ヴィアベルやエーレとシャルフの懸念が杞憂だったように、それはあっさりとしていた。
「……ふっつーに捕まえられたな」
目の前で光の輪の拘束されたブレネンの複製体を見つめ続け、ヴィアベルが呟いた。
即座に勘づかれ、次の瞬間には首が飛んでる可能性も考慮していたヴィアベルからすると、なんとも拍子抜けだった。
何かあるかと身構えていた左右の二人も、僅かに肩の力を抜いたようだった。
こちらを見つめるブレネンの複製体は、ただ静かに佇んでいた。
『
「……まぁ、良い。エーレ、頼む。シャルフは一応警戒を続けてくれ」
ただ、最大限の警戒はそのまま。
ここで僅かにでも視線を反らす愚をヴィアベルがおかす訳もなく。
自分で撃ち抜いてもいいが、扱う魔法で一番攻撃力があるのはエーレで、防御はシャルフが上手い。
ならばこれが最善だ。
「ああ」
「わかった。……よし、『
シャルフの作り出す鉄が自分達の周りを固め、エーレの周囲に幾つもの石が浮かび上がった。。
無数の礫は時間差で放たれ、『
躊躇も加減も一切ない、思い切りの良い魔法だった。
「……所詮憧れか」
三人がかりで、自分の不意打ちでの拘束が成功したのだ。
必勝の形だとは確かに思っていたし、イメージも出来ていた。
けれどやはり、この結果は過去の出会いや噂、そして彼等への憧れを思うと、少しガッカリだった。
昨日は、その英雄の片割れであるニコライとその弟弟子のシュタルクと共に
僅かばかりの落胆を覚えて、少しだけ目を細めた。
それでも目を瞑る等する筈もなく、次の瞬間にはエーレの石の礫がブレネンの複製体を撃ち抜く。
筈だった。
パキンッ
「なにっ!?」
ブレネンの複製体を捕らえていた光の輪、それが突然砕け散ったのだ。
ヴィアベルは視線を外していない、万が一を考えて確実に視界に収めていた。
魔力にはまだまだ余裕があり、エーレの魔法と反発したなんて事もない。
それにも関わらず……光の輪は突如として消えてしまった。
それでも、ブレネンの複製体には石礫が殺到していた、確実に当たるタイミングだった。
にも関わらず、ブレネンの複製体の右腕がブレたと思ったその瞬間……その全てが叩き落とされていた。
キキキキキキキキン!
遅れて聞こえた金属音と、いつの間にか手にしている剣。
答えは、簡単だった。
「嘘……あのタイミングで、全部切り落とした……!?」
ただ、目の前で起きた事が信じられず、最もその実力を知っていたヴィアベルですら、一瞬意識に空白が出来てしまった。
「っ……!引くぞ!」
一瞬遅れてそう指示を飛ばす。
再度『
だが、それはあまりにも遅すぎた。
その次の瞬間には、ブレネンの複製体はヴィアベルの眼前で剣を振りかぶっていたのだから。
誰も反応出来なかった。
気付けば懐に潜り込まれていた。
エーレもシャルフもただ目を見開き、何も出来ずにヴィアベルへと視線を向けるだけ。
ヴィアベルは完全に反射のみで防御魔法を展開するも……。
バキャン!
まるで妨害にもならず、その剣がヴィアベルの首へと真っ直ぐ向かってきた。
体を反らす、間に合わない
しゃがむ、間に合わない。
二人の助けも間に合わない。
絶死のその瞬間、ヴィアベルの体感時間は引き伸ばされ、やけにゆっくりと感じるその時間。
心に浮かぶのは悔しさと、ただただ素直な称賛だった。
『
そして、そんな彼が北部で活躍している事に、北部はきっと自分がいなくてもなんとかなると。
そんな、安堵にも近い感情を抱き、首が飛ぶその次の瞬間を待った。
ガキィイイイイイン!
そんなヴィアベルの眼前に銀の刃が差し込まれ、鈍色の刃を受け止めていた。
「間に合ったみたいだね」
ヴィアベルとブレネンの複製体の間に入り込んだ存在、それは青銀の髪を煌めかせた、ブレネン本人だった。
ヴィアベルより頭ひとつ小さな少年は、三人が反応出来ないスピードで振るわれた剣を直前に割り込み、微動だにせずに受け止めていた。
「よく生きてたね、後は任せて」
その頼もしい背中に一瞬呆けたヴィアベルだったが、即座に気を取り直す。
助けられた事は感謝しかないが、推定ではあるが、あの複製体は本人そのままの力量を持っている。
ならば、本人だろうと苦戦は免れない筈だ、と。
「っ……!いや、いくらアンタでも――!」
キンッ
ズバンッ!
だが、そんなヴィアベルの心配を嘲笑うかのように、複製体の剣を押し返したその次の瞬間、ブレネンの複製体の体は真っ二つに切り裂かれていた。
チンッ
鞘に剣を収めたブレネンが三人に振り返る。
三人は今見た事が信じられず、目を見開いて固まっていた。
ポカン、と口を半開きにして、塵となっていく複製体と、ブレネンを交互に見る。
「……は?」
口火を切ったのはヴィアベルだった。
「いや、それ……どうやって」
その言葉は三人の疑問を代弁していた。
先程、自分達と同じ面子の複製体と戦ったからこそわかる、ほぼ完全に再現されていた自分達の複製。
その時は互いに相性の良い相手を狙う事で対処していたが、自分自身と戦う事になった時、果たしてこうまであっさり倒す事が出来るだろうか。
エーレとシャルフも信じられない物を見たように目を見開いている。
それに対してブレネンは微笑みを浮かべたまま、首を傾げた。
「どうやってって……うーん……。
まぁ、君達はもう察してるみたいだし、まぁいいか」
ブレネンは既にほとんど塵となった自分の複製体を見下ろし、言葉を続けた。
「お察しの通り、この『零落の王墓』にはこうやって足を踏み入れた存在の複製体が作られる。踏み入れた瞬間の本人の力量を完全にコピーした複製がね」
ヴィアベル達はこくこくと頷く。
そこまではわかっている、問題はそんな相手をどうやって……。
攻略法があるなら有難いと三人は真剣に耳を傾け……。
「じゃあ後は簡単だ。ここに踏み入れた時より強くなって、踏み入れる前なら対応出来ない攻撃で倒せば良い。……簡単だろう?」
「それが出来たら苦労しねぇよ!」
そのあんまりな答えに声を荒げるのだった。
「あ、僕の複製体相手は負けても仕方ないから、失格にはしないよ。僕が近くにいれば助けてあげるしね。
だから、僕の複製体を見つけたら逃げ――」
「ちょっと待て、その言い方……複製体はいくらでも湧いてくるって事かそれ?」
「あっ」
「おいおいおい、しかも確か踏み入れた存在の複製体、だろ……?フリーレンやゼンゼの複製体もいるって事かよ?それが無限に?冗談キツイぜ」
「……ま、まぁ、そういう訳で、僕の複製体からはどうにか逃げる事をオススメするよ!それじゃあ頑張って!」
ビュンッ
「はや……」
「……どうするのヴィアベル。ブレネン試験官の言う事が本当なら……」
「……ちっ。こりゃ、流石に意地張ってられねぇな。
他の奴等を探すぞ。協力しなきゃ話になんねぇ。頭下げてでも合流させて貰わねえとな」
「そうね……フリーレンさんってブレネン試験官のお母さんなんでしょ?有効な手とか知ってると良いけど……」
「さてな。まずは合流してからだ。
だがまぁ……どうあっても一筋縄じゃいかねぇだろうな。
うし、周囲を最大限警戒しながら行くぞ」
屈辱に顔を歪めながらも、最適な行動を決め、ヴィアベルは慎重に歩きだすのだった。
その他の受験者、デンケンを筆頭に数人で協力しながら攻略を進めていた面々は、一人の脱落者を出しながらも順調に進んでいた。
しかし、最奥、宝物庫であろう扉の手前で足止めを食らってしまっていた。
原因はその扉の前に陣取る、一人の複製体。
伝説の魔法使い、『葬送のフリーレン』の複製体だった。
「さて……どうするか」
安全を確保したエリアでデンケン達は体を休めつつ、どうやってアレを攻略するかを話し合っていた。
だが、対面した時にデンケンの放った『これが試験でなければ、儂はとうにビンを割っておる』という言葉が全てだった。
魔法使いの戦いは相性の有利不利があり、相性やイメージによって格上を倒す事も不可能ではない。
しかし、フリーレンとの間にあるのは、途方もない年月という壁、人の身ではどうする事も出来ない差だ。
それを、第一次試験でフリーレンと対峙したデンケンは、痛い程感じ取っていた。
デンケン達も既に幾人かとの複製体との戦闘をこなしており、それが本人ほぼそのままの力量である事も確認している。
ならばあの複製体はフリーレンと戦う事と同義であると言っていい。
しかも、第一次試験の時のように手心を加えて貰えるという事も期待出来ない。
宝物庫の扉の1つ前の部屋で、デンケン達は途方に暮れていたのだった。
少しずつ事態が動き始めたのは、フリーレン達が合流してからだった。
フリーレンは自分の複製体を見つめると、面白い事になったと微笑みを浮かべるのだった。
「完璧な複製体か。確かにあれは私と同等の力を持ってるみたいだね。となると……弱点は生身の魔法使いと同じかな」
「格上の魔法使いを倒すとしたら、拘束魔法か精神操作魔法だが……」
「どっちにも耐性があるね」
フリーレンの言葉通り、それらを会得しているメトーデが試してみるも、まったく通じる事はなかった。
その過程でフリーレンに密着したせいで、フェルンの頬を膨らませるだけに終わった。
どうするかと話し合い、悩んでいた所に、別行動していたドゥンストが脇腹に傷を負った状態で現れる。
治療し、話を聞けばゼンゼの複製体に襲われ、共にいた二人、エーデルとブライは脱落したとの事だった。
そして、そこでもたらされた情報は、複製体には心がないという事。
つまり、精神操作魔法は無意味だという情報だった。
元より防護魔法が強固で通じないのに、仮に突破しても意味がないという情報に、取れる手が減ったと面々の顔が歪む。
「そもそも複製体特有の弱点はないのか?
仮にフリーレンと同等の実力だとすると、死傷者が出るぞ」
「そうだね……全員でかかれば勝てると思うけど、半分は死ぬかも」
ちら、と少し離れた所で静かに佇むゼンゼにデンケンの視線が向く。
恐らく一番この複製体を操る存在について詳しい人間だが……。
「それも含めて試験さ。確信してるなら答え合わせくらいはしてもいいけど、間違ってても否定はしないよ」
そう冷たく返され、デンケンは肩を竦めた。
憮然としたゼンゼの姿を見て、ラオフェンが呆れたように呟く。
「まどろっこしい人だね」
そんなラオフェンに、フェルンがにまにまとした笑みを浮かべ、耳打ちを始めた。
「あれでさっきまで、フリーレン様の話すブレネン様の話で凄く嬉しそうにしてたんだよ」
「え、そういう関係なの?」
「そうみたい。目がキラキラしててね、可愛かった」
「へー……全然想像つかない」
「五月蝿いなそこ!余計な事言わない!失格にするよ!」
「横暴ですよゼンゼさん」
「おーぼーだー」
ニヤニヤと笑う二人に、ゼンゼは頬を染めて憤慨する。
そんな様子をリヒターは、若いなぁと冷めた目でやり取りを眺めていた。
「あの複製体に弱点はないぜ」
そこに更にラヴィーネとカンネの二人が現れる。
目立った外傷はなく、元気そうな様子に、フェルンは嬉しそうに立ち上がった。
「ラヴィーネ、カンネ。無事だったんだ。良かった」
にぱ、と人好きのする笑みを浮かべて、フェルンは二人の元へと駆け寄る。
聖典を片手にカンネに近寄り、怪我はないかと上から下まで確認する姿に、苦笑を浮かべられていた。
そんなすり寄ってくるフェルンの頭を鬱陶しそうに押さえ、ラヴィーネは言葉を続ける。
「複製体を操ってるのは、『
ラヴィーネは語る、自分の兄がかつてこの迷宮の調査に来た事があるのだと。
そこでわかっている事として、その本体は脆弱で攻撃手段はなく、宝物庫の扉の先にいるとの事だ。
そこまでの情報は、魔力探知の結果としも一致する。
ところが、その扉を開くのが一苦労であった。
「あの扉は私の複製体の『命懸けで宝物庫の扉を閉じる魔法』で封印されてるね……術者が死なないと決して解けない、民間魔法の中でもトップクラスに強固な封印だよ。
壁を破るにも……多分何かしら対処済みだろうね」
私ならそうするからね、と締められた言葉に、デンケンは難しい顔で俯いた。
「となると……やはりフリーレンの複製体を打破する以外に方法はないか」
「それなら、早く倒したほうが良いと思うぜ」
更にラヴィーネは追加で嫌な情報を落とす。
複製体達は時間が立つと最奥に集まってくるとの事だった。
「成程……んー……」
そこでフェルンが首を傾げ、悩ましげな声をあげた。
フリーレンはそれに気付き、問いかける。
「どうしたのフェルン、意見があるなら言ってみて」
「いえ、複製体に心はなく、心の動きを正確に模倣してる……でしたよね?」
ドゥンストはその問いにこくりと頷いた。
精神魔法のエキスパートであるエーデルの談だ、間違いないと。
その言葉にフェルンは改めて深く頷き、手の平をパン、と合わせた。
「それなら私、フリーレン様を殺せるかもしれません」
その言葉にその場の誰もが驚きに目を見開き……。
フリーレンだけが嬉しそうに微笑んでいた。
「……いいね、詳しく詰めて行こうか」
やがて話し合いを続けていく途中、ヴィアベル達もそこに合流する事となる。
「重要な情報がある」
そう真面目な顔で協力を申し出てきたヴィアベルを、デンケンはため息混じりに受け入れる。
最初から協力しておけば、無駄な手間もかからなかったろうにと思うも、口に出す事はなかった。
「俺達は自分達の複製体を倒したんだが……どうやら複製体は再生するらしい。
まだ未確認だが、これを知ってるか知らないかじゃ段違いだろ?」
「確かにそうだ。しかしどうやって知った?二度も倒したのか?」
「ああ、いや、ブレネンが口を滑らしてな。あの焦りようや……ゼンゼの反応からして、マジみてえだな……」
ちら、とゼンゼのほうを見れば、今は姿の見えない誰かに憤慨しているようだった。
「ブレネン……余計な事を」
ゼンゼは口をへの字にし、後でブレネンに文句を言おうと、心に決めるのだった。
「……まぁ、そっちの状況は大体わかった。
俺達の役目は足止め……フリーレンの複製体をフリーレンとフェルンが倒すまでの間、他の複製体が合流しないようにする事だな?」
「ああ、恐らくそれが最適だろう」
「異論はねぇが……複製体と戦う奴等に忠告しといてやる。
ブレネンの複製体に会ったら戦うとか逃げるとか考えず、即座にビンを割れ。
次の瞬間に首を切られるなんて事も有り得る。
……これはマジだ。俺は一瞬で間を詰められて、危うく死ぬところだった。
シャルフが警戒してくれていたのに、だ。俺達三人共、誰一人ろくに反応出来なかった」
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、ヴィアベルは悔しそうに警告する。
もしも次に出会った時、自身も即座にビンを割る事を決めていた。
全ては命あっての物種、死ぬよりはマシだ。
「むふー」
「フリーレン様、そこは胸を張るタイミングではありませんよ」
息子を遠回しに褒められた事で嬉しそうに顔を綻ばせるフリーレンを、フェルンが静かに嗜める。
幸いヴィアベル達はまだ気付いてなかったようで、表情を戻し話し始めたフリーレンを、静かに見ていた。
「む、そっか。うーん、確かにブレネンの複製体とは戦わない方が良いと思う。
魔法使いとしては負ける気は一切ないけど、あの子は戦士でもあるからね。
私の複製体に加えてブレネンの複製体が相手になると……流石に無理かな」
そのフリーレンの言葉に、その場の全員に悪寒が走った。
フリーレンは今この場にいる面々と比べると、明らかに隔絶した実力者だ。
先程の検証で僅かに弱点……魔法を使う時にほんの一瞬だけ魔力探知が途切れるという事がわかっているが、だからといってフリーレンと真正面から戦いたいという者は誰一人いなかった。
そんなフリーレンが負ける可能性を示唆する存在に、挑もうとは思えなかった。
フリーレンの複製体にブレネンの複製体。
それらがもし合流すれば……攻略の可能性は限り無く低くなるだろう。
「……ん?ならお前達はなんで今生きてるし失格にもなってないんだ?」
そこでリヒターが不意に浮かんだ疑問を口にする。
ヴィアベルは更に顔を歪ませ、聞かれたからには仕方ないと嫌々ながら答えるのだった。
「ブレネンの本体に助けて貰ったんだよ。なんでも、あの人に助けられる分にはセーフらしい。
ブレネンの複製体に出くわしたら、『ブレネン試験官助けてー』って叫べば助けて貰えるかもな?」
冗談めかして語るヴィアベルだが、実際ブレネンは現在迷宮全体に耳を澄まし、魔力探知を続けているので、自分の複製体に受験者が襲われていれば即座に助けに向かうだろう。
それに加えて助けの声があれば、辿り着くのは更に早くなる。
故に強ち間違いでもない。
ブレネンは、そんな助けを求める声を無視する事など出来ないのだから。
「だが、そもそもブレネンに弱点はないのか?母親なんだし、なんか知らないか?俺の拘束魔法も効かねえし、このままじゃ足止めすら出来ねえ」
ブレネンに会ったら諦めろ、とは言うが、結局の所フリーレンが戦っている所に合流されたらアウトだ。
ヴィアベルはどうにか時間稼ぎくらいは、とフリーレンに対ブレネンのアドバイスを求めた。
「うーん……あの歳にしちゃ魔力の鍛練が甘いから魔力量が少ないとか……あまり攻撃魔法は得意じゃないとか……。
あ、そうだ、初見の魔法をじっくりと見る癖があるかな。
ブレネンの魔法は『
多分使った時は意識に空白が出来る筈だよ」
「おお、成程な。それは明確な弱点……」
「ただ、戦士でもあるし、反射神経が良いんだよねブレネン。
その状態でも最低限自分の身は守っちゃうと思う。
隙になるのは間違いないと思うけど……」
しかし、あまり参考にはならない話であった。
そもそも戦士とよーいドンで戦えば、魔法使いは圧倒的に不利なのだ。
魔法は効かない癖に戦士として充分に戦える、なんとも冗談のような話であった。
「……ちっ、あんま意味ねぇ、か」
ヴィアベルは舌打ち混じりに吐き捨る。
北部の英雄の背中は、まだまだ遠いらしい。
とにもかくにも、情報は出揃った。
他に受験者は第一次試験でフェルンと同じ班だったラントとユーベル、一人で潜ったトーンがいるが、これ以上時間をかけるのは不都合だと判断し、いよいよ最後の攻略へと向かう。
フリーレンとフェルン、二人がフリーレンの複製体の打破に向かい、他の面々はその間複製体達がそこに辿り着かないよう、時間稼ぎを行う事になる。
メトーデが複製体の位置を割り出す事に成功した為、相性の良い相手に当たるようメンバーを厳選していく。
また、単騎で動く案もあったが、ヴィアベルの複製体に不意をうたれると逃げる事も出来ない可能性がある為に、最低でも二人組で行動する事に決まった。
そうして、面々は第次試験合格の為に、各々動き出すのだった。
なお、フリーレンにヴィアベルの『
光輪がフリーレンを拘束するより先に、砕けてしまっていた。
ヴィアベルは改めて自分はまだまだ、もっと研鑽を積まなければならないと心に決めるのだった。
「それにしても、なんでブレネンはあんだけ戦士として強いのに魔法使いやってんだろうな?」
自分が対応する複製体の元へとシャルフとエーレ……変わらない面子で向かいながら、ボソリと呟いた。
あれだけ強ければ引く手あまただろうに、と。
どう考えてそうなったかはわからないが、常識からすれば少なからずズレた判断だといえる。
にも関わらず、魔法使いとして、戦士として高みにいるいるブレネンに……。
「……いや、やっぱかっけぇなぁ……」
改めて尊敬の念を強めるのだった。
目の前に現れた情報通りの複製体達に杖を向け、ヴィアベルは静かに身構えた。
そうして各々、それぞれの場所で、戦いは始まるのだった。
「……私自身と戦うのは初めてだ。さあ、最後まで楽しもうか」