「......しぶりで......したか?」
「そこ.........たこそ......近」
暗がりの奥から声が聞こえる。誰かと会話しているようだ。
(カイザー?いや、それにしては声が高い気がする。だったら一体誰と?)
扉に近づく。念の為、ショットガンの
「...ちらの......順調で...?」
「そろそろ......たら...進......」
(気付かれないように、気配を消して...)
そっと扉に耳をあて、盗み聞きをしようとする。しかし防音材でもあるのか、会話の内容は途切れ途切れのままだ。
「...すか......の情報が......さい」
「必要......お願い...」
(一体アイツは誰と話して...)
「それより、扉の前で待たせてるお客さんは?」
(!私に気づいて...!?)
「クックックッ...まさか貴女からその話が出るとは。良いのですか?」
「......。」
「では、お待たせしました。どうぞお入りください、暁のホル...いえ、
「今着いたばかりなのに、よく気づいたね...
(...部屋にはコイツ一人の気配しかない。さっきまで話していた相手は何処に...?)
「ククッ...いえいえ、そろそろいらっしゃった頃かと思いまして」
今までに何度か招かれた部屋は、しかし普段と違ってほのかに甘い香りが漂っていた。見れば机の上で飲みかけのココアが湯気をたてている。
「へぇ、ココアとか飲むんだ。意外だね」
「まさか。先ほど別のお客様がいらしてましてね、その方にお出しした残りです」
(先に来ていた[誰か]についてあっさり話した...?確か何かが[順調]とか、[情報が必要]とか話してたっけ)
「よければホシノさんも一杯いかがですか?喉も乾いているでしょう」
「いらない。何を盛られるかわかったもんじゃないからね」
自らを黒服と名乗るこの人物は、二年前からずっと私にある[契約]を持ち掛けてきている。
「...それで、一体こんどは何の用なのさ」
牽制はここまで、そろそろ本題に入ろう。
「少し状況が変わりまして。今回は再度、
「ふざけるな!その提案はもう...!」
「まあまあ、落ちついて下さい...お気に入りの映画の台詞がありましてね」
(映画?一体何を...)
「あなたに、決して拒めないであろう提案を一つ」
そう言って一枚の紙...否、[契約書]を取り出す黒服。
「アビドス高校を退学し、
聞き慣れた前半部分、私が何度も断って来た契約となんら変わりない内容だった...その後の言葉を聞くまでは。
(半分...4億ってこと!?一体どうしてそこまで...)
それでも私は今アビドスを退学する気はない。気になるのはどうしてそこまで私に執着するのかだ。
(せめて後輩たちがもう少し立派になって、私なしでもアビドスを守れるようになったら...)
「はぁ...何度も言ったはずだよ、断るって」
「...何故?一体何故、何故、何故!」
「...おじさんは後輩たちが心配なのさ。あなたには分からないだろうけどね、黒服の人」
「......」
「...さて、行きましたよ......
「ぷっ...くくく...あっはははは!」
「?急に笑い出して、いかがしましたか?」
「だってだって、あんなカッコつけた前振りしといてあっさり断られてるんだよ?面白いに決まってるじゃん」
「...」
「『あなたに、決して拒めないであろう提案を一つ』とか言ったのにあっさり断られてるの!あー笑いすぎて喉痛い」
そう言って彼女は、机の上にあったココアを飲み干した。
「昔から誘い方が下手だねぇ、そんなんじゃキヴォトスの女は引っかけられないよ?
「生徒に対してそういう気はありませんよ」
「何でさ。年頃のかわいい女の子だよ?あ、もしかして熟女好き?」
「違いますよ。あなたも、実験用のモルモットに欲情なんてしないでしょう?」
「それ私に言う〜?協力者さん」
「貴女は望んでその
「うわセクハラじゃん...はぁ、あなたの話に乗るのなんて私くらいじゃない?」
「あの話は貴女のお父様...
「父様からは、現場のことはあなたに一任しているって聞いたけどね...あのさ、その...」
「...申し訳ありませんが、まだ未完成だそうです」
「...っ。分かった。じゃあね、協力者......いや、今は
「好きなようにお呼び下さい、冠唐博士のご令嬢...
こんにちは、misoranです。今回ホシノと黒服の会話シーンを書くにあたって対策委員会編を軽く見直してみたら、黒服が想像以上にあっさり断られてて驚きました。元気出して黒ちゃん...
クックックッ...それではお読みいただきありがとうございました、先生。