呪いは廻り、神秘は透き通る   作:ソックス

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ようやくFOX小隊が実装されましたね。
ところでウチの作品はSRTの影も形もないようだがどうしようか


96 アリスさんとケイさん

「どこだここ?」

 

 気づけば俺は周りに草木が生えてはいるが、何かしらの設備が整っているであろう部屋にいる。いや、なんで?

 

「鍵と領域内で火力勝負……したはずだよな?あの世か?ここは?」

 

 俺がいた場所はミレニアムの会長、調月リオが作った横領都市エリドゥのはずだ。こんな草木が生えるほど年季の入った廃墟じゃない。いるとしたら炎と鉄塊に塗れた死の大地のはずだ。

 

「……マジか」

 

 どういうことかと思い、周りをキョロキョロ見てみればびっくりする光景を目にした。

 

 中央の大きなベッドのようなものにいつもの天童さんが眠っている。その傍らには"もう1人の"天童さんが眠っている。後者はベッドに寝転がっている天童さんの手をギュッと握りしめていた。まるで入院する姉妹を看護しているかのようにだ。

 

「天童さんが2人……?」

 

 あり得ないはずだ。天童さんは無名の司祭なる者達が作ったこの世界を滅ぼすための兵器。そんなものが2つもあるはずがない。

 

「ん……?ここは……?」

 

 俺が不思議に思っていると後者の天童さんが目を覚ます。天童さんと鍵、同じ身体なため声では判別はつかない。出来れば天童さんの方であって欲しいがどうなるか。

 

「……?なぜここに?ここは王女が眠っていた場所?」

「ハァ……お前さんは鍵の方か。勘弁してくれ……」

 

 残念なことに起きたのは鍵の方だ。赤い眼で寝惚けながら状況を確認している。

 

「!! 火野浩介!あなたが何故ここに!?」

 

 そして俺がいるのに気づいて臨戦態勢を取ろうとする。武器を取ろうと手を伸ばすが彼女の手元には何も無い。

 

「やめとけ、俺もお前も力をだいぶ使っただろ?明らかにおかしい場所にいるんだから無闇な事はよそうぜ」

「貴方は拳銃を持っているじゃないですか。この状況であなたの言うことを信じられるとでも?」

 

 武器がないのだから争いをしないように誘導しようと試みるが、俺だけが持っているのだから信じられるかと突っぱねられる。

 

「あらら、勢いで誤魔化せるかと思ったのに……残念」

「見えるところにあるじゃないですか!刀の方は折ったおかげでないようですが……貴方は拳銃から私ですら大ダメージを受ける弾丸を飛ばせる。上から抑えつけてるようなものでしょう」

 

 冗談を飛ばしておどけて見せるが却って怒らせるだけだった。揶揄うと面白い反応見せてくれそうだな、こいつ。

 因みに自分の拳銃がちゃんといつもの場所にしまってあることを今知った。鍵に言われるまで気にもかけてなかったのは内緒だ。

 

「ムニャ……んん……誰ですか?」

 

 鍵を怒らせてしまったせいで彼女が大声を張り上げってしまった。そのせいで消去法的に俺の知る天童さんが目を覚ます。完全に寝起きだ。

 

「や、久しいね」

 

 天童さんが起きたのを見てついお気楽に声をかけてしまう。

 

「……え?こ、浩介?」

 

 天童さんはどこか怯えたような表情で俺を見ていた。まるで幽霊でも見てしまったかのような反応だ。

 

「ごめんなさい……アリスのせいでモモイは……浩介は……」

 

 彼女にはまだモモイさんと俺に対して罪悪感があるようだ。もし虎杖君が宿儺に身体を使われて同じようなことが起こればどうなっていただろうか。恐らく今の彼女のように自責の念に駆られるだろう。

 

「王女には触れさせませんよ。火野浩介」

 

 俺が何か励ましの言葉をかけてしまう前に鍵が俺と天童さんの間に割って入る。鍵としては天童さんは沈んでいて欲しいはずだ。となれば明らかに精神だけで会話しているこの空間は都合が悪い。

 

「何もしないよ。戦うのは一旦よそうや、ほい」

 

 折角の天童さんの説得チャンスが来たのだ。ここは武力ではなく言葉や行動で勝負したい。だから邪魔な銃は放り投げる。

 カラリと音を立てて床に落ちる銃を見て鍵は驚いた表情を見せる。唯一の武器まで捨ててしまうなんて、と思っているのだろう。

 

「何のつもりです?」

「話をしよう。3人でな」

 

 鍵は恐る恐る俺の行動の意図を尋ねてくる。話をしよう、と返したが信じていないのか警戒心は解けない。

 

「天童さん、最後になるかもしれないから好きなだけお喋りしようぜ。皆んなの元に戻るとか、そういう話は抜きにしよう」

 

 俺は敢えて今回の件を抜きにした話をしようと天童さんに提案する。メンタルケアとして正しいのかは正直わからん。必要なのは本人の活力を取り戻すことだろう。少しでもその助けになって欲しい、そう願って。

 

「何を言い出すかと思えば……諦めたのですか?まあ、あれほどの攻撃はどう見ても王女をころ────ふぎゃっ!? こ、このっ!ひゃっ!?ほっぺをつねらないでください」

「こ、浩介……拳骨にほっぺつねりはちょっと可哀想です」

「本当に優しいな、天童さんは」

 

 鍵は俺が説得なんてしないと実質的に宣言したのを見て少しでも天童さんの心を折るために、さっきの戦闘での俺の攻撃は明らかに殺意があるものだと言おうとしていた。すかさず拳骨してほっぺつねりのコンボで黙らせる。

 天童さんも流石に鍵が言おうとしたことはわかっているはずだ。それでも可哀想、なんて言うんだからちょっと嬉しく思う。やっぱり魔王なんて柄じゃない。

 

「世間話するのにいつまでもこいつを鍵とか寂しい呼び名するのはちょっとな……なんかいい案ないかな?」

「は?何を勝手なことを言ってるんですか」

 

 徹底的に鍵を無視するのもいいが、流石に邪魔過ぎるのでいっそのことこいつも交えて話そう。天童さんを生かすということはどのみち鍵も生かすということだ。鍵だけを都合よく消す方法はないと考えた方がいい。

 目線は天童さんに向ける。侍女に名前をつけるなら王女にやらせた方が良さそうだ。なるべく変な名前だと助かる。二度も俺の刀で刺されたのはちょっとばかり恨みがある。

 

「……ケイ、とかどうでしょう?」

 

 まだらしさを取り戻してないが天童さんが案を出してくれた。天童さん本人も暗い話ばかりしたくないのは一緒らしい。

 

「なんか意味があるの?」

「確かモモイがいまそこにいる"KEY"のデータを見た時に読み方を間違えたんです」

「嘘でしょ……?」

 

 何とか会話にしようと意味を尋ねてみたら思わぬ回答で面食らう。小学生でもわかる英単語を読み間違えたってどういうことだ。ミレニアムの受験はどうなってる?

 

「ぷふっ、なんか元の名前の要素を残しつつ人の名前っぽくする感じで面白そうだ。いいね、本人が気に入れば採用」

「なに貴方が仕切ってるんですか?」

 

 思わず笑ってしまうが良いと思う。鍵もといケイの生まれの要素を残しつつ新しくなるっていうのはRPGでの光堕ちにありそうだ。

 ケイは俺が仕切ってるのが気に食わないのか頬を膨らませながら睨む。俺がつねった方の頬がほんのり赤くなっている。可愛い。

 

「嫌だった?じゃあ俺の案は──」

「ダサそうな名前が飛び出そうなのでやめてください。ケイでも鍵でもご自由に。どうせ意味もなくなります」

 

 ケイが嫌がってるのかと思い、適当な名前の案を出そうとするがダサそうの一言で止められる。そんなあ。

 

「じゃあ、お前の名前は天童ケイだな。名付け親はモモイさんと天童さんね。あ、天童さんだと被るからアリスさんか」

 

 一応形式的にケイの事を天童ケイとして取り扱う、そんな程度の気持ちで彼女の名前を天童ケイとすることにした。見た目的にも双子っぽく見えるし、しっくりくる。

 

「天童、ケイ……」

「わ、私が王女と同じ苗字!?」

 

 2人の反応はある意味理想的だった。アリスさんはポカンとしており、ケイさんは王女と侍女ではなく双子の姉妹みたいな扱いに困惑している。

 

「私に妹……?」

「わ、私が妹ですか!?王女!?」

「ぶふっ」

「こ、こいつ……!笑うな!!」

 

 アリスさんはちょっと嬉しそうにケイさんを妹扱い。ケイさんのツッコミもあって急にそれっぽくなるので思わず笑ってしまう。ケイさんの反応が完全に飲まれてるのはどうかと思うが言うのは野暮だろう。

 

「あはは───────お?アリスさん、良いものあるじゃねえか」

「あれは……プレス◯?」

 

 何とか会話を繋げようと周りを見てみればアリスさんとのコミュニケーションにお誂え向きな物が見つかる。ここは明らかに2人にとって縁のある場所だ。力関係としては本来はアリスさんの方が上と仮定すれば、アリスさん要素としてゲーム機が出てきたのだろう。

 そもそもこの現象が何なのかわからないのだから出たものを利用するしかない。何なら出方がわからん、助けてくれ。

 

「格ゲーだな。三人いるし総当たりやろうぜ」

「そんな遊びに付き合うとでも?」

「なんだ?負けるのが怖いのか?ゲーム"でも"負けたりなんてしたらプライドがへし折れるってか?」

 

 ケイさんはとことん話の腰を折ろうとする。確かにケイさんからすれば付き合う義理はないのだから理解できる。

 とはいえこちらとしては土俵に上がってもらわなければならないので、ちょっとばかり煽ってみる。あたかもさっきの戦いでお前は負けたと言わんばかりの台詞を言ってみる。

 

 

 

「は?負けてませんが?」

 

 ──効果は驚くほどあった。青筋をぴくぴくさせながら拳を強く握っていた。

 

「いいでしょう。その挑発に乗ってあげますとも。現実でもゲームでも完膚なきまで叩き潰してやります!」

 

 なんか心配になるぐらい煽りに弱くないか?この子?

 

 でもまあ、おかけでこいつとのやり取りも有耶無耶に出来た。後は──、

 

 

 

 このキャラでハメ技を仕掛けてやんよ!!これで俺の勝ちだ!!ひゃっひゃっ!

 

 

 

 

 ザシュッ!ズバッ!

 

 

 

『KEI、WIN!!』

 

「なん……だと!?」

 

 なんて思っていた時期が俺にもありました。2本目に至ってはパーフェクト。あれだけ煽ったくせにあまりにもダサ過ぎる。穴があったら入りたい。

 

「ふふん♪どうです?あれだけイキっておいて完封された気持ちは?」

「な、何故だ!?なぜハメ技が通用しない!?」

 

 もう俺も三下が言いそうな台詞しか吐けない。ケイさんは胸を張り、ドヤ顔で俺を見下ろそうとしていた。身長の関係で結局見上げているけど。

 

「あのハメ技は実は抜けられるんですよ。王女だってマスターしてるテクニックですよ」

「はい!そうです!見ててスカッとしました!」

「アリスさん元気そうで何より……」

 

 こんな場にハメ技を仕掛けた俺も悪いけどアリスさん、スカッとしたはマジか。まあ楽しそうだからいいか……。にしても、だ。

 

「ケイさん、詳しいんだな?」

「あ、これはその……王女の記憶でしょう。ええ、そうです!」

 

 俺の知識不足なだけなんだろうけど、ハメ技の抜け道を知っているということはそれなり見ていないとおかしい。ケイさんはその疑問に対してアリスさんの記憶だと言い張っているが目は泳いでいる。

 

「さて、アリスさんに勝てばケイさんがアリスさんに勝たない限り同スコアだ。引き分けに持ち込むとするか」

 

 あまり指摘するのも可哀想なので何も言わない。今は3人でゲームを楽しもうと次の試合に臨む。その結果……。

 

 

 

「アリスの2ー0です!」

 

 ゲームをやっていくうちに少しだけ活力を取り戻したアリスさんが俺達を纏めて薙ぎ倒すこととなった。ケイさんとは実戦経験の差で勝った感じだ。俺は……言うのも憚られる惨状だ。

 

「さて、次は何をしようか……ん?」

 

 取り敢えず、ゲームをローテしてアリスさんの気持ちを上向きにしようと踠こうとするが身体に違和感を覚える。

 

 身体が透け始めていたのだ。

 

 

 

「こ、浩介!!」

 

 俺が透け始めているのに気づいたアリスさんは慌て出す。良い調子だったのにまた表情が曇り出した。

 

「そんな……アリスはまだ浩介と……皆んなと一緒にいたい……!」

「!!」

 

 だが少なからず効果はあったらしい。皆んなと一緒にいたいという本音であろう言葉を引き出せたのは上出来だ。

 アリスさんは俺が天に召されると思っているのだろうが、そうではないと俺は確信している。

 

 

 今、ものすごい痛みが俺を襲っている。危ない状態ではあるかもしれないが確かに生の実感があるのだ。反転術式で何とか繋げる自信はある。

 

「その言葉を待ってた。大丈夫だ、俺は生きてる」

「本当に……?すごく顔色が悪いです」

「まあ、今になって凄い痛みが襲ってきてるからな。うぐっ!?」

 

 アリスさんにとっては何も安心できないだろうが俺は生きている。アリスさんもケイさんもここにいるということは、現実でケイさんにトドメを刺された可能性は低い。

 

「皆んなと一緒にいたい、俺達はそれを聞きたくてここまで来たんだ。もう少ししたらお客さんがくるからさ。自分の気持ちをぶつけてこいよ」

「で、でもアリスは魔王で……」

「魔王なのか勇者なのかは君が決めたっていいじゃないか。一緒にいたいという気持ちがあるならきっとどっちだろうと受け止めてくれる」

 

 無責任だろうか。アリスさんは苦しんでいるというのに。呪術師がこんな状況で言う言葉はもしかしたら彼女を永遠に苦しめる呪いになるかもしれない。

 でも、それで彼女に少しでも生きる気力が湧くのなら、仲間と共に歩めるのなら敢えて呪い(まじない)をかけよう。

 

「信じてあげてほしいんだ、君の仲間を」

 

 無責任に呪いの言葉をかけた後、俺の視界は暗くなり現実へと引き戻される。最後に見たのは何かを決意したアリスさんの顔だった。

 




ケイちゃんの呼び名を使いたかったし、宿儺のちょっとしたオマージュもやりたかった
ワシの実力が足りぬ!

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