久々で色々と拙いところはあるでしょうがごゆるりと
0 プロローグ
いきなりだが、俺は失血死しそうになっている。
「……意外とやるじゃないか。さっきの姉弟術師のようにさ」
「けっ!……嫌みか?」
地下鉄の線路上で俺は大量の血を流しながらも眼前の敵を見据える。目の前にいるのは史上最悪の糞呪詛師、夏油傑。今となっては死んでいるはずの人間だ。
だというのに、俺はこうしてこいつと戦い敗れている。多くの血を流し今にも死を迎えようとしている。何とも度し難い状況だ。
「ゲフッ……、お、お前は五条先生に看取られたんじゃないのか!?」
「つまらないことを聞くんだね。悟も親友にとどめを刺すのをためらったのかな?急所を外して命からがら逃げ延びたさ」
俺の問いにニタリと嫌らしい笑みを浮かべながら答える。一番の障害である五条先生が封印されてご満悦だからなのかその笑みは気味の悪さすら感じるほどだ。
絶対に嘘だ。俺にはそうとしか思えない。だって、だって……。あの時、五条先生は……。
『五条先生……夏油さんはどうなりましたか?』
『ん?……遠慮がないね~、君も』
俺がまだ高専に入学する前にあった一大事件、百鬼夜行があった後に何気なく聞いてしまった。今にして思えば酷いことをしてしまったと思っている。
それでも気になってしまうのだ。学生時代に天上天下唯我独尊と言わんばかりのハチャメチャに暴れ回った俺の、俺の……。
憧れの二人の最期を――。
『――お別れをしてきたよ』
『そう……ですか……』
俺は忘れない。あの時の五条先生の顔を。どこか悲しそうな一人の男の顔を――。
「さて、私は忙しいんだ。これにて失礼させて貰うよ」
あの時の光景に思いを馳せているとそれを遮るかのように夏油の声が聞こえてきた。もう息絶え絶えな自分には声を聞くだけで精一杯だ。もう助かることはない。既に多くの血が流れている。
出来ることと言えば少しでも長生きするために動かないこと。あるいは――。
――
「ハァ……、ハァ……。最期に……一つだけ聞きたいことがあるけどいいか?」
「何かな?」
最期に出来ることをするために残っている気力を振り絞り言葉を紡ぐ。少しでも奴を足止めするために。今から放つ一撃を当ててこいつを仕留めるために。
夏油はその場で足を止めこちらを見据える。余裕綽々としており、勝者の特権と言わんばかりに俺を見下していた。その羨ましいほどの塩顔で突っ立っていろ。燃やしてやる。
「お前は何者だ?」
「……質問の意図がわからないね」
「わかんねえか?お前は夏油傑じゃねえだろって言ってんだ」
「――へぇ?」
俺は右手に呪力を集中させながら言葉を必死に紡ぐ。言っている内容は滅茶苦茶なのはこの際どうでもいい。今はありったけを奴にぶつけること以外考えてなんかいられない。
向こうは俺の言っていることに興味を持ったのかより凶悪な笑みを浮かべながらこっちへ近づいて来た。予想以上に言葉が効いていると見える。
「その反応は肯定と受け取ろうか。どこかの誰かさん」
「意外と捨てたもんじゃないね。最近の術師も」
「うわ、マジか。まるで長い時を生き抜いてきたと言わんばかりじゃねえか」
想定以上に効果があるのか、大分長話となっていた。これなら最期の一発を撃つことも問題なく出来る。後は……、打ち切ってしまうだけだ。
「もうその反応で大体察したよ。それじゃあ――
――燃え尽きろ!!!」
右の掌から術式を使用して火炎放射を放つ。これが今の俺に出来る精一杯の一撃。これが通っていなければもうあとは無駄死にするのみ。
放たれた火炎放射は夏油(?)を丸呑みし、燃え上がる。確実に当たったであろう反応だ。
頼むからこれでくたばってくれ!頼む!
「ぎょ、ぎょぇぇ……」
俺のそんな思いも虚しく炎が突然かき消されてしまう。そして、かき消された炎の先から奴は無傷で出てきた。
それと同時に地面にぼとりと落ちて消えていく残穢を感じる。明らかに呪霊と思われるもので、盾にされたのであろうことは想像に難くない。決死の一撃も結末としてはお粗末そのものだった。
「残念だったね。火野浩介」
「ハ、ハハ……。こんちくしょうめっ!!」
もう終わりだ。最期の一撃も難なく防がれて残りの呪力も空。出血多量で死も目前。振り返ると目を逸らしたくなるような惨状だ。
夏油(?)も先程の余裕綽々とした表情は変わらず俺を見下ろしていた。もうトドメの一撃が来るのは時間の問題だった。しかし――。
「ガハッ!」
「うわっ……きたな」
トドメなんて刺されるまでもなく俺は口から大量に吐血する。まるで降参と言わんばかりのタイミングだ。
それと同時に意識も遠のいていく。最期の一撃で搾りカスすらない。言うまでもなくこれから俺は死を迎える。
あぁ、死にたくないな――。
こんなことならもっと遊んでおくんだった。友達と馬鹿なことをやったり、好きな人が出来たらその人に対してなけなしの勇気を振り絞ったりしてみたかった。
呪術師としても一級推薦の真っ最中でこれからって時にこれじゃあやりきれない。俺の人生は何もかも中途半端だ。人としてやりたいことも、呪術師として大成することすら出来やしない。
ふと、途中まで今まで一緒に行動してた仲間のことを思い出す。
虎杖君は大丈夫だろうか。呪術師としては珍しい根明な人で、向こうはどう思っているかわからんけど自慢の友達はこれからどうなるのだろうか。
彼だけじゃない。伏黒君や釘崎さんもこの戦場でどうしているのか。生き抜いてくれたらいいんだけど。3人が死ぬところなんて想像したくないなぁ。
「……」
既に視界も殆どなく見えるものなんてない。ぼやけて見えるのは奴の立ち姿だけだった。死に際で仲間に思い馳せてるときに視界に映ってんじゃねえ。
「お……み。…の……すけ」
奴も何か言ってるのか耳に声が響く。禄に言葉も認識できず何を言っているのかわからない。ただ想像がつくのは嫌な笑みでも浮かべていそうなことだ。
それからはもうただただ黒かった。
例えるなら暗い空間にゆっくりと落ちていくような感覚。落ちていけば行くほど意識は遠くなり思考すら難しくなってくる。
これが死なのだろうか。人の終わりなのだろうか。間違いなく死ぬ身としてはきっとそうなんだろうと不思議と納得がいく。
五条先生も封印され、友達の安否も気になるところだけどどうしようもなくなった自分にはどうすることも出来ない。ひたすら祈り、この落ちていく感覚に身を任せるのみだ。
やがて、俺の意識は完全に途絶え深い眠りについた――。
――はずだった。
「……?……!?!!!???」
ふと目が覚める。もうこの感覚を味わう事なんてないだろうと思っていたのに。気づけば明確に自分の意識は目覚めているではないか。
何かがおかしい。そう考えるほかない。でも一体何が……。
「どういうことだ!?何故俺は生きている!?血も止まってるし……なんか包帯が一杯巻かれてるし……」
思わず大きな声を出さずにはいられなかった。自分の身体がどうなっているかざっくりとだが確認する。
至る所から出血していたはずなのに余すところなく止血され包帯が巻かれている。しかしこれでは失血死は免れないはずである。輸血もされてないと助かるはずは――。
「あ、輸血パック?」
答えはなんてことはなかった。輸血も止血も治療も全部やってくれたと言うことだ。
「マジで?」
「クックック……、目が覚めましたか」
驚いている俺をよそに聞き慣れない声が聞こえてくる。状況からして俺を助けてくれた命の恩人であろうことは想像がつく。
何はともあれ、これでまだ生きてみんなと一緒にいられる。お礼の一つや二つは言わないとな……。
「察するに……あなたが助けてくれたんですね?どうもありが……と……うぇ!?」
なのでまずはお礼を言おうとするのだが、するのだが……。目の前にいる命の恩人?らしき人はどう見ても普通の人間とは呼べない。
なにせ風貌としてはピシッとした綺麗な真っ黒いスーツを着こなすナイスガイと言える感じなのに顔はこれまた真っ黒。あまりにも黒い風貌に対して目玉は白く身体の所々から煙みたいなのが吹き出している。普通の人間の出で立ちではない。
「クックック…さて少しお話を――」
「ピータンみてえな宇宙人がいる!?!?!?」
「クックック……ピータン呼ばわりは酷いですねぇ」
ついつい失礼なことを言ってしまったが、ここから俺の拙く足掻きに満ちた物語は始まる。
今にして思えばこれはきっと――最悪の出会いだ。
黒服って許されない奴だけどなんか面白い人だよね
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