呪いは廻り、神秘は透き通る   作:ソックス

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17 浩介とヒナ

 見知らぬ天井……ということはなくよく知ってる部屋に居る。救急医学部に連行されて絶賛強制入院中である。解せぬ。

 授業を受けなきゃ、という言い訳もBDと再生用のPCを渡されこれでやれと言わんばかりに封殺。病室なんだから静かにしないと、と言えば許可は出してるしヘッドホンを使えと言われてしまう。

 

「病室は落ち着かないなあ……」

 

 仕方ないのでBDによる授業を受けて、ノートを取っている。寝転がりながらやるから姿勢も落ち着かない感じがする。

 やっぱり俺は身体を動かしていたい。勉強も嫌いではないがどちらかと言えば体育の方が好きだ。この学園での体育はちょっと参加するのは主に目線のやり場の関係で気が引けるけども。

 

 部屋は静寂に包まれる中、ヘッドホン越しに授業を聞く時間も終わりを迎えBDの再生が終了する。教師と面と面を向き合ってやることに慣れてきていたため、今でもこの形態は違和感がある。元の世界の日本では通信教育の人はこの違和感を感じていたのだろうか。それともまた違った良さを感じていたのだろうか。

 

(取り敢えず……今日のお勉強は終了かな?)

 

 なんて思いながら疲れたと言わんばかりに伸びをする。歳を取るとこの行為でバキバキ音が鳴るらしい。因みに日下部先生は凄い音が鳴っていた。

 

 ひとまず数日はここに拘束される事になった。怪我も回復が早いらしく1週間もかからないそうだ。反転術式が使えるようになれた?なんて願望は叶ってはいない。

 

ガララ……。

 

 そんな折に病室のドアがゆっくりと開く音がした。他のゲヘナ生徒ならバンっと開けるだろうが珍しい音が聞こえてきた。この時点で大分絞られる。

 誰だろうかとドアの方を見てみると長い白髪で、頭の後ろに立派な角が生え、王冠のようなヘイローをした生徒が見えた。この姿はよく見覚えがある。まさか来るとは思わなかったが。

 

「これはこれは……空崎委員長。どういったご用件で?」

「色々と聞きたいことがある」

 

 空崎委員長はお見舞い者用の椅子に座り、俺を見つめてくる。落ち着いた感じはするがそれと同時にどこか威圧感すら感じさせる。

 俺の認識では彼女はゲヘナ風紀委員の委員長を務め忙しい日々を送っている。火宮さんが上司である空崎委員長と一緒によく遅くまで残業するのは、前回のカマキリ呪霊の時に聞いた話だ。そんな忙しい彼女が授業が終わってすぐに来るとは何事だろうか。

 

「チナツから聞いたのだけどゲヘナ初等部での件は本当に助かったわ。委員長として御礼を言わせてもらうわ」

「あぁ……それはどうも。少し気になっているのですが、あれから初等部の子に怪我人はいますか?」

「いないわ。貴方が未然に例のを倒したからね」

「ふぅ……よかったぁ……」

 

 まずは初等部の件での御礼からだった。彼女は柔和な笑みを浮かべ軽く頭を下げてくれた。事態が事態なだけに本当にホッとしているのだろう。

 少し気掛かりだった追加の被害などはないか聞いてみたら無いと言い切ってくれる。治安維持の長が言ってくれると幾分か落ち着く。

 

「で、本題に入るのだけど……」

 

 ここで空崎委員長は柔和な表情が消え真面目な顔でこちらを見つめる。やはりと言うべきか御礼をいうだけでここには来ないだろう。何を聞かれるのか内心ドキドキする。

 

「主に2点あるわ」

「2点ですか?」

 

 彼女は2本指を立てて強調するかのように書きたいことの数を教えてくれた。粗方聞きたいことを絞って来ているのだろう。呪霊の騒動では術式を使って祓う場面をガッツリ火宮さんに見られている。時間にして数分程度の出来事だがこれだけでもいくつもの質問が飛んでくるのは想像に難くない。

 

「まず1点目はチナツ曰くカマキリのような化け物はどういった存在なの?」

 

 1つ目の質問は無難なものだった。呪霊という初めての存在が現れて子供を襲ったとなればその正体は知りたいだろう。どこまで教えるべきか吟味する時間が欲しいが、その時間はないだろう。

 

「答えるのは構いませんが……約束していただきたいことがあります」

「何かしら?」

「今から言う情報を共有するのは"シャーレの先生と3人の風紀委員"だけにしていただけますか?」

 

 キヴォトスの人には呪霊は見えてしまっている。その癖脅威だけは元いた世界と変わらない。となれば教えないわけにもいかない。実際にハッキリと認識できるが襲われる彼女達に危ないから教えません、なんて言うのはいらぬ反感を買いかねない。

 ただ、呪霊の発生条件を考えると情報の与えすぎもよくない。元の世界では呪術師以外の人が無意識に漏らす呪力が発声に一役買っている。キヴォトスでは呪力もとい恐怖の力が生徒から感じないとは言え、発生している以上似たようなメカニズムがあるはずだ。この場合原因として考えられるのは生徒から漏れ出る微かな神秘だろうか。

 

 その仮説で気がかりなのは生徒の神秘は恐怖とは真逆に近いものを感じる。それが恐怖が形を成している呪霊になるのは不思議だ。もし漏れ出た神秘が由来であれば──、

 

 ──生徒から漏れ出た神秘が反転してそれが発生要因になっている事になる。

 

「……いいわ。先生と風紀委員から誰か3人ね」

「わがままを聞いてくださりありがとうございます」

 

 空崎委員長は快く了承してくれた。話の早い方で非常に助かる。

 

「まずは奴等の総称から言いましょうか。……奴等は呪霊という存在です」

「ジュレイ?どんな字かしら?」

「呪いに幽霊の霊ですね」

「……」

 

 ポカン、と音が鳴りそうな感じで空崎委員長はキョトンとした顔をしていた。無理もない話である。開いた口が塞がらないとはまさにこういうことだろう。俺もキヴォトスに来た時は銃撃戦の雨霰にそうなったのも今や懐かしい。

 

「……続けますね。奴等は人に直接的に害を及ぼします。それも殆どが悍ましく悪辣に」

「やっぱり危険な存在なの?その……貴方が燃やし尽くすのを選ぶように」

 

 初めての概念を聞いて彼女も疑問が尽きないようである。1点目で既に話が長くなりそうである。

 

「人の命を簡単に刈り取ってしまうし、中には──

 

 

 

 

 ──人を喰らうものがいます」

 

 どういった存在かわかりやすく言うためにもキッパリと短めの言葉で説明することにした。これだけでも事の深刻さは伝わるはずだ。

 

「……」

 

 案の定、彼女は沈黙する。その目つきは険しく、不良が見れば震え上がるほどだ。治安維持組織としては最悪の存在の出現でしかない。

 

「もっと色々と深く説明することもあるのでしょうけど、取れる時間も少ないから2点目を聞くわ」

 

 危険性は十分伝わったのか手早く2点目の質問に移行することになる。正直2点目の質問が一番怖い。

 

 

「2点目は答えられないならそれで構わない。火野浩介、貴方は一体何者なの?」

 

 そして、投げかけられた2点目の質問は至ってシンプルだ。俺という不思議な存在はそもそも何ぞや、と。

 

「俺は──、呪霊を倒すことを生業とする者です」

 

 その問いに対しての答えは先程の呪霊と絡めて答えることにする。間違いではないはずだ。ただ、言ってないことが多いだけだ。

 これでは詐欺師だ。呪術師は割と騙してナンボではあるのがタチ悪い。

 

「……」

「……」

 

 沈黙が流れる。この間は非常に怖い。なんて思われてるか気になるし、場合によっては今後の活動に良くない影響を及ぼす。

 

「そう……。今日はこのくらいにしておきましょうか」

「もっと聞かれないのです?」

「ええ。何とか捻出した時間もそろそろだし」

 

 空崎委員長は自分の中である程度見切りをつけたのか切り上げてくれた。正直に言うと助かる。

 ただ、捻出した時間が切れそうっていう理由は気になる。まだ数分しか時間は経ってないのだが。

 

「じゃあ、お大事に」

「どうも。そちらはお仕事頑張ってくださいね」

 

 俺と空崎委員長は軽く会釈して話を終わらせる。話を終えたら彼女は病室から出ていった。これから仕事なのだろう。

 

 

「あ〜……あれがゲヘナ最強か。これじゃよくわからんな」

 

 

 

 

 

 

 

─────────病室の外、ヒナ視点

 

 

 

 あれが火野浩介か。見た感じは普通の男子といったところだ。チナツの言うように化け物をアッサリと倒した人物とは思えなかった。

 だが、収穫はあった。あの化け物に関しての情報を彼は持っている。時間があればもっと深掘りしてただろう。しかし時は待ってくれないのだ。

 

「……」

 

 だが、気になるところが一つある。その事は今回敢えて聞きはしなかった。

 その気になることの元となる資料を開き、今回の内容と照らし合わせてみる。資料の内容はシャーレの先生から貰った"ホムラ"という人物の情報だ。

 

 資料には彼はその名の通り炎を操り、アビドスの子達を追い詰めたそうだ。戦う前には結界のようなものを張り巡らしたりと、聞けば頭痛がしてしまいそうな情報ばかりだ。

 ただ、先生は彼に善性は感じているようである。アビドスの子達を結界から追い出すように戦い、炎で直接焼こうとは一切しなかったらしい。

 

 だが、それよりも重要なのは浩介とホムラには共通点が多過ぎる。炎を操る超能力持ちなんて2人もいるのだろうか。顔と声が違うらしいが、ホムラの方は仮面をつけていたとのこと。幾らでもやりようはありそうだ。

 

「エデン条約の前にハッキリとさせた方がいいかもしれない。彼は信頼できるのかどうか……」

 

 

 

 私は目を光らせよう。ゲヘナの風紀委員長として……。




現状のヒナからの浩介へのイメージ

・チナツと仲良さそう
・シャーレとアビドスを相手取ったホムラにあまりにも共通点が多いことから要警戒
・優しい人ではありそう

更新時間はいつが良いでしょうか?

  • 22時〜0時ごろ
  • 7時ごろ
  • 19時ごろ
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