オールドアクションゲーム二次創作 作:dwwyakata@2024
手裏剣と剣、驚きの跳躍力を駆使して進む作品なんですが、なかなか癖があって難しい作品ですね。後、ファミコン時代のゲームにありがちな、無限ループな作品だったりもします。
今回は割と忍者が現代にいたら、というのを真面目に扱った内容です。
楽しんでいただければ何よりです。
序、忍者VS忍者
普通の人間が立ち入れない超危険地帯が、この世界にはある。
中には怪物が闊歩し、場合によっては物理法則さえねじ曲げられたその場所のことを、フィールドと呼称する。
そして、そのフィールドを専門に攻略、撃破する者達のことを、フィールド探索者と呼ぶのだ。
闇の中を、そのフィールド探索者の一人が走る。
黒装束に身を包んだ彼は、常人とはかけ離れた速度で、草原を駆けていた。風を切り裂くようにして、跳ぶ。
闇夜に浮かび上がる影に、追いついてきた複数のもの。振り返りつつ、剣を抜いて切り払う。
地面に落ちた手裏剣が、月の光を浴びて輝いていた。
いわゆる忍び装束に身を包んだ男は、そのままずばり影と呼ばれている。当然本名では無い。
彼の一族が、代々襲名してきた、仕事上の名前だ。
中肉中背の、目立たない姿は、違和感なく溶け込むためのもの。顔立ちも平凡で、見られても殆どの場合相手は覚えていない。
再び飛来する手裏剣を切り払いながら、影は走る。森が見えてきた。彼処に逃げ込めば。だが、彼の足を止めるように、至近で轟音。
稲妻が、空に走った。
雨が降り出す。大粒の雨は、見る間に草原を泥のぬかるみに変えていく。追っ手の手練れから考えると、非常にまずい。
一瞬の躊躇。
それが、傷を作る事になった。
複数の手裏剣が、体に突き刺さる。呻くと、影は跳躍。森に飛び込み、そして気配を消した。
雨が、血痕を洗い流してはくれる。
だが、それくらいで見逃すほど、追っ手は甘くないだろう。
相手も影と同じく忍者。
それも先輩格で、この業界では知られに知られている大忍者だからだ。
近くに雷が落ちた。
草原の中、立ち尽くす相手が見えた。同じように闇色の装束に身を包んだ、忍者。じゃじゃ丸と呼ばれる男だ。
忍者同士の追撃戦は、極めて殺気を強く含んだ寡黙の中で行われる。
今回、影はある情報を、どうしても届けなければならない。それはダーティなラインから上がってきた情報であり、これを得るために多くの犠牲が出た。正義とも言いがたい情報である。
元から影はダークサイドに属するフィールド探索者で、この運びが、ついにフィールド探索者を束ねる上層部の逆鱗に触れた。
故に追撃が出た。影にしてみれば、最低最悪の追撃が、である。
森の中で、息を潜める。
じゃじゃ丸は動かない。何かしらのカモフラージュで、本人は既に別の位置にいる可能性もある。
元々、忍者は正面切って戦う存在では無い。常に闇に潜み、影から敵を討つことを生業にしている。そもそも殆どの場合、戦う事さえ無い。元々の忍者は、商人や僧侶に変装して、情報を得たり流したりするのが仕事なのだ。
故に、忍者が戦う場合は、幻惑とだましが中心になる。
この森を越えたところに、指定されているフィールドがある。
そこで、影の依頼主が待っている。フィールド内で待っているというのもおかしな話なのだが、それが指定の依頼内容なのだ。
影にとって、依頼は絶対。一族の信頼を失わせないためにも、である。
上に殺気。
気付くと、草原の忍者が消えている。いつのまに、これほど移動していたのか。全力で飛び退き、飛来した手裏剣をかわす。そのまま低い体勢で走り出した。
夜の森の中は、常人では走ることさえ出来ない。
ましてや今は大雨だ。手練れの忍者である影でさえ、かなり危ない。その上今は怪我をしていて、追っ手まで迫っているのだ。
じゃじゃ丸は、確実に影を追い詰めに来ている。
焦ることもなく、楽しむでも無く。まるで機械のように。さすがは先輩格の忍者だと、何度も舌を巻く。
足を止めたのは、回り込まれたからだ。
木の陰に入り、様子をうかがう。着地したじゃじゃ丸は、自分の姿を見せびらかしながら、ゆっくり歩み寄ってきていた。
何も、両者の間に言葉は無い。
雷が、至近に落ちる。轟音が、耳を痛めつける。
次の瞬間、じゃじゃ丸は、既に影の目と鼻の先にまで来ていた。影も、そう来るだろうとは読めていたのだが、手を打つ暇も無かった。
切り結ぶ。
肩から血をしぶいた影は、無言で煙玉を投げ、辺りを煙幕で包む。
そして、身一つで逃げ出す。元々交戦しても勝ち目が薄い相手だ。このまま戦い続けても、死以外の結末は無い。
忍者の仕事は、闇そのもの。だが、本人が生き残ることも、重大な任務としてカウントされる。
鉄の掟と血の結束で、仕事をなすのが忍者だ。
だが、血と技を残す事も、また忍者の仕事なのである。
じゃじゃ丸が、至近にまで迫っていた。また、切り結ぶ。大粒の雨が降り注ぐ中、三度、刃を交えた。
その度に傷が増える。
このままでは、追い詰められ、疲弊しきったところを倒されるだろう。
地味かつ堅実に、自分を追い詰めに来るじゃじゃ丸。だからこそに、逆転の好機が見えてこない。
それは、思いも寄らぬ方向から来た。
両者、飛び退く。
地面に突き刺さったのは、巨大な甲羅。それも、亀のであった。
雷の白光を浴びながら、甲羅から手足が出る。巨大な亀。首を伸ばして、じゃじゃ丸を見据えながら、亀は言う。
「ボスがお待ちだ。 先にいけ」
「感謝する」
「貴様、確かKの配下の……」
「ノコノコだ。 確か貴様と顔を合わせるのは初めてであったな」
巨大な亀が、じゃじゃ丸に向き直る。
影も聞いたことがある。闇の世界の帝王と言われるKの腹心の配下、ノコノコ。普段は巨大な亀の姿をしていて、その正体は誰も知らない。当然のように能力者で、凄まじい防御能力を誇り、生半可な攻撃ではびくともしないとか。しかも、亀の割に、とても素早く動くのだという。
見た目の雰囲気は、カミツキガメに近い。
じゃじゃ丸が、慎重に間合いを計っている。それだけの相手と言うことだ。影としても、これ以上ここにいる意味は無い。
闇の森の中を、走る。
目的地は、まもなくだった。
後方から、激烈なる闘争の気配が伝わってくる。いずれが勝とうと、もはや追っ手に追いつかれることは、無かった。