強いナツ持ちフレンド探してみようかな
「え……?え?」
セリカは驚愕している。さっきまで自分に物凄い力で殴り掛かろうとしてた人が背中から血を流して倒れている。
流れる血は多くないが、時間が経てば地面に真っ赤な華が咲くのは時間の問題である。
「ホムラ!!」
私は思わず彼の元へ駆け出す。さっきまで殺意のある攻撃をしてきた相手にすることではない。だが流石に今は放っておけない。
「あっ……先生?カードキーならホラ……」
ホムラは駆け寄ってきた私を見て律儀にカードキーを取り出す。受け取りこそするが、今はそれどころじゃない。
「セリカはキーを使ってみんなと一緒にホシノを!!私はホムラに応急処置をする!!」
「わ、わかった!!」
受け取ったキーをセリカに手渡し、私はホムラの応急処置の準備を始める。幸いにも生徒が負傷することも考えて色々と持ってきてはいる。
ホムラは私のやろうとしていることを見て不思議そうに見つめる。まさか応急処置までされるとは思わなかったのだろう。
ホムラの上半身の装備と服を全て脱がして背中を見る。そこには綺麗に一つの線となった切り傷が入っていた。明らかに私達との戦闘によるものではない。鋭利な刃物で後ろから切りつけられた跡だ。
「……どうしてこんな傷があって戦闘なんかしたの?これは誰にやられたの?」
「いっ……つぅ〜……気付くのが早いな……。お察しの通りこれはつい先日やられた傷だよ」
私が傷の詳細を聞こうと質問したら、彼はあっけらかんとした感じで答える。このくらいの傷を負うことはよくあるのだろうか。
そんな事を言うホムラに一喝してやりたいところだが、傷の処置の方が最優先だ。思ったよりも傷は深くないので私で出来ることでも十分効果的だろう。
傷口をペットボトルにためた水で軽く流し、まずは徹底的に異物を取り除く。ホムラは少し染みたのかうっ、と呻き声をあげるが大人しくしている。次に傷口が縦に長いことから致し方なしに長めのガーゼを何個か押し当て圧迫する。ここにチナツがいればもっと手早く的確にやってくれたのだろうか。
「君はどこの学校の生徒かな?そこの生徒会長に連絡したいんだけど」
「それは教えられない」
一応どこの生徒か聞いてみるが軽くあしらわれる。意外と余裕そうだ。回復が早いのか傷をした時にどうすべきか心得ているのか。
「ところで……何故俺を助けてくれるんですか……?」
ホムラは申し訳なさそうに尋ねてくる。仮面をしていて表情は見えないが、声色はわかりやすい。思ったよりも感情がよく出てくる子だ。
「君は私の生徒だから」
その質問に対しての答えは決まりきっている。先生として生徒が危険な状態を放置するわけにはいかない。致し方なしとは言え私が傷をつけたなら尚更だ。
「担任でもないのに?」
「そうだよ。先生として大人として子供がこんな大怪我をしてる時に何もしないわけにはいかない」
「ふふっ、何だよそれ。さっきまで命のやり取りしてたのに」
ホムラは私の答えが不思議だったのかキョトンとしている。大人としての責務を話せば、笑って治療を受け入れてくれた。
「……それに命のやり取りって言うけど君にその気はなかったよね?」
「……」
「その反応は図星かな?」
ガーゼを片手で可能な限り押し当て、包帯を身体に巻いていく。かなりがっしりしていて普段の私ならツンツン触っていたかもしれない。
ホムラは私の言うことに心当たりがあるのか黙っている。今少し話しただけだが、これだけでも悪い子ではないと思うには十分だ。
彼は本気で命を取るつもりならもっと酷い攻撃が出来たはずだ。わかりやすいので言えば直接焼けばいい。誰も炎に焼かれていないことから当ててないと思われる。あんなに自由な操作が出来るのだから……。
「……やらなきゃいけないことがあるんです」
ホムラは何かを話す気になってくれたのか口を開く。仮面に隠されて見えないが表情はきっと真剣なものだろう。
「これはもしかしたら俺が特別やらなきゃいけない、なんて事はないのかもしれない」
ホムラはゆっくり語りだす。
「でも、……俺の誇りや誓いの類といいますか……譲れないんです」
その誇りや誓いはきっとまだ私が知ることはできないものだろう。
「多くの人を守るためにやろうとしているのに……小鳥遊さんを犠牲にしようとしてしまった。これじゃあ本末転倒ですよね」
「……」
私は黙って聞くほかない。だが聞きたいこともちょくちょく出てくる。多くの人を守るため、譲れないとはどういうことなのか。
「さて、と……私にできるのはここまで。そんなに罪悪感を感じるならあの子達に謝罪したら?ね?」
「あ……わ……本当はそうすべきなんですけど……俺の立場はまだ先生の味方ではないのでこれで……」
私は彼の横に座り頭を撫でながら話しかける。自慢じゃないが身長が高いから大概の高校生ほどの男子の頭だって余裕で撫でれる。ホムラは少し恥ずかしがっている。なんだこいつ可愛いな。
ただ、言っていることはまだまだ厳しい。撫でる手を振り払い、ゆっくりと立ち上がる。まだ動けるような状態ではないと思うが、とても軽やかだ。怪我をすることに慣れてしまっているのか。
「今の君は待ちなさいといっても止まらないんだろうね。それに……"まだ"ということはいつかは味方してくれるのかい?」
「やりたい事もやるし、ゲマトリアのクソ野郎どももぶちのめしたいんで」
「おお、言うねえ。私としては今すぐ彼等と手を切って欲しいな」
いくらかやり取りをした後、ホムラはこちらを向いてくれる。少しは心を開いてくれたように見えるだけ幾分か前進だろう。
おまけにゲマトリアをぶちのめすなんて意気込む始末だ。うーん、やめさせたい。彼等からは危険な香りしかしない。
「では、先生。次に会う時は敵でないことを祈ります」
「うん。いつかあの子達に謝りたいなら私はいくらでも相談に乗るよ」
私との会話の後にホムラは手を振ってくれる。
「……ありがとう。では、またいつか」
穏やかな声をかけてから彼は飛んで私の前から去っていった。足から炎が出ており、物凄い速度だ。
「──今度は君のやろうとしてること聞かせてね。ホムラ」
私が1人でボソリと呟き願う。アビドスの皆んながホシノを連れて私の元に駆け寄って来たのはそれからすぐの事だった。
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カイザーPMC基地から少し離れたところで俺は仮面の通信機をつける。黒服に今回のことを報告するためにだ。
「……黒服。残念だが今回は……」
『ええ。見てましたとも。爆発の影響で背中の傷が開いて倒れてしまったとは……。勝つのは十中八九貴方だと思ったのですがねえ』
「悪いな」
黒服は既にこちらの事を把握してたらしい。正直に言えば負けたことこそ悔しいが負けた方がよかったという複雑な気分だ。
今回の件で黒服がどう動くかが気になるところだ。失敗した自分を切り捨てるのか引き続き協力するのか。呪霊の事前察知を考えればなるべく穏便に行きたい。
切り捨てられたら黒服の持つ呪霊察知の手段を奪取することも視野に入れるべきだろう。
『では、引き続き呪霊が出たらお知らせしますので今は傷を治してください』
黒服からの答えは協力関係の継続だ。ひとまず穏便にいけそうである。
「了解。帰還する」
黒服からの返答を聞いた後は軽く返事だけして通信を切る。アビドスでやることはこれにて終了だ。
協力関係の継続が出来たからにはやるべきことは1つだろう。黙って従うつもりはない。そのやるべきことは──、
(このまま奴等と関係を持ちつつ色々と情報を盗んで先生に横流ししてやる)
──所謂スパイ活動だ。
次回からはゲヘナの子達や他のゲマトリアと交流が始まります
更新時間はいつが良いでしょうか?
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