オールドアクションゲーム二次創作   作:dwwyakata@2024

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この話では現在でもちょくちょく新作が出ている海腹川背を扱います。

彼女はこのシリーズではスペランカーの最大の理解者兼頼りになる後輩として活躍します。

意外と知られていませんが、彼女は原作でも仕事は流しの板前。

本作では、流しの板前と、過酷な仕事であるフィールド探索者を兼業しています。

この話の時点では、彼女はちょっと器用なだけの戦士に過ぎませんでした。

しかし最大の理解者を経て、覚醒していきます。


求道者の小さな誇り
序、山道で


G県とN県の県境にある峠は難所で知られていて、冬場には車でも通ることは推奨されていない。夏場も山深い中を道路が僅かに通っているような状況で、迷うとかなり危険である。

 

それでも、フィールドと呼ばれる、国家に危険地帯認定されている地域に比べれば、何でもない。いきなり巨大な砲丸が飛び出してくることもないし、全長二十メートルを超える巨大なクリーチャーに襲われることもない。無論周囲を武装した兵隊が固めていることもないし、火山が噴火したりもしない。

 

しかし、それでも。面倒な場所に違いはなかった。

 

一見して、十代半ばの娘がいた。彼女は直射日光にぼやきながら、額の汗を拭う。目立たない容姿の彼女はスペランカーと呼ばれている。無論本名ではないが、本名よりも遙かにその名の方が知られていた。脆弱で、頭も悪く、要領も悪いのに。不思議とどんな危険な場所からも生還する存在として。

 

山道は険しく、日光も容赦ない。フィールド探索を仕事としているスペランカーは、空きっ腹を抱えて、その山道を歩いていた。手元には機嫌が悪そうに黙り込んでいるスクーターがある。移動のために入手したのに、今では足を引っ張っているスクーターは、うち捨てる訳にもいかず、貧弱なスペランカーの体力を日光と一緒になって奪い続けていた。

 

ある事情から、不死の、正確には死んでもすぐによみがえる能力を得たスペランカーは、その代償として様々なものを失った。体は極めて脆弱だし、記憶力も非常に悪い。本当にちょっとした衝撃で死んでしまうので、バイクなど周囲が危なくて乗られない。かといって、このスクーターでは、峠を越えるのにはあまりにも力不足。しかもガソリンが尽きてしまった。だからひいひい言いながら、今同伴で坂道を登っているのだ。この先にある、仕事場、最近発見されたフィールドに向かうために。

 

白々しい蝉の鳴き声が、辺り中から降ってくる。気持ちいいと言うには無茶がある日差しの中、何度か休みながら峠を登っては来たが、リュックの中に備蓄してある缶詰はかなり消費してしまった。この先にあるフィールドの探索が今回の仕事なのだが、出費を予想より多めに見繕わなければならないだろう。

 

急カーブに入った。丁度木陰になっている所があったので、スクーターを寄せて座り込む。水筒を出してみたが、中身は空だった。ぐったりしたスペランカーは、その隙に意識が飛んでしまい、一度死んだ。すぐに命が戻り、意識が戻ってくるが、空腹と喉の渇きは収まらない。

 

近くに、小川の潺があるらしく、水音が聞こえる。どうしようかなと迷っていたスペランカーは、視線を感じた。ゆっくり視線を返すと、其処には世にも珍しいものがあった。

 

どうやら、この峠を苦労して越えようとしていたのは、スペランカーだけではないらしい。

 

そう。

 

其処には。

 

今では発展途上国でしか見かけることがない車。三輪オート。通称三輪トラックが存在していた。

 

ブルーの丸っこい体を持つその車は、前輪が一つしか無い。しかもそれが幼児の載る三輪車さながらに、前面についているという、まこと奇妙な形態である。発展途上国に何度も足を運んだスペランカーは現役で走っている所を見たことがあるが、それにしてもこれは凄い。此処はJ国。かってと違い、もはや三輪トラックは居場所のない国なのだ。

 

当然のことながら、車体はぼろぼろ。未だに現役で走っていることが冗談だとしか思えない。しかも荷台にはこれまた年代物の屋台を積んでいる。その側には、スペランカーを不思議そうに見ている女の子がいた。

 

必要最小限の装備で旅をすることが趣味の、バックパッカーと呼ばれる人種がいることを、スペランカーは知っている。雰囲気的にそれかと思ったのだが、やはり違うと判断。三輪トラックの側にいるラフな格好の女の子は、多分同業者だろう。

 

同じように、常人が入り込むことが出来ない超危険地帯、フィールドに挑むことを仕事としているライセンス保持者という訳だ。

 

「こんにちは」

 

「あ、こんにちは」

 

控えめに挨拶を交わし合う。お互い、苦労しているのは目に見えていた。

 

スクーターを引っ張って、側にまで行く。近くで見ると、予想以上に凄い車だった。錆は彼方此方に浮いているし、屋台は年代物で、博物館に陳列できそうな代物である。若干茶色が掛かった髪をショートカットにしている娘は、スペランカーと同年代に見えた。背丈も殆ど同じである。顔立ちも素朴で、若干目が大きいが、特に目立つ美少女という訳でもない。活動しやすいようにスカートではなくパンツをはいているのも一緒。ただしフィールドを走り回ることを想定して足下まで覆うものを穿いているスペランカーに対して、彼女は動きやすいことを想定しているのかショートパンツだ。靴は同じようにスニーカーだが、スペランカーよりも相手の方が更に堅牢な作りをしている。バックパックを背負っているのも一緒だ。ただし、女の子のバックパックは、可愛らしいピンク色だった。

 

容姿で言うと、総合的にはあまり差がないが、唯一違うのは胸だ。やたらめったら大きい。何を食べたらこうなるのか、スペランカーには羨ましい限りであった。呆然と胸を見ていると、向こうから話し掛けてきた。

 

「ひょっとして、この先のフィールドに?」

 

「あ、はい。 私はあくまで支援要員ですけど」

 

今回のフィールドは非常に狭く、しかしながら大企業の開発予定地になっている。そのために、対策資金が潤沢で、フィールド探索のプロが三人も集まることになった。一人はスペランカーで、もう一人は名前を聞いていない。最後の一人は中堅どころのフィールド探索者で、今時珍しい現役の忍者だ。今回は彼が主に戦闘を担当し、スペランカーがそれを補助する形になる。もう一人の仕事については、まだ話を聞いていない。格好からすると、多分相当に戦闘なり活動なりに自信があるタイプに見えるが。

 

「良かった。 ちょっとこの子が言うことを聞かなくなってしまって、困っていた所なんですよ。 僕、料理は得意だけど、機械はどうも苦手で」

 

「屋台って言うことは、流しで料理人を?」

 

「はい。 家族の夢なんです。 僕にとっても」

 

素敵な笑顔である。水も分けてくれたので、スペランカーは好感を持った。それにしても、流しの料理人だというのに、フィールド探索もしているとは、やはりそれだけでは食べていけないのだろう。

 

金銭的に苦労しているというのは、この愛車を見ても分かる。もちろんスペランカーも機械は全く駄目なので、助けることは出来ない。フロントを開けて、もはや骨董品以外の何者でもないエンジンを弄っている女の子を横から覗き込みながら、スペランカーは言った。

 

「私はスペランカーと言われています。 貴方は?」

 

「僕は川背。 海腹川背です」

 

「ああ、貴方が!」

 

「僕も、貴方のことは聞いたことがあります。 絶対生還者のスペランカーさん、会えて光栄です」

 

笑顔を浮かべる川背と握手を交わす。こんなところで有名人に出会えるとは。

 

もちろん同業者だから、スペランカーは聞いたことがある。川背は伝説的な料理人一家の末娘だ。フィールド探索も、滅多に顔を出さないが、相当な腕前だと聞いている。何でも、非常に玄人好みな探索をするとかで、評判も高い。後輩ではあるが、少なくとも、スペランカーよりも数段上のフィールド探索者だ。

 

はて、しかしそうなると、妙なことが一つある。

 

確か、海腹川背は二年前には成人して、本格的にフィールド探索を始めたと聞いている。

 

「ええと、失礼かも知れませんけれど、貴方のお年は?」

 

「僕ですか? 今年で二十歳になりました。 えへへ、分かってます。 高校生以上には見えないって、良く言われてますから」

 

「はあー。 私みたいにタチが悪い呪いを受けなくても、こんな姿の人っているんですね」

 

「有難うございます。 でも、良いことばかりじゃありませんよ。 お巡りさんに補導されかけて、免許証を見せてやっと納得して貰うって事が日常茶飯事ですから」

 

フロントカバーを閉じた川背は歎息一つ。諦めたらしい。まあ、無理もない。玄人にだって、手に負えるか分からない代物だ。パーツだって、今時よほどマニアックな店にしか置いていないだろう。

 

「現地待機しているスタッフに、引っ張って貰いましょうか」

 

「あ、その手がありましたね。 僕、機動は得意ですから、ひとっ走り行ってきます」

 

「なら、私が見張ってますよ」

 

「有難うございます」

 

若くても苦労しているだけあって、受け答えもしっかりしている。川背が目をつぶって、手を天に掲げると。其処に光が集まり、一瞬後にルアーが出現していた。ルアーの先からは長いゴム紐が伸びていて、手袋をしてしっかり握り混む。

 

「僕の能力、空間転送なんです。 自分や生き物を転送するのには色々条件がいるんですけれど、特定の条件で作った他の物体であれば、この通りです」

 

川背がルアーつきのゴム紐を振り回して、少し手前の道路に引っかける。かぎ針が、陽光を反射して鋭く輝いていた。伸縮性ももの凄く、柔軟かつ強靱。このゴム紐が、単純な能力以上に、川背の仕事を支えてきた相棒だという訳だ。

 

ぐいぐいとゴム紐を引っ張って、緊迫させる。開いている左手を振って、川背はとても眩しい笑顔を一つくれた。

 

「それじゃあ、行ってきます!」

 

跳躍。凄まじい速さで前に飛び出す。どうやらゴムのパワーを利用して、自分を急激に加速したらしい。しかもそのまま川背は側にある木にゴムを投げ、幹にロープを引っかけると、自分を引き寄せる。

 

更に加速して、幹を回るように蹴って回転すると、今度はゴムの反発を利用して逆回転、空中に踊り出すようにして、十数メートルは飛んだ。猿もびっくりの空中機動を発揮して、或いは地面に、或いは木にゴム紐を飛ばし、その反発力を利して跳躍していく。

 

あれはもはや、空を飛んでいるよりも速い。己の道具と完全に一体となって、その力を全て引き出していると言っても過言ではない。

 

軽装で来るはずだ。あの機動、よほど身体能力と技に自信がないと出来ない事だ。針の穴を通す精密性と、歴戦の戦士並みの勇気、それに躊躇無く修羅場に飛び込む大胆さが備わって初めて成し遂げることが出来る。

 

あれなら、名前も売れる訳だ。

 

今回の任務で、彼女がどんな仕事をするのかは分からない。だが、あれを見せられると、流石に面倒くさがりのスペランカーにも思う所もある。今回ばかりは自分も頑張ろうと、スペランカーは思った。

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