オールドアクションゲーム二次創作 作:dwwyakata@2024
エイリアンの本拠地が見つかった。
あの巨大ロボットの背後にあった岩山に、洞窟があったのだ。その奥に、おびただしい数の生命反応があった。エイリアン以外にあり得ない。
調べてみると、数年前から其処に巣くって、今回の攻撃準備をしていたらしい事も分かった。
残り時間は、さほど多くない。
川背は立ち上がると、傷の具合を確認。
あまり長時間は戦えないが、短時間総力戦をするくらいなら。ジョーも、多分状態は同じだろう。
ビルとランスが、会議に加わっているのが見えた。
「突入部隊は俺たちだけでいい。 むしろ、俺たちが突入した後、反撃でやられないように警備を厳重にしてくれ」
「しかし、我らにも特殊部隊の誇りが」
「あの戦いをみただろ?」
そう言われると、特殊部隊のリーダーらしい黒人の男性が黙り込む。
この時代でも、フィールドに軍が挑むのは無謀に近い。ただし、それを理解している英雄がいるのは、心強かった。
「おう相棒、お目覚めか?」
ランスににこりと笑みを返すと、地図を見る。
場所は把握した。超音波測定で、中もある程度確認できているらしい。それによると、地下三百メートルほどに、巨大な生体反応のある塊があるそうだ。十中八九、それがボスだろうとビルは言った。
「エイリアンは、どうしてかばかでかいボスを作りたがる。 蟻みたいな連中でな」
「今までの戦線でもそうだった。 どんなにデカかろうが関係ねえ! 今回もぶっ潰してやるぜ」
ビルがエイリアンは、と区切って言うのを、一瞬だけランスが不思議そうにみた。
或いは気づいたかも知れない。一心同体と言うほど息が合っている二人だ。おかしな事では無いだろう。
突入は四人だけで行う。ジョーはビル達が使っている銃を渡されて、使い方の説明を受けていた。最初にここに来たとき壊滅させた基地で拾ったのは、少し旧型らしい。
過去から持ってきた突撃銃は、此処では流石に旧式すぎる。現に基地でこの時代の銃を拾うまでは、ジョーでさえ随分苦労していたのだ。手榴弾も、こっちの方がずっとコンパクトで破壊力が大きい。これは、六百年も経っているのだから、仕方が無い事だ。
ただ、他の物資類は活用できる。
「把握した。 それにしても、強力な銃だな」
「あんたの支援は頼りになる。 背後は任せても良いか。 前は俺たちが潰す」
「いいだろう」
川背は今回も機動戦を担当する。
新しい装備は、いらない。川背の場合、極限の機動戦を可能とするために、服や靴の重さまで徹底的に吟味しているのだ。此処で変な装備を加えても、動きに制約が掛かるだけだ。
何度か靴の感触を確かめて、大丈夫だと結論。
だが、傷が痛むこともあって、あまり長期戦は出来ない。
しかし、此処でもたついていると、敵が体勢を立て直す可能性も高い。一気に叩いて、全てを終わらせるべきだろう。
「よし、行くぞ!」
ビルが声を掛ける。
周囲の兵士達が、雄叫びを上げた。
洞窟の入り口から、早速苛烈な出迎えがあった。
巨大な亀のような生物が、洞窟の入り口を爆砕するようにして現れたのである。巨大な人面を備えており、とにかく気味が悪い存在だった。
「後どれくらい保ちそうだ」
「五時間、てところでしょうね。 ただ、目的が果たされると、因果律がどうとかで、すぐに過去に帰還するみたいです」
「上等だ! 一時間で勝負をつけてやる!」
ビルが雄叫びを上げて、銃をぶっ放した。冷静に少し下がったジョーは、ランスが射撃に加わるのを横目に、銃のタイプを切り替える。
川背はみた。打ち込んだ弾種が、ことごとく効いていない。
亀のような生物の人面に、気色悪い音を立てて吸い込まれている。代わりに、膿汁が盛大に噴き出している様子だ。
虫が、たくさんわいて出てきた。
舌打ちすると、ビルは火炎放射器に銃を切り替え、辺りを焼き払いはじめる。川背は敵の左に走り込む。巨大な腕を振り上げた亀が、叩き潰そうと振り下ろしてきた。ルアーを近くの岩に引っかけ、伸縮を利用して跳ぶ。残像を、亀が踏み砕いていた。
「流石に本拠地の門番だな。 かってえ!」
「どけ」
ジョーが、荷電粒子砲をぶっ放す。空気を切り裂き、青白いエネルギービームが虚空を驀進した。
流石に極太のエネルギービームの直撃を喰らって、亀がのけぞり、悲鳴を上げる。無言でビルが放った手榴弾が、亀の口に複数入り込んだ。
口を開けて取り出そうとする亀だが、この隙に頭上に躍り込んだ川背が、蹴りを後頭部に叩き込む。
激しく口を合わせた亀の顔面に、とどめだとばかりに、ランスが徹甲弾を叩き込んでいた。
口の中の手榴弾に引火したのだろう。
亀の頭部が、流石に吹っ飛んだ。巨体が見る間に崩れ落ちていく。
無言で、そのまま洞窟の中に入り込む。
中は、まさに地獄絵図。人間の残骸らしいものが無数に散らばっており、エイリアンに変じたらしい民間人が、うめき声を上げながら襲いかかってくる。繭らしいもの、卵らしいものが、有機的な壁、天井、床の至る所に張り付いていた。
片っ端から、ビルとランスがそれらを薙ぎ払う。吹き飛び、不潔な液体をまき散らしながら、人間だったものがそうではなくなっていく。
辺りには、衣服の切れ端らしきものや、時には幼児用の玩具らしきものも散らばっていた。猛射で全てを破壊し尽くすビルの目には、深い怒りと悲しみが宿っているように見えた。
川背は辺りを走り回りながら、二人が進むのに邪魔になりそうなものを片っ端から排除していく。空に舞い上がるエイリアン発見。ルアーを引っかけて飛び乗り、首をへし折って次のエイリアンに躍りかかる。
ランスが、壁に激しい銃撃を浴びせた。
有機的な素材で出来ている壁が、見る間に削れ、吹き飛んでいく。
後半分と言うところか。
不意に、天井から、人面の巨大な芋虫のような蛇のような訳が分からないのが現れる。穴から顔を出して、鋭い牙が乱ぐいに生えた口でかぶりついてくる。間一髪でかわした川背の至近に滑り込んできたビルが、激しい銃撃を芋虫の顔に浴びせた。
見る間に、穴に引っ込む芋虫。
ジョーが弾種を切り替えているのが見える。そうなると。
「ランスさん! 後ろ!」
「応ッ!」
前回りに飛び込みながら、ランスが至近にまで迫っていた芋虫をかわす。
その瞬間、穴をめがけて放たれたジョーの荷電粒子砲が、芋虫を穴ごと焼き尽くしていた。
爆発音。
血のように、膨大な体液が降り注いでくる。
辺り中から、無数の海老のようだったり、サソリのようだったり、芋虫のようだったり、訳が分からない生物が山ほど押し寄せてきた。
どうやら、此処で総力戦を挑んでくるつもりだろう。周囲は開けた空間で、大群には有利だ。一気に押しつぶそうというわけだ。
四人、背中合わせに立つ。
「ルシア、敵の数は」
「ざっと五千」
「おおっ! やってやろうぜえっ!」
ランスが、一番槍を取った。
掃射。弾倉を捨てて、再装填。更に掃射を浴びせる。
近寄ってくるだけでは無い。明らかに大きなエイリアンもいる。地面を掘り進み、出てきたのは、蜘蛛のようでありながら、巨大な人面を備えた悪趣味な奴だ。更に、天井と床をつないでいるような、気味が悪い形をしている神経の束のようなのも迫ってくる。
敵は戦力を出し惜しみしていない。本気だ。
「ちいっ! 本当に全力で潰しに来てやがるな!」
「落ち着け。 ジョー、背後は任せる。 カワセ、でかいのを任せても良いか」
「分かりました。 あっちの蜘蛛は三十秒で、神経の塊みたいなのは五十秒で潰してきます」
「よおしっ! 道は開いてやる! 頼んだぞ!」
サブマシンガンからホーミングミサイルに切り替えたビルが、一斉に辺りにミサイルをばらまいた。
凄まじい火力に、周囲のエイリアンが一方的に薙ぎ払われる。だが、何しろ数が多すぎる。それでも、味方の屍を踏み越え踏みにじり、次々迫ってくる。
それでも、川背が突入する隙は出来た。
ジグザグに走りつつ、ルアーを使って加速。蜘蛛はずっとビルの方に狙いを定めて強酸の唾液らしきものを放ち続けていたが、至近まで迫られて川背に気づく。
跳躍。
顔面にルアーを引っかけ、天井の巨大な構造物にまで飛び上がる。滑車の原理でゴム紐を掛けると、一気に体重を掛けて、地面に飛び込む。
激しい衝撃で、ゴムが擦過音を立てる。
そして、卵状の構造物が、折れ砕けた。
蜘蛛の頭部に直撃。だが、蜘蛛は足を動かし、旋回して迫ってくる。味方であるはずのエイリアンを蹴散らしながら。
走る。走る先には、天井と床を掴んだ、神経細胞の塊みたいな奴。
その中心にゴム紐を引っかけ、跳ぶ。
伸縮を利用して、コアらしい部分に蹴りを全力で叩き込んだ。
敵が、たわむ。
そして、そのたわみを利用して、跳ぶ。
残像を残して跳んだ先は、天井。
残像を、丸ごと飲み込もうと、蜘蛛が飛びかかった瞬間、ジョーが動く。
荷電粒子砲を、蜘蛛と神経細胞に打ち込む。まとめて、極太のエネルギービームが貫通していた。
絶叫した蜘蛛が、焼き尽くされながらも、だが神経細胞の塊をかばう。
爆風が凄まじい。体勢を崩して、地面にたたきつけられる。周囲のエイリアンも同じように吹き飛ばされたり転がったりしていた。
呼吸を整えながら、立ち上がる。
まだ、神経細胞のコアは無事だ。そればかりか、よほど頭に来たのか、床と天井を引き寄せはじめる。
そして、巨大な肉塊として、引きちぎった。
投げつけてくる。凄まじいパワーだ。
向こうではビルとランスが、敵を掃討しながら進んでいる。此奴に介入を許したら、先に行くことは難しいだろう。
荷電粒子砲を、コアに叩き込めば。
だが、ジョーでも、この状態での精密狙撃は難しいだろう。敵の注意を、此方に引きつけなければ。
巨大な肉塊がまた飛んできた。天井にルアーを引っかけ、飛ぶ。二回連続。辺りの床や天井を千切りむしっては、手当たり次第に投げつけてくる。味方の被害など、お構いなしという風情だ。
エイリアンが、無数に群がっていく方向が変わる。
ビルとランスが、奥へ進んでいると言うことだ。それをみて、神経細胞が、注意をそらした瞬間。
奴が投擲した肉塊に飛び移ると、更に跳躍。短い叫びと共に、川背は敵コアにドロップキックを叩き込んでいた。
床にたたきつけられる神経細胞。だが、逃れようとしたさなか、無数に伸びてきた触手が川背に絡みついてくる。
天井に引っかけたルアーがきしむ。凄まじいパワーだ。全身にしがみついてきた触手は、妄執の塊を思わせた。
そのまま、握りつぶされるかと思ったが。
その時には既にジョーが装填を終えていた。
再び、地下空間を、荷電粒子砲の掃討光が蹂躙し尽くす。
爆音。それが納まったとき、最初の砲撃に耐えたコアも、粉々に砕けていた。
だが、川背の方も。もう限界だった。
床に降りると、流石に立つ力も残っていない。全身の痛みがひどい。毒などは注入されてはいないようだが。
背中に担がれる。意識は、まだ薄ぼんやりと残っていた。
「ジョーさん、二人は、奥へ行けましたか」
「ああ、大丈夫だ」
「僕は、ちょっと限界みたい、です。 ごめんなさい」
ジョーが周囲の敵を掃討しているのが分かる。
安心して、川背は後を任せられると思った。
ついに敵の包囲網を突破。
突入前に示されていた地点まで、もう少しだ。追いすがってくる敵を掃射。弾倉を捨てる。
そろそろ、弾倉が切れる。流石に五千の敵とまともに交戦したのだ。最後の奴を片付けたら、余裕はもう無いだろう。
「この戦いが終わったら……」
「ん?」
不意にランスが口を開いた。
ランスは少し間をおいて、敵を掃討しながら呟く。
「何かする気だな、ビル」
「ああ。 前から疑惑はあった。 だが、どうやらあのとき見たもので、確信に変わった」
「ああ、カワセが見せてくれたチップみたいな奴か」
「そうだ」
ランスには言っていない。だがあれは、彼処にあるはずがないものだった。
すなわち、21世紀のコンピューターに搭載されていたメモリである。何でそんなものが、あんな所にあったのか。
エイリアンにされた民間人が持っていたはずはない。持っていたとしても、あんな所に落ちているはずが無い。
つまり、あれは。
あの戦艦の部品だったのだ。
「とにかく、今は敵を潰す」
「応ッ!」
敵の追撃を防ぎながら、進むと。広間に出た。
巨大な心臓みたいなものがある。これが、どうやら連中の中枢らしい。
流石にビルも唖然とした。おそらく直径だけで、十メートルを超えているだろう。このエイリアンの巣そのものに力を供給しているエネルギー源に違いない。
「此処をぶち抜いたら、すぐに脱出する。 そして悪いが、AA4地点に身を隠してくれ」
「どうした、何だよビル。 話してくれよ!」
「悪いが、これだけは駄目だ。 いずれまた会うときがあったら、その時に話す」
「ビル!」
悲痛な友の叫びから、敢えて意識をそらしながら。ビルは吠え猛る。
一時間で終わらせるとは言ったが、死闘に次ぐ死闘で既に五時間は過ぎた。もう支援はないと思っていい。
だが、これで充分。
崩れゆく敵の巨体を見つめながら、ビルはもう一つ、雄叫びを上げていた。
待っていろ。
そう、敵に告げるように。