呪いは廻り、神秘は透き通る   作:ソックス

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ゲヘナ編は皆さん見ましたか?
先の展開がすごく気になります。


104 任された

 野鎌達の襲撃を何とか回避したが、問題は山積みだ。そもそも黒服達と一緒に色彩に対抗しようとしていたというのに、呪霊にまで絡まれたらほぼ確実に破滅する。縛りを結んででも衝突を回避出来たのは想像以上に大きいだろう。

 だからまずは──。

 

 

「赤い……空……」

 

 目に悪い真っ赤な空を元の澄んだ青に戻さなくてはならない。赤い空はまるでこれから血が流れると暗示しているかのように不気味だ。呪いの相手を今までしてきたがここまで世界に干渉するものは初めて見る。こういうのは五条悟ですら出来ないだろう。

 

『呪霊の襲撃があったんだよね!?そっちは大丈夫!?』

「そっちこそカイザーPMCと一戦交えたんだって?ヒュー!やるねえ!」

 

 色彩の攻略には先生の力が必要だ。だからまずはシャーレと何としてでも連絡を……と思ったらもう先生達は何とかしたらしい。そこまで練度が高いわけではないだろう生徒達を主体にPMCを押し返したって言うんだから末恐ろしい。中核に強い人がいたのだろうがそれだけで何とかなる程戦いは甘くない。

 だというのにこうして通信して情報共有までしてくるのだからなんだかんだバイタリティーの高い人だ。あの人に休みはあるのか。

 因みに先生と通信してるのは俺、空崎委員長、羽沼議長の3人だ。俺は流石に場違いだと思うんだけど。

 

「キシシッ!先生、ご無事で何よりだ。連邦生徒会の有象無象など介さず直接先生とやり取りするのがやっぱり手っ取り早い」

「ハァ……今はアコがゲヘナを代表して司令側に向かったのだから貴女がその分を頑張ってくれると嬉しいのだけれど……。────で、先生。作戦の説明をお願い出来る?」

『任せて。今の状況は──』

 

 先生による現状の共有が始まる。今までの経緯はそれはそれは壮絶だった。

 連邦生徒会主体のゲヘナトリニティを招いて色彩の対抗を始めようと思えば先生が誘拐され、会議は空中分解。そこからヴァルキューレやらヘルメット団やらと共にあれよあれよと撃破。

 今は各校から先生が厳選したブレーン担当がシャーレに集まって対策会議を開いているとのこと。シスターフッドの記録、ミレニアムの観測データ、百鬼夜行の大予言者なる存在……あまりにもぶっ飛んでいるが規模の大きさを考えると妥当か。

 

 ていうかこの6つのタワーってなんやねん。何で人々を狂気に陥れる光なんか放ってるんや。お?へし折るぞ。まあそのための作戦なんだけども。

 それにしても人々を狂気に陥れる……か。これは後々覚悟しないといけないな。

 

 

「放っておけば例のタワーから照射される怪光が2週間ほどで臨界点に達してキヴォトス全土に広がり……」

「狂気で染められやがて終焉を迎える──」

 

 これはボチボチだとか言ってられない。渋谷での呪術テロよりも酷いものだ。こっちの世界由来のものって俺達の世界のそれより恐ろしいのばっかりだ。

 

『ゲヘナには無数の兵力が進軍している。まずはこちらの防衛をしないといけない。アコには一旦そちらの指揮に戻ってもらうつもりだよ』

「本当に助かるわ。アコがいるのといないのでは違うから」

「しかし、これが敵兵か?何というか……不気味な連中だな」

 

 ゲヘナにはタワーから発生した兵力が進軍しているらしい。映像を見せてもらうとミメシスであろうオートマタ兵、Divi:sionの兵隊、それに……。

 

「……マジか。よりにもよって奴までいるとはな」

『……やっぱり知ってるんだね?この敵、いや……呪霊を」

 

 映像に映っていた敵兵の中に見知ったやつがいたのだ。先生も兵隊の中に1匹だけ混ざるコイツを見て俺に当たりをつけていたようだ。

 

『申し訳ないんだけどヒナか浩介のどちらかはタワーの攻略に回って欲しいんだ。どうしてもタワー攻略に戦力が欲しくてね』

 

 ここで先生は選択を迫る。理由としては単純で戦力の徴収。事態が事態なので強力なユニットはいた方がいいのは当然。しかし、ゲヘナに迫る戦力を考えると2人とも向かうのはあり得ない。どちらかが残る必要がある。

 

「俺が残るべきか?いや、指揮系統を考えると……空崎委員長が──」

 

 

 

「私がタワーの攻略に向かうわ。先生」

「え?」

 

 俺が悩んでいたところに空崎委員長がアッサリとタワー攻略の参加を表明する。確かにありがたいが不安はないのだろうか。

 

「普段からヒナ抜きの風紀委員など大したことないと言われてるんだ。このくらいやってもらわねば万魔殿としては困る。ヒナ、風紀委員の訓練に抜かりはないな?」

「問題ないわ。私は皆んなを信じる。それに……この呪霊を倒すのは私より浩介が適任。他の選択肢はそもそもないわ」

『だってさ。浩介、頼めるかい?』

 

 気付けば俺がゲヘナに残る事で満場一致となる。それにしても羽沼議長と空崎委員長は普段からバチバチしてると思っていたが、今回はどこか違うように感じた。羽沼議長が普段風紀委員会を虐めようとする構図にまるで当てはまらない。

 ところで訓練に問題はないか、なんて言ってるが事あるごとに予算削ったり茶々入れたりしてるからそれ議長が言える事なのかな?

 

 まあ、何はともあれ。

 

 

「任された」

 

 俺は任された仕事を全うするだけだ。

 

 

 

 

***************

 

 

 

 

「────てわけで空崎委員長じゃなく俺が残ることになりました」

『皆さん、委員長なしでも戦えると信じて託されたのです。気張っていきましょう』

 

 そして現在、俺はゲヘナの校舎前に整列する風紀委員会の前に立つ。壇上に上がりことの経緯を説明することになり、不足分は甘雨行政官が補ってくれた。

 

「委員長なしでこの軍勢を……!?」

「正気!?」

「大丈夫なのかな……」

 

 風紀委員会の面々は空崎委員長が抜けたのがショックなのか不安の声を出す者がいた。数こそ多いわけではなさそうだが、大きな集団にヒビを入れる波紋としては十分だ。

 それでも揺らがないのは主にチナツと銀鏡先輩、3年生の面々だった。流石というべきか。

 

『……皆さん、我々はゲヘナ風紀委員会です。ヒナ委員長とその他、ではなくヒナ委員長も含めた我々がゲヘナ風紀委員会なのです。この意味がわかりますか?』

 

 不安に思う面々を見ていつもより険しい顔をした天雨行政官が言葉を投げかける。空崎委員長とその他ではない、この意味は自分にとっても耳が痛い。

 最強が居てあの人一人でいいんじゃないか、そう思ってしまった経験は嫌というほどある。そう思った俺達呪術師は渋谷でどうなったか。五条先生一人に依存してどれだけ痛い目にあったのか。身を持って体験している。

 

『ヒナ委員長が抜けたから何だっていうんです!?我々は信じて託されたのです!堂々と勝ってヒナ委員長の帰還をお迎えするぐらいの度量を持ちなさい!』

 

「アコちゃん……」

「アコ行政官……」

 

 天雨行政官のスピーチに一同静まり返る。気まずさなどはカケラもなく固唾を飲み覚悟を少しだけでも決めるものが一人、また一人と出始める。ここが正念場なのだと頭ではなく心で理解したようだ。

 

 ところで羽沼議長はどちらへ?こんな時でも茶々を入れそうなものなのにそれがない。どこにいるのか探すために壇上から降りてキョロキョロ見渡すが見当たらない。

 

「マコトちゃんなら大事な用があるって言ってどこかに言ったわ」

「イロハちゃんとイブキちゃんもいませんね!着いて行ったのでしょうか?」

「うお!?……なんだ京極先輩と元宮先輩か。……二人の話だとゲヘナ2トップと銀鏡先輩と同じく貴重な戦力である棗先輩もいないのか。いくら何でも上位層を抜きすぎだろ」

「ヒナちゃんが貴方に任せたのでしょう?なら問題はないわ。マコトちゃんもそれで遠慮なく行ったんだろうしね」

 

 羽沼議長の代わりに見つかるのは万魔殿の議員達。それも残ってるのはこの二人だけらしい。せめて棗先輩は残して欲しいんだけどな。

 

「やれやれ……羽沼議長も困った人だ。その気になればお一人でも十分でしょうに」

「ふふっ、マコトちゃんは本気になると確かに凄いわ。でも、これでいいのよ。ゲヘナの力は誰か一人や二人で全てを引っ張って発揮するものじゃないわ」

「自由と混沌、ゲヘナの校風ですね!」

 

 ついついお小言が出てしまうが二人はそんなことなどどこ吹く風。決してヒャッハーって言いながら暴れるわけでもなく、寧ろかなり賢い部類のこの二人もこれなのだ。

 どうせ目的は同じなのだ。何もかも好き勝手するわけでもないし、なんだかんだ言って俺もここが気に入っている。第二の故郷としては悪くないぐらいには。

 

「ふっ……ははっ!それを言われたら仕方ない。じゃあ俺はデカい爆弾を処理するんで残りの雑魚はお任せしてもいいです?」

「おぉ!漫画の主人公みたいにキメますね!はい、では記念に一枚!」

「作戦はとっくに決まってるし、貴方の邪魔にはならないわ。好きなだけ暴れてらっしゃい。それとも……不安なら掛けてあげましょうか?あなたは段々万魔殿に忠誠を誓いたくな〜る……!」

「誓いたくな〜る!」

 

 なんだかんだこの人達なら上手くやれるはずだ。俺は最大の障害を取り除くことだけ考えればいい。

 はずなんだけど……その催眠術もどきは一体何なんだろうか。さり気なく元宮先輩も悪ノリしてくるのはやめてくれ。笑いそうになる。

 

 

 こんな馬鹿やれる時間を守るためにも負けられない。野鎌の言う荒野などここには似合わない。銃撃が飛び交い、治安が最悪と言われようと我が道を行くのがゲヘナだ。

 

「さて、向かうとするか。……ん?」

 

 ゲヘナの校舎を出ようと目的地に向かう。道中にチナツが待っていたと言わんばかりに立っていた。今は作戦のために戦列に加わって動かないといけないだろうにここにいるとは思いもしなかった。

 

「浩介、ご武運を」

 

 チナツはそれだけ言って移動を始めた風紀委員会に合流する。自身の仕事を果たしに向かったのだ。

 

 

「──背中は任せたぜ。チナツ」

 

 風紀委員会に合流する彼女の背を見ながらついそう呟いた。それがハッキリと聞こえたのかチナツは一瞬止まって親指を立てたサムズアップをこちらにわかる様に向けてくれた。任された、そう言わんばかりに。

 

 

「──よし!今度こそ俺一人で倒してやる。しかし……お前まで複製されるとは思いもしなかったよ──

 

 

 

 

 

 

 ────楼閣」




それはそれとしてオデュッセイアの新生徒ラッシュがたまりませんなぁ。
気付けば12000円と石が消えてます。

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