オールドアクションゲーム二次創作   作:dwwyakata@2024

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1、豚と犬の森

 

会議が終わって、伸びをする。

 

憂鬱である。

 

ホワイトボードは、色とりどりのマジックで様々な事柄が書かれ、カラフルきわまりない。此処に被保護者のコットンを連れてきたら、喜んだかも知れない。だが、内容を一応理解しているスペランカーとしては、そんな気にはなれなかった。

 

込み入った事情があるとは聞いていた。だが、これほど面倒くさい状況だとは、流石にスペランカーも思っていなかったのである。営業の人に一緒に来て欲しいくらいだ。下手をすると、今回は戦いよりも、政治的な折衝の方が重要になるかも知れない。

 

机上に配られた現地の衛星写真を見る。

 

一見すると、二つの山があり、ただ普通に木々が生い茂っているように思える。

 

だが写真の右と左の山には、絶対に相容れない、三百年を超えて作られてきた壁が存在しているのだ。物理的な壁では無い。むしろ精神的な壁というべきだろう。

 

今回攻略しなければならないのは、三百年ほど前から存在している重異形化フィールドである。

 

通常の人間が入れないほど危険な土地をフィールドと呼称するのだが、その中でも特に、内部での物理法則がねじ曲がってしまっているような、文字通りの異界。それを重異形化フィールドと称する。

 

山二つ半ほどがまるまる異形化しているこの土地は、地元では、日本語で言うなら犬豚山と称されている。理由は簡単である。

 

その理由の片割れが、姿を早速見せる。

 

会議室にのそりと入ってきたのは、サスペンダー付きのズボンをはいた、豚だった。ただし、二本足で立っている。

 

しかも、ただの豚では無い。

 

肩に弓を掛け、腰には鉈をぶら下げている。顔立ちは精悍で、どちらかと言えば猪に近い。

 

目は小さく、手足がかなり短いので、体型はかなりコミカルに見える。だがしかし、実際に手足は非常に筋肉質で、相当なパワーを秘めていることがうかがえた。

 

彼は、このフィールド内で争いを続けている勢力の一つ。豚人族の長、プーリャンだ。どっかと椅子に座ると、半裸の豚人は、小さいが鋭い目で、辺りを睥睨した。

 

「呼ばれて来てみたは良いが、随分とひょろっちいのばっかりだな。 本当に狼人族の屈強な戦士をブチ殺せんのか?」

 

「プーリャンさん、前にも言いましたが、私達が来たのは」

 

「ああ、ハリーの旦那。 分かってる。 それぞれの種族の秩序と平和のため、ってんだろ? あんたには感謝してるし、今後も仲良くしたいと思ってる。 だがな、追加で連絡した内容は、当然そちらでも把握してるよなあ?」

 

「狼人族が、強硬手段に出たって話ですね」

 

そうだと、プーリャンは鷹揚に言う。

 

二つの勢力。一つは豚人族。もう一つは、そのまま狼が二本足で直立歩行したような姿を持つ、狼人族だ。

 

伝説にあるウェアウルフのような悪魔的な存在かというとそうでもなく、生物の域を超えていない。狩猟民らしい荒々しさはあるが、銀の弾丸を撃ち込まないと死なないとか、そういった事はない。

 

豚人族は弓矢を得意とし、狼人族は近接での戦闘を得意とする。

 

両者は文字通り犬猿の仲であり、フィールドが出来てから三百年余、休戦期間を時々挟みながら、ずっと殺し合いを続けてきた。狼人族にとって、豚人族は当初食料以外の何物でも無かった。二つの山がフィールド化する前、彼らの先祖は普通の野豚と狼だったらしいので、当然の話である。

 

だが、双方が知恵を身につけ、言葉まで操るようになって。その関係が改善されなかったことは、当然悲劇につながった。そもそも、三百年前にフィールドが二つの山を覆ったとき、どうしてそんな根本的な解決がされなかったのかもよく分からない。

 

彼らの戦闘力は常人を遙かに凌いでおり、なおかつ好戦性も強い。縄張りに誰かが入ろうものなら、確実に生かしては帰さない。交易も出来ず、道を作ることも許さない有様で、周辺の国も民もさじを投げていた。それに加えて、内部は物理法則から変化してしまっている重異形化フィールドである。なおさら、内部の実情は外に出てこなかった。

 

その秘匿性は、二つの種族が常時争い続けることで生じた疑心暗鬼が、更に強めてしまっていた。

 

だが、それに五十年ほど前から、変化が生じ始めたのである。

 

「俺たちも、今じゃあ流石に外貨をかせがねえと生きていけねえ。 向こうもそれを理解して、やっと歩み寄りが始まったって時にこれだ。 既に村の若い連中は頭に血が上っててな。 全面戦争の勃発だよ」

 

苦々しげに、プーリャンは言った。だが、どうも嘘くさいとスペランカーは感じた。しかしながら、ハリーにプーリャンが感謝しているというのは、本当らしいとスペランカーは思った。

 

少し前に、ハリーが此処に赴いたとき、狼人族と豚人族の村をそれぞれ撮影して、見せた。あまりにも美しく撮れているので、プーリャンは感激して、ハリーを尊敬するようになったという。

 

勿論それには、ハリーにたくさん写真を撮らせて本にし、出版することで外貨を稼ごうというもくろみもある事だろう。

 

この人は、かなりのリアリストだ。リアリストは、金のなる木を大事にするものなのである。

 

「強硬派って人たちは、何をしたんですか」

 

「誘拐だよ」

 

「えっ!?」

 

「よりにもよって俺の子をな。 次の村長は彼奴になる予定だったのを、何処かでかぎつけたんだろうよ」

 

くだらんと、影が一言。

 

じろりと見るプーリャンに、腕組みしてずっと黙り込んでいた影は言う。

 

「そんなことで大規模紛争になるというなら、俺が一人で奪還してこよう。 こんなに人数を集めたのは無駄だったな」

 

「ちょっと待ってください」

 

「何だ」

 

ハリーに、煩わしげに影が応える。スペランカーは、平然とコーヒーを飲んでいる川背とハリーを、心配しながら交互に見ていた。

 

今回、一流どころとされているフィールド探索者が二人も呼ばれているのには、当然理由がある。影はどうしてか、妙に先走っている感触がある。

 

ハリーはそれを見て、危ないと思ったのだろう。何より、今回は誘拐を解決して問題が終わるわけではないのだ。

 

「我々の目的を忘れてしまいましたか」

 

「フィールドを発生させた何者かを見つけ出し、危険なら潰すことが目的だ」

 

「問題はそれが、異星の邪神かも知れないという事です」

 

「それがどうかしたか」

 

影は、どうも邪神の怖さが分かっていないらしいかと思ったのだが、どうやら違うようだ。

 

彼が言うには、この問題は、最小限手を汚すだけで片がつく。

 

下手に刺激して、過激派とやらが藪をつつく前に、先に問題を処理する。その後じっくり調査をして、もし邪神が関わっているのなら、その時は総力戦を仕掛けて叩けば良い。三百年も静かにしていた奴が、いきなり動き出すとは思えないし、その兆候も無いと話を聞いている。

 

論理的に影は言うと、司令官を見る。

 

「良いというなら、俺が過激派を全滅させて、人質を救出してくるが」

 

「ま、待ってください」

 

「決断が遅れれば、それだけ被害が増える。 しかも今回、邪神という核兵器並みの地雷が埋まっている可能性があるのだろう。 倫理だの人権だのにこだわっていると、何もかもが手遅れになるぞ」

 

「落ち着いてください、影」

 

慌てる司令官をなだめていたハリーが向き直る。

 

相変わらず川背は落ち着いていて、コーヒーにクリームを足していた。飄々としているというよりも、流れが読めているという感じだ。

 

だから、スペランカーも、落ち着いてきた。

 

「狼人族は、豚人族よりも更に排他的で、今回も接触が上手く行っていません。 過激派がどれくらいの数なのか、何を押さえているのかも、よく分かっていないのが現状なんですよ」

 

「威力偵察してくれば良い」

 

「これは、オフレコに願いますが」

 

ハリーが、釘を刺すようにプーリャンを一瞥。

 

「過激派と一言でくくっていますが、狼人族の全体数がおよそ四百で、その中の派閥が二十以上に別れているらしい事は、此方でも分かっています。 この派閥はそれぞれが、野生の狼で言う群れに相当し、それらを統括しているのが狼のボスです」

 

「俺たちとは、随分組織の仕組みが違うんだよな、彼奴ら」

 

他人事のように、プーリャンが言う。

 

ハリーが掴んでいる情報によると、狼人族は、群れそのものの考え方がそれぞれでかなり違っているそうなのだ。思想の違いで殺し合いにまでは発展しないものの、彼ら特有のモンゴル相撲に似た格闘技で優劣を付け、常に地位の上下を確認しているらしい。そして、上位のチームが命じたことを、下位のチームは必ず実施しなくてはならない。

 

この中には幾つか禁じ手があるらしく、たとえば他チームのメスを強姦してはならないとか(これはトップの、いわゆるαオスでさえ発覚すれば許されないそうである)、様々にあるそうなのだが。

 

その中の一つに、勝手に豚人族に攻撃を仕掛けてはならない、というものがあるそうだ。

 

「ほう……」

 

「つまり、過激派と呼ばれている連中が下手をすると最大派閥の可能性があると言う事です。 少なくとも、下位のチームの独断では無いでしょう。 そして最大派閥が絡んでいた場合、邪神にも手が伸びる可能性がある」

 

「近年、そういった掟が緩んだという可能性は?」

 

挙手した川背が聞くが、ハリーは首を横に振る。

 

実際問題、今でも狼人族と豚人族は慢性的に争いを続けているのである。敵に勝つためには、鉄壁の掟と血の団結が必要不可欠だ。

 

こんな状況で、掟を緩ませる意味は無いだろう。むしろ豚人族の方が、それに関してはきな臭いのだと、ハリーは言った。

 

勿論若い者達が、掟に反発して行動した、という可能性もある。だがそれにしては、狼人族の行動に乱れが無い。

 

もしそうなったら、泡を食った長老達が、此方に話をしに来てもおかしくはないのである。

 

実際、狼人族も、外貨を獲得しなければ、今は生きていけない時代なのだから。

 

「なるほどな。 分かった。 それならば、先に言って貰いたい」

 

「此方も情報が錯綜していて、整理し切れていない部分が大きいのです。 やっと狼人族とコンタクトが取れている商人を捕まえましたが、とにかく強欲な男で、まるで情報を出さない始末でして」

 

「……」

 

司令官を一瞥すると、一旦影は外に出て行った。ハリーも、プーリャンをつれて、一緒に出て行く。

 

司令官も書類をまとめると、そそくさと部屋を出て行った。

 

川背が嘆息する。

 

「先輩、すみません。 今回ちょっと汚い話ばかりになると思います」

 

「大丈夫、平気だから」

 

「こうしてみると、単純な武人ばかりのアトランティスは、構造が分かり易くて良いですね。 僕もいっそ移住しようかなあ」

 

「川背ちゃんなら大歓迎だよ」

 

一緒に会議室を出る。

 

川背とスペランカーは背丈が殆ど同じだ。小柄な女子同士、色々と話が合う部分も多い。出来た後輩である川背は、スペランカーにとてもよくしてくれるし、プロだけあって料理もとても上手だ。コットンにもっと川背の料理を食べさせてあげたいのだが、中々機会が無い。

 

発育していないスペランカーと違って、川背は素で童顔で幼く見えるタイプだ。ただし胸はばかでかいし、全体で見ればきちんと大人に見える。幼児体型のスペランカーとはだいぶ違って、それが若干羨ましいことはあった。

 

外に出る。しばらく時間を潰すが、突入の指示は来ない。

 

影がなにやら司令官と話している。ハリーが一緒ではないという事は、多分突入前の手はずを整えているのだろう。

 

川背はと言うと、屋台に出向くと、料理をはじめた。

 

プーリャンが来る。

 

「なんだあ、人間の飯か」

 

「今作りますから、ちょっと待っていてください」

 

「おう、じゃあ待たせて貰うわ」

 

筋肉質のプーリャンだが、背丈は人間よりずっと低い。スペランカーよりもだいぶ低くて、頭一つ分くらい小さい。

 

だから屋台の据え付けの椅子に座っていると、ちょっと滑稽なくらいかわいらしかった。目つきが悪くなければ、もっと可愛いだろう。ぬいぐるみとかにしたら、J国で売れるかも知れない。

 

近くで見ると、顔には凄い向かい傷がたくさんある。腕にも、足にもだ。

 

歴戦の勇士である事は、間違いないのだろう。ただ、色々と複雑な世界に生きてきて、それなりに汚れているというだけだ。

 

「あんさん、スペランカーやったな。 確か神殺しとか言われてるんだって?」

 

「過分なあだ名ですが」

 

「ハリーの旦那から聞いてるよ。 見た目よわっちいから心配してたんだが、あんた結構修羅場くぐってるだろ。 そわそわはしてたけど、怖がっては無かったしよ」

 

川背が何かを揚げはじめた。

 

凄く良いにおいがする。ふんふんと、プーリャンが鼻を動かして、だらしない表情になった。豚だからか、ものすごく下品そうに見える。こういう所は、本能に忠実で、動物的なようだ。

 

「外の料理はえれえうめえし、楽しみだな。 ハリーの旦那から聞いてるよ。 川背さんってあんた、相当な料理人なんだって?」

 

「そう言って貰えると嬉しいです」

 

川背の凄いところは、下準備と調査を徹底的にやってから、料理に取りかかる事だ。

 

今日黒人の兵隊さんに話を聞いていたのは、多分豚人族の好みについて聞いていたのだろう。

 

魚料理が専門だと聞いているが、それ以外も相当に出来ることを、スペランカーは知っている。事実今揚げているのは、多分魚では無いだろう。

 

程なく、からからに揚がった何かが出てきた。

 

口に入れる前から、とても香ばしい。天ぷらだが、衣はかなり凝った素材を使っているようで、多分調味料は何もいらないだろう。川背の作るお魚の天ぷらを食べて、スペランカーは知った。この世には醤油を掛けなくても滅茶苦茶に美味しい天ぷらがあると。今回も、相当に美味しそうだ。

 

「熱いので気をつけてください」

 

「おう、貰うぜ」

 

がつがつと食べ始めるプーリャン。スペランカーも一ついただく。どうやら山菜の天ぷらのようなのだが、これが味にしても歯ごたえにしても、とても濃厚で美味しい。周囲にいる兵隊達も、香りだけで引きつけられるらしく、じっと此方を物珍しそうに見ていた。

 

多分川背は、今後のコミュニケーションを円滑化するために、料理を振る舞ったのだろう。

 

「くあー、冗談抜きにうめえな! ていうか、今まで持ち込まれたどんな料理よりもうめえぞ」

 

「ありがとうございます」

 

「もっと無いのか?」

 

「この事件が解決したら」

 

川背が手際よく屋台を片付けていくのを見て、凄く残念そうにプーリャンは眉を下げた。

 

何だかとても分かり易い。

 

ただ、これが解決のモチベーションになるのなら、とはスペランカーも思う。

 

ほどなく、影が戻ってきた。プーリャンがいなくなった隙に出てきたので、或いは少し前からいたのかも知れない。

 

「何だ、飯にしていたのか」

 

「影さんはたべないの?」

 

「俺は戦の前には出来るだけ喰わないようにしている。 死んだ後糞便が出るのは恥ずかしいからな」

 

なるほど、毎度必殺の覚悟で、戦いに臨んでいるわけだ。

 

それならば中途半端な覚悟で戦いに出られたら迷惑だとも思うだろう。司令官に対して不快感を見せていたのは、戦にとって最も重要な情報をしっかり整理できていなかったことが原因か。

 

「それで、何か掴めましたか」

 

「ああ、噂の商人とやらと接触してきた。 この辺りの麻薬組織とも関係があるらしい奴でな、締め上げたら予想通りだった」

 

どうやら、狼人族の山に、麻薬の材料になる植物の、かなり大きな自生地があるらしいのだ。

 

しかもこの植物、どうしたわけか麓でとれるものより遙かに濃厚な成分を有しており、かなりの高値で取引されているという。

 

「狼人族も、これを使って外貨を獲得している」

 

何か、ひっかかる言い回しであった。

 

川背が、手を洗いながら言う。

 

「豚人族もじゃないですか」

 

「その通りだ」

 

「え……」

 

愕然とするスペランカーに対して、川背は涼しい顔だった。なるほど、このくらいの事は予想していたというわけだ。

 

彼女は見かけこそ子供っぽいところもあるが、歴戦の戦士であり、それ以上に精神がとても大人である。ひょっとすると、この辺りの政治的な状況から、既にこの程度の闇がある事は見抜いていたのかも知れない。

 

考えて見れば、こんなに攻略しやすそうなフィールドが、今まで放置されていたのも、おかしな話なのである。重異形化フィールドといっても、魔界と呼ばれるほど危険なものとはだいぶ違うはずで、しかもかといってクルクルランドのように独立国扱いもされていないと聞いている。

 

そのような状態の裏には、それなりの闇があったのだ。

 

「この件は、相当に根が深い。 スペランカー、あんたは大丈夫だろうが、ハリーの旦那には言っておけよ。 麻薬組織の残虐さは言語を絶する」

 

色々と聞き出した商人も、多分この辺りではもう生きていけないという事で、国連軍に保護させたという。

 

もしも麻薬組織が国連軍の動きを察知したら、この基地を襲撃して来かねないと、影は言う。

 

もう滅茶苦茶だ。

 

「まいったな……」

 

「先輩、どうしますか」

 

「まず、兵隊さんをもっと呼んだ方がいいよね。 どうしようか」

 

「それならば、俺が声を掛けてくる。 内部で邪神が目覚めた可能性が高いとでも言えば、嫌でも兵隊はたくさん出してくるだろうよ」

 

影がなれ合いは此処までだと言わんばかりに、奥に消えた。

 

これは、今回の探索で、彼の力は期待しない方が良いだろう。多分独自の動きをするような気がする。

 

「それと、混乱を加速しないためには、早期解決だよね」

 

「ハリーさんを信頼しないわけじゃ無いですが、本当に狼人族の内情が、そんなに混沌としているのでしょうか」

 

「それも中に入ってみないと分からない、か」

 

手を分けるしか無いのだろうか。

 

いずれにしても、これは大変だ。実際の戦闘よりも、非常に混沌とした状況そのものが、攻略の邪魔になる。

 

ハリーが来る。

 

険しい表情だった。

 

「どうやら、狼人族が、境界に出てきているようです。 豚人族の動きに呼応しての事でしょう。 それも、かなりの数」

 

「戦争が始まるって事?」

 

「少なくとも、過激派という者達が、最大派閥かそれに近い存在である事は間違いが無さそうですね。 山全体が過激派という可能性も」

 

「なんてこと……」

 

やはり、最初の悪い予感が的中した。多分このフィールド攻略は、戦闘よりも政治的駆け引きの方が障害になる。

 

問題はそれだけではない。

 

そもそも、この時期に、どうして此処を攻略する話が持ち上がってきたのか。それも一月も前から、である。

 

何が、裏で蠢いているのか。

 

「好機だな」

 

もう司令官に話を通したのか、影が戻ってきている。

 

彼は忍び装束に変わっていた。既に戦闘態勢というわけだ。顔も隠していて、目しか見えない状態である。

 

黒っぽい服は、森の中で動くには丁度良いからだろう。武装は剣と手裏剣が少しだけ。でも、それで充分なのだろう。

 

「俺は、裏で動く。 狼人族の村を探って、状況を確認する」

 

「なら、わたし達は、前線に行ってきます」

 

「好きにしてくれ」

 

影が残像を残してかき消えた。

 

一応、衛星写真での地形説明はあった。あれくらいで、影には充分なのかも知れない。

 

ハリーがやれやれと帽子を取る。口ひげを蓄えた写真家は、辺りを見回して、プーリャンがいないことを確認してから言う。

 

「これはあの御仁、相当な食わせ物ですね」

 

「きっと、色々と汚いことをしなければいけないこともあったんだと思う。 ハリーさん、私達が前線に行ってくるから、豚人族の村に行って、あまり無茶しないように見てきて欲しいんだ。 お願い」

 

「分かりました」

 

「先輩、行きましょう。 地形は覚えていますから、僕が案内します」

 

川背はやはり頼りになる。

 

後で、フィールドに入ったら聞いてみたいことがいくつかある。この任務は、やはりおかしいと感じるからだ。

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