申し訳ありません
「……」
「……」
砂狼さんと俺は睨み合い、間合いを測っていた。砂狼さんと直接対決したのはカイザー基地でホムラとして戦った時以来だ。あの時と今はまるで違う。
「砂狼さん。どうしたんだ?その姿?……いや、その力……まるで呪術師だ」
「あなたには関係ないこと。ゲマトリアに与する外道」
「そう言われる自覚はあるけど……正直へこむな、それ」
彼女から感じるのは"恐怖"。どう見ても呪術師と対面しているようにしか見えない。乙骨先輩ほど圧はないが凄まじい量の恐怖だ。
それにしてもゲマトリアに与する外道、か……。もっともな評価だ。ゲマトリアに属したつもりはないが外野が見たら属してると見られるのも仕方ない。
「目的はなんだ」
力のことは聞けそうにないので取り敢えず目的は何か探ることにする。何も答えてくれないのはわかってる。だが質問に対して答えなくても顔には少しぐらい出るものだ。今の砂狼さんの顔は──。
「……黙秘」
どこか浮かない顔をしていた。この襲撃は彼女にとっても本意ではないということだろうか。いくら外道でも手に掛けるのはいい気がしないだけか。
ただ、そうなると何故襲撃してきたのか。今の砂狼さんからは激しい憎悪をまるで感じない。諦観していると感じるほどだ。
「じゃあ──」
「あなた達はここで始末する」
砂狼さんは俺が更に質問しようとするのを遮るかのように銃を構え発砲する。いつも使っていた白いARではなく黒いAR。彼女の服装も相まって白から黒へならぬ神秘から恐怖への転換ぶりを感じる。
「全員伏せろ!」
砂狼さんの発砲を避けながらゲマトリアの面々に呼びかける。戦闘に巻き込まれたら命を失いかねない連中だ。いくら酷い奴らとはいえこんな死に方されるのは目覚めが悪い。
「このっ……!」
反撃に"焔"を撃ち込むが砂狼さんは難なくかわす。連射しても空を切るだけで無意味に終わる。
「その技はもう見てる」
「あっ……そっ!!」
銃撃戦をしても不利なだけだ。拳銃をしまってインファイトに持ち込むためにジェット噴射しながら近づく。中々いい体術をしてるが勝つ自信はある。
銃撃の雨を掻い潜り、打撃の射程圏内に入る。まずは蹴りから仕掛ける。まともに決まれば肋粉砕コースだ。
「まともに決まれば……ね」
「ちっ!」
だが実際は腕でガードされ、大したダメージは与えられない。それどころか銃口を向けられそうになってピンチだ。
しかし、今は俺の足が届くぐらい近くにいるのだ。ここは敢えて接近する。嫌がって距離を取っても狙いを定められて蜂の巣になるだけだ。自分の得意距離を押し付けるに限る。
今の間合いを活かすためにも拳を出し続ける。なるべく最小限の振りで攻撃し、大振りは極力しない。下手な大振りは避けられてしまったら距離を取られて銃弾の雨に晒されるだけだ。
ただ不思議に思うことが一つある。
「どうしたの?私に擦り傷すらつけられてないけど?」
コンパクトなラッシュを砂狼さんは難なくかわしている。センスが良いとはいえあまりにも難なく、だ。まるで知っていると言わんばかりだ。
「随分と俺を研究してきたようだな?アビドスの皆んなと一緒に上手くパターン分けでもしたのか?」
「っ……黙れ」
明らかに事前に知っているからこそ出来る動きだ。まさかアビドスが俺に対してここまで執念を燃やすとは思いもしなかったが。
どうやら図星なのか険しい顔して大振りの殴打を繰り出す。先に痺れを切らしたのは向こうらしい。
「消え……しまっ──」
今、砂狼さんの視界から俺は消えているだろう。実際は下にいるだけなのだが。今から繰り出すのは虎杖くんが得意とする躰道の技。
「卍蹴り……どうよ?」
砂狼さんの顔にクリーンヒットする。彼女からすれば急に横から顔面に蹴りがくるのは相当堪えるはずだ。
相当ダメージが入ったのか口から血を出し、それを不快そうな顔しながらペッと吐き出す。明らかに怒りに滲んだ顔をしている。
──ブロロ……。
「このまま……ん?」
押し切ろうと呪力を漲らせるが、変な音がするので気になってその方向に目を向ける。ブロロ……と鳴るエンジンの音、それに何かが空を切るような音がする。
「全部使って相手してあげる」
「ヘリ!?」
轟音の正体は黒いヘリ。機関銃をこちらに向けて今にも撃とうとしている。それに砂狼さんは黒いARから見覚えのあるミニガンへと持ちかえる。あれはどうみても十六夜さんの愛銃だ。感じる神秘も十六夜さんのそれだ。
「浩介さん!こちらを遮蔽に!」
「いや、そこにいるんだ!俺までそっちに行ったら集中砲火されて全滅だ!」
「何を言っている!?貴殿もただではすまぬぞ!」
流石に不味い状況になったので黒服が会議の机を倒して遮蔽にしていた。ゲマトリアの面々もすぐにそこに隠れる。俺も入れと呼ばれるが行けそうもない。あれほどの火力を相手にそんな薄い遮蔽を使ったところで蜂の巣にされるだけ。
「こっちに来い!砂狼シロコ!」
黒服達には逃げてもらわないといけない。俺が囮になるほかないだろう。拳銃を抜いて牽制の発砲を放つ。少しでも気を引けたら大儲けだ。
「なら望み通りあなたから死んでもらう」
砂狼さんは俺の挑発に敢えて乗り、恐ろしい弾幕が展開される。避け切るのは不可能。多少の被弾は覚悟するしかない。
全力で走り、俺が通った道は銃弾で無数の穴が開く。勝負はリロードの瞬間。弾幕が止まる一瞬に全てを決めなくてはならない。
「ぐっ……!」
脚、腹、腕に彼女の恐怖が籠った弾丸がヒットする。弾は貫通して身体中に激痛が走る。だがその痛みで止まるわけにはいかない。
「……ちっ」
勝負の瞬間は早くも訪れる。ヘリの機関銃、砂狼さんが持つミニガンともに弾切れだ。あの重いミニガンから黒いARに持ち帰るであろうその一瞬の隙を逃すわけにはいかない。
「今だ!」
足からジェット噴射で砂狼さんに急接近する。先程と同様にインファイトで銃の間合いを潰す。持ち替えて構えて俺に撃つには時間が足りないはずだ。ここを逃すと勝機は薄いだろう。
「おおおおおおおっ!!!」
突進の勢いを乗せて拳を突き出す。狙いは鳩尾。可能でればこの一撃で気絶させることを狙う。
ガキィィィィン……!!
「それは……」
「ん。ホシノ先輩の盾。そして……これはお返し」
バァン!
「がっ……はっ……」
俺の呪力ガードを突き破り、散弾銃の弾が直撃する。盾を持たない方の手で白い散弾銃を持っており、盾の横から俺を撃ったのだ。そして、あの散弾銃は紛れもなく小鳥遊ホシノのもの。
戦法までまるで同じ。思えば十六夜さんのミニガンを取り出した時から警戒すべきだった。あのヘリも俺が知らないだけでアビドスが使用するものなのだろう。
膝をついて倒れたところに彼女の足が勢いよく迫ってきていた。彼女の蹴りが俺の顔にクリーンヒットする。
「ぶっ……」
生半可な呪術師よりも強力な蹴りは俺を怯ませるのに充分だ。東堂先輩より痛いかもしれない。そして相手のレベルを考えればこのぐらいの隙で次の攻撃の準備は整う。
「ふぅ……」
砂狼さんは呼吸を整え力を溜める。それに合わせて彼女の恐怖が燃え上がるように揺らぐ。自分に対してバフを入れているような感じだ。瞬間的に爆発的な呪力強化をするようなものだろうか。
続いて黒くなっているが愛用のドローンを起動、右手には手榴弾。今からこれで爆撃すると予告しているようなものだった。
「一旦眠って」
ドローンからは大量の小型ミサイル、砂狼さんの手の手榴弾は放物線を描き放り投げられる。逃げる時間はない。術式を使用して迎撃するほかない。
「おおおお!!!」
右手から炎を出して迎撃する。俺の炎によって本来の狙いより遠くで起爆した火薬は勢いよく爆ぜる。呪いの炎を傘に少しでも爆風や飛んでくるものから防御するが完全には防げない。部屋から弾き出される。
「ぐっ……がっ……ごぼっ!」
爆風に飛ばされ落とされるように着地した俺は黒服達がいた方に視線を向ける。何とか逃げようと走っている。しかしこのままだと彼女に追いつかれ無情にも殺されるだろう。
この状態だとすぐに助けに向かうことはできない。火傷は別としてそのほかの傷を反転術式で治すには時間が足りない。腹に細い建材が刺さり赤い血が流れている。呪術師として鍛えてきた経験だけが俺を生かしてくれているが痛いものは痛い。
「……これで私を屠れる可能性は潰えた。後はあなた達」
俺がしばらく動けないのをいいことに彼女は黒服達に追いつき銃口を向ける。絶体絶命のピンチだ。
「……なるほど。"色彩"は既に"名もなき神"と接触した後でしたか。これは私の不手際ですね」
「そして狼の神秘の裏側は────そうか」
「アヌビス、ですね。命あるものを常世へと導く存在」
アヌビス、そう呼ばれた少女は彼等が言葉を紡ぎ終えたのと同時に発砲する。3人はなす術もなく凶弾の餌食となる。それを俺は見ていることしかできなかった。
この時のスレ民はゲマトリア全滅!?って言って驚愕しそう
更新時間はいつが良いでしょうか?
-
22時〜0時ごろ
-
7時ごろ
-
19時ごろ