オールドアクションゲーム二次創作   作:dwwyakata@2024

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アイスクライマーの二機プレイは対戦に近く、本来は仲良く遊べるものではありません。

本作では、敢えて其処を。

幼なじみのいとこが戦うことを描写します。

相手は双たる邪神。

連携を密にしなければ、勝てる相手ではありません……


4、邪神双舞

あ、と思ったときには、既にポポの足は床から離れていた。

 

スローモーションで、全てが見える。

 

ナナが、遠い。

 

手を伸ばしているナナ。手を伸ばすが、とても遠くて。そして、既に吹雪が止んでいる嫌みのように美しい星空と、それにずっと遠くの地面、それにけたけた笑っている、鳥のような形をした邪神が見える。

 

風が、ポポの体を、吹き飛ばしたのだ。

 

しかもこれは、理不尽な現象では無いと、体で解る。そうでなければ、ハンマーを振り回して、ある程度制御が出来たかも知れない。理不尽な、不自然なものを固定して打ち砕く。それが、ポポとナナの能力であるが故に。

 

自然そのものが相手という戦慄すべき現実を、思い知らされる。

 

絶望が、全身を支配する。じいちゃんがいっていた事がある。祖母も、その点だけは、じいちゃんと同じ意見だった。

 

自然こそは、最強。ホッキョクグマも、人間も、自然には勝てない。体重1トンはあるホッキョクグマも、小さめの流氷に押しつぶされてしまえばひとたまりも無い。どんな凄い文明の利器だって、吹雪に閉じ込められてしまえば、力を発揮など出来ない。

 

墜ちる。

 

どんどん加速していく。ああ、死ぬなと、ポポは思った。

 

不意に、手を掴まれる。

 

ぐっと、体が引き戻された。

 

「乱暴に戻るから、歯を食いしばって」

 

壁にたたきつけられた。

 

死なない程度に、である。気付くと、床に蛙のように這いつくばっていた。床。壁では無かった。塔のかなり前の方だろうか。

 

上をにらんでいる姿。

 

海原川背。

 

あのスペランカーの、小生意気な盟友だ。周囲には、何名か手練れのフィールド探索者がいる。

 

「立てる?」

 

「当たり前だ」

 

「じゃあ、自力で上まで戻れるね」

 

返事を聞くか聞かないかの間に、川背は塔の穴から外に出る。そして、あのゴム紐を使って、外壁を垂直に上がっていった。

 

全身に、震えが来る。

 

そうだ、行かなければならない。肩を叩かれた。

 

「小僧、やれるか」

 

顔を上げる。

 

ジョーと同年代らしい、ベテランだ。ポポも知っている。何度も難関フィールドを潰している、英雄。

 

そして、自分は小僧。

 

何だか、すっと気負っていたものが、消えていく気がした。

 

負けた、と思ったからだろうか。

 

ジョーも言っていたでは無いか。これから、強くなっていけばいいのだ。

 

そして今は、まずは屋上に戻る。

 

 

 

「体勢を低くしろ! 空に投げ出される!」

 

ジョーの怒号を受けて、ナナは慌てて身を伏せた。ポポが。ポポが、死んだ。いや、違う。

 

解る。ずっと一緒にいたから。

 

彼奴は、死んでない。だけど、体の震えが止まらない。あれだけ憎まれ口を叩きあっている間なのに。

 

Lが空に浮き上がり、邪神に拳を叩き込む。

 

だが、やはりLの体は通り抜けてしまう。実体が無いのか。そう思ったが、どうも違うようだ。

 

鳥の体から分離した触手が、Lを打ち据える。

 

塔の屋上に、Lが墜ちてきた。

 

「ぐわっ!」

 

「ひっ!」

 

側に墜ちてきた巨体。スペランカーが、無言でかばってくれた。

 

ひ弱なはずのスペランカーは、じっと鳥を見つめている。何か、気付いたことが、あるのだろうか。

 

幻覚とか、そういうものではないはずだ。

 

ならば、何故攻撃が通らない。

 

「やりたくは無いが、仕方が無いか」

 

ジョーが、閃光手榴弾を懐から取り出す。耳を塞ぐスペランカー。それに、慌てて習う。

 

どうした。

 

初陣の子供じゃ無いのに、何でこんなに慌てている。ポポが、死んだと思ったからか。今までも、散々実戦であった事なのに。

 

ああ、おじいちゃん。

 

私はどうしたんだろう。

 

ジョーが中空に投擲。炸裂する、閃光と爆音。

 

その時、見える。一瞬だけ、閃光が影を映し出す。それは、今見えている鳥とは、似ても似つかない姿。

 

おぞましい形をして、そして眼鏡のように真ん中でつながっている、巨大な触手の塊。

 

それが、閃光の中、ありありと浮かび上がっていた。

 

「な、なんだありゃあっ!」

 

「空気の密度を変えたりして、本来の姿を此方から隠している、という所か。 L。 広域に攻撃をしろ」

 

「指図するなっ! だが畜生、それが正しそうだな!」

 

数十の火球を出現させ、それを空中にばらまくL。大量の火球が不規則に動き、それの幾つかが炸裂する。着弾したと見て良いだろう。

 

問題は、相手が屁とも思っていない様子だという事だ。

 

「ふむ、その程度ですか」

 

膨大な火球が、炸裂する度に影を乱舞させている。

 

それが、一秒ごとに形を変え、まるで生き物のように蠢いている。

 

これは尋常な相手ではない。

 

冷静に、ジョーが指示を出してくる。

 

「相手の動きを固定する必要がある。 それは解るな」

 

「あ、え、ええと」

 

「惚けるな。 俺とLとで、奴の大まかな姿を現し続ける。 最終的に、スペランカーがブラスターを叩き込めば、奴らの力は四半減できるし、一気に倒せる可能性もある」

 

まだ敵が遊んでいることを、ナナは理解できる。

 

つまり、たたみかけるのは、今だ。

 

不意に、体が浮き上がりかける。

 

悲鳴を上げそうになった。ポポと、同じように死んでしまう。ああ、嫌だ。怖い。

 

ジョーが腕を掴んだ。そのまま踏ん張り、閃光手榴弾を投擲。中空で炸裂した手榴弾が、またおぞましく形を変える触手の塊を現し出す。

 

其処へ、Lが飛ぶ。

 

全身を発光させ、熱の塊となって。

 

直撃。

 

うめき声が上がった。多分、初めて有効打が入った。だが、それにしても、かすり傷程度か。あまり効いているようには聞こえない。

 

空中を跳び回りながら、Lが打撃を与えていくのが解った。だが、敵が、いよいよ反撃に出る。

 

風が、吹き荒れる。

 

身を伏せるスペランカーが、ようやく伏せることが出来たナナの頭を下げさせる。

 

敵は、ただこうやって風を吹かせているだけで、此方の体力を削り取ることが出来る。Lが、巨大な触手の一撃を受けたらしく、遙か遠くに吹き飛ばされるのが見えた。

 

能力が同じでも、Mにはほど遠いか。

 

震えが、納まらない。

 

「ナナちゃん、良く聞いて」

 

呼吸の乱れが、納まらない。

 

スペランカーが、静かに告げてくる。

 

「一つ、気付いたことがあるの」

 

「な、なに……」

 

「あの真ん中の、アイスクライマーさんの亡骸。 あれを中心にして、さっきから邪神達の影が、動いているみたい」

 

ついに、言われてしまった。

 

解ってはいたのだ。

 

祖父が既に生きていないことも。それに何より、あの恨みに満ちた目も。

 

祖父は、ナナとポポと一緒にいるときは、優しそうだった。だが、一度だけ見たことがある。

 

まるで別人のように、周囲を寄せ付けない雰囲気の祖父を。

 

引退したあとの祖父は、ひょっとして。村に居場所が無かっただけでは無い。この島にも、どこにも居場所がなかったのではないのか。

 

世界屈指のフィールド探索者として、後進の育成に当たっているときは、良かったかも知れない。

 

だがそれ以外の時、人々は祖父にどんな視線を向けていた。

 

故郷の人間でさえ、祖父を理解しようとはしなかった。

 

「楽に、してあげて」

 

風が、ますます強くなってくる。

 

けたけたと笑う邪神達。Lは猛攻を仕掛け続けているが、消費が激しいのが、目に見えて解る。

 

だが、Lが邪神の気を引いてくれている、此処が好機なのだ。

 

不意に、ロープが。いや、ゴム紐が、祖父が封じ込まれている氷に絡みついた。

 

見た。

 

増援が、来たのだ。

 

川背。それに、ポポもいる。

 

涙が溢れそうになった。

 

「ナナ! 行くぞ!」

 

「……うんっ!」

 

声をかき消すように、ジョーが投擲した閃光手榴弾が、空で炸裂した。

 

邪神の影が、Lに向けて無数の触手を伸ばしている。凄まじい風の刃が、Lを襲っているのが解る。

 

だが、それが故に、今は好機。

 

ポポとナナは、息を合わせて、ゴム紐に飛び乗った。タイミングは完璧。川背が反発力を駆使して、中空に跳ね上げてくれる。

 

ああ、おじいちゃん。

 

今、楽にしてあげるからね。

 

呟きながら、ナナは、脳裏に飛来する、祖父の思い出を振り払う。

 

最後に、孫達の頭を撫でながら、笑みを浮かべている祖父の顔が、浮かんだ。

 

氷の塊の両側から、自然ならざるものを固定し、粉砕する槌をたたきつける。

 

凄まじい反発。

 

もしも邪神が、此方に注意を引きつけていたら、どうにもならなかっただろう。だが、奴は、今。Lが放った特大の火球に掛かりっきりだ。

 

「しまった! おのれ、こざかしい真似を!」

 

氷の塊に、ひびが入っていく。

 

そして、祖父の体が、千万に砕け、虚空に消えていった。

 

 

 

スペランカーは、顔を上げた。

 

風のバリアが消え、双の邪神が、姿を見せようとしている。

 

既に、絶叫した邪神は、今までの余裕がかき消され、本気になっているのがありありと見て取れた。

 

双の邪神が、巨大な鳥のような形へと、融合しながら姿を変えていく。だが、それは触手で構成され、元の生物とはよく見ると似ても似つかないのだった。

 

見ているだけで頭がおかしくなりそうである。

 

これが、本気の邪神のプレッシャーだ。だが、今までに何度も見てきた。もっと強い邪神と、相対したこともある。

 

Lが、全力で光を纏い、正面から拳をたたきつけた。

 

だが、悠々とはじかれ、吹き飛ばされる。増援として来てくれた何人かが、同時にそれぞれの武器を、魔術だったりエネルギービームだったりをたたきつけたが、それも正面から防ぎ抜かれた。

 

翼を広げた邪神。

 

「先輩、「打ち上げ」ます。 彼処へ走ってください」

 

「うん!」

 

川背が、既に塔の端に、ゴム紐を引っかけていた。

 

そして、スペランカーは、言われるまま、塔の端に走る。

 

ジョーが、突撃銃で、敵の顔面を精確に撃ち抜いた。足を止める。

 

まだ、早い。

 

ジョーの一撃は、今までまったく通らず、サポートに徹していた。だが、今の一撃は、どういうわけか痛打になっていた。

 

多分、あのときの銃弾だ。

 

更にジョーがたたみかける。

 

彼の連射は、固まりつつある邪神の体を、片っ端から打ち抜いていく。そのたびに血しぶきが噴き出し、邪神が絶叫した。

 

「き、貴様、その弾は何だっ!」

 

「俺にも良くは解らんが、聖遺物だのを粉末状にして、中に入れているらしいな」

 

だが、説明を終えた途端、弾がはじき返される。

 

邪神が、触手を固めて作った鳥の顔で、にやりと笑うのが解った。

 

だが、その瞬間、横っ面をポポのハンマーが直撃する。今までに無い衝撃が入り、邪神はその形さえ崩して、横に大きく倒れかかった。更に逆方向から、タイミングを合わせてナナが一撃を叩き込む。

 

シールドが、完全に粉砕されたのが、スペランカーの目からも解る。

 

あの二人の能力は、そういうものだ。堅かろうが柔らかろうが、関係ない。邪神が、触手の塊に戻りかける。

 

真下から打ちかけられた巨大な火球が、その全身を、炎に包む。

 

まだだ。

 

まだ、邪神は力を出し切っていない。

 

「てあああああっ!」

 

ポポが、跳躍する。既に、さっきまでとは別人のようだった。完全に戦士の顔である。

 

だが、一閃した触手が、ポポを中空に吹き飛ばす。

 

同時に、多分圧搾空気の塊だろう。辺りを滅多に打ち据えて、絶叫と悲鳴が轟いた。ジョーも至近に一発浴びて、受け身を取ったがなお塔の端の方まで転がされている。

 

煙の中から、邪神が姿を見せる。

 

それは、鳥としてはあまりにも巨大すぎて、なおかつ禍々しすぎる姿だった。触手が彼方此方に生えてはいるが、もうあまり目立っていない。それよりも、真っ黒に塗れたような羽毛や、湾曲した牙、赤く濡れた爪が、とにかくおぞましい。

 

「かって存在した究極のコンドル、アルゲンタビスを模したこの姿、空の王者と呼ぶに相応しい。 我ら兄弟神の全力、見せてくれようぞ!」

 

「先輩、まだですか」

 

「……もう少し、待って」

 

まだだ。

 

この邪神は、ようやく全力を見せた。ここからが、本番だ。

 

そしてここにいる皆なら、絶対に道を開いてくれる。

 

 

 

空中でポポを受け止めたLは、驚いた。

 

少年が、驚くほど落ち着いているのだ。

 

「下ろしてくれ」

 

「あ、ああ」

 

その視線は、さっきまでの子供らしい反発心に満ちたものでもないし、戦士としての未熟さを、熱意だけで補っていたものでもない。

 

完全に、大人の戦士のものだった。

 

どうした。何があった。ちょっとしたきっかけで、人間はこうも変わるものなのか。

 

昔、兄貴は、そういえばLとあまり変わらなかった。卑怯な手でも平気で使ったし、能力が少ない内は、フィールドから逃げ帰ることだって多かったのだ。

 

それなのに、いつのまにか、Lは兄貴とは、天地の差を感じるようになっていた。

 

兄貴は性格が悪い。スペランカーにはいつもつらく当たっているし、同僚の戦士達に敬意を払われていても、好かれることは滅多に無い。

 

だが、強い。とてつもなく。

 

ばかでかい、翼長八メートルは軽くあるだろう巨大な鳥に変形した邪神は、Lに対して、圧搾空気の塊をたたきつけてきた。はじき返そうとして、失敗する。そのまま押しに押されて、百メートルは下がることになった。

 

既に息が上がりきっている。

 

ジョーが、手榴弾を投げつけた。爆発をそのまま煙幕代わりに使い、ポポが突貫を掛ける。羽ばたきながら邪神が下がるが、その後ろ。

 

フィールド探索者達の一人が、ナナを空に跳ね上げていた。

 

無言のまま、空から蛇を強襲する鷲のように、ナナがハンマーを振り下ろした。

 

直撃。

 

悲鳴を上げる邪神。

 

邪神が羽ばたく。辺り中に圧搾空気の弾丸をばらまき、鼓膜がちぎれるような音波を辺りに放つ。塔の屋上にひびが入る。

 

だが、それを、相殺したのは、ジョーの音響手榴弾だった。

 

わずかに生じた無音の中、フィールド探索者達が、即興の連携でたたみかける。

 

何だ。この連携は。Lと違い、能力も殆ど無いくせに、此奴らは邪神と互角に近い戦いを繰り広げている。

 

どうして、俺は。

 

此奴らのように、なれない。

 

血がしぶき、肉が避ける。床が砕け、羽が舞い散らされ、誰かが大けがをして倒れる。だが、誰も諦めようとはしない。

 

邪神が、大技に訴えようとする。ナナの一撃で鮮血を吹き上げながらも、高度を上げ、そして口を大きく開いた。

 

とんでもない魔力が、其処に収束していく。

 

塔ごと、吹き飛ばしかねない破壊力の打撃が、打ち込まれようとしている。

 

Lは、動けない。あれがもし此方に向けられたらと思うと、すくんでしまった。

 

「川背ちゃん!」

 

「はいっ!」

 

その時。

 

見た。

 

むしろ柔らかく、暴風の中、打ち上げられた奴がいる。

 

スペランカーだ。奴は、大口を開けた邪神に、まるで恐れる事もなく、真っ正面から飛んでいった。

 

「神殺し……!」

 

邪神が、吠える。

 

だが、その口から禍々しき破滅が放たれるより先に、スペランカーのブラスターが光を放つ。

 

邪神が、全身を絞り上げられるような絶叫を上げた。

 

その力が、半減していくのが解る。

 

無言で墜ちていくスペランカーを、川背が受け止めた。

 

「おお、兄者! 兄者あああああっ!」

 

「双子の兄だけ……」

 

川背が、歯ぎしりする。奴の力は半減したとは言え、それでも邪神。そして怒りに満ちた分だけ、その攻撃も猛威を増す。

 

だが。

 

拳を胸の前で合わせたLは、決める。

 

このままでは、終わらない。終わらせなどは、しない。

 

命を賭ける行為は、決して常に尊いわけでは無い。ただの自己満足である事も多い。

 

だが、今この戦場で行われているそれは、違う。いずれもが、先の勝利を見ての、命を捨てての攻撃だ。

 

そして今、奴の力が半減したこの時こそが勝機。

 

Lは己の力を、全て熱量に変える。兄しか成功していない、通称超新星撃。兄ほどの破壊力では無いにしても、此処で、成功させる。

 

全身の力が、全て吸われていくかのようだ。

 

意識が、何度も遠のきかける。だが、強引に引っ張り戻す。

 

鳥が、此方に気付く。

 

だが、その体に、ゴム紐が巻き付く。更に、無数の火球や、エネルギー弾が打ち据える。更に、ジョーの乱射が、全身を貫く。

 

「がっ! おあああああああっ!」

 

悲鳴を上げる鳥。

 

だが、その全身から放たれた風の刃が、周囲のフィールド探索者達をはね飛ばす。一人だけ難を逃れた川背が、ジグザグに走りながら、跳躍。

 

鳥の意識がずれた瞬間。

 

力を高めていたLが、目を見開いた。

 

「こおおおおおおおおおおっ!」

 

全身の力を、一機に爆発させる。そして、一筋の星となって、鳥へと落ちかかる。鳥が、気付く。シールドを展開して、防ぎに掛かる。

 

激突。

 

「その程度で、このツアールの防壁、破れるものか! 身の程を知れ、人間!」

 

「破れるさ……」

 

Lは、どうしてか確信していた。

 

鳥が、不遜と思ったか、更にシールドの強度を上げようと、大口を開けた。

 

その横を、川背が抜ける。虚空に閃く、一本の何か。それが、鳥の首に掛かる。川背が、墜ちていく。

 

何が起こったか、鳥は解らなかっただろう。

 

川背は、鳥の体に、ゴム紐を引っかけ、落下のパワーで一気に引き上げたのだ。滑車の原理である。中空に不自然に浮いている巨鳥の体自体を、滑車として活用したのである。そして、引き上げられたのは。

 

ゴム紐の、その先にいた、ポポとナナ。

 

「ああああああああああっ!」

 

「せいああああああっ!」

 

双子以上の連携で、二人が左右から、同時に槌を振り下ろす。

 

それが、鳥の頭を、完全に打ち砕く。

 

シールドが、かき消える。

 

そうか、これが。命を賭ける事の意味か。決して美しくも無い。だが、先の勝ちのためには、尊くもなる。

 

断末魔の絶叫が上がる中、鳥の体の中心を、Lが貫いていた。

 

爆散する邪神を背に、Lは何か、ようやく足りないものを得たような気がしていた。

 

 

 

Mはほくそ笑むと、黒焦げの死体だらけの周囲を見回した。

 

味方は全員が無事である。へばっている奴も負傷者もいるが、死人はいない。完全勝利だ。

 

更に言えば、邪神に手の内を見せずに済んだ。

 

さすがはスペランカーだ。大嫌いな奴だが、それでも期待には応えてくれる。Lだけでは、こうはいかなかっただろう。

 

完全に伸びているサヤを、式らしい妖怪達が起こそうと四苦八苦している。周囲のけが人を助けようと回復の術を使いすぎたのだ。

 

無線を取り出すと、Mはまずは救援を呼ぶことにした。

 

邪神の気配が消えて解った。どうも生存者がいるらしい。その理由も、何となく分かる。アイスクライマーめ。たいした奴だなと、無線に向けて話しながら、Mは思った。

 

まもなく、軍のヘリが来る。

 

此処からは、フィールド探索者では無く、普通の人間達の仕事だ。

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