オールドアクションゲーム二次創作 作:dwwyakata@2024
爆音が轟く。
激しい銃撃音。倒壊したビルが火を噴き、それを粉砕しながら進み出てくるおぞましい巨大な戦車。生物的な装甲が為されているそれは、この国でかって使われていた旧式戦車を、エイリアン共が奪って改造したものだ。
上には、エイリアンどもが満載されている。怒りを目に宿したビルが、雄叫びを上げながら突撃銃を撃ち込む。軍の最新鋭突撃銃は、本来だったら人間が持ち運べる重さでは無く、サイボーグでの運用を想定しているのだが。ビルの超人的腕力の前には、通常の銃器と大差ない。
巨大な突撃銃だけあって、凄まじい火力に、巨大な戦車が見る間にスクラップになる。旧式戦車とは言え、エイリアンの技術で強化されているのに。まるで、子供用のおもちゃのような他愛なさだ。戦車が爆発し、エイリアンどももろとも吹っ飛ぶ。満足したビルは、空になった弾倉を捨てた。
「ランス! そっちはどうだ!」
「掃討中!」
凄まじいバースト音が響き渡る。振り返ったビルは、ランスが殆どのエイリアンを、既に血祭りに上げているのを知る。だが、なお手元の軽機関銃を発砲し、残敵を瞬く間に薙ぎ払った。
この街は壊滅状態だ。
だが、戦わなければならない。これ以上の損害を、出さないためにも。
もう生きている人間はいないかも知れない。戦友達も、かなり厳しい状態だろう。だが、それでも二人は戦う。
魂斗羅の称号を得た、最強の戦士が故に。
ビルは身長二メートル七センチ、体重百三十四キロ。無駄な肉はひとかけらも無い、完璧な武人としての肉体の持ち主だ。それだけではない。人知を越える戦闘能力を実現するために、体にある工夫が為されている。銀の髪の毛を角刈りにしている、全体的に四角い雰囲気を受ける男だ。人間の戦闘的な部分を凝縮し、高度に完成された戦術的頭脳と融合させた生きた破壊兵器。それがこの男である。
元々軍のエリート兵士であったが故、実験の素体にされたビル。だがそれが故に、戦場の数々で、おびただしい戦果を上げてきた。
ランスは、身長二メートル四センチ、体重百二十九キロ。ビルの相棒であり、戦歴もほぼ同じである。新兵の頃からの盟友であり、圧倒的な実力を生かして、二人一組で幾多の敵を殲滅してきたのだ。
角刈りにしているビルと違い、ランスは若干天然パーマの掛かった髪を長く伸ばしている。髪は黒く、浅黒い肌もあって、完成された印象を受けるビルに対して、若干荒削りな雰囲気を持っている。ビルがしっかり軍服を着込んでいるのに対して、ランスは上半身をむき出しに、筋肉を誇示しているところも違っていた。しかも、その筋肉に、弾倉を二重三重に巻き付けている。
弾倉の一つを引きはがすと、ランスは突撃銃に再装填する。
遠くから、飛行音。多分、爆撃機だ。
「ちっ! 本気でこの街ごと俺たちを消す気らしいな」
「無理も無い。 俺たちだけで、奴らを一個師団は潰したからな」
殲滅したエイリアン達を踏み越えるようにして、次々新手が現れる。
殆どは、元人間に、エイリアンの頭脳を寄生させたものだ。もはや助かる見込みは無く、その場で撃ち殺すしか無い。犠牲者をこれ以上出さないためには、エイリアンどもの根拠地を叩くほか無い。
レッドファルコンと名乗る、謎の存在を。
激しい銃撃を浴びせながら、ビルは進む。まもなく、此処に敵の重爆撃機が来るはずだ。エイリアンどもは人間の文明を吸収し、急速に進化した武器を繰り出してきている、とされている。もたもたしていると、細菌兵器や核兵器まで生み出しかねない連中だとも。
無線が入る。
手元にあるハンドヘルドPCは、音声認識できる形式である。がれきを這い上がるようにして迫ってくる、無数の目を光らせた元人間の群れを鏖殺しながら、ビルは吠える。
「どうした、ルシア!」
「敵根拠地発見。 どうやら其処からかなり近い様子です」
「そりゃあご機嫌な情報だな!」
ランスが横殴りの銃撃をたたきつけ、迫る敵の頭をまとめて吹き飛ばした。
斜め上から音。狙撃兵だ。
だが、此方の反応が早い。走りながら、軽機関銃を叩き込みつつ、跳躍。崩れ落ちたビルの二階に飛び移ると、手榴弾を放り込みながら、一気に其処を走り抜ける。
背後で爆発。
周囲にいる敵を、みじんの隙も無く薙ぎ払いながら、ビルは続いての情報を聞いた。凄まじい連射で突撃銃に負荷が掛かるが、気にしない。場合によっては敵から新しい武器を奪っても良い。
「で、それは具体的にどこだ」
「北北西百二十キロ。 山岳地帯の地下です」
「流石に歩くのは厳しいな」
「現在、近辺の残存戦力を集めている所です。 ヘリ部隊と、後はジェットバイクをそちらに送ることが出来るかも知れません。 ただし、敵も重厚な防御陣地を構築している可能性が極めて高く、困難な闘いになるでしょう。 ハイウェイがあるのですが、其処を突破するのはちょっと難しいかも。 しかし、突破さえ出来れば……」
誰に物を言っていると、ビルは不敵に笑った。
見える。
敵の重爆撃機だ。核兵器を積んでいてもおかしくない。此方の世界の重爆撃機と比べると、かなり型式が古いようだが、エイリアンの訳が分からない技術でさぞ無茶な強化を施されているのだろう。
だが、飛び方がおかしい。中で、何度も爆発が起こっている様子だ。ぐらぐら揺れていた爆撃機が、ついに中途からへし折れる。
飛び降りた奴がいる。パラシュートを、しかも超古典的なものを開いた。降りてくるのは、二人か。
完全にバランスを崩した爆撃機が、倒壊した巨大ビルに突っ込み、轟音と共に爆裂。辺りのエイリアンを、片っ端から薙ぎ払った。
周囲は完全に焼け野原だ。
ビルとランスが殺った分もかなりあるが、エイリアンどもが攻めてこなければ、このようなことにはならなかった。
がれきを盾にして爆発をやり過ごしたビルは、ランスを呼ぶ。
ランスはというと、髪に跳んできた火の粉を掴んで消しながら、ぼやいていた。
「ちっ。 また俺の髪がちりちりになっちまうぜ」
「それより、ランス。 みろ」
パラシュートの男が、風下に流されていく。
遠目に見えるが、随分古典的なアーミールックだ。迷彩服だろうか。体格はかなり良いようだが。
問題はもう一人である。
超人的な視力で、ビルはみる。
崩れた建物を足場に、もう一人がぽんぽん跳びながら降りてくる。使っているのはワイヤーだろうか。
いずれにしても、生半可な動きでは無い。
「なんだアレは。 エイリアンか」
「いや、違うな。 どちらも人間のようだが……」
現在は二十七世紀。優れた科学技術で、軍人は身体能力を強化されているのが普通だ。だが、あの特に小さい方、人間だとは思えない。超級の実力を持つビルとランスでも、身体能力ではあれには及ばないだろう。
小さい方が着地した。大きい方も、程なく着地。
周辺の敵はいない。さきの爆撃機の爆発が、よほど響いたのだろう。と思っていたのだが。
ビルが飛び退くのと、その影が巨大化するのは同時だった。
四メートル以上ある、人型をした巨体が、その場に降ってきた。地面がクレーター状にへこみ、土砂がまき散らされる。後頭部が長く、目らしきものは殆ど見えない。背中にあるのは、どくろのような禍々しい翼だ。
エイリアンの兵器は、生体系と機械系に別れる。
その場で人間を改造するような生体系は、時にとんでもなく巨大化することがある。此奴らこそがエイリアンの本当の主力兵器。機械群は、物量を補うための案山子に過ぎないのだ。
雄叫びを上げたエイリアンが、四つん這いで躍りかかってくる。
徹甲弾と叫んだ。突撃銃の弾種が、音声認識で自動的に切り替わる。がれきだらけの大地に踏ん張り、腰だめして乱射。無数の弾丸が、エイリアンの黒ずんだ皮膚を打ち砕く。だが、体液が飛び散りながらも、エイリアンは屈しない。巨大な長い腕を振るって来る。鋭い爪がついた禍々しい腕が、迫り来るのがスローモーションで見える。
跳躍。
空中で回転しながらビルは、ランスが斜め後方に廻りつつ、エイリアンに弾丸を浴びせるのをみる。空中で弾丸を乱射しながら姿勢制御。エイリアンが、こっちをみた。弾種切り替え。音声切り替えだけで無く、手動でも出来る。カスタマイズ可能だが、ビルの場合はポンプアクションの回数でそれを行うようにしている。
ランスがグレネード弾を放つのと、エイリアンが尻尾を伸ばしてくるのは同時。
此方の迎撃が先だった。空中で、尻尾を爆砕。着地。手が振り下ろされてきた。残像を残して飛び退く。ランスは。エイリアンが凄まじい速度で回転しつつ、尾を振り回す。或いは、剣のように突き立ててくる。
二度、擦る。
擦っただけで、盛大に血が噴く。普通の人間だったら、ちょっと擦っただけで即死だろう。
此奴がどれだけの命を犠牲に作られたおぞましい存在なのか。想像するだけで、ビルの脳裏には破壊的な怒りが点った。
吠える。乱射。一点に攻撃を集中。みると、敵の傷は片端から回復している。一点に集中しなければ、意味が無い。
言わなくても、ランスには伝わる。
二人で、首の一点を集中攻撃。流石にうっとうしがって、エイリアンが防ごうとする。好機。一気に前に飛び出て、顔面にグレネード弾を叩き込む。エイリアンの至近で炸裂。悲鳴を上げる巨体。
その上に、ランスが駆け上がっていた。
首筋に、銃を突きつけたランスが、叫ぶ。
「思い知れ! 化け物野郎っ!」
徹甲弾が、首を連続して貫く。そして、巨体の足下を滑り抜けながら、ビルも体をひねり、斜め上に同じく徹甲弾を放った。
凄まじい量の鮮血が前後左右に吹き出し、ついに巨体が倒れ伏す。
今まで、エイリアンの巨大な戦士は何度となく倒してきた。だが此奴は、今まで倒してきた戦士達よりも、更にタフな様子だった。
着地したランスも、かなり傷を受けていた。
「ビル、無事か」
「戦闘続行に支障は無い」
「そうか、ならいい。 それよりも、あいつらだ」
みると、向こうでも同種のエイリアン戦士との死闘を繰り広げていた。
巨大エイリアンの首が落ちる。あのワイヤーみたいので、滑車の原理で力を掛けて、その瞬間首にもう一人が猛射を浴びせたらしい。
今徹甲弾を浴びせてみて分かったが、このエイリアンの弱点は首だ。かなり構造的にもろくなっている。それを、向こうも見抜いたと言うことか。
「味方だったら頼もしいんだがな」
「ああ」
腰を下ろしたランスが、むき出しのたくましい肉体に、医療用のスプレーを吹きかけはじめる。体内のナノマシンを活性化させ、治癒能力を強化させる薬を噴霧させる小型の道具だ。
ビルは銃口を上に向けたまま、倒れ伏したエイリアンの上に着地した小さいのを見つめた。向こうも、此方に気づいたらしい。
近づいてくる。
ビルとランスは、手首にミサンガのようなものを巻いている。これが軍の士官に提供されているハンドヘルドコンピューターだ。重さを感じないほど軽く、なおかつ丈夫な優れものである。耐水性や耐薬性にも優れているほか、サポート用のAIも搭載されている。ビルの場合は、ルシアという名前である。
「ルシア、解析しろ。 何者だ」
「照合中。 これは……!?」
「何だ」
赤外線とX線を相手に照射して、生体情報などを解析することが出来るルシアは、事実上一瞬で目の前の相手を解析できる。軍の人材DBにアクセスできるからだが、それ故にルシアがどうして口ごもるのかよく分からない。
ランスも異常に気づいたようで、銃に手を掛け立ち上がる。
「やっと生存者に会えました。 貴方たちは?」
小さい方が驚くべき事にオールドイングリッシュで喋り掛けてきた。近くで見ると、子供みたいである。ただし胸が膨らんでいるから、女である事は分かる。幼い容姿からして、東洋人か。
もう一人は、時代が掛かった銃を担いだ、いかにも軍人という風情の男だ。四角い顎と、良く制御された全身の筋肉。そして左手にあるのは、多分エイリアンから強奪したであろう、現在の銃だ。現在の銃は狙撃用ライフルやグレネードランチャーなど、だいたいの要素を一丁に詰め込んでいることが多い。さっきの戦いぶりからみて、多分もう使いこなしていると言うことだろう。
「女性の方はカワセ・ウミハラ。 21世紀のフィールド探索者です」
「カワセぇ!?」
「あ、僕の名前。 そちらはAIですか?」
「……」
思わず、ランスと顔を見合わせる。
カワセといえば、21世紀にいたという機動戦のプロフェッショナルだ。「大破壊戦争」と呼ばれた悪夢の時代の前、世界には多くの魔術師やフィールド探索者と呼ばれる能力者がいたという。その一人。
ビルやランスでさえ知っているほどの有名人である。機動戦の巧みさに関しては、あの伝説の「最強」Mでさえ一目置いていたと言うほどの強者であり、戦歴も数知れない栄光に彩られている。特に機動戦の戦術については幾つか新しいものを開発したため、必ず軍事の教科書で名前が挙がるほどの人物だ。こんな小娘だとは思わなかったが。
「男性の方はコードネーム・ジョー。 同じく21世紀の」
「ワンマンザアーミー、スーパージョーだと?」
「話が早くて助かる。 で、此処は一体どこだ」
流石に、頭痛がしてきた。
ルシアがそうまでして断言すると言うことは、当人に間違いないと言うことなのだろう。だが二人とも、とっくに鬼籍に入っている過去の人物だ。
何しろ今は27世紀。21世紀からは、600年も経過しているのだから。
ルシアが指定してきた、軍の残存部隊の集結地点へ急ぎ足で歩きながら、ビルは話をするランスを横目で見ていた。ランスはビルに比べて荒々しい分陽気で、この異常な状態にも、すぐになじんでいる様子だった。
「そうなると、此処は27世紀の地球で、ニュー・ニューヨークシティなんですね」
「正確には、そうだった、だがな。 レッドファルコンのクソ共が、こんなにしちまったがよ」
勿論許しはしなかった。派手に出迎えて、正面から叩き潰した。
その結果がこれである。
住民の多くも犠牲になった。
謎のエイリアン、レッドファルコンによる襲撃が始まったのは数年前のこと。それからはひっきりなしに、各地の基地や辺境で、奴らによる侵略が繰り返されるようになった。それを逐一撃退していたビルとランスだったのだが。今回、ついに奴らは市街地にまで攻め込んできたのだ。
既に地球外の惑星にも進出している地球人類だというのに。複数の星系に、いくつもの国家を作っているほど文明は進展しているというのに。レッドファルコンがどこから来て、何の目的で侵略をしてくるのか分からない。軍の諜報部隊は昼寝でもしているのか、それともよほど闇が深いのか。
宇宙艦隊が連中を捕捉したという話は聞いていないから、実は生物兵器を擁するテロリストでは無いのかという噂もある。にしては、連中の侵略はいつも規模が大きすぎる。今回に至っては、駐屯軍を真っ正面から相手にして、壊滅させるほどの規模で攻めてきた。一国の軍隊であっても、此処までのことは出来るかどうか。
「で、あんたらはどうしてこんなクソッタレな未来なんかに?」
「実は、この時代から僕達の時代に、生物兵器が何度と無く送り込まれてきていまして、その対応のために先見偵察をするつもりだったのですが」
「野郎、あんた達の時代にまで迷惑掛けてやがったのか。 今度こそ全員ぶっ潰してやるぜ」
ランスが、胸の前で拳を併せる。直情的なこの男らしく、話を鵜呑みにして、本気で怒っているようだった。
ビルはというと、ルシアに解析を行わせている。勿論、嘘発見器の機能くらいは有している。最新鋭のハンドヘルドコンピューターなので、それ以外の機能も様々に持っている。つまり、解析は信頼出来る。
今まで、解析には随分助けられても来た。だから、信じてもいるのだ。
「嘘をついている可能性は0%です」
「じゃああいつらは、本当に過去から来た本人だってのか」
「はい。 遺伝子データからも、その可能性は100%」
「確かに伝説の戦士二人と肩を並べて戦えるのは光栄だがな……」
何でも二人は、この世界に来た途端、エイリアンの基地の真ん中に出てしまったそうだ。隙を見て発進しようとする爆撃機を乗っ取ったまでは良かったが、自爆コードを発動されてしまい、慌てて脱出したのだとか。
いきなりの状況で、其処まで対応できれば十分だ。さすがは伝説にまでなっている戦士、ということか。
「あんた、料理人なんだろ? 後で時間が出来たら、美味い飯喰わせてくれよ。 21世紀のJ国って言えば、すげえ美味いもんが山ほどあったって聞いてるぜ」
「僕は魚料理が専門ですが、何かリクエストはありますか」
「料理の種類なんかわかんねえ! なんか美味い奴!」
「……」
流石に困り果てた様子で、カワセが笑顔のまま眉尻を下げる。ランスは普段のアホっぽい言動とは裏腹に、戦場では冴えた頭脳とクールな戦闘を見せる。だから、戦場の外で「英雄」魂斗羅ランスに期待して会う奴は、だいたい最初に失望の表情を見せるものだ。
味方が見えてきた。
驚くほど数が少ない。ミサイル戦闘車両が数台に、装甲ヘリが一機。それに、装甲車に分乗した歩兵が、少しだけだ。
ビルとランスをみると、兵士達がわっと歓声を上げた。ヒーローと声を上げる者もいる。魂斗羅は、兵士達の希望の星だ。今まで激戦の中で超人的戦果を上げ続け、多くのミッションを成功に導いてきた。
「バイクはあるか」
「幾つか用意してあります、サー!」
「よし、四人分……」
「いえ、僕は普通に移動する方が早いですから。 今は一刻を争いますし、三台だけで大丈夫です」
カワセがとんでもないことを言い出す。ジョーをみるが、頷かれた。つまり、本当だと言うことだ。
「そのお二人は?」
「解析によると、過去から来たらしい。 腕は確かだ」
「ハハハ、冗談を」
「四メートルはあるエイリアンを、苦も無く葬った」
兵士の笑顔が固まる。
バイクが来た。昔と違い、車輪を使っていないホバー式のものだ。
この時代でも、バイクは様々な用途に進化を続けている。軍用バイクは悪路に悩まされない反重力ホバーバイクが中心で、当然積載量も一気に上げることが出来る。装備を吟味しながら、バイクに搭載。
ジョーが、バイクの使い方を聞いていた。その後、少し試運転する。
かなり荒っぽいが、運転自体は理にかなっている。
「悪くないな」
「流石にワンマンザアーミーだ。 乗りこなしも早い」
「それもあるが、軍用の癖が強いマシンに乗る機会が多いから、という理由もある」
ジョーが、担いでいた多目的銃を、バイクにくくりつける。カワセはというと、食料をリュックに詰めている様子だ。準備はすぐに整う。他に集まってくる戦力も、あまり多くは無い。
ぼろぼろの輸送トラックが来たが、多分それで打ち止めだろう。駐屯軍は、今ここにいるメンツを除いて全滅だ。
これで、エイリアンどもの本拠地を、ぶっ潰さなければならない。
まだミサイル戦闘車両が数台生き残っているのが救いと言える。この戦闘車両は、それぞれ数十発の戦術巡航ミサイルを、単一の目的に向けて放つことが出来る。開拓惑星でも、巨大なクリーチャーを瞬時に屠ることが出来る強力な兵器として良く運用されているものだ。
リュックを背負い直すと、カワセがこっちに来た。
「それで、突入作戦は」
「やる気満々だな。 先行偵察なら、其処までやらなくても良いんじゃ無いのか、カワセ」
「もう、渡り掛けた橋ですから」
にこりと、カワセが笑う。
非常に童顔だが、二十歳過ぎというのは本当らしい。表情は結構練り込まれていて、積み重ねた人生経験がうかがえた。
円座を組むと、ルシアに指示。立体映像が、皆の中心に浮かび上がる。
敵の根拠地になっているらしい山を中心に、敵の分厚い布陣がうかがえた。
「敵の兵力分布は」
「この地点が一番分厚くなっています。 しかし、此処こそが最短距離です」
示されたのは、やはりハイウェイ。
赤い点で敵が示される。ハイウェイ周辺は、殆ど真っ赤というのも生やさしい有様だった。重層的かつ執拗に構築された防御陣は、普通の軍であれば一個師団を投入しても突破できるか怪しい。
「ならば考えるまでもないな」
「おうよ!」
ビルが立ち上がると、ランスも同意して立ち上がる。
勿論、目指すは正面突破。一撃にて敵の中枢を打ち砕き、敵の本拠地に乗り込む。そして、ぶっ潰す。
一見すると無謀で無策にも思えるが、違う。
最強の戦力であるビルとランスが突入することにより、敵の注意を一点に集めることが出来る。それで、周囲の損害を減らすことも出来る。
しかも、どうやら敵はビルとランスを相当にマークしているようなのだ。二人が出る事で、敵の中核になっている部隊を引っ張り出すことも出来るだろう。
生還率などクソ喰らえだ。
昔から、そんなものを度外視してきたからこそ、おびただしい戦果を上げることが出来たのだと、ビルは信じている。ランスに至っては、そもそも計算などしていないだろう。
「本気ですか? 僕には無茶に思えるんですが」
「伝説の戦士カワセ様も怖いのか?」
「当然です。 的確に恐怖をコントロールできなければ、生き残れません」
流石に含蓄がある事を言う。
さっきからルシアが時々分析してくるところによると、今ここにいるカワセは、全盛期より少し前くらいの年らしい。だがそれでも戦闘能力も判断力も確かだ。
ジョーは腕組みしていたが、やがて言う。
「ならば、俺がヘリを操縦しよう。 後方から支援もする」
「助かるぜ。 あんたの手腕には期待させて貰う」
「僕は、それならば機動力を駆使して、敵を引っかき回します」
「そうしてくれ。 あんたのワイヤーで、敵を好きなだけぶちのめして欲しい」
そう言うと、カワセは苦笑しながら武器を見せてくれる。
なんと、ゴム紐だ。先端に釣りで使うようなルアーがついている。こんなもので、此奴はあの大型エイリアンを倒したのか。
「まだ、切り札は別にあります。 でも、出来るだけ温存する予定です」
「さすがは偉大なる先輩だぜ。 よーし。 更に勝率が上がったな」
「いや、それは違う。 最初から100%だからな」
ビルの軽口に、ランスが更にとんでもない事を言う。
周囲の兵士達は遠慮無く笑い、一瞬だけ、殺伐とした場の空気が和んだ。
味方の残存勢力はわずかだ。だが、ビルは負ける気がしなかった。