呪いは廻り、神秘は透き通る   作:ソックス

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かんしゃあ!


10 アビドスとブラックマーケット③

ドカンっ!!

 

 派手な爆発音が銀行に響き渡る。それと同時に周りの管制システムもダウンする。その流れはとても流麗でほれぼれとするほどだ。やっていることを考えなければだが。

 

「全員その場に伏せなさい!持っている武器は全て捨てて!」

「言うこと聞かないと痛い目にあいますよ⭐︎」

 

 そして、このノリである。こいつら楽しんでないか?

 

「非常事態発生!……なっ、外部との連絡が取れない!?」

 

 一人の銀行員が冷静にマニュアル通りの対応をしようとしたのだろう。非常用の通信機器を触っているがどれも動かない。外部との連絡が取れないと気づくや否やさーっと青ざめた表情をしていた。

 そんな銀行員にニコニコとした顔で小鳥遊さんは近寄る。いい顔して額にショットガンを押し付ける。

 

「残念だったねえ……外部との連絡は切っておいたよ」

 

 なんか怖くね?

 

「ほら、そこ!伏せてないと大変な目に合うよ!」

 

 続いて黒見さんが銃口を向けて伏せるように促す。小鳥遊さんの後だと寧ろ温情を感じるのは気のせいだろうか。それでも暴走気味ではある。

 

「うへ〜、ここまでは計画通り!さあ、No.5!リーダーファウスト様!ご命令を!」

 

 暴走はまだまだ続く。今度は阿慈谷さんが適当な偽名をつけられた挙句リーダーにまで任命されていた。酷くね?

 

「え!?ファウストって私ですか!?それにリーダーですか!?」

「はい!リーダーです!ボスです!因みに私は──

 

 

 

 ──覆面水着団のクリスティーナだお♣︎」

「ぶっ!?」

 

 思わず吹き出してしまった。情報過多にもほどがある。なんで水着なんだ。覆面はわかるが水着はどこから出てきた。

 黒見さんがダサいと直球な感想を言って十六夜さんが少し落ち込んだのは気にしないでおこう。

 

「ファウストちゃんは怒ると怖いよ〜」

「さあ、ファウスト様御用命を!」

 

 俺も適当に乗っかるか。乗せられた船を降りる事は叶わぬようなら少しでも矛先を阿慈谷さんに向けさせるイタズラでもすることにした。

 

「えっ!?じ、じゃあ……み、皆さん手を頭の後ろにして伏せてください」

 

 観念したのかしょぼくれた感じで指示を出す。そのせいか銀行全体に指示が伝わっていないようで怯えながらも指示通りにするものは少ない。

 

「聞こえたな!?手を頭の後ろにして伏せろ!!さもなくばゴルゴダの丘で八つ裂きにするとのことだ!!!わかったな!?」

「私そこまで言ってません〜!!!!!!ていうか(私の学校に)喧嘩を売ってませんか!?」

「知らんな」

 

 

 

 阿慈谷さんの悲鳴が聞こえるような気がするが、聞かなかったことにしよう。俺は周りを見渡すと指示に従っている連中に見覚えのある人達がいるのを発見した。

 

(便利屋の皆さんがいる……)

 

 見つけたのは社長を除いた3人だった。驚いた顔でこっちを見ている。俺に気づいたのだろうか。早期決着しないとまずいかもしれない。

 

「監視カメラの死角、警備員の動線、銀行内の構造、全て頭に入っている。そこのあなた、無駄な抵抗はせずにこのバッグに今日の集金記録を全部詰めなさい」

 

 そんな中、砂狼さんはサラリと恐ろしいことを口にして銀行員を脅していた。いくらなんでもスムーズすぎる。普段からイメージできてないとこうもいかないのではないか。

 

「ひぃいいい!?なんでも差し出すので命だけはっ!!!!」

 

 銀行員に至っては恐怖で大パニックだ。可哀想だが仕方ない。

 

「早く書類を──」

「これもこれもお望みの集金記録も全部詰めました!!!」

 

 砂狼さんが何かを言い切る前に滅茶苦茶手早く書類と物凄い額のお金が詰め込まれた。あの人も手際いいな。慌ててるのに金の扱いに淀みがない。

 目的のもの以上のものまで詰め込まれたせいか砂狼さんはたじろいでいる。必要なのは集金記録で金ではない。お金も一応必要ではあるが、余計なお金はハッキリ言って邪魔だろう。

 

「あの、シロ、ブルー先輩!ブツは手に入った!?」

「あ、う、うん。確保した」

「それじゃー逃げるよ!全員撤収!」

「アディオス⭐︎」

「け、怪我人がいないようですし……すみませんでした!さよなら!!」

「お邪魔しましたー」

 

 それぞれが仕事を完了したのを確認したら一目散に走り出す。俺も遅れまいと走っていき、銀行から脱出する。盗んで終わりではない。盗んで逃げるまでが銀行強盗なのだ。

 

(俺、何やってんだろ……)

 

 小鳥遊さんと砂狼さんと並走しながら俺は嘆くしかできなかった。

 

 

────────

 

 

 

 

『封鎖地点を突破、この先は安全です』

 

 結局あれから追手を振り切ってブラックマーケットから脱出した。黒服にはなんて言おうか。あいつが困るのは構わないが俺も困りそうだ。

 あくまで目的は火薬なんかじゃなく呪霊がいるかの確認。あわよくばそのまま祓うことだ。黒服はそのデータ収集といったところだ。現在あいつとの通信は仮面をつけてないので繋がっていない。

 

 どうしようか、なんて考えていたらちょっとしたトラブルが発生した。

 

 

「……へ?なんじゃこりゃ!?カバンの中に……札束が!?」

 

 珍しく小鳥遊さんが本気で慌てたような驚いたような声をあげる。無理もない話だ。あくまで集金記録を欲していたのに余計な大金まで来たらその反応は当然だ。

 

 やいのやいの騒いでいるが、砂狼さんは素直に銀行員さんが余計に溜め込んだものと説明していた。この状況は嫌な予感しかしない。

 

「やったあ!運びましょ!」

 

 それはこういう考えを持つ人が当然出てくるからだ。人によって理由は色々とあるが。大金の魔力の恐ろしさは嫌なものだ。

 

『まさか!?そのお金を使うつもりですか!?』

「なによ、アヤネちゃん。借金を返さなきゃ」

 

 中には冷静に止めようとする者もいるが、黒見さんは止まらない。理由は借金返済、愛校精神からくるものだろうか。

 

『そんなことしたら本当に犯罪だよ!?』

「なによ!犯罪に使われるぐらいならいっそ……!」

「私達の借金返済に使った方が……」

 

 気づけばまたやいのやいの騒ぎ出す。片やそんなことをしたら本当に犯罪になってしまう、と言うもの。片や犯罪に使われるぐらいなら自分達が使うんだ、と主張するもの。見てていい気分はしない。

 

「シロコちゃんはどう思う?」

「ん、そんなの私の考えを言うまでもない。ホシノ先輩が反対するだろうから」

「さっすがー。シロコちゃんはおじさんのことわかってるねー」

 

 だが、そんな流れも小鳥遊さんの鶴の一声で収まり始める。

 

 

「で、でも……」

「セリカちゃん。今回は犯罪資金だからまだいいとしてもね。その次はどうするの?さらに次は?」

「……」

 

 少しはいい傾向になりそうだ。最低限の着地は出来そうでホッとした。

 

「こんな方法に慣れちゃうと……ゆくゆくは平気で同じ事をすることになるよ」

「……」

「そしたら、この先またピンチになったら"仕方ないよね"って言ってやっちゃいけないことに手を出すと思う」

 

 耳が痛い話である。呪術界隈でも似たようなことはあるだろう。こちとら負の感情を元にする力を使う分、それがわかりやすく敵となって出てくるだろう。

 

(呪詛師の人達もこういう感じで人を殺めていったりしたのかな……)

 

 結局小鳥遊さんの説得で全員がお金を廃棄することで結論づけた。なんだかんだ言って小鳥遊さんは年長としての格の高さを感じる。書類だけを回収して帰ろうとした。

 

「では、私が適当に処理しますね……あれ?」

 

 

〜♪〜♪*1

 

 

「あん?なんで俺のスマホが……あいつ勝手に設定変えやがったな!?」

「うへ〜キリが良さそうだし出てあげたら?」

「ああ、そうさせてもらうよ。小鳥遊さん。では、皆さん。お疲れ様でしたー」

「お疲れ様!」

 

 不気味な音楽を鳴らしながら先んじて失礼することになった。連絡してきた相手がこれから彼女達に悪意を負ける相手であることを申し訳なく思いながら。

 皆んなに見送られる形で足早に去っていく。思いっきり走る。逃げるように。罪悪感かまだ言われてすらいない罵倒からか。

 

 

 

 

 

「黒服、お前なあ……」

『申し訳ありません。ですが、急いで伝えた方がよろしいかと思いましてね』

「どうした?」

 

 こんなタイミングでかけてくるのだからきっと碌でもない。急いだ方がいいなんて言うから尚更だ。

 

『ブラックマーケットにいた呪霊ですが……ゲヘナの初等部の近辺へ移動し始めました』

 

 

 

 

 

「は?」

*1
黒服が出てるときのアレ




この後アルちゃんが本編通りやってきます

アル「あれ?あの凄い剣幕で脅してた6番さんは?」
一同「あはは……」

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