オールドアクションゲーム二次創作 作:dwwyakata@2024
元に戻った氷の島では、わずかな喜びがあった。
生存が絶望視されていた村人達の内、三十名ほどが救出されたのである。いずれもが、邪神が作り上げた氷の巨塔の地下に、半冬眠状態でいたのが見つかった。しかし、これには理由があった。
明らかに、周囲に比べて、温度が高かったのである。
生存者の一人、まだ若い娘は、救助キャンプで川背にこう応えた。
「昔、凄い戦士だったって言うおじいさんが、助けてくれたんです。 おぞましい怪物達を相手に戦って、その親玉が出てきて。 その親玉に、私達を助けるのなら、降伏するって言って……」
なるほど、そういうことだったのか。
川背は、スペランカーから、邪神達が言うほどに酷い連中では無いと聞いていた。その意味が、何となく分かった。きちんと約束を守っていた辺り、多くの人間よりもよっぽど紳士的だ。
スペランカーが目を覚ました。
あの双子の邪神は、それほど強力では無かった、という事なのだろうか。かなりだるそうにしていたが、半眼でスペランカーは手を伸ばす。川背は側に腰を下ろすと、伸ばした手を掴んだ。
「どうしました、先輩」
「あ……川背、ちゃん?」
「まだ寝ていてください。 先輩のブラスターが、今回も突破口になりました」
「えへへ。 どういたしまして」
横たえられたスペランカーは、まだぼーっとしているようだが、ぽつり、ぽつりと話し始める。
「あのね、多分死んでるときに、アイスクライマーさんにあったんだ」
「え?」
「悔しがってたよ。 アイスクライマーさん、隠居してから、孤立してたんだって。 でも、やっぱりそれでも世界を憎みきれなくて、静かに暮らす道を選んでいたんだけれど、最後の最後で心の闇を利用されて、悔しかったって」
悲しい最後だ。
その気になれば、アイスクライマーほどの戦士なら、小さな村くらい簡単に滅ぼすことが出来ただろうに。それでも、そうしなかっただけでも、彼が如何に高潔な心を持っていたのか、よく分かる。
だが、英雄でも聖人でも、心には闇がある。
ずっと救い続けた民に、彼は排斥され続けた。見返りを求めたら善行では無いなどと言うのは、勝手な理屈だ。聖人でも英雄でも、人間であると言う事を忘れている。
世界を救った戦士が、体を休めようとしていたら、ニートだの穀潰しだのと罵る。そんな連中は、ただの恩知らずで恥知らずでは無いのか。
だが、最後まで、アイスクライマーは復讐しようとはしなかった。
「川背ちゃん、そんな怖い顔しないで。 私、大丈夫だよ。 痛いのにも、悲しいのにも、なれてるから」
「僕は、先輩のためなら……」
「まずは美味しい料理を作って欲しいな。 コットンにも」
かなわないなと、川背は思う。
だからこそ、この人のためなら。
川背は、どんな手を使ってでも。この人を苦しめようとする奴を、潰す。
ポポとナナを、祖母が待っていた。
厳しい表情の彼女は、二人を村の奥のほこらに案内してくれた。其処には、二つセットらしい、弓矢があった。丁度並べておくと、双子のようである。
「これは……」
「二人とも、一人前になったようだから見せておくよ。 これは彼奴とあたしの、昔使っていた武器さ」
「あいつ……?」
じいちゃんの名前を、祖母は口にした。
息を呑む。
噂には、聞いたことがあった。祖母は昔、フィールド探索者だったとか。もしそうだとすると。
「そう、その予想の通りだ。 昔はね、この村のしきたりは絶対だった。 あたしは彼奴と一緒になりたかったが、婚約者がいてね。 それで、結婚と同時にコンビを解消したのさ」
「おばあさま」
「今はもう、そんなしきたりもさほど強くは無い。 本当はね、お前達も別々の子と婚約させる予定だったんだよ。 だが、あたしが、横から力を入れたのさ。 余計なことだと、思われていたかも知れないけどね」
ポポは、うつむいた。
そんなことがあったとは。ナナのことは、好きなのか、よく分からない。だが、今回の件で、よく分かった。
ナナほど、息が合ったコンビは、他にいない気がする。
じいちゃんが、村で煙たがられていた理由も、祖母が避けていた本当の原因も、何となく分かった。仕方が無い事だったのだろう。
手を、握られた。
ナナだった。側で、強い意志の目で、見つめられる。
「未来は、お前達がきめな。 どんなに落ちても、あたし達みたいには、なるんじゃないよ。 それだけ守れれば、どうなろうと良いさ」
二人、その場に残される。
ポポは、まだどうして良いか、よく分からない。
だが、一つ決めている事がある。
「ナナ、俺じいちゃんみたいな凄い戦士になるよ。 でも、じいちゃんの生き方だけは、まねしない」
「私も……」
二人で、弓矢を取る。
大事にしよう。そう、ポポは思った。
(続)
楽しんでいただけたでしょうか。
更に苛烈さを増すクトゥルフ系神格の攻撃。
迎え撃つ戦士達の力もそれに負けてはおりません。
そしてそんな中でも、厳しかろうと生きている人達もいる。
そういう物語は続きます。