呪いは廻り、神秘は透き通る   作:ソックス

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ゲブラ……せっかくの3桁チャンスもレ無によって断念


109 お出迎え

 バリアの破壊が確認された後、七神行政官の指示の元突貫する。素早い判断に恐れ入るよ、全く。残り数秒で敵地に突入することになる。

 

「……」

 

 拳銃がすぐ取り出せる状態か改めて確認する。出来れば刀も持っていきたかったがケイさんとの戦いで折られてしまった。俺の銃の腕でどこまでやれるか。

 

 ドカン、と大きな音を立てて敵地に激突し、凄まじい衝撃が襲いかかる。世界の命運を決める決戦の合図としては上々だ。

 ただ、今はアリスさんとケイさんの2人がどうなってしまったのかそこだけが気掛かりだ。無事なのだろうか。船自体は喧しいエラー音からして危機的状況だろう。力は向かってないと思いたい。

 

「ほ、包囲されている……!」

「ここは敵の本陣だもんね……」

「戦闘員、出撃を!」

 

 しかし状況は確認する時間すら許さないらしい。自治区やタワーで出てきた敵が恐ろしい速度で展開される。まるで待ち構えていたかのようだ。

 

 

「……!」

 

 俺はすぐに駆け出して船の出口へ向かう。あの量なら術式で一気に焼き払うほうがいいだろう。一応回復役も兼ねてるので前に出て負傷するのは良くないのだが。

 

 走っていると対策委員会、美食研究会、ゲーム開発部……今回の戦闘員が勢揃いしているのを発見した。ただそこにアリスさんの姿はない。嫌な予感しかしない。

 

「先生、皆んな……戦闘員はここに揃ったよ。それぞれの部活で出撃でいいよね?」

「俺はゲーム開発部と出よう。アリスさんは今は出れないみたいだから代わりに入る」

「え!?浩介と一緒に?……焼かれないよね?」

「大丈夫ですわ。浩介さんは前に出るのでゲーム開発部の方は彼の援護をしてあげてください」

 

 小鳥遊さんが通信越しにパイロットの皆んなへ話しかける。出撃は各部活ごとでやる、まあ妥当な判断だ。下手に混ぜても連携は上手くいかない。

 とはいえ、アリスさんの離脱は大きい。この中では例の力抜きなら小鳥遊さんと俺の次に強いのは彼女だ。大きな戦力ダウンを補うためにもゲーム開発部は俺がカバーしたほうがいいだろう。

 

『うん!その編成で行こう!総員……出撃!!』

 

 先生もそれで承認し、出撃許可が降りる。これだけの数をこの人数で相手するには先生の指揮が不可欠。頼りにしているよ、先生。

 

 

 

*****

 

 

「"焔三連"!」

 

 敵陣に入って戦闘になったが、大した相手ではない。数が多いので厄介極まりないがこちらは1人で戦っているわけではない。

 

「これでもくらえ!」

「浩介くん!アレ投げるよ!」

「てやあぁぁ!」

 

 俺を援護してくれる人は3人いる。今回のゲーム開発部主体メンバーの戦闘の肝は俺らしい。俺の術式は俺が呪力を込めたものでも遠隔で発火させることが出来る。焔、発がその応用だ。

 

 3人は時間差でとあるものを投げつける。俺特製のダイナマイトだ。ブラックマーケットで買った粗雑な安物だが呪力を込めれば呪いの力を纏った爆発が相手を襲うシロモノだ。

 

「発!」

 

 敵が固まっているところに投げられたそれは俺が術式を起動すれば導火線に火がつく。その導火線は極端に短い。俺が術式を起動すれば即爆発するようにするためであるが。

 

『うん。予定通りだね。浩介を先頭にゲーム開発部……突撃!』

「「「「了解!」」」」

 

 敵に大打撃を与えたところで先生の指示のもと俺が先陣を切る。射程を考えれば俺がタンク役をやるしかないから仕方ない。もちろん回避タンクだが。

 

 俺を迎え撃つように敵が集まり始める。いい感じに俺がヘイトを買えているようだ。単純だが各現場に作戦を立案し送ってくれた先生には感謝だ。

 

「燃えろ!」

 

 手から炎を出して横並びになっている敵を焼き払う。謎の海洋生物のような機械兵は奇怪な音を立てながらパタパタと落ちていく。なんか気持ち悪いな。

 

「……これ私達いる?」

「浩介くん1人で終わりそう」

「この数だとそうもいかないよ。作戦通り敵の誘導をしよう」

 

 ゲーム開発部は余裕そうにある一方から威嚇射撃を繰り返す。怪しまれないように可能なら敵の破壊も適宜こなしており、いい働きをしてくれている。

 

『うん。いい感じに敵が集まってるね。浩介、そろそろ頼めるかい?』

「了解、先生。アロエを後でくれ」

『はいはい……じゃあ頼むよ』

 

 これだけいい援護があるならもう少し思い切ってもよさそうだ。先生は俺に指示を出した後は他の部隊の指揮に移る。よくやるよ本当に。なんでキャパオーバーしないのやら。

 

「……"祓除火箭"」

 

 今の俺なら威力こそ少し落ちるが極の番を詠唱と掌印なしで撃てる。相変わらず手を少し焼いてしまうのが難点ではあるが。

 

「俺が全部焼き払う。少し下がってくれ」

 

 矢を番え、敵に狙いを定める。大技だと察したゲーム開発部はキリのいいところで攻撃を切り上げて下がる。巻き添えを喰らうことはこれでないだろう。

 誰も巻き込まれないことを確認した後、矢を放つ。敵の中央に着弾し、そこを中心に燃え広がる。敵全体が燃えていきビビビと機械音が悲鳴のように鳴り響く。

 

「おー……よく燃える……。やっぱり敵は燃やすに限るわ」

「浩介……怖いよ」

「浩介くんって意外とサイコパス気質だよね」

 

 思えば最近は敵を気兼ねなく燃やす機会が少なかったからかこの光景は何だかスッキリする。雑魚呪霊を除けばアリウスの時のベアトリーチェぐらいか?つい最近のは焔で蜂の巣にしただけだし。

 ちょっと才羽姉妹に引かれてしまったのは反省点か。それにしてもミドリさんって割と容赦ないこと言うんだな。サイコパスだなんて酷い言いようだな。

 

「あの……これって私達も危なくない?こっちにも火が来そうだよ」

 

 ただ花岡さんは別の心配をしているようだ。あまりによく燃えているので自爆の危険性を訴えてきた。なんだかんだ言ってよく見てるな。戦闘向きの資質を持ってるように見える。

 

「その心配はないよ。俺の術式は炎を出す、操る、消すことがキモな護法火操術。敵も動けなくなったようだしそろそろ……フン!」

 

 炎を扱う奴が自分の炎で焼かれれば世話ない。実際はこの術式って初期修行の段階で自爆して焼け死ぬ可能性が高いハズレもいいところなんだけど。

 

「炎を集めてる?」

「消さないの?」

「敵はまだいるでしょ?他の人達の分に使うんだよ。さて……どうするか」

 

 炎を集め、残り2つの戦場を確認する。アビドスは指揮官機らしきものがいるのと戦っており、ここと比べて戦力が多い。美食研究会は苦戦こそしてないが、処理に時間がかかるようだ。

 

「おーい!!」

 

 どうしようかと悩んでいたら俺のやろうとしていることに気づいた小鳥遊さんが片手でこっちに手招きしてきた。こっちに撃ってくれと言わんばかりに。

 

「こっちにお願いしてもいいかな?おじさん、サクッと指揮官機を無力化してくるからさ……雑魚を蹴散らしてくんない?」

 

 小鳥遊さんは俺の火力をよく知っている。雑魚を蹴散らすのは得意中の得意だというのは考えるまでもないのだろう。

 驚きなのはかなりの数の敵の攻撃を捌きつつ、後輩のカバーもこなし、俺に指示まで飛ばせる。空崎委員長とはスタイルが違うがやっぱり規格外だなこの人。本当は時間をかければこの軍勢も簡単に突破できるのだろう。俺はあくまで時短だろう。

 

「そんじゃ……遠慮なく!」

 

 火の玉をアビドス側に向けてぶん投げる。もちろん彼女達に近すぎる敵は除いて焼き払う。お風呂残りみたいな利用方法なので火力は控えめだが露払いとしては十分だろう。

 

『ノノミ!セリカ!全火力を後方に!ホシノは指揮官機を!」

「「「了解!」」」

 

 勝負どきと見たのか先生が指示を飛ばしてきた。それに従って十六夜さんと黒見さんが乱射し、後方から迫る残りの敵を一掃する。

 小鳥遊さんは全速力で駆けて指揮官機との距離をあっという間にショットガンの間合いに入れる。勝負はこの時点で決した。

 

「おーしまい」

 

 小鳥遊さんのその一言を皮切りに指揮官機は倒れる。指揮官機を倒した後は動きの鈍い残党を処理するだけとなった。

 

 

 

 後は簡単だ。アビドスと俺達で美食研究会を相手している集団を囲んで三方挟みとなる。あっという間に敵を殲滅できたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ、助かりましたわ」

 

 戦いを終えて黒舘先輩はお礼を俺達に言ってきた。助かった、なんて言う割には傷一つないのはさすがと言うべきか。あのゲヘナでもトップクラスを張るだけはある。

 ……テロリストとしてだけど。食が絡まなかったら優雅な美人だよなあ、ホント。

 

「私達が来るまで凄い数の敵を前にしてもしっかり耐えてたじゃない。美食研究会ってすごいのね……。今度私のバイト先に食べに来ない?柴関ラーメンっていうんだけど」

「あら!実は前から気になっていましたの!最近は店が無くなって屋台からやり直しているとても気骨のある店主だとか……」

 

 ん?

 

「食べ放題はあるのでしょうか?」

「ラーメンって色んな味付けがあるよね!醤油にミントとか!」

「早く出されて食べられるのも魅力よね!」

 

 あ、あぁ……、なんてことを……。

 

「黒見セリカさん……でしたね?ええ、必ず向かいましょう。この戦いを終えた打ち上げとして美食研究会がいつか向かいますわ!」

「ご予約4名様入ります!」

 

 こういうのって死亡フラグって言うんだけどさ……この場合はそのフラグはここから帰れないじゃなくて店に来た時に発動しかねないのは何故だろうか。

 ……黒舘先輩のお眼鏡に叶う店ってかなり少ないんだよなあ。不安だ。

 

 

 

 

 

ゾワッ

 

 

 突如として背筋に悪寒が走る。強い呪いと遭遇してしまった時のそれが全身を駆け巡る。そしてこの力は遭遇した覚えがある。

 

 力の発信源は……俺たちが乗って来た宇宙戦艦。

 

 

「くそ!!嵌められた!」

 

 全て囮だったとここで気づく。敵の数の多さからして殲滅に来たのだと思っていたがそれはあわよくばぐらいで本命は別にあったのだ。

 俺が走ったのを見て小鳥遊さんが真剣な顔つきで後をついてくる。普通に追い抜きそうなスピードで走って来ているのに普段なら驚くところだが今はありがたい。

 

 

「全員戻れ!!!俺たちの船に侵入者だ!!!」

 




浩介の術式は浩介の呪力を炎に変えて出す、操る、消すが基本。
デメリットとしてこの炎は浩介すら焼いてしまうため、手から出す時は自爆防止のために炎に変換する呪力、操作する呪力とは別に
手を保護するための呪力と3種類の呪力を運用することになります。
そのため燃費も悪く、炎という扱いを誤れば二次被害が酷くなる性質上、
物に込めた呪力を発火させるのが安全かつ低コスト。
焔(ジェット噴射によるブースト弾)、剣火繚乱(剣を刺した先から発火)、遠隔爆弾(導火線に後から着火)、火柱(地面に呪力を伝わらせ縦方向に噴火)はその応用です。
応用幅が広い分、失敗すれば死にます。

更新時間はいつが良いでしょうか?

  • 22時〜0時ごろ
  • 7時ごろ
  • 19時ごろ
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