からちょっとマッドなところがある人物だと言うことは、川背も聞いていた。Rのような超高性能ロボットを作れる位なのである。まあ、精神的におかしなところがあるのは不思議では無い。

 

だが、それでも流石に未来からの干渉というのは、度肝を抜かれた。

 

L博士が、色々出してくる。

 

殆どはただのがらくたに見えたが、幾つか不可解なものがあった。中には、川背が巨人を倒したとき、スパークの下に落ちていた球体もあった。しっかり回収していたというわけだ。

 

「幾つかの調査の結果、これらがどうも現在の物質では無い事が分かってきました。 それどころか、或いはこの星の物質でさえ無いかも知れない」

 

「ええと……」

 

「つまり、あの怪物達は、このカール君を何らかの目的で殺すために、わざわざ未来から来ている、ということです! おそらく、彼の子孫があの怪物達にとって、何らかの不利益になる事をしている、というような理由なのでしょう!」

 

満面の笑みで、L博士は断言した。

 

不意に、場に老人の声が割り込む。魔術師だった。

 

「早く問題に入ってくれんかな。 儂は家に帰ってテレビが見たいんだが」

 

「ああ、もう少しお待ちください、ワドナー師」

 

「最近HDDレコーダーの調子が悪くてなあ。 ましてJ国のアニメとなると、再放送もなかなかしとらんしな」

 

「分かりました。 作戦の核心に入りましょう」

 

魔術師の老人をみて、ジョーが意外そうな顔をしていた。川背もびっくりだ。気むずかしいと思っていたのだが、意外にファンキーなおじいさんである。口をきいたところをみたことが無かったとは言え、ちょっと誤解していたかも知れない。

 

或いは、自宅は怪しげな魔術グッズで埋まっているのでは無く、J国アニメのフィギュアかなんかが一杯おいてあるのかも知れない。

 

「そこで、今度は此方から、未来に対して反撃を行います」

 

「どうやって?」

 

「ああ、儂がやるんじゃな」

 

「はい。 魔術による空間固定と時間遡航の逆を行い、あなた方を未来に飛ばします」

 

かなり乱暴な作戦だなと川背は思ったが、こう急いでいるという事は、多分時間に制限があるのだろう。

 

帰りについては問題ないと、ワドナーが言う。一定時間が経つと、強制的に戻されるように術式を組んでくれるとか。ただしそれは逆に言えば、向こうでは時間制限があり、それが終わるまでに任務を切り上げなければならないと言うことも意味している。なんだかかなり滅茶苦茶な作戦にも思えるが、しかし他に手が無いのだろう。此処にL博士のような大物が来ていることが、それを裏付けている。

 

Mやロードアーサーのようなエース格では、投入して失敗したときの損失が大きすぎる。かといって、中堅以下を何名か入れたところで、多分役に立つとも言いがたい。それで、川背とジョーという訳か。

 

一人いてくれると心強い先輩の顔が川背の脳裏に浮かんだが、彼女は今ちょっと手が離せない要件に掛かりっきりと聞いている。ならば、仕方が無い。ジョーは少し一緒に戦ってみて分かったが、とても頼りになる。共闘するのは吝かでは無い。

 

「あなた方の体重から割り出して、装備は45キロまでに限定されます。 火器などは持って行けますが、車などは運べませんので、ご了承ください」

 

「大丈夫だ。 問題ない」

 

「それでは、急で申し訳ないのですが、作戦に取りかかりましょう」

 

L博士は、満面の笑みで言う。

 

何かしらの裏がある事は間違いの無いところだ。だが、もし未来からの干渉があるとすると、このおとなしそうな子が何かしらの重大な歴史的転機を担っている可能性も否定は出来ない。

 

ならば、どうにかして、対処しなければならないだろう。

 

白色人種の子供は発育が早いと聞いているが、流石にこの子はまだ小さすぎる。腰をかがめて、川背は視線を合わせて、頭を撫でた。

 

「大丈夫。 お姉ちゃんが、悪い奴をみんなやっつけてくるから」

 

「本当? おばあちゃん、あいつらのせいで大けがしたの。 絶対、仇とってほしい」

 

「うん。 分かってるよ」

 

実際には、その襲撃者達は既に皆殺しにした。だからこれ以上仇だ何だというのはナンセンスだ。

 

だが、子供にそれを言っても仕方が無い。

 

だから、川背は笑顔で、敢えて安請け合いをした。

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