オールドアクションゲーム二次創作 作:dwwyakata@2024
元祖友情クラッシャーとでもいうべき、非常に対戦性の高いゲームでして。
むしろ単騎の方が攻略が楽だったりするゲームです。
今回は苛烈な戦いと、イヌイットの生活についての描写をいれております。
楽しんでいただければ何よりです。
序、風の邪神王
俗に四大と呼ばれる四つの要素がある。
地水火風。いにしえの時代から、世界を構成する存在だと信じられてきたものだ。科学が発展すると同時に否定されたが、魔術的にはむしろ根本的な原理として、東洋の五行と並んで重視されるようになっていった。
いつからだろうか。
異星の邪神の中でも、特に強大な四体に、この属性が割り振られるようになった。
水のクトゥルフ。土のニャルラトホテプ。風のハスター。火のクトゥグア。そして今、そのうち二つが致命傷なり大打撃を受けて、存在を隠すに至っている。
今までの時代においても、これらの強力な異星の邪神を破った例はあった。だが、二体同時というのは、あまりにも大きな事態である。
このため、世界にも揺らぎが生じ始めていた。
目覚めた。
この星は、強者の坩堝。たとえ宇宙を股に掛けて暴れ回った彼らでも、必ずしも勝てるとは限らない者達がひしめく、恐怖の土地。
同時に、あまりにも美味なる狂気が蠢く場所でもある。
だから随分前に来て以来、この星に腰を据えている。そして、機会を読むべく、ずっと眠っていたのだが。少し前に妻が目覚めて、そして倒されたことを悟り。面倒くさいと思いながらも、起き出したのである。
妻は現象に近い存在で、それがしっかりした思考を持つ事は滅多になかった。
それをわざわざ神として固定し、葬った奴がいるだけで、目覚めるには充分な、興味をかき立てる事態であった。
しばらくぼんやりとしていた。
だが、せっかくだから食事をしようと思った。
心地よい寒冷の島で目を覚ましたそのもの。四大の風を司る邪神ハスターは、手始めにその島を丸ごと凍り付けにして、住んでいた人間をまとめてアイスキャンディーにした。抵抗できるほどの奴がいれば面白かったのだが、そんなものはおらず、ちょっと拍子抜けであったが。
いずれ現れるだろう。以前も少し暴れたら、すぐに危険な相手が現れた。撃退することが難しく、逃れて眠るのが精一杯な場合もあった。そんなスリルが今回も楽しめるのなら、素晴らしい事だ。
それはともかく、腹が減った。
そう思いながら、ハスターは周囲の様子を探ろうと、触手を伸ばす。
最初に接触してきたのは、人間では無かった。
触手を動かして、自分にとっての宮殿を作るハスター。闇の中、こつりこつりと音がする。人間のもののような足音だ。
だが、気配が違う。
「ハスター」
忌々しい声だ。
無数にある目を見開く。邪神の中でも特に巨大な体格を持つハスターは、そいつを複数の目でとらえ、せせら笑った。
「おや、ニャルラトホテプか」
「随分長いこと眠っていたな。 それで、どうして今頃起きてきた」
「妻のがんばりに応えようと思ってなあ。 だが、その妻を殺した奴がいるようではないか」
「最近噂の神殺し……といっても、お前は寝ていたのだな。 知るわけが無いか」
けたけたと、そいつ。ニャルラトホテプは笑った。
無数の姿を使い分ける、最も性格が悪いと言われる邪神。それが奴だ。狂気を喰らうだけでは無く、人間の破滅していく姿を見ることを、無二の喜びとしている。そのため積極的に無数の姿を使い分け、暗躍することをひたすらに好む。
その残虐性に関しては、人間並みだ。
「それにしても、神殺しだと?」
「まだ具体的には調査中だが、この間クトゥグアの奴の中核部分が潰されてな。 シュブ=ニグラスを倒したのもそいつらしい」
「この星の能力者は侮れんが、そんな奴まで現れたか。 ふむ……」
ハスターの存在は、恐らく邪神達の中でも最も耐久力に優れている。尋常な攻撃では、びくともしないだろう。
だが、それはクトゥグアに関しても、相当なものがあった。
一体何が起きた。何を持ってして、奴を倒したのか。
「それでは、私は一度戻る」
「またお遊びか」
「そうだ。 食事が出来るから、危険を冒してここにいるのだ。 それはお前も、同じだろう?」
けたけたと笑うと、ニャルラトホテプの分身は闇に消えた。
奴は信用できない。人間だけでは無く、同胞の邪神族まで手玉にとって遊んでいる節があるからだ。
ただし、それを差し引いても、今の情報は有用だった。確かにこの星の人間の能力者になら、そういう厄介な力の持ち主がいてもおかしくはない。
しばらく考えた後、ハスターは闇に潜む己の眷属を呼び出すことにした。
いきなり自分が戦うのでは無く、様子見をする。
まだ本調子ではないのだし、それが一番だ。
氷付けになった島から、二キロほど離れた地点に、国連軍の巡洋艦が停泊していた。あらゆる機器類を総動員して、新しく生じたフィールドの調査を実施している。青ざめている艦長は、まだ若い男だ。筋肉質で四角い、いかにも厳つい軍人らしい軍人だが、それでも恐怖は押し殺せていない。
「生存者はやはり絶望的です。 島の平均気温は、-140℃に達しています」
「-140℃か……」
「あの島には、340人ほどが生活していたのですが……」
「未曾有のフィールド災害だな。 クレイジーランド以来の損害か……」
しかも遊興施設では無く、実際に人間が暮らしていた生活圏が、一つ丸ごと消えたのである。
これは、Mに出て貰うしか無いだろう。
ここのところMは相当に多忙だった様子だが、どうにかして時間を空けて貰うしか無い。アトランティス攻略以来の大規模動員が必要になってくる可能性もある。これだけの異変、もしも異星の邪神が絡んでいるとしたら、とんでもない大物である事は疑いないからだ。
「フィールドの拡大は確認できるか」
「今の時点では、安定している様子です。 ただし、此方を見てください」
「何か」
調査員が、衛星写真を出してくる。
それによると、猛吹雪の中を、何かが跳び回っているのが分かった。人間大で、形はよく分からない。
或いは、邪神の眷属だろうか。
今はまだ判断するには早い。専門家による分析を待つしか無いだろう。
「一度距離を取る。 本部に連絡して、一刻も早く熟練のフィールド探索者の出馬を仰げ」
「分かりました」
これが、もしも人口密度の高い島で起きていたら、文字通りの大災害になる所だった。島に住んでいた三百人ほどには気の毒だが、この程度の損害ですんで、実は幸運だったのかも知れない。勿論、口に出してはいけないことだが。
とにかく、今は救助隊どころの話では無い。
生存者は絶望。一刻も早くフィールドの発生源を叩き潰し、全てはそれからだ。もしも生存者がいるとしても、現在の状況で救出するのは不可能だ。
旋回して、巡洋艦は撤退に掛かる。
追撃は掛からなかったが、最新鋭の巡洋艦が、まるでこそこそと逃げるかのようだと、艦長は思った。
屈辱に歯がみする艦長は、気付かない。
撤退に掛かってからも、妙に計器類が活発に動いていた、その事実に。