オールドアクションゲーム二次創作   作:dwwyakata@2024

87 / 140
はい今回はプーヤンの話です。
豚の射手が壁側に陣取って狼の群れを撃ちおとす変わったシューティングゲームですね。撃ちおとすのに失敗するとペナルティがあります。

今回はそんなプーヤンをベースに、クトゥルフ神話風味の味付けを加えた話にしています。


輝きと汚れの双山
序、誘拐事件


豚。

 

もっとも有名な家畜の一つである。犬ほどでは無いが人間との関わり合いは深く、中世ヨーロッパでは街の汚物を処理する役割も果たしていた。とにかくどんなものでも食べる貪欲さと、成長の早さ、何より肉のうまさで。人間社会には無くてはならない存在として、長年人とともにあった家畜だ。

 

当然のことながら豚の先祖は猪であり、その性格は決して穏やかとは言えない。貪欲な雑食性のため、死んだら子供だろうが親だろうが同胞は只の餌に早変わり。当然人肉も好んで食べる。このため、犯罪組織が死体の処理に使っているという噂が、現在も根強く存在している。おそらくは噂だけでは無いだろう。何しろ病気か何かで子豚が死ぬと、翌日には綺麗さっぱり無くなっているのだから。

 

家畜は結構獰猛な性質の生物が多い。穏やかに改良されている牛でも、もし暴れ出したら人間では歯が立たない。鶏も群れの中での地位争いが苛烈きわまりない事が知られているし、山羊や羊も結構性格が戦闘的である。おとなしそうに見えるアルパカが、実は非常に気性が荒い生物だというのは、結構有名な話だ。

 

そういったうんちくを聞かされながら、スペランカーは全くバネが利いていない助手席で、何度も激しく揺られて、そのたびに死んだ。

 

一見すると、十代半ばの小柄な女の子にスペランカーは見える。だが、身体能力はともかく、内実は見かけ通りの存在では無い。

 

スペランカーは普通の人間では入ったら生きて帰れない魔境、「フィールド」を攻略することを専門にする、フィールド探索者の一人である。頭もあまり良くないし、運動神経も悪い。ただし、幼い頃に受けた呪いによって、フィールド探索を可能としている。逆に言えば、これ以外の仕事は出来そうに無いので、毎回痛い思いをするのを分かった上で、続けている側面も、かってはあった。

 

今は少々事情が違うが、毎度酷い目に遭うことには変わりない。それでもがんばれるのは、家族が待っているからだ。自分をネグレクトして、何万回と餓死させた母親に対する反発もあるのだろう。スペランカーは血がつながらない被保護者に深く愛情を注ぎ、生き甲斐にしていた。

 

この体を覆う難儀な呪いは、最も信頼出来る盟友である海腹川背の三輪オートに乗っているときも、おとなしくはしてくれない。しかも、蘇生のたびに電気ショックのような痛みが走るので、たまったものではない。

 

「先輩、もう少しで着きますから、我慢してください」

 

「川背ちゃん、この路、もう少し何とかならないの!? うひゃあ!」

 

「発展途上国の道なんて、だいたいこんなものです。 むしろ、道があるだけでも感謝しないと」

 

「ふえー、参ったなあ」

 

勿論スペランカーだって、それくらいは知っている。

 

だが、愚痴りたくもなる。同性で、なんでも話せる相手である川背だから、余計に若干甘えが出てくるのかも知れない。

 

三輪オートの前後には、護衛の国連軍のジープ。乗っている兵士達は、重機関銃をジープに据え付けて、油断無く周囲を見張っている。いつゲリラやテロリストが出てきてもおかしくない、それくらい危険な場所なのだ。

 

此処は中南米の小国。

 

かっては豊かな鉱物資源に恵まれたが、今ではすっかり落ち目になっている国だ。国が上手く行っていないから、反政府組織も出るし、民の心もすさんでいる。主要な産業が麻薬の栽培と販売で、それを誰も悪いことだと思っていないほどだ。実際この国で金持ちを探すと、麻薬組織の関係者くらいしかいない。

 

昔、この近くで以前仕事をした事があったのだが、その時は海上での戦闘だった。今回は海では無く山奥である。しかも、どんどん山奥のレベルが酷くなっていく。

 

こういう険しい地形の場所には、ヘリコプターで向かうことが多いのだが。今回出向く先は、空飛ぶ乗り物を極端に嫌うという特殊な宗教を持っており、わざわざ車で向かわなければならない。

 

そして悲しい話だが、この国で川背の三輪オートは、決して旧式ではない。現役でしっかり走り回っている車なのだ。

 

やっとベースが見えてきた。

 

今回は他にもフィールド探索者がいて、それなりに仕事の目的は見えている。ただし、込み入った事情があると事前に聞かされているので、まだ安心するのは早い。

 

基地に入ると、酷使されたことを抗議するように、大きな音を立てて三輪オートが止まる。川背が先に車から降り、後部に着いている屋台の状態を確認していた。フィールド探索者であると同時に料理人である彼女が、わざわざこの車で来たのには、ちゃんとした理由がある。

 

この車は、川背にとって出張店も同じだ。今は殆ど使わないらしいのだが、後ろは屋台になっていて、料理をすることが出来る。料理用の道具や、彼女がこだわり抜いて集めている素材なども積んでいるそうで、下手なレストランよりずっと美味しい料理を振る舞ってくれる。

 

川背が、タイヤの状態をチェックしていた。

 

彼女は料理以外興味なかったらしいのだが、最近はちょっとずつ車の勉強もしているようだ。国連軍の兵士と、何か英語で喋っている。翻訳機能がついた電子辞書を使っていないから、何を喋っているのかよく分からない。

 

ガタイの良い黒人兵士が、何かケラケラと笑っていた。

 

「川背ちゃん?」

 

「先輩、僕はちょっとこの人達と話してから行きます。 先に司令部に行って貰えますか?」

 

「うん、分かった」

 

軽く手を振って、奥へ。

 

山奥に作られたベースだが、周辺は柵がしっかり付けられていて、監視カメラもある。この辺にもゲリラやら過激派やらが出るらしく、当然の備えである。モラルが低下すると、犯罪にあうような隙がある方が悪いという手前味噌で身勝手な思考が正当化される傾向があるのだ。

 

勿論、これだけ山深いと、猛獣も警戒しなければならないだろう。この辺りは大形の食肉目が何種類か生息しているはずで、当然人間よりも単独では高い戦闘力を持っている。武器を使えば、撃退は難しくないが。

 

地面もごつごつしていて、舗装など当然していない。乱雑に止められているジープはかなりばらばらの方向を向いていて、ただし据え付けられている重機関銃だけは、基地の外を向いていた。

 

多分いざというときにはバリケード代わりに使うのだろう。装甲車などの本格的な戦闘車両は見当たらないが、今此処には四人のフィールド探索者が集められている状態である。多分、後から来るのだろう。

 

川背の三輪オートに比べてあっちがマシかと言われれば、決してそんなことは無い。出来れば乗りたくないのは同じだ。

 

クッションがとにかく硬いし、助手席に乗っているだけで快適さとかを考えていないのが丸わかりなのである。ただ、戦争に使う車なのだから、それは仕方が無いのかも知れないが。

 

翻訳機能付きの電子辞書をオンにする。

 

結構高い品らしいのだが、毎回戦闘で壊されてしまうので、一体いくつ目の支給品か分からない。噂に聞いたのだが、スペランカーに供与した物資はまず帰ってこないと噂が流れているそうだ。特に最近は、相当な強敵とぶつかる事が多く、戦闘後には全裸になってしまっている事も多いので、それはあながち嘘では無い。

 

幸い、一流どころと見なされるようになってから、フィールド攻略の報酬金が跳ね上がったので、弁償についてはあまり考えなくても良くなった。

 

あまり、作りが良い基地では無い。戦術的な話はスペランカーにはよく分からないのだが、少なくとも快適とは言えない。

 

そもそも山の斜面に無理矢理基地を作ったためか、地面に傾斜がある。建物の多くは傾いていて、司令部のプレハブさえ傾きを必死に基礎で誤魔化していた。地震が起こったら大変そうだと思いながら、ヘルメットを被り直す。

 

司令部のプレハブは、中が埃っぽく、所々防弾用と思われる鉄板が露骨に見えていた。とはいっても、RPG7か何かが直撃したら、多分ひとたまりも無いだろう。

 

ざっと見たところ、忙しく行き交っている兵隊さんは五十人かもうちょっと多いくらいいるようだ。多分以前頼れる盟友であるアーサーに聞いた、二個小隊という単位だろうと、スペランカーは思った。ただ、雑多な装備がかなり多い。中にはラフな格好をしている兵士も、相当な年配に思える人もいた。

 

スペランカーが知る限り、国連軍は、その名の通り雑多な出身者で構成される組織だ。だが、特定の地域に展開する場合、近隣の出身者で兵士を固める傾向がある。しかし基地には、黒人さんも白人さんもいるし、アジア系らしい人もいる。任務が急に入った場合はそういう雑多な編制になる事もあるらしいのだが、妙だ。今回はひと月近く前にオファーが来たのである。それほど急ぎの任務だとは思えない。

 

きょろきょろしている内に、突き飛ばされる。

 

壁にぶつかり、勿論即死である。

 

蘇生して、頭を振り振り立ち上がる。今のは大丈夫だっただろうかと、突き飛ばした相手を心配してしまったが、多分悪意無しとカウントされたのだろう。周囲で惨劇は起こっていなかった。

 

安心して、奥へ進み、会議室を見つける。

 

中では既に、退屈そうにしている二人のフィールド探索者と、それにこの基地の指揮官らしい、山羊みたいに長い髭を伸ばした痩せたおじいさんの軍人が、白板になにやらマジックで書き込んでいた。

 

「すみません、今着きました」

 

「私より先に出たのに、遅れたようですが」

 

「ごめんなさい」

 

そう言ったのは、髭を蓄えた、中年男性である。薄茶色のいわゆるサバイバルルックに身を包んでいるが、体つきは軍人のものではない。

 

彼はハリー。

 

以前故あって、スペランカーと対立したフィールド探索者である。今ではスペランカーにとって第二の故郷とも言えるアトランティスの新聞社で働いてくれている。彼が撮る写真は絶品で、アトランティスの真実を海外に知らせるためには絶対不可欠のものとなりつつあった。

 

以前は様々な環境の悪さから、相当に心を痛めていたハリーだが。アトランティスに移った今はみんなのためにがんがん稼いでくれている。以前に比べて、十歳は若返ったように見えるのは、気のせいでは無いだろう。活力は、人を若々しくするものなのだ。

 

実はハリーとは、一緒に同じ飛行機でアトランティスを発った。だが途中でスペランカーは、後輩でありもっとも信頼出来る相棒の一人である川背を迎えに行ったので、それで到着時刻にラグが生じた。

 

咳払い。

 

もう一人が、さっさと座れと促してくる。

 

寡黙そうな彼は、ハリーと同じようにサバイバルルックの上下に身を包んでいるが、名前さえ分からない。顔はアジア系だが特徴が無く、何度見ても覚えられそうに無かった。勿論、それさえも武器なのだろう。

 

彼は、フィールド探索者に何名かいる、いわゆる忍者の一人。影とだけ呼ばれていて、それ以外は正体不明である。スペランカーは以前別の忍者と共闘したことがあるが、だいぶ雰囲気が違う。

 

何というか、影は文字通り、気配が無い。

 

其処に座っていることも、見ているからどうにか認識できる、というレベルである。ただ、相当な凄腕である事は確かなようで、噂は時々以前からも聞いていた。

 

「川背さんは」

 

「今、外で兵隊さんと話してます。 何か仕込みがあるんだと思いますけど」

 

「なるほど。 彼女なら入念な準備をしてきそうですね」

 

見かけで言うと、不老不死の呪いで姿が十代半ばのまま固定されてしまっているスペランカーに対して、四十前後に見えるハリーは、傍目には親世代くらいの人間である。

 

だがハリーは、スペランカーがアトランティスの顔役である事を考慮してか、あるいは以前の恩義からか、非常に丁寧に接してくれる。

 

今回のフィールド探索は、能力が非常に地味な人員ばかりが集められている。それは事前から、理由が告げられていた。

 

多少というには、少しばかり面倒くさすぎる事情があるのだ。

 

程なく、川背が部屋に入ってくる。

 

「すみません、遅れました」

 

「では、現状を説明いたします」

 

司令官が、咳払いをしてから、ホワイトボードに状況を書き始めた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。