人の心を持ってしまった魔族・IFストーリー   作:如月SQ

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[ユーリとの優しい日々]可愛いアリウム

[ユーリとアリウムの距離感]

 

『出会った頃』

 

「うぅ……さむい……」

 

「今日は随分と冷えるね……」

 

 日が沈み、焚き火の前でユーリとアリウムの二人はその身を震わせていた。

 季節は秋だが、今夜は秋とは思えない程に冷え込んでいた。

 身を縮めて震えるアリウムの姿を見て、不意にユーリに天啓が走る。

 

「(……!これは、温めあうという理由付けで、アリーに触れるチャンス!)」

 

 そうと決まれば、とばかりに焚き火を挟んで向かい合っていたユーリはその場を立ち、アリウムの方へと足を踏み出した。

 

 瞬間、アリウムは即座に立ち上がりユーリから一歩距離を取った。

 

「……何」

 

 警戒心を露にしてジト目で見返すアリウム。

 その過剰なまでの反応に、ユーリは焦りながら両手を挙げて何もしないアピールをする。

 

「な、ほ、ほら、寒い時は人肌が良いって言うだろう?寒そうだし、温め合おうと思って―」

 

「フーッ!」

 

 まるで猫のように肩をいからせ威嚇する姿に、ユーリは肩を落として元の場所に座った。

 まだまだ親密度が足りないようだ……。

 

 

 

 

『付き合い出した頃』

 

スリ……。

 

 ユーリの寝床に、アリウムの姿があった。

 今日は寒く、恋人になったしと温めあう事を提案していた。

 

「シャーッ!」

 

 だが、何処か虫の居所が悪かったのか、いつかを思い出すような威嚇をされて、ユーリは渋々引き下がっていた。

 ……そんな状態でもおやすみのキスは行っていたのだから、よくわからない。

 それでも拒絶された事には変わりなく、泣きそうになりながら寝床に潜り込んでいたのだが……。

 

「(アリー!?なんで!?怒ってたんじゃ!?)」

 

 ユーリが寝ていると思っているのだろう、体をユーリに寄せて胸に頬を擦りつけた。

 

スリ……スリ……。

 

 頬や額を擦り付けるアリウムは、とてもご満悦な様子だった。

 しかしユーリは気が気ではなかった。

 キスする時以上に近く、自らの体にはアリウムの柔らかい体が押し付けられ、甘い匂いが鼻を擽る。

 ユーリの自制心が、鑢でゴリゴリ削られていくようだった。

 そんな中、ピッタリとユーリの体に自らの体を寄せたアリウムは、口を開く。

 

「ん……ユーリ……すき……」

 

 首元に頭を擦りつけながら、熱っぽい声で呟かれた言葉に、ユーリの頭は一気に沸騰した。

 

「(それは反則!もう、我慢出来ないっ!)アリー!僕も好きだぁ!」

 

ガバッ!

 

「きゃああああ!」

 

バチーン!

 

「おぶふぅ」

 

 たまらすガバリと抱き締めたユーリだったが、そんな悲鳴と共に頬を思い切りひっぱたかれていた。

 アリウムは顔を真っ赤に染めて、胸に手を当ててユーリを見つめ。

 

「えっち!」

 

 そう言い捨てて、ユーリから離れていった。

 自分の寝床で倒れこみながら、叩かれた頬を押さえ、ユーリは呆然と呟いた。

 

「……これ僕が悪かったのかなぁ」

 

 親密度は既に充分だったが、アリウムの恥ずかしさが勝ったようだ。

 

 

 

『性行為をするようになった頃』

 

スンスン

 

「…………アリー?」

 

「ふんふんふん……ん?」

 

「僕を真正面から抱き締めて、首元の匂いを嗅ぎ続けられるのはちょっと……そろそろ離れて……」

 

「やっ」

 

「嫌かぁ……」

 

スンスン……スンスン……

 

「んふふふ……ユーリすき……んふふふふふ」

 

「……まぁ、アリーが幸せそうならいいけど……」

 

 そもそもほとんどユーリから離れない。

 

「……ユーリ?」

 

「ん?どうしたんだいアリー」

 

「んふふ、よんでみただけ……んふふふふ」

 

 幸せそうに笑うアリウムに、ユーリも自然と笑顔になり……その細く柔らかい身体を抱き締めた。

 

「んっ……ユーリ、おなか、あたってるよ……シたいんだ……?」

 

「んんっ!仕方ないだろう!アリーが魅力的過ぎるから、どうしても興奮してしまっんっ!」

 

チュゥ

 

「……んっ、いいよ、ユーリ……」

 

 おもむろに服をはだけさせたアリウムに、ユーリの喉が鳴った。

 

 二人は芯からポカポカになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[勇者との邂逅]

 

 とある日、いつも通りユーリにピッタリ寄り添いながら歩いていると……。

 

「……ん?魔族……?」

 

 なんと、魔王を討伐した勇者ヒンメルとバッタリ出会ってしまった!

 

「ひぇ……」

 

 腕を切り裂かれた記憶が甦り、怯えながらユーリの背中に隠れるアリウム。

 魔族と知り視線を鋭くさせるヒンメル。

 勇者への憧れ、恋人の危機、その二つの板挟みになってなんとも言えない表情を浮かべるユーリ。

 

 三者三様の表情を見せる中、ユーリが口火を切った。

 

「あの……せめて、落ち着いてお話しませんか?勇者様……」

 

「む……そうだね、わかった」

 

 ヒンメルはそう言うと、剣の柄に添えていた手を離した。

 その動きに、ユーリの背中で怯えていたアリウムが安堵の息をつく。

 

「色々と話を聞かせて貰うよ。僕はフリーレン程じゃないが、魔族は見つけ次第殺すべきだと思っている……」

 

 そこで言葉を一度切ると、人間の背中に隠れる魔族に鋭い視線を向けた。

 

「生半可な理由じゃ、納得しない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ううぅ……なんて悲しい経験をして来たんだ君は……」

 

 酒場にて、アリウムは今までの自分の生をヒンメルに語った。

 それをヒンメルはユーリに勧められるままに、酒を飲みながら聞いていた。

 自らの赤子を食い殺してしまった、そう語るアリウムの瞳に大粒の涙が浮かぶ。

 それを見て、ヒンメルの腹は決まった。

 感極まり、涙を流しながら、ヒンメルは心から彼女に同情していた。

 

 ヒンメルはアリウムの事を覚えていた。

 魔王討伐の旅路の途中で、フリーレンに不意打ちをしようとした子供の魔族。

 自身がそれを咎め、右腕を切り裂いた魔族だ。

 フリーレンの魔法を受けて崖下に落下していた筈だった。

 その時、塵と化したのを見届けていなかった事から、生きている可能性も考えていた。

 当時は数日周囲を見回り、見つからなかった事から旅を続けていたが。

 結果的に懸念は正しく、そして間違っていた。

 

「君は魔族かもしれない、だがその在り方……過去の過ちを悔いる姿は、僕には人間としか思えない」

 

 呆然とヒンメルの言葉を聞き続けるアリウム。

 その瞳に涙が浮かぶ。

 

「僕の勘もそう言っている。君は他の魔族とは違う、人の心を持った魔族だ。

 君はまだ自分を許せないだろうけど……僕は君を許すよ」

 

 柔らかく微笑むヒンメルの言葉に、アリウムは両目から涙を溢れさせた。

 声もなく泣くアリウムの肩を、ユーリは優しく抱き寄せる。

 すがり付き泣き続けるアリウムを、ユーリは優しい笑みを浮かべて撫でた。

 

「……ありがとうございます、勇者様」

 

「そう堅苦しくしなくていいよ。それより君も飲みなよ。

 ……僕が言うのも変だけど、その子の事、大事にするんだよ?」

 

「勿論です!」

 

 満面の笑みを浮かべたユーリは、そう言ってジョッキを掲げる。

 それに合わせるようにヒンメルも手にしたジョッキを掲げた。

 

チンッ

 

 声はなく、どちらからともなく、打ち付けあったジョッキが良い音を鳴らした。

 

 

 

 

「ユーリぃ……頭撫でてぇ」

 

「あーもう……お酒弱いのに飲むから……よしよし」

 

「んふふー……♪きもちいい……♪」

 

 頭を撫でるユーリの手に頭をぐりぐりと押し付け、アリウムは嬉しそうに笑う。

 その様子を微笑ましく見つめるヒンメル……かつて夢見た、そうあって欲しかった光景がそこにあった。

 人と魔族の共存……そんな夢のような光景が。

 

「……全ての魔族が彼女のようであったならなぁ……」

 

 けれど、ヒンメルは旅の中で理解していた、ほとんどの魔族は……いや、彼女以外の魔族は、そうはなり得ないと。

 彼女から感じる暖かな感情を、魔族からは一度たりとも感じた事はなかったから。

 

「……♪」

 

 ご機嫌で恋人にすり寄るアリウムの姿を、眩しいものを見るように目を細めて見つめていた。

 彼女は奇跡だ。

 だが、奇跡とは他にありえないから奇跡と言える。

 

「さてどうしたものかな」

 

 勇者として、ヒンメルとして、彼女には幸せに生きて貰いたいが……少し険しい道となりそうだ。

 

「アリーは可愛いなぁ……」

 

「かわいー?んふふ、ユーリはかっこいいよ♪」

 

「ま、なんとかなるか」

 

 ジョッキに残った酒を飲み干し、ヒンメルは腹を括った。

 この二人とは暫く行動を共にし、まずは仲間達に会いに行こうと。

 幸いにも僧侶と戦士の所在はわかっている。

 

「君達もまだ飲むかい?」

 

「あ、はい、もう少し飲ませていただきますね」

 

「んんー」

 

 ユーリの膝の上で胸に頬擦りをするアリウム。

 それを見て、ヒンメルは顔を綻ばせた。

 

「ふふっ、まるで猫みたいだ。可愛いね」

 

「少し前までは、猫みたいによく威嚇されてましたよ」

 

 苦笑するユーリに、ヒンメルは少し羨ましげな視線を向けた。

 気まぐれな猫といえば、自パーティの魔法使いも、ある種猫のような面があった。

 よく寝る所や、気まぐれな所とか。

 

 ……そんな魔法使いに、魔族と見るや即座に滅しにかかる彼女に、この子を会わせて大丈夫だろうか。

 ヒンメルの頭にそんな心配が過る。

 

「……まあ、それもどうにかなるか!」

 

 けれど、アルコールの入ったヒンメルの思考は楽観的だった。

 まあそもそも彼女に会えるかもわからないんだ。

 運ばれてきたジョッキをユーリと打ち付けあい、楽しく飲み続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[僧侶との出会い]

 

「……ヒンメル、貴方正気ですか?」

 

「ひどいな」

 

 三人は聖都に来ていた。

 勇者パーティの僧侶にしてヒンメルの幼馴染み、ハイターに会うために。

 アリウムは既にヒンメルにも懐いていて、ユーリとヒンメル、並んだ二人の中間で背中に隠れ、恐る恐るハイターの様子を伺っていた。

 軽く事情を説明したヒンメルは、厳しい事を言う幼馴染みに苦笑を溢した。

 

「魔族を生かしてるのも疑問ですが、魔族に人の心があり、共存出来る……?

 わかっているのですか?それは人類への裏切りですよ。

 仮に本当だとしても、今までの全てがひっくり返りますよ……」

 

 不愉快げに……というよりはヒンメルの身を案じているような様子だった。

 まさか、この魔族に何かされたのだろうか?

 眼鏡の奥の瞳が細められ、鋭い視線がアリウムを貫く。

 ビクリ、と肩を跳ねさせたアリウムがユーリにすがり付いた。

 

「まぁまぁ、ハイターさん、お話だけでもお願いしますよ」

 

 ずいと身を前に乗りだし、ユーリは軽く頭を下げる。

 穏やかな表情を浮かべているが、その瞳には少しだけ憤りの色があった。

 その強い意思を感じて、ハイターは眼光を和らげた。

 どのような形であろうと、どのような二人だろうと、二人の間にある絆、情を感じ取り、一先ず溜飲を下げる事としたのだ。

 

「……いいでしょう。話だけはお聞きしましょう。

 ですが、ヒンメルのように、簡単に絆されるとは思わないでくださいね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっはははは!貴方なかなかイケる口ですねぇ!」

 

「ハイターさんも良い飲みっぷりです!」

 

「さん付けなんて他人行儀な!もっと気楽に頼みますよ!」

 

「ええ、ハイター!」

 

「ハイターさん、コップを」

 

「おっと、空でしたか。ではお願いして……。

 いやぁ~こんな美人にお酌して貰えるとは!酒が進みますねぇ~!」

 

 上機嫌で酒を煽るハイターに、端から見ていたヒンメルは呆れたようにため息をついた。

 

「多分僕よりチョロかったよこれ」

 

 笑いあいながら、既に意気投合した様子で二人で楽しそうにぐびぐびと飲み続けるハイターとユーリ。

 二人とも飲むペースが早く、けれどもとても楽しそうだ。

 自分のペースでちびちびと飲むヒンメルは、ふと思い立つ。

 

「明日ハイターは地獄だろうな……まだ飲んでそうだし、もう教会に伝えに行っておこうかな」

 

 明日ハイターは二日酔いするのでお休みします、そう伝えた時の教会の司教のなんとも言えない表情が印象的だった。

 

 

 

 

 

「ユーリぃ……構ってぇ……」

 

「おっと、ごめんよアリー放っておいて、おいでー」

 

「あははは、仲が良くて大変宜しいですね!」

 

 匂いだけで酔ったのか、顔を赤くしたアリウムがすがり付いてくる。

 そんなアリウムをユーリは受け止め、膝に乗せて腕の中に抱え込んだ。

 ユーリはアリウムの頬を両側から優しく摘まみ、軽く揉み始めた。

 

「んにぃー……」

 

 されるがままのアリウム。

 その仲睦まじい様子を、ハイターは嬉しそうに眺めていた。

 

「いい光景ですね……」

 

 しみじみと呟かれた言葉には、強い感情が込められていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[戦士と誕生日]

 

「……成程、二人がそう言うなら信じよう」

 

「そうですか……」

 

「何故残念そうなんだ」

 

 再会した勇者パーティの戦士、ドワーフのアイゼン。

 事情を説明すると仲間を信頼しているのか、直ぐに頷いていた。

 何故かハイターは少し残念そうな顔をしていた。

 

「良かった、これで後は……フリーレンか」

 

「フリーレンか……」

 

「フリーレンですか……」

 

 ヒンメルが出した名前に、三人は顔を見合わせる。

 三人の中では、フリーレンが魔族を受け入れる様がまったく想像出来なかった。

 

「……やっぱり厳しいかな」

 

「否定はしませんが、私達がいない時に遭遇したらそれこそ……」

 

「だが、人と共存出来る魔族なんて、フリーレンにとって認められるのか……?」

 

 

 

 三人が深刻な表情で話合っている時、そこから少し離れた所で、アリウムとユーリは、互いの手をにぎにぎして遊んでいた。

 そんな時に、不意にユーリが何かに気付いたうように声をあげた。

 

「あっ、そう言えば今日誕生日だったな……」

 

 アリウムはその言葉に首を傾げる。

 

「誕生日……?」

 

聞き慣れない言葉だった。

 

「あぁ、アリーはもしかして知らなかったのかな?

 僕達人間は産まれた日に毎年お祝いするんだよ。

 産まれてきてくれてありがとう、おめでとう、とね」

 

「むぅ……私、誕生日知らない」

 

「そっか、じゃあ……今日僕の誕生日だし……いっそ僕と同じにするかい?

 一緒に祝いあおうじゃないか!お互い産まれてきてありがとう、ってね!」

 

「うん……?うん……ユーリが嬉しそうだからそれでいいよ」

 

 アリウムを抱き上げてくるくる回るユーリに、少し冷たく返す。

 それを気にする事なく、ユーリはニコニコと笑う。

 やがてそれに釣られてアリウムも笑顔になり、きゃらきゃらと笑いを溢し始めた。

 

 そんな微笑ましい光景に、アイゼンは目を細めた。

 

「……人間にしか見えんな」

 

 その呟きに、ハイターとヒンメルも黙って頷く。

 そこらにいる村娘にしか見えない……いや、それにしては見目麗し過ぎるが。

 

「……誕生日、か。よし、あの子の初めての誕生日、俺なりに祝ってやるとしよう」

 

「お、アイゼンの誕生日祝いと言えば……」

 

「アレ、ですね」

 

 キラリ、ハイターの眼鏡が光った。

 

「ああ、旅してた時以来だな」

 

 アイゼンは懐かしさを感じながら、楽しそうに目を細めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっきなはんばーぐ……」

 

「話は聞いてる。歯が無くても食べれるくらいに柔らかくしてある」

 

「あ、ありがと……ございます」

 

「良い。お前は頑張った。頑張った者は皆戦士だ。

 頑張りは労られるべきだ。存分に食べてくれ」

 

「いただき、ます」

 

「……アリウム、と言ったか」

 

「はい……?」

 

「誕生日、おめでとう」

 

「……!うん、うん……ありがとう」

 

 ポカポカとした思いに胸が暖かくなる。

 気付けば微笑みを浮かべていて、アリウムは自然と感謝の言葉を口にしていた。

 

「「わははははは!!!」」

 

 アイゼンの備蓄の酒を、全て飲み干す勢いで飲み続ける酒飲み二人を意識から外し、アリウムは目の前でじゅうじゅうと音をたてる肉塊、巨大なハンバーグを見下ろす。

 フォークを突き刺すとほぼ抵抗もなくめり込み、ナイフは力もいれずに肉を分断していく。

 溢れる肉汁が食欲をそそり、アリウムの喉が鳴った。

 美味しそうなそれを頬張り、言われた通りのその柔らかさに目尻が下がる。

 

「おいひぃ~!」

 

 たまらず飛び出した言葉に、アイゼンは嬉しそうに目を細めた。

 

「そうか、それは良かった……良かったなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[魔法使いとの喧嘩]

 

「んぎぎぎぎぎぎ!」

 

「うぐぐぐぐぐぐ!」

 

 アリウムと、白い髪をツインテールにしたエルフが、互いの頬を引っ張りあっている。

 互いに見目麗しい筈の顔は歪み、髪も服装も乱れ、みっともない。

 やがて同時にその手が外れ、少し離れた、けれど目と鼻の先で二人は睨み合う。

 

「この……貧乳エルフ!」

 

「貧っ……ヒンメルはよく私の胸を見てた!お前なんか無駄チチ魔族だろう!」

 

「うぐっ」

 

 飛び火して胸を押さえる男が一人。

 

「無駄じゃないもん!ユーリいっつも楽しそうに揉んでるもん!」

 

「ふぐっ」

 

 更にもう一人。

 

「フリーレンのバーカ!」

 

「うるさい!バカって言うほうがバカなんだ!」

 

「フリーレンもバカって言ってる!やっぱバカ!」

 

「お互い様でしょ!バーカバーカ!」

 

「フーッ!」

 

「シャーッ!」

 

 子供のような語彙で罵りあい、猫のように威嚇しあい、取っ組み合いの喧嘩を始める二人。

 そんな二人を、呆れたように、けれど微笑みを浮かべて、ヒンメル達は見守っていた。

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